さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第62回】「デラウェア州LPS事件」~最判平成27年7月17日(民集69巻5号1253頁)~
Xは、A証券との間でファイナンシャル・アドバイザリー契約を締結し、アメリカに所在する不動産への投資事業に参加した。
まず、Xは、B銀行との間で信託契約を締結し、B銀行に資金を拠出した。B銀行は、デラウェア州有限責任会社との間で、当該州法に基づき、リミテッド・パートナーシップ契約(LPS契約)を締結し、リミテッド・パートナーシップ(LPS)を設立した。その際、Xが拠出した資金をもってLPSに資金拠出し、パートナーシップ持分を取得した。LPSは、建物を購入し、第三者に賃貸する事業を行った。
Xは、LPSの建物賃貸事業により生じた所得はXの不動産所得に該当するものとして、当該事業に基づく不動産所得の損失(減価償却等によるもの)を他の所得と損益通算の上、所得税の確定申告をした。これに対し、Y税務署長が、不動産所得該当性を否定し、損益通算はできないとして、Xにつき更正処分・過少申告加算税の賦課決定処分を行った。Xがこれを争ったのが本件である。
monthly TAX views -No.91-「国への信認確保のために現実的な財政目標を」
新型コロナ対策で2度の補正予算を組み、121兆円の財政支出を計上し、追加公債発行額は57兆円で、当初と合わせて90兆円の公債発行となった。今年度の国の財政収支は対GDP比で10%を超える大幅な赤字となる見通しだ。
コロナ禍という未曽有の危機への対応なのでやむを得ないのだが、これだけの財政赤字を抱えて、ひとたび国家への信認が失われば、インフレなどさらなる巨大リスクを生じかねず、それへの対策が必要である。
谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」 【第40回】「租税法律主義と租税回避との相克と調和」-不当性要件と経済的合理性基準(6)-
第37回以来、ユニバーサルミュージック事件・東京地判令和元年6月27日(未公刊・裁判所ウェブサイト。以下「本件東京地判」という)における不当性要件に関する同判決の判断枠組みを検討してきた。なお、そうこうしているうちに本年6月24日に控訴審判決が東京高裁で示されたが(T&Amaster841号(2020年7月6日)4頁参照)、この判決については次回検討することにする。
〈Q&A〉印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第81回】「新型コロナ税特法に係る印紙税の非課税措置の適用を受けた消費貸借契約書の過誤納還付請求」
新型コロナ税特法が施行されるまでの間に作成した金銭借用証書のうち、施行後であれば印紙税の非課税措置が適用されていた金銭借用証書を株式会社日本政策金融公庫へ収入印紙を貼付して提出しました。何か救済措置はありますか。
また、新型コロナ税特法の施行日以後に作成したものに対して、非課税措置を知らずに印紙税を納付してしまった場合はどうですか。
Q&Aでわかる〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第7回】「〔第1表の1〕姻族関係終了届出と株主判定」
戊は事業承継により甲からA社株式の議決権総数の70%を相続により取得し、代表取締役に就任しています。議決権総数の30%は先代経営者の配偶者である乙が保有しており、乙から贈与により取得予定でしたが、丁(長女)の死亡が原因で乙と戊が不仲となり、株式の贈与が不成立となりました。戊は乙及び丙(長男)との関係も悪化したため、X3年2月に姻族関係終了届出を提出しています。
乙は、A社株式について下記の遺言を検討していますが、遺言でA社株式を取得した株主は、原則的評価方式が適用されるのでしょうか、それとも特例的評価方式(配当還元価額等)が適用されるのでしょうか。
➤A社株式は全て丙に相続させる旨の遺言
➤A社株式は丙及び己に15%ずつ承継させる旨の遺言
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例20】「売上原価と棚卸資産の評価方法」
私は、北関東において中古車販売業を営む株式会社Aで経理を担当しております。近年、わが国においては若年層の自動車離れが顕著であり、そもそも運転免許すら取得しない若者も都市部においては珍しくないと聞きます。幸いなことに、北関東は東京都内と比較すると公共交通機関が未発達で、自動車なしでは事実上生活が成り立たないため、一家に一台どころか大人は一人一台というのが標準的であり、自動車離れの影響は今のところ軽微といえます。しかし、そうはいってもやはり新車は高額であるため、当地においては私どものような中古車販売業の役割は大きいと言えます。
令和2年度税制改正における『連結納税制度』改正事項の解説 【第6回】「所得金額及び法人税額の計算(その3:個別計算を行う項目、税率、中小法人等の判定)」
寄附金の損金不算入制度、所得税額控除、特定同族会社の留保金課税等は個別計算を行うことになる(法法23の2、37①④、52⑨二、67③④⑤、68)。
租税争訟レポート 【第50回】「準確定申告における無申告加算税の正当な理由(国税不服審判所2019(平成31)年2月1日裁決)」
本件は、審査請求人が、貨物の運送業務を請け負う個人事業者であった父(被相続人)が平成29年に死亡したことに伴って、同年分の所得税等の確定申告書をその死亡の日の翌日から4ヶ月を経過した後に提出したため、原処分庁が、無申告加算税の賦課決定処分をしたのに対し、請求人が、①未成年者である請求人が相続の開始を知った日は、未成年後見人が選任された日であるから、選任された日の翌日から4ヶ月以内に提出された確定申告書は期限後申告書に該当しないとして、また、②仮に提出した確定申告書が期限後申告書に該当するとしても、確定申告書を法定申告期限までに提出しなかったことについて正当な理由があるとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。
収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第34回】
法人が資産の販売等を行った場合において、法人税法22条の2第3項の適用があると、その資産の販売等に係る収益の額について、「その額につき当該事業年度の確定した決算において収益として経理したものとみなして」2項の規定が適用されることになる。
《速報解説》 国税庁、「年末調整手続の電子化に関するパンフレット」を公表し周知を図る~承認申請の手続に留意~
令和2年分の年末調整から、年末調整手続の電子化に向けた施策が実施される。年末調整手続を電子化するには、企業と従業員いずれの側にも事前の準備が必要である。また、書面のやりとりによる今までの手続とは異なる流れとなるため、移行年度には混乱が生じる可能性がある。
このたび国税庁のホームぺージにおいて、年末調整手続の電子化を検討している企業向けに、電子化までのスケジュールや、事前に準備すべき事項をわかりやすくまとめたパンフレットが公開された。