谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」 【第9回】「租税法律主義と実質主義との相克」-税法上の目的論的事実認定の過形成②-
前回は、「租税法律主義と実質主義との相克」について、税法上の目的論的事実認定の過形成①として、私法上の法律構成による否認論の意義及び狙い・位置づけを述べた上で、租税法律主義の見地からその許容性を否定する私見を述べたが、今回は、私法上の法律構成による否認論について判例がどのような立場に立っているかを検討することにしたい。
収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第1回】
収益をいつ、いくらの金額で計上すべきであるかは、法人税法上の所得金額を適正に計算するために、極めて基本的かつ重要な論点の1つである。これまで、かかる収益の年度帰属(計上時期)及び収益の額の論点を規律する最も重要な規定は、法人税法22条という所得計算の通則規定であったが、2018年度(平成30年度)税制改正では、法人税法22条よりも、資産の販売等に係る収益に関して明確で具体的な内容を有する法人税法22条の2がここに加えられた。
法人税法22条の原型は、1965年(昭和40年)の法人税法全文改正で作られた。同条に関する改正を振り返ると、1967年(昭和42年)に公正処理基準に従った計算を要請する規定(現行法4項)が挿入され、その後、1998(平成10)、2000(平成12)、2006(平成18)、2010(平成22)年で資本等取引(現行法5項)に関する細かな改正がなされたのみである。よって、インパクトのあるものとしては、今回の改正は1967年(昭和42年)以来のものといってよい。
事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント 【第4回】「親族内に後継者がいない場合の事業承継対策」
私Aは、健康食品の製造販売を営む非上場会社Y社の3代目社長です。創業者である祖父B、2代目社長の父CからY社の事業を承継し、20年かけて事業を拡大させてきた結果、従業員数は200人を超え、売上・利益ともに順調に拡大を続けています。
私も60代後半となり、後継者へのバトンタッチを考えなければならない年齢に差し掛かっているのですが、私には子供がおらず、親族の中にも会社経営を任せることができるような者が見当たりませんので、同族経営にはこだわらず、当社を経営していく意志と能力のある人に会社を継いでもらいたいと考えています。
さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第46回】「萬有製薬事件」~東京高判平成15年9月9日(高等裁判所民事判例集56巻3号1頁)~
製薬会社X社は、医療研究者らから医学論文の英文添削を請け負い、これを海外の添削業者A社に外注していた。その際、X社は、A社に対し、医療研究者らから受領する添削料金の3倍以上の料金を支払い、この差額分を自ら負担していた。
そこで、Y税務署長は、当該負担額は、租税特別措置法61条の4の交際費等に該当するため、損金には算入されないとして、X社に対し、更正処分を行った。これに対し、X社が、当該負担額は、交際費ではなく、損金の額への算入が認められる寄付金に該当すると主張して、更正処分の取消しを求めたのが本件である。
《速報解説》 元号の改定に伴う「源泉所得税納付書」の記載方法が明らかに~印字部分の補正は不要、令和2年(2020年)3月末までの納付分は年度欄に「31」と記載~
平成に続く元号が「令和」と決まり、5月1日午前0時に改元される。
今回の改元に伴い、国税庁より以下の情報が公表された。
monthly TAX views -No.75-「令和元年の消費増税は何をもたらすのか」
平成31年度予算案が国会で成立し、税制改正法案も可決した。これで本年10月からの消費増税がほぼ確実になった、と言いたいところだが、直近の景気落ち込みや、中国・BRIXITなど海外リスクを理由として、消費増税延期論が出始めている。
消費増税が景気に悪影響を及ぼすかどうかは、以下述べるように、今回の増税スキームから判断する必要がある。
〈Q&A〉印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第67回】「消費税率等引上げに伴い作成される消費税額等増額分に係る変更契約書①」
【問】
消費税率等が2019年10月1日より8%から10%に引き上げられる予定ですが、消費税率等引上げに伴い消費税額等増額分の変更契約書を作成した場合の、印紙税の取扱いはどうなりますか。
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例4】「米国のリミテッドパートナーシップを通じた不動産投資から生じた費用及び損失の取り込みの可否」
私は都内で不動産の賃貸等を行う株式会社Xを経営する者です。私は現在、自分が築いた財産を国内のA証券を通じて運用していますが、当該証券会社の勧めで、米国に所在する中古の集合住宅を対象とした投資プラン(1口100万ドル)に投資することとしました。その際、A証券の発案で、B信託銀行との間で、当該投資プランに参加する投資家(私を含む)を委託者兼受益者、B信託銀行を受託者とする信託契約を締結し、これに基づいてB信託銀行に開設した口座に私を含む投資家が現金を振り込みました。
租税争訟レポート 【第42回】「マンション管理組合が行う収益事業に対する課税関係(第一審:東京地方裁判所平成30年3月15日判決、控訴審:東京高等裁判所平成30年10月31日判決)」
本件は、マンションの区分所有者全員によって構成される団体である原告が、マンションの共用部分及び敷地の各一部を賃貸した収益に係る法人税及び復興特別法人税(以下「法人税等」という)について、当該収益は各区分所有者に即時かつ最終的に帰属し、原告には当該収益に係る所得が生じていないとして、平成24年6月期から平成26年6月期の各事業年度の法人税等についてそれぞれ更正の請求をし、平成22年6月期及び平成23年6月期の各事業年度の法人税についてそれぞれ更正の申出をしたところ、金沢税務署長から、本件各更正の請求についてはそれぞれ更正をすべき理由がない旨の通知処分を受け、本件各更正の申出についてはそれぞれ「更正の申出に対する結果のお知らせ」と題する書面をもって更正をすべき理由がない旨の通知を受けたことから、これらの取消しを求める事案である。
企業の[電子申告]実務Q&A 【第18回】「電子申告の送信結果の確認・電子納税の方法」
e‐Taxシステム及びeLTAXシステムでは、申告データを受信する際に2段階でチェックを行っています。利用者が申告データを送信すると、まず、データ形式等の最低限のチェックが行われ、e‐Taxの場合には「即時通知」、eLTAXの場合には「送信結果一覧」という審査結果が画面表示されます。利用者は、まず、この第1段階の審査結果でエラー情報が無いことを確認します。