公開日: 2019/04/04 (掲載号:No.313)
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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例4】「米国のリミテッドパートナーシップを通じた不動産投資から生じた費用及び損失の取り込みの可否」

筆者: 安部 和彦

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例4】

「米国のリミテッドパートナーシップを通じた
不動産投資から生じた費用及び損失の取り込みの可否」

 

国際医療福祉大学大学院准教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は都内で不動産の賃貸等を行う株式会社Xを経営する者です。私は現在、自分が築いた財産を国内のA証券を通じて運用していますが、当該証券会社の勧めで、米国に所在する中古の集合住宅を対象とした投資プラン(1口100万ドル)に投資することとしました。その際、A証券の発案で、B信託銀行との間で、当該投資プランに参加する投資家(私を含む)を委託者兼受益者、B信託銀行を受託者とする信託契約を締結し、これに基づいてB信託銀行に開設した口座に私を含む投資家が現金を振り込みました。

B信託銀行は、米国デラウェア州法に基づいて設立されたC有限責任会社との間で、C有限責任会社をジェネラルパートナー(GP)、B信託銀行をリミテッドパートナー(LP)とするパートナーシップ契約(デラウェア州改正統一リミテッドパートナーシップ法に基づく)を締結し、パートナーシップ持分を取得しました。当該リミテッドパートナーシップ(LPS)は、米国に所在する中古の集合住宅を購入し、それを第三者に賃貸する事業を営んでいます。

A証券から送付されてきた当該投資プランの実績によれば、昨年度は2万ドル(約220万円)の損失ということでした。私はA証券の担当者及び顧問税理士と相談した結果、当該投資プランから生じた所得及び損失は不動産所得に該当するため、私の他の所得(給与所得等)と損益通算が可能となり、所得税及び住民税がその分だけ軽減されます。

また、上記とは別にX社は、米国に所在する別の集合住宅への投資を目的に、米国ワシントン州の法律に基づいて設立されたリミテッドパートナーシップの持分をリミテッドパートナーとして取得し、そこから生じた建物等の減価償却費をX社の所得の計算上、損金の額に算入しています。

ところが、先日私に対する税務調査で、税務署の調査官は、上記米国の不動産賃貸事業から生じた所得は不動産所得に該当せず、損益通算はできないとして、修正申告を求めてきました。さらにX社の法人税の調査においても、法人課税部門の調査官は、減価償却費を損金の額に算入することはできないと主張しております。このような場合、私はどのように対応すればよいのでしょうか、教えてください。

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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例4】

「米国のリミテッドパートナーシップを通じた
不動産投資から生じた費用及び損失の取り込みの可否」

 

国際医療福祉大学大学院准教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は都内で不動産の賃貸等を行う株式会社Xを経営する者です。私は現在、自分が築いた財産を国内のA証券を通じて運用していますが、当該証券会社の勧めで、米国に所在する中古の集合住宅を対象とした投資プラン(1口100万ドル)に投資することとしました。その際、A証券の発案で、B信託銀行との間で、当該投資プランに参加する投資家(私を含む)を委託者兼受益者、B信託銀行を受託者とする信託契約を締結し、これに基づいてB信託銀行に開設した口座に私を含む投資家が現金を振り込みました。

B信託銀行は、米国デラウェア州法に基づいて設立されたC有限責任会社との間で、C有限責任会社をジェネラルパートナー(GP)、B信託銀行をリミテッドパートナー(LP)とするパートナーシップ契約(デラウェア州改正統一リミテッドパートナーシップ法に基づく)を締結し、パートナーシップ持分を取得しました。当該リミテッドパートナーシップ(LPS)は、米国に所在する中古の集合住宅を購入し、それを第三者に賃貸する事業を営んでいます。

A証券から送付されてきた当該投資プランの実績によれば、昨年度は2万ドル(約220万円)の損失ということでした。私はA証券の担当者及び顧問税理士と相談した結果、当該投資プランから生じた所得及び損失は不動産所得に該当するため、私の他の所得(給与所得等)と損益通算が可能となり、所得税及び住民税がその分だけ軽減されます。

また、上記とは別にX社は、米国に所在する別の集合住宅への投資を目的に、米国ワシントン州の法律に基づいて設立されたリミテッドパートナーシップの持分をリミテッドパートナーとして取得し、そこから生じた建物等の減価償却費をX社の所得の計算上、損金の額に算入しています。

ところが、先日私に対する税務調査で、税務署の調査官は、上記米国の不動産賃貸事業から生じた所得は不動産所得に該当せず、損益通算はできないとして、修正申告を求めてきました。さらにX社の法人税の調査においても、法人課税部門の調査官は、減価償却費を損金の額に算入することはできないと主張しております。このような場合、私はどのように対応すればよいのでしょうか、教えてください。

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連載目次

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

▷総論

● 法人税の課税所得計算と損金経理(その1~5)

▷事例解説

● 法人税の損金経理要件をめぐる事例解説【事例1~50】

・・・  以下、順次公開 ・・・

筆者紹介

安部 和彦

(あんべ・かずひこ)

税理士
和彩総合事務所 代表社員
拓殖大学商学部教授

東京大学卒業後、平成2年、国税庁入庁。
調査査察部調査課、名古屋国税局調査部、関東信越国税局資産税課、国税庁資産税課勤務を経て、外資系会計事務所へ移り、平成18年に安部和彦税理士事務所・和彩総合事務所を開設、現在に至る。
医師・歯科医師向け税務アドバイス、相続税を含む資産税業務及び国際税務を主たる業務分野としている。
平成23年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野准教授に就任。
平成26年9月、一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務専攻博士後期課程単位修得退学
平成27年3月、博士(経営法) 一橋大学
令和3年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野教授に就任。
令和5年4月、拓殖大学商学部教授に就任。

【主要著書】
・『事例で解説 法人税の損金経理』(2024年・清文社)
・『三訂版 医療・福祉施設における消費税の実務』(2023年・清文社)
・『改訂 消費税 インボイス制度導入の実務』(2023年・清文社)
・『裁判例・裁決事例に学ぶ消費税の判定誤りと実務対応』(2020年・清文社)
・『消費税 軽減税率対応とインボイス制度 導入の実務』(2019年・清文社)
・『[第三版]税務調査と質問検査権の法知識Q&A』(2017年・清文社)
・『最新判例でつかむ固定資産税の実務』(2017年・清文社)
・『新版 税務調査事例からみる役員給与の実務Q&A』(2016年・清文社)
・『要点スッキリ解説 固定資産税』(2016年・清文社)
・『Q&Aでわかる消費税軽減税率のポイント』(2016年・清文社)
・『Q&A医療法人の事業承継ガイドブック』(2015年・清文社)
・『国際課税における税務調査対策Q&A』(2014年・清文社)
・『消費税[個別対応方式・一括比例配分方式]有利選択の実務』(2013年・清文社)
・『修正申告と更正の請求の対応と実務』(2013年・清文社)
・『税務調査の指摘事例からみる法人税・所得税・消費税の売上をめぐる税務』(2011年・清文社)
・『相続税調査であわてない「名義」財産の税務(第3版)』(2021年・中央経済社)
・『相続税調査であわてない不動産評価の税務』(2015年・中央経済社)
・『消費税の税務調査対策ケーススタディ』(2013年・中央経済社)
・『医療現場で知っておきたい税法の基礎知識』(2012年・税務経理協会)
・『事例でわかる病医院の税務・経営Q&A(第2版)』(2012年・税務経理協会)
・『Q&A 相続税の申告・調査・手続相談事例集』(2011年・税務経理協会)
・『ケーススタディ 中小企業のための海外取引の税務』(2020年・ぎょうせい)
・『消費税の税率構造と仕入税額控除』(2015年・白桃書房)

【ホームページ】
https://wasai-consultants.com

             

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