谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第52回】「事業所得と給与所得との区分に関する「判断の一応の基準」の意味」-弁護士顧問料事件・最判昭和56年4月24日民集35巻3号672頁-
今回は、弁護士の顧問料の給与所得該当性が争われたいわゆる弁護士顧問料事件に関する最判昭和56年4月24日民集35巻3号672頁(以下「本判決」という)において示された、事業所得と給与所得の区分に関する「判断の一応の基準」の意味について検討する。
「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例150(法人税)】 「親会社が「被支配会社でない法人」であるため「留保金課税」の適用がないにもかかわらず、これを適用して申告してしまった事例」
令和Z年3月期の法人税につき依頼者であるC社の創業者社長が全株式をB社へ譲渡したため、C社はB社の完全子会社となった。B社はA社の完全子会社であり、A社は「被支配会社でない法人」であることから、C社は「特定同族会社の特別税率」(以下「留保金課税」という)の適用がないにもかかわらず、これを適用して申告してしまった。これにより法人税等につき過大納付が発生し、賠償請求を受けたものである。
国家安全保障から見る令和7年度及び近年の税制改正-防衛特別法人税等の企業への影響- 【第6回】
法人税中間申告書を提出すべき法人は、原則として法人税中間申告書に係る課税事業年度開始の日以後6月を経過した日(6月経過日)から2月以内に、防衛特別法人税の中間申告書を提出する義務を有する(防衛財確法21①、防衛特別法人税に関する省令(以下「防衛特法省令」)2)。法人税中間申告書の提出義務がない法人(公益法人等、協同組合等、人格のない社団等、清算中の法人(通算子法人を除く))や、法人税中間申告書の提出義務がない事業年度(【図表1】参照)については、防衛特別法人税の中間申告書についても提出義務はない(防衛財確法21①)。
学会(学術団体)の税務Q&A 【第21回】「委員に対して日当(謝金)・旅費を支払う場合の税務上の留意点」
本学会では、テーマごとに各種委員会を設置し、委員に対して日当(謝金)・旅費を支払っていますが、その際の税務上の留意点について教えてください。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第80回】「非居住者期間の所得を合算課税することの可否が問題となった事例(地判平28.5.13、高判平29.5.25、最判平30.4.12)(その2)」
外国子会社合算税制に関するこれまでの判例は適用除外要件の充足に係るものが多く、特に正常な海外投資活動を阻害しないこととの関係で管理支配基準と業種判定をどう判断するかが問題になってきた。また、その多くは納税者が日本法人であるケースであり、納税者を個人とするケースは実務的にも少ない。ましてや居住者ステータスが課税年度の途中で変更するという事象は個人の場合でしか起こらないという特殊性が加わる(※1)。
日本の企業税制 【第143回】「各府省庁の令和8年度税制改正要望が公表」
今回の要望項目数は、単純合計で国税215項目、地方税212項目で、昨年がそれぞれ163項目、187項目であったことから、全体として項目が大きく増えている。重複排除ベースでは、国税146項目、地方税140項目であり、昨年はそれぞれ110項目、130項目であった。
自由民主党の総裁選が10月4日に行われる予定で、政治の不透明感が高まる状況にあるが、各府省庁ともに期限切れを迎える重要な租税特別措置項目を多く抱える中で重視する政策項目が並んでいる。
〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第75回】「法人課税信託に係る課税の適正化」
当社は、役員に対してインセンティブを与えるために、受益者を指定せずに信託財産として株式を信託し、後日、役員を受益者と指定して株式を交付することを検討しています。この場合の課税関係を教えてください。
国家安全保障から見る令和7年度及び近年の税制改正-防衛特別法人税等の企業への影響- 【第5回】
【第4回】は基準法人税額から課税標準法人税額の計算の過程について解説を行ったが、【第5回】では課税標準法人税額から納付税額の計算の過程を説明する。
防衛特別法人税の額は、各課税事業年度の課税標準法人税額に4%の税率を乗じて計算される(防衛財確法14①、15)。ただし、基準法人税額に留保税額が含まれている場合の課税標準法人税額は、加算前基準法人税額から基礎控除額を控除した金額である(防衛財確法14②)。
防衛特別法人税の納付税額の計算においては、法人税や地方法人税と同様に、外国税額控除、控除対象所得税額等相当額の控除、分配時調整外国税相当額の控除及び仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う減少法人税額(防衛特別法人税額)の控除の制度が適用される。なお、税額控除の順番も法人税や地方法人税における税額控除の適用がある場合と同様で、①分配時調整外国税相当額の控除、②控除対象所得税額等相当額の控除、③仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う防衛特別法人税額の控除、④外国税額の控除の順番とされる(防衛財確法20)。
相続税の実務問答 【第111回】「非課税特例の適用を受けた住宅取得等資金の相続税の課税価格への加算-令和6年以降に相続時精算課税を適用した場合」
私は、令和6年に67歳の父から、4,000万円の贈与を受け、いわゆる省エネ等住宅に該当する自宅の購入代金に充てました。今年の3月に、住宅取得資金贈与の特例を適用し、かつ、相続時精算課税を選択し、次のとおり贈与税額を計算して、贈与税の申告をしました。
この父が、今年の8月に、急逝してしまい、私は、父の預金などを相続することになりました。父からの生前贈与で、相続時精算課税を適用した財産の価額は、相続税の課税価格に加算しなければならないとのことですが、令和6年に父から贈与を受けた4,000万円は全額を相続税の課税価格に加算するのでしょうか。