連結納税適用法人のための平成28年度税制改正 【第8回】「移転価格文書化制度(その1)」
改正前の移転価格文書化制度は、租税特別措置法第22条の74に定められている独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(改正後のローカルファイルに相当する書類)を作成しない場合に、国税当局によって推定課税及び同業者調査が行われるという制度であったが、企業に文書化を義務付ける制度ではなかった。
しかし、改正後は、企業に上記3つの文書を作成することを義務化しており、その点で従来の移転価格文書化制度と大きく異なることとなる。
理由付記の不備をめぐる事例研究 【第17回】「青色申告承認取消処分の理由付記制度の概要等」
本連載の【第1回】で述べたとおり、これまでの議論や事例の蓄積状況及び法人の9割以上が青色申告を行っている現状などを踏まえ、第1回~前回まで、法人税の青色申告書に係る更正の理由付記(法人税法130条2項)の十分性が問題となった裁判例・裁決例を中心に検討を行ってきた。
もっとも、理由付記については、青色申告書に係る更正のみならず、青色申告の承認取消しに係るものについても議論や事例が蓄積している。この青色申告の承認取消しは、その取消事由の存在する事業年度にまで遡って行われるものである上、その取消しによって青色申告者のみに認められている繰越欠損金(法人税法57条)や特別税額控除・特別償却(租税特別措置法42条の4、42条の6など)の利用が認められないことになるなど、納税者に対する影響は決して小さいものではない。そこで、今回から第19回までは、青色申告承認の取消処分の通知書(法人税法127条4項)に係る理由付記の事例研究を行う。
裁判例・裁決例からみた非上場株式の評価 【第13回】「譲渡制限株式の譲渡③」
前回及び前々回は、譲渡制限株式の譲渡が経営権の移動に準じて取リ扱うことができる場合として、東京高裁平成20年4月4日決定、福岡高裁平成21年5月15日決定について解説を行った。
本稿では、大阪高裁平成元年3月28日決定、広島地裁平成21年4月22日決定について解説を行う。
税務判例を読むための税法の学び方【88】 〔第9章〕代表的な税務判例を読む(その16:「「退職所得」の意義③」(最判昭58.9.9))
前回の地裁の判断に引き続き、今回は控訴審(東京高裁昭和53年3月28日)の判断についてみていく。
これは裁判所ホームページにて判決が公開されているため、これを入手し、読んでいただきたい。そこには当事者の主張として付加された点も掲載されており、ここでは割愛するため、ぜひ見てもらいたい。
《速報解説》 会計士協会、「国境を越える電子商取引と消費税」に関する研究報告を公表~国際動向やインボイスにも言及~
平成28年7月25日付(ホームページ掲載日8月12日)で、日本公認会計士協会は、「国境を越える電子商取引と消費税について」(租税調査会研究報告第31号)を公表した。
これは、平成27年度税制改正で電気通信利用役務の提供に関する内外判定や課税方式等に関する消費税法の改正が行われたことから、その制度上の課題などについて検討を行ったものである。
《速報解説》 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の対象となる「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」の第一弾が公表~認定事業数は102、特徴的な事業例の紹介も
地方創生応援税制、いわゆる「企業版ふるさと納税」は、既報のとおり改正地域再生法の施行日である平成28年4月20日からスタートしている。
ただし、この税額控除の適用対象となるのは地方公共団体が国から認定を受けた「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」への寄附に限られており、施行日時点では認定を受けた事業が存在しなかったことから、その具体的検討ができない状況が続いていた。
monthly TAX views -No.43-「AI(人口知能)とBI(ベーシックインカム)」
AIの発達は、新たなビジネスチャンスを生み出すが、一方でわが国の経済・産業・就業構造に計り知れない影響を与える。
経済産業省の新産業構造部会の中間報告には、職業別の従業者数の変化が記されており、高度サービス業の充実による雇用者の増加の一方で、製造・調達で300万人弱、バックオフィスで143万人などの雇用の減少が予測されている。
筆者の興味は、このような変化が、どのような所得格差をもたらすかということである。
贈与税の配偶者控除に係る添附書類の見直しについて~贈与契約書の作成及び名義変更登記を行わない場合の留意事項~
平成28年度の税制改正において、贈与税の配偶者控除の適用を受ける場合の添附書類の1つである贈与を受けた者が取得した「居住用不動産に関する登記事項証明書」について、「その他の書類で当該贈与を受けた者が当該居住用不動産を取得したことを証するもの」が新たに追加された。
金融・投資商品の税務Q&A 【Q6】「円建利付債券の償還時に生じた償還差損の取扱い」
私(居住者たる個人)は日本法人発行の円建債券を保有していますが、日本法人の財務状況が悪化したことにより、債券が額面を下回る金額で償還されることとなりました。
この償還損はどのように取り扱われますか。
この社債は利付債であり、税務上の特定公社債に該当します。