〈事例から理解する〉税法上の不確定概念の具体的な判断基準 【第12回】「相続税法第32条第1項柱書の更正の請求期限における「事由が生じたことを知った日」とはいつか」
① 被相続人は平成23年8月4日に死亡し(相続人は被相続人の子3名)、相続税の法定申告期限までに相続財産の一部が未分割であったため、これを法定相続分の割合に従って取得したものとして相続税の期限内申告書を提出したところ、未分割財産に含まれる宅地について小規模宅地等の特例の適用を受けるため、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付した。
② 請求人の1人は、平成27年2月23日付で、他の請求人らを相手方として遺産分割調停(本件調停)を申し立てた。
③ 請求人らは、平成27年7月30日付で、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出し、原処分庁はこれを承認した。
④ 請求人らは平成27年10月29日付の遺産分割協議書を作成して、本件調停外で遺産分割(本件遺産分割)したため、請求人の1人は同年11月4日付で本件調停の申立てを取り下げた。
⑤ 請求人らは、平成28年3月4日、本件遺産分割を前提とし、未分割遺産だった宅地に小規模宅地等の特例を適用した上で課税価格を計算したところの更正の請求(本件各更正請求)をした。
⑥ 原処分庁は、本件各更正請求は相続税法第32条に規定する「当該事由が生じたことを知った日(平成27年10月29日)」の翌日から4ヶ月を経過する日(平成28年2月29日)よりも後にされており、期限を徒過したものであるとして、更正すべき理由がない旨の通知処分をした。
租税争訟レポート 【第70回】「還付金等請求事件~偽造された委任状に基づく還付金支払の効力(東京地方裁判所令和3年8月24日判決)」
原告は、大和税務署長に対して相続税の更正の請求を行い、これに対する更正がされたことにより過誤納金及び還付加算金合計1,058万5,275円に係る還付請求権を取得したところ、本件還付請求権の行使について、相続人の1人である被告Y1は、原告の同意を得ずに、原告名義の被告Y1宛ての本件還付金の受領に係る委任状を作成し、被告Y2税理士法人(以下、「被告税理士法人」という)を通じて大和税務署長に提出した結果、被告国は、本来原告に対して支払うべき本件還付金を被告Y1に支払った。
《速報解説》 国税庁、マンション評価の個別通達に係る計算ツールを公表~「居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書」のExcelファイルで自動計算~
既報の通り、令和6年からの分譲マンションの財産評価を定めた個別通達「居住用の区分所有財産の評価について」はパブコメを経て去る10月6日に公表、同月13日には本通達の趣旨についてまとめた「「居住用の区分所有財産の評価について」(法令解釈通達)の趣旨について(情報)」が公表され、一棟所有の賃貸マンションは適用除外とされること等が明らかとなっている。
〈令和5年分〉おさえておきたい年末調整のポイント 【第3回】「年末調整の実務Q&A」~離婚等による状況の変化に係る注意点など~
従業員Aの母Bは、令和5年2月にそれまで勤務していた会社を退職し、その後は無職である。AとBは生計を一にしており、Bの令和5年中の所得に関する資料は次のとおりである。
〔Bの所得に関する資料〕
給与収入:100万円
退職手当等:700万円(勤続年数15年、源泉徴収されている)
令和5年分の年末調整において、AはBを控除対象扶養親族とすることができるか。
〔令和5年度税制改正で見直しとなった〕空き家に係る譲渡所得の3,000 万円特別控除の特例のポイント
空き家に係る譲渡所得の3,000 万円特別控除の特例(措法35③、以下「空き家特例」という)は、令和5年度税制改正で次の①~③の見直しがあった。
〈もうすぐ適用開始〉令和6年1月から適用される加算税の加重措置 【第2回】「高額・連続の無申告に対する加重措置」
例年、前年12月に取りまとめられる税制改正大綱に先立ち、政府与党の税制調査会において議論及び意見集約が行われるところ、その議論の経緯を瞥見することで、是正又は新たに手当てすべき税制の青写真や問題意識を窺うことができる。
令和5年度税制改正の検討過程においては、令和4年11月8日に開催された政府税制調査会の納税環境整備に関する専門家会合において、下記のような問題提起がなされていた。
「圧縮記帳と税額控除との調整」に係る制度間の統一的な取扱いを定めた改正通達のポイント
本稿では、租税特別措置法等の税額控除制度の税額控除限度額等の計算の基礎となる取得価額に係る共通の取扱いとして改正された租税特別措置法関係通達の内容に関し、改正に至った背景や改正前後の取扱いについて解説する。
〔徹底解説〕大阪国税不服審判所令和4年8月19日裁決~事業の移転及び継続を必要としたTPR事件との相違~
本事件は、原処分庁が、納税者(請求人)の行った法人税等及び消費税等の各確定申告について、請求人が損金の額に算入した適格合併に係る被合併法人の未処理欠損金額(1,208百万円)は、当該合併等が「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの(法法132の2)」に該当することから、損金の額に算入しないものとして、法人税等及び消費税等の更正処分等を行ったのに対し、納税者が原処分の全部の取消しを求めた事件である。
暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第31回】
国税庁は、雑所得を①公的年金等に係る雑所得、②業務に係る雑所得、③その他雑所得(①・②以外の雑所得)に分けて、取扱いを整理している。
以下は、令和4年10月7日付課個2-21ほか2課共同「『所得税基本通達の制定について』の一部改正について」(法令解釈通達)による改正後の所得税基本通達35-1及び35-2の抜粋である。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第31回】「武田薬品工業事件-無形資産の形成による移転価格税制の影響-(大裁平25.3.18)(その3)」~租税特別措置法66条の4第1項、第2項~
医薬が満たすべき条件は大変な数に上り、製薬会社がテストした化合物のうち医薬品として世に出るのは、ごく僅かな数である。実際の医薬品の研究開発は、細胞レベル・動物レベルの実験などで有効性・毒性などを確認し、医薬の候補化合物を見つける「前臨床段階」と、その化合物を実際に人に投与して治療効果・安全性などを確認する「臨床段階」の2つの段階に大きく分かれる。そして、医薬品業界では伝統的に、前臨床段階を行う部署を「研究」、臨床試験を担当する部署を「開発」と呼び分けている。