組織再編税制における不確定概念 【第7回】「適格合併における繰越欠損金の利用①」
平成13年度税制改正により組織再編税制が導入され、適格合併に該当した場合には、繰越欠損金の引継制限が課されない限り、被合併法人の繰越欠損金を合併法人に引き継ぐことが可能になった。
そのため、繰越欠損金を引き継ぐために適格合併を行うということを検討する場面も多く、租税回避行為に該当するか否かが議論になることも少なくない。
そこで、第7回目と第8回目の2回に分けて、適格合併により繰越欠損金を引き継ぐ行為について、租税回避行為として認定されるか否かについて解説を行う。
法人税の解釈をめぐる論点整理 《寄附金》編 【第5回】
法人税法上、資本等取引によって損益は生じないとされ(法法22②③)、損益取引と区別されているが、資本等取引であっても現実に経済的利益の移転の効果が生じる場合があることから、何らかの形で寄附金税制が関係する場面があり得ると解される。
そこで、《寄附金》編の最終回となる今回は、資本等取引に関係する寄附金税制の適用につき、関連する課税上の問題と併せて整理・検討することとしたい。
税務判例を読むための税法の学び方【9】 〔第4章〕条文を読むためのコツ(その2)
この主文の主要素を見極める方法としては、以下のような方法がある
① 同一用語の併置に着目して整理する
② 並列的内容の事項の併置に着目して整理する
③ 選択的接続詞「又は」「若しくは」による段階構造の分析
④ 併合的接続詞「及び」「並びに」による段階構造の分析
⑤ 対句に着目して整理する
⑥ 関連した法令用語による文脈の把握
では、所得税法第10条を用いて、これらのいくつかを見ていこう。その前に、まず所得税法第10条(見出しは「障害者等の少額預金の利子所得等の非課税」となっている)の全文を見てみよう。
〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載17〕 会社分割によりデリバティブ契約を移転する場合の税務処理
当社(P社)は、分社型分割により完全子会社(S社)を新設したいと思っています。
S社に未決済のデリバティブ契約を移転する予定ですが、気を付けるべき点はありますか?
なお、移転するデリバティブ契約には繰延ヘッジ処理を適用していません。
「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例1(贈与税)】 「相続時精算課税を選択していれば贈与税がかからなかったところ、暦年課税を選択したため、贈与税の支払いが発生し、支払った贈与税について損害賠償請求を受けた事例」
平成21年分の贈与税につき、相続時精算課税の適用を受けることができる祖母からの土地の贈与につき、暦年課税により贈与税の申告を行った。ところが贈与から3年以内の平成23年に祖母が死亡したため、贈与を受けた土地を持ち戻して相続税の申告を行おうとしたが、相続人の見積りによれば、相続財産の合計額が基礎控除以下となったため、相続税は発生しなかった。
このため、依頼者より、平成21年分の土地の贈与に相続時精算課税を適用していれば、贈与税は支払わずに済んだとして、支払った暦年贈与税額につき賠償請求を受けたものである。
会社以外の法人の使用人兼務役員の可否
国税庁の質疑応答事例では、税理士法人の社員税理士に、内部規程で業務執行権限を持たせないこととしている場合でも、税理士法上は業務執行権限を有することを理由に、すべての社員税理士は使用人兼務役員に該当しないという内容のものがある。
最近は、税理士法人に限らず様々な士業法人の設立が相次ぐようになった。本稿では、会社以外の法人の役員が、使用人兼務役員に該当するか否かについて検討を加えていくこととする。
経理担当者のためのベーシック税務Q&A 【第1回】「営業活動と税金」―交際費の税務―
当社は資本金額1,000万円の内国法人(3月決算)です。当社は、営業部門の士気高揚を目的として、成績優秀な特定の従業員を対象とした慰労会を四半期毎に行っています。
この慰労会にかかる飲食費は1人当たり4,500円と5,000円以下なので、会計上は福利厚生費として処理しています。
この費用の税務上の取扱いを教えてください。
雇用促進税制・所得拡大促進税制の実務 ~要件・手続の確認から両制度の適用比較まで~ 【第2回】「雇用促進税制の適用手続」
雇用促進税制は、他の政策減税措置に比べ手続的な側面に留意すべき点が多く、この手続が適切に行われていないと、せっかく適用要件を満たしていても本税制の適用を受けることができないので十分に注意しなければならない。
そこで今回は、雇用促進税制の適用手続について解説を行う。
小説 『法人課税第三部門にて。』 【第6話】「修正申告の勧奨(その2)」
「そうか・・・」
田村上席調査官は、両手を頭の後ろに当て、椅子の背にもたれながら、山口調査官の話を聞いている。
「納税者は、重加算税について不満があるのかな?」
田村上席調査官は、山口調査官に尋ねる。
「交際費も棚卸資産も、納税者の誤りであることは明らかなので・・・」
山口調査官が納税者の申告書を見ながら言う。
「ところで、重加算税については、理由附記は大丈夫なのか?」
〔平成25年4月1日以後開始事業年度から適用〕 過大支払利子税制─企業戦略への影響と対策─ 【第8回】「これまでのポイントを踏まえた対策と留意点」
本制度は、平成25年4月1日以降開始する事業年度から適用されることとなる。
したがって、本邦内国資本系法人において一般的な3月末決算法人については、平成25年4月1日開始事業年度より既にその適用が開始されているが、外国資本系法人において一般的な12月末決算法人については平成26年1月1日開始事業年度より適用となり、その開始まで一定期間の猶予があるため、本制度の導入に伴う影響及びその対策を検討する期間が残されていることとなる。
ただし、本制度は所得金額に比して過大な支払利子について、その損金算入を制限しようとするものであるため、その対策は当該法人の「資本政策」に関わってくることとなり、長期的な視野に基づく考察・分析に基づく判断が必要とされるべきものであることから、一時的な納税額減額のために法人としてあるべき姿から離れた付け焼刃的な対策を取ることがないよう留意が必要であろう。
