平成26年1月から施行される「国外財産調書制度」の実務と留意点【第2回】
本制度創設の背景としては、
① 調査において、個人の国外財産に係る申告漏れが把握されるケースが増加していること
② 国外財産に関する情報を収集することは主権の行使が困難であるため、納税者に情報開示義務を負わせることにより、情報収集能力の弱点を補う必要があること
③ 最近の国際間の税務情報の交換体制の強化や、国内で実施している国外送金調書制度により、当局側ではフローの情報は得られるようになっているが、ストックの情報も必要であること
が挙げられるであろう。
法人の破産をめぐる税務 【その3】破産会社の債権者の税務(貸倒引当金及び貸倒損失)
前回までは破産会社特有の税務処理について解説した。
今回から2回にわたり、破産した会社(以下「破産会社」という)を取り巻く利害関係者(破産会社の債権者、役員、株主)の破産特有の税務処理について述べていく予定である。
まず、本稿では、破産会社の債権者に関する税務処理(法人税の取扱いに限り、組織再編及び連結納税制度に関連する事項を除く)を中心に解説する。
法人税の解釈をめぐる論点整理 《役員給与》編 【第6回】
法人が役員に対して支給する給与の額のうち、不相当に高額な部分(過大給与)については、損金算入が否定される。
給与の額が過大であるか否かについては、原則として、次の2つの基準によって判断されることになり、いずれか多い方の部分が損金不算入となる(法令70①一)。
〔平成9年4月改正の事例を踏まえた〕 消費税率の引上げに伴う実務上の注意点 【第10回】税率変更の問題点(9) 「短期前払費用の取扱い」
消費税の計算上、前払費用については、その役務の提供を受けていないことから、原則として、その支出した課税期間において仕入税額控除を行うことはできないが、一定の要件を満たした短期前払費用につき所得税法又は法人税法の規定により必要経費又は損金としている場合には、その支出した課税期間において仕入税額控除を行うことを認めている。
この短期前払費用の特例を適用している場合おいて、当該前払費用の支出した日が施行日前でその対象期間が施行日後にかかる場合に、どのように取り扱うかが問題となる。
租税争訟レポート【第5回】税理士の過失による損害賠償義務の範囲(税理士損害賠償請求事件第一審判決)
本件は、税理士である被告が、人材派遣業を営む株式会社である原告から委任を受けて、その税務申告を行ったところ、消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という)の額を誤って過少に申告し、原告が過少申告加算税や延滞税の納付を要することとなったとして、原告が、被告に対し、債務不履行に基づく損害賠償を請求した事案である。
〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載6〕 管理部門を分割した場合における事業性
当社は、同業他社と協力し管理部門をアウトソーシング化することを考えています。
そこで、同業他社と共同でアウトソーシング会社(A社)を設立し、当社からは経理部門を分社型分割によりA社へ移転させることを計画しています。
しかし、当社とA社は60%の資本関係となるため、本件分割が適格要件を満たすためには「事業継続要件」などを満たす必要があります。
この事業継続要件などでは、事業が移転することが前提となりますが、当社のように経理部門を分割するケースでも、「経理事業という事業が移転している」と考えることができるのでしょうか?
《速報解説》 研究開発税制の拡充について─平成25年度税制改正大綱─
近年、研究開発拠点の海外移転が進み、国内の研究開発投資の減少、国際競争力の低下が懸念されてきた。
研究開発投資の促進は、民間投資の喚起による成長力強化の一環として、イノベーションによる新たな付加価値の創造を通じて需要を喚起するとともに、将来の経済成長の礎になる極めて重要な事項であることから、平成25年度税制改正において、研究開発税制の総額型の控除限度額を引き上げるとともに、オープンイノベーションを推進するため、特別試験研究費の範囲に一定の共同研究が追加されることとなった。
《速報解説》 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置について─平成25年度税制改正大綱─
本制度は、祖父母世代から孫世代への世代間における資産移転を促進させ、将来必要となる子供の教育資金の早期確保を図る目的で創設される予定である。
その背景には、およそ1,500兆円といわれている我が国の個人金融資産の多くが60歳以上の高齢者層に偏っているという現状と、一方で、消費の多いといわれる30代、40代の子育て世代が、消費を抑え将来の子供の養育費のために貯蓄にまわしている傾向が見られる点にある。
《速報解説》 小規模宅地等の課税特例の拡充について─平成25年度税制改正大綱─
平成25年1月24日に、与党から平成25年度税制改正大綱が公表された。
本稿では、平成25年度税制改正大綱に含まれる相続税関連の改正事項のうち、「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」(租税特別措置法69条の4)に係る改正について、その内容を概観し、改正の影響を検討していく。