谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第25回】「事実認定による否認論をめぐる判例の動向」-「租税法上の一般原則としての平等原則」は事実認定による否認論を正当化することができるか-
前回は、租税回避の否認に関して租税法律主義の下で否認規定必要説が確立されてきたとの理解を述べたが、その際に、否認規定必要説の確立において重要な役割を果たしたものと解される土地相互売買[岩瀬]事件・東京高判平成11年6月21日訟月47巻1号184頁が、後に最高裁が私法上の法律構成による否認論を含め広く事実認定による否認論に対して慎重ないし否定的な態度をとることに道筋を示したとの理解も述べたところである(Ⅲ2参照)。
「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例121(相続税)】 「被相続人の特定居住用宅地等に該当するにもかかわらず、建物所有者が実母であり、別居中の配偶者が取得したため、「小規模宅地等の特例」は適用できないものと誤認し、適用を受けずに申告してしまった事例」
被相続人甲の相続税の申告につき、特定居住用宅地等に該当するにもかかわらず、建物所有者が実母であり、別居中の配偶者が取得したため、「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」(以下「小規模宅地等の特例」という)は適用できないものと誤認し、不利な貸付事業用宅地等にのみ「小規模宅地等の特例」を適用して申告してしまった。これにより、有利な特定居住用宅地等につき「小規模宅地等の特例」の適用が受けられなくなってしまい、過大納付となった相続税額につき損害が発生し、賠償請求を受けた。
固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第26回】「家屋の相続税評価額を固定資産税評価額に1.0を乗じて算定することは違法ではないとされた事例」
家屋の相続税評価額として財産評価基本通達第3章89には、「家屋の価額は、その家屋の固定資産税評価額(地方税法第381条《固定資産課税台帳の登録事項》の規定により家屋課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に登録された基準年度の価格又は比準価格をいう。以下この章において同じ。)に別表1に定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する。」と定められており、別表1において家屋の固定資産税評価額に乗ずる倍率は1.0と定められている。つまり、家屋の相続税評価額=固定資産税評価額ともいえる。
暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第16回】
経済的価値のあるNFTが贈与税や相続税の対象になることは当然であるとしても、NFTの評価方法について、実務家は頭を悩ませていた。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第15回】「TDK事件(審裁平22.1.27)(その2)」~租税特別措置法66条の4第2項1号二・2号ロ、租税特別措置法施行令39条の12第8項1号、租税特別措置法通達66の4(4)-5(現行66の4(5)-4)~
本件に関して今後の利益分割法の適用を検討する上で参照意義があると思われる各争点について、審判所判断をもとに検討する。
日本の企業税制 【第114回】「グローバル・ミニマム課税の税効果会計上の取扱いが明らかに」
2021年10月にOECD/G20の「BEPS包摂的枠組み」において合意されたグローバル・ミニマム課税のルールのうち、所得合算ルール(Income Inclusion Rule:IIR)に係る法制化として、本年3月末に公布された所得税法等の一部を改正する法律において、「各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税」の創設が行われた。併せて、各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税に係る地方法人税として、「特定基準法人税額に対する地方法人税」も創設された(概要は本連載【第112回】参照)。
〈判例評釈〉ムゲン・ADW事件が残したもの~最高裁の判示は、納税者の納得が得られるものか~ 【第1回】
去る3月6日、2つの居住用賃貸建物仕入税額控除事件について、最高裁が、いずれも納税者全面敗訴の判断を示したことで、新聞報道でも大きく取り上げられ、専門家の間でも判断が分かれていた問題に終止符が打たれた。
ここでいう2つの事件とはマンション販売業者である(株)ムゲンエステート(以下「ムゲン」という)及び(株)エー・ディー・ワークス(以下「ADW」という)の消費税の仕入税額控除における個別対応方式を巡る訴訟(※1)をいい、両社は、中古の賃貸用マンション等の収益不動産を購入し、適正な賃料で貸し付けて空室を可能な限り減らした上で転売するというビジネスモデルを展開していた(※2)。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第14回】「TDK事件(審裁平22.1.27)(その1)」~租税特別措置法66条の4第2項1号二・2号ロ、租税特別措置法施行令39条の12第8項1号、租税特別措置法通達66の4(4)-5(現行66の4(5)-4)~
①請求人がA社及びB社に対して最終製品製造用の部品である棚卸資産を販売した国外関連取引、②A社及びB社が当該棚卸資産を用いて製造した棚卸資産(最終製品)を請求人が購入した国外関連取引、並びに③請求人がA社との間で締結した無形資産供与を主眼とする技術移転契約に係る国外関連取引に関して、東京国税局(以下、「原処分庁」という)はこれら国外関連取引の全てを対象とした残余利益分割法を適用し、独立企業間価格を算定し更正処分を行った。これに対して請求人は、国税不服審判所に審査請求を行った。
相続税の実務問答 【第82回】「令和5年までに行われた贈与(暦年課税)の相続税の課税価格への加算」
私の父は93歳になりました。父が亡くなったときの相続税の負担を少しでも軽くしたいとの思いで、令和元年から毎年、私の誕生日である11月1日に、父から現金を贈与してもらい、贈与税の申告・納税をしています。申告に当たっては、相続時精算課税の選択はしていません。
令和5年にも、父から現金300万円の贈与を受け、贈与税の申告・納税をするつもりです。令和5年分の贈与についても相続時精算課税を選択するつもりはありません。
ところで、令和5年の税制改正により、暦年贈与の贈与者が亡くなった場合の相続税の課税価格に加算される贈与が、「相続開始前3年以内」のものから、「相続開始前7年以内」のものに改正されたことを新聞記事で知りました。そうしますと、仮に今年父が亡くなった場合には、令和元年から行われてきた父からの贈与の全てが相続税の課税価格に加算されることとなってしまうのでしょうか。
〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第48回】「株式報酬制度に関する役員と従業員の相違点」
当社は、役員を対象として株式報酬制度を導入しています。この株式報酬制度が役員のモチベーションを高めたことにより、業績の向上につながりました。そこで、株式報酬制度の対象を執行役員やその他幹部従業員にも拡大し、同様の成果を期待するとともに、優秀な人材の確保や離脱防止につなげたいと考えています。
ここで、役員を対象とした株式報酬制度には役員であること特有の留意点があると認識していますが、執行役員やその他幹部従業員に対して株式報酬制度を導入する場合に知っておくべきことはありますか。