〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第16回】「ガーンジー島法人所得税の「外国法人税」該当性(地判平18.9.5、高判平19.10.25、最判平21.12.3)(その1)」~法人税法69条1項、法人税法施行令141条1項、2項、3項~
本件は、英国王領チャネル諸島ガーンジー(ガーンジー島)に本店を有し、再保険を業とする法人であるB(Ark Re Ltd. 以下「B社」という)の発行済株式の全てを保有している原告X(損保ジャパン)に対し、所轄税務署長Yが、B社の負担するガーンジー島の法人所得税は法人税法69条1項に規定する「外国法人税」に当たらないため、B社は租税特別措置法(以下「措置法」という)66条の6第1項(タックス・ヘイブン対策税制)所定の特定外国子会社等に該当するとして、同項に規定する課税対象留保金額に相当する金額をXの所得の金額の計算上、益金の額に算入して本件各事業年度の更正処分等をしたことから、これを不服としたXが、その処分等の取消しを求めた事案である。
酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第119回】「節税商品取引を巡る法律問題(その13)」
国民の暮らしに密接に関係する国の施策を進めていくためには、国民の理解・協力が欠かせないことから、政府は広報活動に力を入れている。政府広報は、国の施策について国民に理解してもらうための活動として位置付けられる。
谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第14回】「国税通則法23条(3)」-後発的理由の意義と範囲-
国税通則法が23条2項で特別の更正の請求を定めた趣旨は、前々回1でみたように、「期限内に[減額更正を請求する]権利が主張できなかつたことについて正当な事由があると認められる場合の納税者の立場を保護するため、後発的な事由により期限の特例が認められる場合を[個別税法で規定されていた場合よりも]拡張し、課税要件事実について、申告の基礎となつたものと異なる判決があつた場合その他これらに類する場合を追加する」(税制調査会「税制簡素化についての第三次答申」(昭和43年7月)54頁)ことにあった。
〈判例評釈〉ムゲン・ADW事件が残したもの~最高裁の判示は、納税者の納得が得られるものか~ 【第2回】
前回のⅠのとおり、ADW事件第一審では、争点①の課税対応課税仕入れの是非について、他の判決とは異なる判断基準が示された。以下では、時間の針を戻して、第一審が示した考え方と最高裁で最終的に確定した考え方を比較検討する。
〈徹底分析〉租税回避事案の最新傾向 【第8回】「一部の事業の譲渡」
平成29年度税制改正により、分割型分割における税制適格要件の判定方法が変わり、完全支配関係内の分割型分割に該当するためには、支配株主が分割承継法人の発行済株式又は出資の全部を直接又は間接に継続して保有することが見込まれていればよく、支配株主が分割法人の発行済株式又は出資の全部を直接又は間接に継続して保有することが見込まれていることまでは要求されないことになった(法令4の3⑥二イ、ハ(1))。
〔疑問点を紐解く〕インボイス制度Q&A 【第26回】「令和5年・令和6年の2割特例の適用関係」
個人事業者です。令和5年10月1日より適格請求書発行事業者となるよう、登録を済ませました。
消費税の申告について小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)があるそうですが、令和5年・令和6年の適用関係を教えてください。
暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第17回】
(問)給与所得者(日本で事業等の業務を行っておらず、給与の支払もしていない個人)である私は、マーケットプレイスを通じて、デジタルアート(著作物)の制作者から、デジタルアートが紐づけられたNFTを購入し、その購入代価を支払いました。
〈事例から理解する〉税法上の不確定概念の具体的な判断基準 【第5回】「「更正の請求」を限定的に解すべき理由」
① 国税通則法(通則法)第23条第1項は、納税申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより納付すべき税額が過大である場合に、法定申告期限から1年(なお、平成23年12月法律第114号による改正により、5年とされた。)以内に限って、更正の請求をすることができるとしているが、その趣旨は、申告納税制度の下において、課税関係の早期安定と税務行政の効率的運用等の要請を満たす一方で、納税者の権利利益の救済を図るため、一定の事由及び期間に限って更正の請求を認めることとしたものと解される。
さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第86回】「信託財産と滞納処分事件」~最判平成28年3月29日(集民252号109頁)~
X₂は、平成18年6月、所有する本件土地を、X₁社に信託譲渡した。さらに、X₁社は、同年7月、本件土地上に存在していた本件建物をAから買い受け、本件土地・本件建物をBに賃貸した(本件賃貸借契約)。
その後、X₁社が、本件土地・本件建物、その他のX₁社所有土地に係る各固定資産税を数年にわたって滞納したため、Y市の市長は、平成24年1月、本件賃貸借契約に基づくX₁社のBに対する賃料債権の差押えをした(本件差押え)。なお、本件賃貸借契約においては、賃料につき、本件土地の賃料相当額部分と本件建物の賃料相当額部分の内訳は定められていなかった。
X₁社・X₂は、本件差押えの取消しを求めてY市を提訴したが、最高裁はX₁社・X₂の主張を認めなかった。
谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第25回】「事実認定による否認論をめぐる判例の動向」-「租税法上の一般原則としての平等原則」は事実認定による否認論を正当化することができるか-
前回は、租税回避の否認に関して租税法律主義の下で否認規定必要説が確立されてきたとの理解を述べたが、その際に、否認規定必要説の確立において重要な役割を果たしたものと解される土地相互売買[岩瀬]事件・東京高判平成11年6月21日訟月47巻1号184頁が、後に最高裁が私法上の法律構成による否認論を含め広く事実認定による否認論に対して慎重ないし否定的な態度をとることに道筋を示したとの理解も述べたところである(Ⅲ2参照)。