税務判例を読むための税法の学び方【58】 〔第7章〕判例の探し方(その5)
家事事件・少年事件に関する裁判(審判)のほか、評釈(論説・研究)等も掲載されている。最高裁判所、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所の裁判のうち、最高裁判所事務総局家庭局が、参考となると思われるものを選択して掲載している。
これも編集元である最高裁判所事務総局による発行のものの他、法曹会の発行によるものがある。昭和24年から26年までは、正式には巻数は付されていず(また1号のみ名称も『家庭裁判所月報』である)、昭和27年より正式に第4巻と巻数が付された。現在も継続して発行されている。
酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第28回】「「海洋掘削装置」は所得税法上の「船舶」に当たるか?(その1)」~同一税法内部における同一用語の解釈~
前回までは、異なる租税法で用いられている同一の用語をいかに解釈すべきかという問題を取り上げた。
具体的には、消費税法上の「事業」概念と所得税法上の「事業」概念について、これを同義のものとして理解すべきかどうかという問題を検討したが、そこでは、法の趣旨に従った解釈が展開される余地があることを論じたところである。
そこで、今回からは、同じ租税法の中で用いられている同一の用語はどのように解するべきかという問題について検討することとする。具体的には、ここでは、所得税法161条3号にいう「船舶」の意義を巡って争われた東京地裁平成25年9月6日判決を素材として、この問題を考えてみたい。
マイナンバー制度と税務手続 【第1回】「マイナンバー制度の理解」
マイナンバーは、導入当初は社会保障・税・災害対策分野に係る行政機関等の事務のための利用に限定されているが、マイナンバー制度においては、民間事業者が番号収集・保管という非常に重要な役割を担わなくてはならないものの、未だに特別な対策を立てていないという事業者も多い。
特に、特定個人情報(※1)の適正な取扱いに関するガイドライン(以下「ガイドライン」という)では、特定個人情報の安全管理措置が義務づけられており、事業規模による対策のボリュームの差はあっても、すべての事業者が対応を行わなければならない。
〈Q&A〉印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第3回】「変更契約書を作成した場合の記載金額等」
【問】当社は建築工事を行う法人です。発注者との間で、工事請負契約を締結し、「建築工事請負契約書」を作成しましたが、仕様変更等が発生し、契約金額が変更になりました。
その際に、変更契約書を交わそうと思いますが、変更契約書の記載金額の取扱いはどのようになるのでしょうか。
法人税に係る帰属主義及びAOAの導入と実務への影響 【第11回】「内国法人の法人税②」
国外事業所得等帰属所得は独立して事業を行う事業者と擬制するので、収益認識の時期も独立の事業者であるとした場合に所得を認識すべき時期となる。例えば、支店から本店に商品の販売を行った場合は、内国法人全体として収益が実現していない場合でも、支店の収益を認識することとなる。
貸倒損失における税務上の取扱い 【第40回】「法人税基本通達改正の歴史⑨」
平成4年度において、「認定による債権償却特別勘定の設定に関する運用上の留意点について(平成4年9月18日課法2-4、査調4-4)」が公表された。このころからバブル崩壊による影響が出始めており、金融システム全体の安定性が脅かされる危険性が出てきたため、官民ともにあらゆる対応をし始めてきている。
本稿においては、平成4年度に公表された同個別通達についての解説を行う。
monthly TAX views -No.27-「欧州諸国で実感した『消費税 軽減税率』をめぐる課題」
昨年4月、英国・フランス・ドイツの3ヶ国を巡り、消費税軽減税率の実施状況を見聞するとともに、税制当局や事業者、経理担当者などと面談する機会を持った。
今回は、その際見聞きした出来事を書いてみたい。
まず英国であるが、日本でも広く知られているのは、マクドナルドのハンバーガーの「テイクアウト」と「イートイン」の話だ。
「テイクアウトすると食料品扱いでゼロ税率、イートインすると標準税率(20%)。「皆が『テイクアウト』と言って買って、その場で食べている」という話は、多くの日本人が知っている。
しかし、この話はもう古い。
租税争訟レポート 【第22回】「的中馬券に対する課税(最高裁判決)」
被告人の元会社員は、3年間で28億7,000万円分の馬券を購入し、30億円余りの的中配当を得たが、競馬の払戻金を一切申告せず、約5億7,000万円を脱税したとして、所得税法違反の罪で大阪地検に告発され、起訴された。第1審の大阪地方裁判所は、被告人の勝ち馬投票券の払戻しによる所得は雑所得であると認定し、外れ馬券の購入費用等を必要経費として認めて、所得税額を約5,200万円と認定し、執行猶予付きの判決を言い渡した。
これを不服とする検察は控訴したが、控訴が棄却されたことから、上告受理申立てを行ったものである。