公開日: 2023/05/11 (掲載号:No.518)
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〈事例から理解する〉税法上の不確定概念の具体的な判断基準 【第5回】「「更正の請求」を限定的に解すべき理由」

筆者: 大橋 誠一

〈事例から理解する〉

税法上不確定概念具体的判断基準

【第5回】

「「更正の請求」を限定的に解すべき理由」

 

公認会計士・税理士 大橋 誠一

 

1 「更正の請求」の事由及び期間に係る法令解釈

(1) 大阪国税不服審判所平成27年2月9日裁決

 国税通則法(通則法)第23条第1項は、納税申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより納付すべき税額が過大である場合に、法定申告期限から1年(なお、平成23年12月法律第114号による改正により、5年とされた。)以内に限って、更正の請求をすることができるとしているが、その趣旨は、申告納税制度の下において、課税関係の早期安定と税務行政の効率的運用等の要請を満たす一方で、納税者の権利利益の救済を図るため、一定の事由及び期間に限って更正の請求を認めることとしたものと解される。

 通則法第23条第2項は、同項各号に掲げる事由が生じた場合には、法定申告期限から1年(同上)を経過した後においても、同項各号に定める期間において、更正の請求をすることができる旨規定している。この更正の請求は、納税申告時等には納税者において予知し得なかった事態その他やむを得ない事由が後発的に生じ、これによって課税標準等又は税額等の計算の基礎に変更が生じたため、本来であれば遡って税額の減額をすべき場合、納税者の側からする更正の請求を認めないとすると帰責事由のない納税者に酷な結果が生じる場合等があると考えられるため、このような一定の場合には、後発的事由が生じた日の翌日から同条第2項各号に規定する後発的事由ごとに定める期間に限り更正の請求をすることができることとしたものであり、租税債務の可及的速やかな確定という国家財政上の要請を犠牲にしてもなお、帰責事由のない納税者に酷な結果とならないよう例外的に更正の請求を認めて納税者の保護を拡充する趣旨と解される。

 以上のような通則法第23条第1項及び第2項の規定の趣旨に鑑みると、同条第1項及び第2項に規定する更正の請求ができる事由及び期間は、同条第1項各号及び第2項各号に規定する事由及び期間に限定されるものと解される。このうち、後発的事由を列挙した同条第2項各号及びこれを受けた国税通則法施行令第6条第1項各号の各規定についても、その文言どおりに解されるべきであり、安易にその準用ないし類推適用を行うことは許されないと解するのが相当である。

(下線筆者、以降同様)

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税法上不確定概念具体的判断基準

【第5回】

「「更正の請求」を限定的に解すべき理由」

 

公認会計士・税理士 大橋 誠一

 

1 「更正の請求」の事由及び期間に係る法令解釈

(1) 大阪国税不服審判所平成27年2月9日裁決

 国税通則法(通則法)第23条第1項は、納税申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより納付すべき税額が過大である場合に、法定申告期限から1年(なお、平成23年12月法律第114号による改正により、5年とされた。)以内に限って、更正の請求をすることができるとしているが、その趣旨は、申告納税制度の下において、課税関係の早期安定と税務行政の効率的運用等の要請を満たす一方で、納税者の権利利益の救済を図るため、一定の事由及び期間に限って更正の請求を認めることとしたものと解される。

 通則法第23条第2項は、同項各号に掲げる事由が生じた場合には、法定申告期限から1年(同上)を経過した後においても、同項各号に定める期間において、更正の請求をすることができる旨規定している。この更正の請求は、納税申告時等には納税者において予知し得なかった事態その他やむを得ない事由が後発的に生じ、これによって課税標準等又は税額等の計算の基礎に変更が生じたため、本来であれば遡って税額の減額をすべき場合、納税者の側からする更正の請求を認めないとすると帰責事由のない納税者に酷な結果が生じる場合等があると考えられるため、このような一定の場合には、後発的事由が生じた日の翌日から同条第2項各号に規定する後発的事由ごとに定める期間に限り更正の請求をすることができることとしたものであり、租税債務の可及的速やかな確定という国家財政上の要請を犠牲にしてもなお、帰責事由のない納税者に酷な結果とならないよう例外的に更正の請求を認めて納税者の保護を拡充する趣旨と解される。

 以上のような通則法第23条第1項及び第2項の規定の趣旨に鑑みると、同条第1項及び第2項に規定する更正の請求ができる事由及び期間は、同条第1項各号及び第2項各号に規定する事由及び期間に限定されるものと解される。このうち、後発的事由を列挙した同条第2項各号及びこれを受けた国税通則法施行令第6条第1項各号の各規定についても、その文言どおりに解されるべきであり、安易にその準用ないし類推適用を行うことは許されないと解するのが相当である。

(下線筆者、以降同様)

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連載目次

〈事例から理解する〉
税法上不確定概念具体的判断基準

【参考記事】
「〔顧問先を税務トラブルから救う〕不服申立ての実務」(全20回)

筆者紹介

大橋 誠一

(おおはし・せいいち)

公認会計士(平成16年第二次試験合格)・税理士(平成7年5科目合格)。

有限責任監査法人トーマツ・デロイトトーマツ税理士法人を経て、平成26年から大阪国税不服審判所国税審判官として相続税等の審査請求事件の調査・審理に従事。
退官後、相続税専門の税理士法人チェスター審査部部長を経て、現在は不服申立代理人業務・相続税を中心とした審理業務(提出前の相続税申告書の審査件数は年間300件を超える)、弁護士等と協働した相続対策業務、執筆業務等に従事している。

【著書】
相続専門税理士法人が実践する 相続税申告書最終チェックの視点』(共著 清文社)
 

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