~税務争訟における判断の分水嶺~
課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から
【第18回】
「従業員等の横領行為に係る損害賠償請求権の益金計上時期が争われた事例」
税理士 佐藤 善恵
本連載の趣旨
課税庁の審理室や訟務官室が作成した「判決情報」や「判決速報」は、課税庁が、現場の調査担当者に向けて事例を紹介するための内部文書です。これらで取り上げられる事例には、あまり知られていない判決等も含まれていますが、どれもが税務調査の現場にフィードバックが必要と考えられているという点において重要な事例といえます。
本連載は、課税庁が調査担当者に向けて発信している判決等の要旨をご紹介するとともに、その判断の分水嶺がどこにあったかを検討し、さらに、実務上の留意点や裁判所の考え方を示唆しようとするものです。
なお、「判決情報」等は、TAINSデータベース(※)から取り出すことができますので、毎回、末尾にTAINSコードを記載いたします。
(※) 一般社団法人日税連税法データベースが運営する税務関連情報データベース
◆平成21年2月18日東京高裁(納税者敗訴確定)
◆平成21年7月10日最高最第二小(いわゆる「日本美装事件」)
(※) ( )内の青色文字は、略称設定であり、以下その略称を使用する。
〔概要等〕
資本金5,000万円の同族会社であるX社は、その経理部長(甲)の外注費の水増し計上等によって金員が詐取されていた(本件詐取行為)。そのため、X社の平成12年10月1日から平成13年9月30日までの事業年度及び平成14年10月1日から平成15年9月30日までの事業年度(これらの2事業年度を併せて「本件各事業年度」)に架空外注費も含めた金額が外注費として計上されていた。原処分庁は、税務調査において本件詐取行為を把握し、架空外注費の損金算入を否認する内容の法人税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分を行った(平成16年10月19日付)(なお、処分理由は、損害賠償請求権を損害発生時に益金計上すべきというものではない点に留意が必要である)。
X社の主張は、架空外注費計上による損害額は本件詐取行為のあった各事業年度の損金に算入される一方で、甲に対する損害賠償請求権は、同事業年度の益金には算入されないというものである。
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