~税務争訟における判断の分水嶺~
課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から
【第6回】
「契約書の記載内容と異なる合意が
当事者間で成立していたとされた事例」
税理士 佐藤 善恵
本連載の趣旨
課税庁の審理室や訟務官室が作成した「判決情報」や「判決速報」は、課税庁が、現場の調査担当者に向けて事例を紹介するための内部文書です。これらで取り上げられる事例には、あまり知られていない判決等も含まれていますが、どれもが税務調査の現場にフィードバックが必要と考えられているという点において重要な事例といえます。
本連載は、課税庁が調査担当者に向けて発信している判決等の要旨をご紹介するとともに、その判断の分水嶺がどこにあったかを検討し、さらに、実務上の留意点や裁判所の考え方を示唆しようとするものです。
なお、「判決情報」等は、TAINSデータベース(※)から取り出すことができますので、毎回、末尾にTAINSコードを記載いたします。
(※) 一般社団法人日税連税法データベースが運営する税務関連情報データベース
◆平成24年12月13日東京地方裁判所[認容](確定)
(※) ( )内の青色文字は、略称設定であり、以下その略称を使用する。
〔概要等〕
納税者は、A社との間で中古賃貸マンションを購入する旨の売買契約を締結した。
当該マンションは、12階建であるが、1階部分は第三者が区分所有し、残る部分をA社が区分所有していた。利用状況は、2階及び3階はA社事務所、4階以上は共同住宅38戸として使用される等していた。なお、売買対象となった区分所有部分の土地建物を併せて「本件不動産」という。
納税者は、本件賃料等については清算せず売主(A社)に帰属させる旨の合意があったことを前提とし、それを不動産所得の総収入金額に含めずに平成19年分の所得税及び消費税等の確定申告をした。
これに対して課税庁は、本件賃料等は納税者に帰属するとして平成19年分の所得税の更正処分をした。さらに、消費税に関して、本件賃料等を資産の譲渡等の対価の額に算入すると課税売上割合が95%未満になるとして、更正処分を行った。
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