~税務争訟における判断の分水嶺~
課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から
【第7回】
「事業に必要な海外旅行であったとの納税者の主張が認められず
旅行費用は「給与等」に当たるとされた事例」
税理士 佐藤 善恵
本連載の趣旨
課税庁の審理室や訟務官室が作成した「判決情報」や「判決速報」は、課税庁が、現場の調査担当者に向けて事例を紹介するための内部文書です。これらで取り上げられる事例には、あまり知られていない判決等も含まれていますが、どれもが税務調査の現場にフィードバックが必要と考えられているという点において重要な事例といえます。
本連載は、課税庁が調査担当者に向けて発信している判決等の要旨をご紹介するとともに、その判断の分水嶺がどこにあったかを検討し、さらに、実務上の留意点や裁判所の考え方を示唆しようとするものです。
なお、「判決情報」等は、TAINSデータベース(※)から取り出すことができますので、毎回、末尾にTAINSコードを記載いたします。
(※) 一般社団法人日税連税法データベースが運営する税務関連情報データベース
◆平成24年12月25日東京地方裁判所〔棄却・控訴〕
◆平成25年5月30日東京高等裁判所[控訴棄却]
◆平成25年11月8日最高裁判所〔棄却、不受理〕
(※) ( )内の青色文字は、略称設定であり、以下その略称を使用する。
〔概要等〕
土木建築工事の請負業を営む法人(甲社)は、自社及び外注先の従業員31名を2泊3日のマカオ旅行(本件旅行)に参加させて、その費用総額800万円を損金に算入した。これに対して課税庁は、本件旅行の甲社従業員分は、所得税法28条1項の「給与等」に当たるから甲社には源泉徴収義務があるとして、源泉所得税に係る納付告知及び不納付加算税の賦課決定処分を行った。
争点は、本件旅行の甲社従業員分の負担額が所得税法28条1項の「給与等」の支払に該当するか否かである。
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