~税務争訟における判断の分水嶺~
課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から
【第20回】
「非上場株式の譲渡が低額譲渡に当たるかについては、譲渡直前における譲渡人にとっての価値により評価するのが相当であると判断した事例」
税理士 佐藤 善恵
本連載の趣旨
課税庁の審理室や訟務官室が作成した「判決情報」や「判決速報」は、課税庁が、現場の調査担当者に向けて事例を紹介するための内部文書です。これらで取り上げられる事例には、あまり知られていない判決等も含まれていますが、どれもが税務調査の現場にフィードバックが必要と考えられているという点において重要な事例といえます。
本連載は、課税庁が調査担当者に向けて発信している判決等の要旨をご紹介するとともに、その判断の分水嶺がどこにあったかを検討し、さらに、実務上の留意点や裁判所の考え方を示唆しようとするものです。
なお、「判決情報」等は、TAINSデータベース(※)から取り出すことができますので、毎回、末尾にTAINSコードを記載いたします。
(※) 一般社団法人日税連税法データベースが運営する税務関連情報データベース
◆平成29年8月30日東京地裁[却下・棄却](控訴),TAINSコード:Z888-2119
〔概要等〕
A社の代表取締役であった甲は、自ら所有していたA社株式をB社に譲渡した(以下、これを「本件譲渡」という)。甲は、本件譲渡について、配当還元方式による評価額(1株当たり75円)を基に算定した金額を譲渡対価としたが、課税庁は、その株式の価額を所得税基本通達59-6(1)に基づき、譲渡直前の議決権割合を基準にして類似業種比準価額による評価額(1株あたり2,505円)であると認定した。そして、それをもとに低額譲渡(所法59①二)に当たるとして所得税の更正処分が行われた。
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