公開日: 2023/08/31 (掲載号:No.533)
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固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第29回】「建物の取壊費用等が不動産所得の必要経費ではなく、土地の取得費に算入されるべきとされた事例」

筆者: 菅野 真美

固定資産をめぐる判例・裁決例概説

【第29回】

「建物の取壊費用等が不動産所得の必要経費ではなく、
土地の取得費に算入されるべきとされた事例」

 

税理士 菅野 真美

 

▷建物の取壊費用の取扱い

所得税法において、建物を取り壊した場合の建物の取得費と取壊費用の取扱いは4つに分かれる。すなわち、不動産所得等の必要経費になる場合、土地の取得費となる場合、譲渡費用となる場合、家事費となる場合である。

不動産所得の必要経費に算入するものとして、不動産所得を生ずべき事業の用に供される固定資産について、取壊し、除却、滅失等により生じた損失がある(所法51①)。必要経費は、「事業活動と直接関連を持ち、事業の遂行上必要な費用でなければならない」(※1)と考えられているから取壊費用を必要経費化するためには、その固定資産が事業の用に供されていることが必要である。

(※1) 金子宏『租税法(第24版)』(弘文堂、2021年)321頁

取壊費用等が、土地の取得費になるものとして、その取得後おおむね1年以内に当該建物等の取壊しに着手するなど、その取得が当初からその建物等を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められる場合とされている(所基通38-1)。通達で1年以内と定められているが、「初めは建物を事業に使用する目的で取得したが、その後やむを得ない理由が生じたことにより、その使用をあきらめなければならないような場合には、その取得後おおむね1年以内にその建物を取り壊したときであっても、その建物の帳簿価額と取壊費用の合計額は、土地の取得価額に含めないで、取り壊したときの損金の額に算入することができます。」(※2)と税目は法人税であるが、タックスアンサーにおいて回答されている。

(※2) 国税庁タックスアンサー「No.5401 土地とともに取得した建物を取り壊した場合の土地の取得価額

不動産所得の必要経費になるか、土地の取得費になるかによって納税コストも大きく変わる場合もあり、境界線がどこにあるのかが重要となる。

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固定資産をめぐる判例・裁決例概説

【第29回】

「建物の取壊費用等が不動産所得の必要経費ではなく、
土地の取得費に算入されるべきとされた事例」

 

税理士 菅野 真美

 

▷建物の取壊費用の取扱い

所得税法において、建物を取り壊した場合の建物の取得費と取壊費用の取扱いは4つに分かれる。すなわち、不動産所得等の必要経費になる場合、土地の取得費となる場合、譲渡費用となる場合、家事費となる場合である。

不動産所得の必要経費に算入するものとして、不動産所得を生ずべき事業の用に供される固定資産について、取壊し、除却、滅失等により生じた損失がある(所法51①)。必要経費は、「事業活動と直接関連を持ち、事業の遂行上必要な費用でなければならない」(※1)と考えられているから取壊費用を必要経費化するためには、その固定資産が事業の用に供されていることが必要である。

(※1) 金子宏『租税法(第24版)』(弘文堂、2021年)321頁

取壊費用等が、土地の取得費になるものとして、その取得後おおむね1年以内に当該建物等の取壊しに着手するなど、その取得が当初からその建物等を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められる場合とされている(所基通38-1)。通達で1年以内と定められているが、「初めは建物を事業に使用する目的で取得したが、その後やむを得ない理由が生じたことにより、その使用をあきらめなければならないような場合には、その取得後おおむね1年以内にその建物を取り壊したときであっても、その建物の帳簿価額と取壊費用の合計額は、土地の取得価額に含めないで、取り壊したときの損金の額に算入することができます。」(※2)と税目は法人税であるが、タックスアンサーにおいて回答されている。

(※2) 国税庁タックスアンサー「No.5401 土地とともに取得した建物を取り壊した場合の土地の取得価額

不動産所得の必要経費になるか、土地の取得費になるかによって納税コストも大きく変わる場合もあり、境界線がどこにあるのかが重要となる。

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連載目次

固定資産をめぐる判例・裁決例概説

第1回~第30回 ※クリックするとご覧いただけます。

【第31回】~

筆者紹介

菅野 真美

(すがの・まみ)

税理士・社会福祉士・CFP

関西学院大学法学部政治学科卒業後、平成2年税理士試験合格。
平成18年まで新日本監査法人大阪事務所並びに関係会社において、監査並びに税務コンサルティング業務に従事。
その後、日本租税綜合研究所主任研究員を経て、税理士事務所開業。現在、東京税理士会芝支部、信託法学会会員、成年後見法学会会員。

【主な著書】
・『老後の備え・相続から教育資金贈与、事業承継まで 「信託」の基本と使い方がわかる本』日本実業出版社
・『税理士のために国外転出時課税と国際相続について考えてみました』中央経済社
・『申告なし・税金なしの贈与使いこなしQ&A 教育・結婚・子育て資金一括贈与+ジュニア NISA』中央経済社
・『顧問税理士なら答えて!個人の国際課税Q&A 結婚・転勤・移住・留学・運用・相続アラカルト80』(共著)中央経済社
・『教育資金の一括贈与非課税制度完全ガイド』中央経済社
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