公開日: 2014/12/25 (掲載号:No.100)
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事例で検証する最新コンプライアンス問題 【第3回】「エアバッグの『リコール』事件」

筆者: 原 正雄

事例で検証する最新コンプライアンス問題

【第3回】

「エアバッグの『リコール』事件」

 

弁護士 原 正雄

 

大手部品メーカーT社が製造したエアバッグの「欠陥問題」で、日本国内はもとより、全世界で自動車のリコールが広がっている。
2014年12月18日時点で、全世界で、リコール対象が累計2,000万台に達している。国内だけでも、リコール対象は319台にのぼり、そのうち150万台が未改修とのことである。
本件は、なぜここまで問題が拡大したのか。
報道など公表情報をもとに、分析を試みる。

 

1 T社の沿革

T社は、1933年、織物製造の会社として創業した会社である。1960年、日本初の2点式シートベルトの製造販売を開始し、以来、チャイルドシートなど自動車安全部品の開発、製造、販売に取り組み、1990年には、エアバッグの製造販売を開始している。

T社は、1983年に米国に生産拠点を設けて以来、海外に多数の拠点を設け、積極的に世界展開している。T社は、現在、世界のエアバッグ市場で第2位、約2割のシェアを有しており、多くの自動車メーカーにエアバッグを供給している。

 

2 発生事故の内容

報道によれば、不具合が発生しているのは「インフレーター(膨張装置)」という名称の部品である。インフレ―ターは、内部にガス発生剤(火薬)を備え、ガスを発生させる。衝突を検知するセンサーからの情報で、ガス発生剤に着火し、瞬時にガスを発生してエアバッグを膨らませる。

本件では、ガス発生剤の着火時に異常燃焼が起こり、インフレ―ターの金属容器が破裂して金属片が飛び散る、という事故が報告されている。2014年12月16日までに、米国とマレーシアで5件の死亡事故があったと報道されており、T社はそのうち3件について謝罪している。また、日本国内でも、4件の異常破裂事故や、廃車作業中の異常破裂が報告されている。

 

3 本件の原因

T社は、リコール対象2,000万台のうち約6割について、欠陥の存在を認めている。T社の説明によれば「生産の立ち上がり期の不具合」とのことである。

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【第3回】

「エアバッグの『リコール』事件」

 

弁護士 原 正雄

 

大手部品メーカーT社が製造したエアバッグの「欠陥問題」で、日本国内はもとより、全世界で自動車のリコールが広がっている。
2014年12月18日時点で、全世界で、リコール対象が累計2,000万台に達している。国内だけでも、リコール対象は319台にのぼり、そのうち150万台が未改修とのことである。
本件は、なぜここまで問題が拡大したのか。
報道など公表情報をもとに、分析を試みる。

 

1 T社の沿革

T社は、1933年、織物製造の会社として創業した会社である。1960年、日本初の2点式シートベルトの製造販売を開始し、以来、チャイルドシートなど自動車安全部品の開発、製造、販売に取り組み、1990年には、エアバッグの製造販売を開始している。

T社は、1983年に米国に生産拠点を設けて以来、海外に多数の拠点を設け、積極的に世界展開している。T社は、現在、世界のエアバッグ市場で第2位、約2割のシェアを有しており、多くの自動車メーカーにエアバッグを供給している。

 

2 発生事故の内容

報道によれば、不具合が発生しているのは「インフレーター(膨張装置)」という名称の部品である。インフレ―ターは、内部にガス発生剤(火薬)を備え、ガスを発生させる。衝突を検知するセンサーからの情報で、ガス発生剤に着火し、瞬時にガスを発生してエアバッグを膨らませる。

本件では、ガス発生剤の着火時に異常燃焼が起こり、インフレ―ターの金属容器が破裂して金属片が飛び散る、という事故が報告されている。2014年12月16日までに、米国とマレーシアで5件の死亡事故があったと報道されており、T社はそのうち3件について謝罪している。また、日本国内でも、4件の異常破裂事故や、廃車作業中の異常破裂が報告されている。

 

3 本件の原因

T社は、リコール対象2,000万台のうち約6割について、欠陥の存在を認めている。T社の説明によれば「生産の立ち上がり期の不具合」とのことである。

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連載目次

「事例で検証する最新コンプライアンス問題」

筆者紹介

原 正雄

(はら・まさお)

弁護士。一橋大学法学部卒、中島経営法律事務所パートナー

専門は、コンプライアンス、企業危機管理、消費者対応、製造物責任、知的財産、労務、セクハラ・パワハラ、証券取引、M&A、訴訟など企業法務

主な著書に「社内規程整備で取り組む―中小企業のコンプライアンス対策」(清文社)、「図解 仕事の法律」(共著、三笠書房)、「ネットリスク対策なるほどQ&A」(共著、中央経済社)、「事例で見る借地借家契約の解除」(共著、新日本法規)など多数。
論文執筆、講演・研修など多数。

http://www.ntlo.net/partner/detail/id=15&contents_type=45

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