公開日: 2023/12/07 (掲載号:No.547)
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租税争訟レポート 【第70回】「還付金等請求事件~偽造された委任状に基づく還付金支払の効力(東京地方裁判所令和3年8月24日判決)」

筆者: 米澤 勝

租税争訟レポート

【第70回】

「還付金等請求事件~偽造された委任状に基づく還付金支払の効力
(東京地方裁判所令和3年8月24日判決)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

【判決の概要】

東京地方裁判所令和3年8月24日判決
還付金等請求事件
税務訴訟資料 徴収関係判決令和3年判決分(順号2021-16)
TAINSコード:Z777-202116

[原告]

X(相続人)

[被告]

  • 国(処分行政庁:大和税務署)
  • Y1(Xの弟)
  • Y2(税理士法人)

[争点]

(1) 被告Y1の不法行為責任(本件還付金の受領に係る事務管理の成否)〔争点1〕

(2) 被告税理士法人の不法行為責任〔争点2〕

(3) 本件還付請求権の存否(本件還付請求権は、本件支払により消滅したか。すなわち、被告Y1が本件還付金の受領権限を有していなかったことについて大和税務署長が善意無過失であったか否か)〔争点3〕

(4) 原告の損害〔争点4〕

(5) 本件供託の効力〔争点5〕

(6) 被告国に対する附帯請求の当否〔争点6〕

[判決]

  • 被告国及びY2に対する請求は棄却
  • 被告Y1に対する請求は認容(確定)

 

【事案の概要】

原告は、大和税務署長に対して相続税の更正の請求を行い、これに対する更正がされたことにより過誤納金及び還付加算金合計1,058万5,275円に係る還付請求権を取得したところ、本件還付請求権の行使について、相続人の1人である被告Y1は、原告の同意を得ずに、原告名義の被告Y1宛ての本件還付金の受領に係る委任状を作成し、被告Y2税理士法人(以下、「被告税理士法人」という)を通じて大和税務署長に提出した結果、被告国は、本来原告に対して支払うべき本件還付金を被告Y1に支払った。

本件は、原告が、本件支払は還付金受領に係る代理権を有しない者に対してされたため効力がなく、還付請求権は消滅していないと主張して、被告国に対し、国税通則法56条1項に基づき、還付金1,058万5,275円及びこれに対する平成28年10月26日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに、被告Y1及び被告税理士法人に対して、共同不法行為に基づき、還付金の額に弁護士費用105万円を加えた損害金1,163万5,275円及びこれに対する不法行為の後の日である平成28年10月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

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【第70回】

「還付金等請求事件~偽造された委任状に基づく還付金支払の効力
(東京地方裁判所令和3年8月24日判決)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

【判決の概要】

東京地方裁判所令和3年8月24日判決
還付金等請求事件
税務訴訟資料 徴収関係判決令和3年判決分(順号2021-16)
TAINSコード:Z777-202116

[原告]

X(相続人)

[被告]

  • 国(処分行政庁:大和税務署)
  • Y1(Xの弟)
  • Y2(税理士法人)

[争点]

(1) 被告Y1の不法行為責任(本件還付金の受領に係る事務管理の成否)〔争点1〕

(2) 被告税理士法人の不法行為責任〔争点2〕

(3) 本件還付請求権の存否(本件還付請求権は、本件支払により消滅したか。すなわち、被告Y1が本件還付金の受領権限を有していなかったことについて大和税務署長が善意無過失であったか否か)〔争点3〕

(4) 原告の損害〔争点4〕

(5) 本件供託の効力〔争点5〕

(6) 被告国に対する附帯請求の当否〔争点6〕

[判決]

  • 被告国及びY2に対する請求は棄却
  • 被告Y1に対する請求は認容(確定)

 

【事案の概要】

原告は、大和税務署長に対して相続税の更正の請求を行い、これに対する更正がされたことにより過誤納金及び還付加算金合計1,058万5,275円に係る還付請求権を取得したところ、本件還付請求権の行使について、相続人の1人である被告Y1は、原告の同意を得ずに、原告名義の被告Y1宛ての本件還付金の受領に係る委任状を作成し、被告Y2税理士法人(以下、「被告税理士法人」という)を通じて大和税務署長に提出した結果、被告国は、本来原告に対して支払うべき本件還付金を被告Y1に支払った。

本件は、原告が、本件支払は還付金受領に係る代理権を有しない者に対してされたため効力がなく、還付請求権は消滅していないと主張して、被告国に対し、国税通則法56条1項に基づき、還付金1,058万5,275円及びこれに対する平成28年10月26日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに、被告Y1及び被告税理士法人に対して、共同不法行為に基づき、還付金の額に弁護士費用105万円を加えた損害金1,163万5,275円及びこれに対する不法行為の後の日である平成28年10月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

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連載目次

租税争訟レポート

第1回~第30回

筆者紹介

米澤 勝

(よねざわ・まさる)

税理士・公認不正検査士(CFE)

1997年12月 税理士試験合格
1998年2月 富士通サポートアンドサービス株式会社(現社名:株式会社富士通エフサス)入社。経理部配属(税務、債権管理担当)
1998年6月 税理士登録(東京税理士会)
2007年4月 経理部からビジネスマネジメント本部へ異動。内部統制担当
2010年1月 株式会社富士通エフサス退職。税理士として開業(現在に至る)

【著書】

・『新版 架空循環取引─法務・会計・税務の実務対応』共著(清文社・2019)

・『企業はなぜ、会計不正に手を染めたのか-「会計不正調査報告書」を読む-』(清文社・2014)

・「企業内不正発覚後の税務」『税務弘報』(中央経済社)2011年9月号から2012年4月号まで連載(全6回)

【寄稿】

・(インタビュー)「会計監査クライシスfile.4 不正は指摘できない」『企業会計』(2016年4月号、中央経済社)

・「不正をめぐる会計処理の考え方と実務ポイント」『旬刊経理情報』(2015年4月10日号、中央経済社)

【セミナー・講演等】

一般社団法人日本公認不正検査士協会主催
「会計不正の早期発見
――不正事例における発覚の経緯から考察する効果的な対策」2016年10月

公益財団法人日本監査役協会主催
情報連絡会「不正会計の早期発見手法――監査役の視点から」2016年6月

株式会社プロフェッションネットワーク主催
「企業の会計不正を斬る!――最新事例から学ぶ,その手口と防止策」2015年11月

 

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