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《速報解説》 国内勤務期間のない中国の従業員が税制適格ストックオプションを権利行使した場合の株式の取得に係る経済的利益について税制非適格ストックオプションとして取り扱うことの可否に関し、関東信越局から文書回答事例が公表される

 《速報解説》 国内勤務期間のない中国の従業員が税制適格ストックオプションを権利行使した場合の株式の取得に係る経済的利益について税制非適格ストックオプションとして取り扱うことの可否に関し、関東信越局から文書回答事例が公表される   税理士 菅野 真美   関東信越国税局は11月22日に次の文書回答事例を公表した。以下ではそのポイントについて解説を行う。   [事前照会の内容] 中国子会社の従業員で日本での勤務期間もなく日本に恒久的施設もない者(日本の非居住者で中国の居住者)が税制適格ストックオプションを行使する予定であるが、従業員の権利行使による株式の取得に係る経済的利益について税制非適格ストックオプションとして取り扱って差し支えないか。   [ストックオプションの課税:国内法] ストックオプションとは、株式を一定の金額で取得する権利である。これを従業員や役員に付与し、業績が向上して株式の時価が権利行使価額よりも高い場合は、その株式を売却することにより利益を受けることができる。 従業員等のためのストックオプションの税制は2つある。1つは、権利行使時の給与所得課税等と株式譲渡時の譲渡所得課税による税制非適格ストックオプション(以下「非適格オプション」)であり、もう1つは、2段階課税が煩雑なこと等から一定の要件を満たした場合は経済的利益全部について譲渡所得課税のみとする税制適格ストックオプション(以下「適格オプション」)である(措法29の2)。 日本の居住者が株式を売却した場合は譲渡益に所得税等が課税されるが、恒久的施設のない非居住者が売却した場合、原則的には課税対象外で、一定の場合のみ課税される(所法161①三、164①二)。適格オプションを行使して株式を売却した者が非居住者の場合は日本での権利行使時の課税もできないことから、非居住者が売却した場合でも日本で課税されるとした(措令19の3⑭、所令281①四ロ)。 ただし、租税条約で別段の定めがある場合は、租税条約を優先させる(所法162)。租税条約の適用の場合の課税関係は、適格・非適格にかかわらず、経済的利益のうち権利行使益部分は給与所得や役員報酬、株式譲渡益部分は譲渡所得の条項に基づくと考えられている。   [ストックオプションの課税:日中租税協定] 日中租税協定の場合、従業員の給与所得は、日本国内の勤務期間がない場合は日本に課税権はないが、日本国内にある資産の譲渡所得は日本に課税権がある(日中租税協定15①、13④)。つまり、譲渡所得は日本の税法に従って処理できるから、この事例の適格オプションの場合は、権利行使益部分は非課税だが、株式の譲渡益部分は課税され、非適格オプションの場合は、権利行使益部分も株式譲渡益部分も課税されない。   [事前照会者はどのように考え、課税庁はどのように回答したか] このように課税関係に差異があり、適格オプションの場合は譲渡益について日中で2重課税となることから、非適格オプションを納税者が選択した場合は非適格オプションとして取り扱うことができるのではないかと事前照会者は考えた。しかし、課税庁は、権利行使時に要件を満たしていた場合は適格オプションとなり、納税者の選択によって非適格オプションとして取り扱うことはできないと回答した。 (了)

#No. 295(掲載号)
#菅野 真美
2018/11/28

《速報解説》 税制適格ストックオプションについて、一定の事由による権利行使期間内の権利行使条件を付した場合の税務上の取扱いに関し文書回答事例が公表される

 《速報解説》 税制適格ストックオプションについて、一定の事由による権利行使期間内の権利行使条件を付した場合の税務上の取扱いに関し文書回答事例が公表される   税理士 中尾 隼大   本稿では、東京国税局が平成30年10月18日(ホームページ公表は11月19日)に回答した文書回答事例「税制適格ストックオプションについて、一定の事由が生じた場合には権利行使期間内の一定の期間に限り権利行使ができる旨の条件を付した場合の税務上の取扱いについて(以下、『本件文書回答事例』という)」について解説を行う。   1 概要 所得税法では、低廉又は無償にて権利等の経済的利益を得た場合にも課税対象とされるが、その価額は「権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額」となる(所得税法36条2項)。 上記のとおりであれば新株予約権も付与時に課税対象となるが、個人が付与時点で経済的利益を算定することは事実上困難である。そこで新株予約権のうち一定のストックオプションについては例外的措置が存在し、付与時ではなく権利行使時点で課税対象となる(所得税法施行令84条2項)。 さらに、一定の適格要件を満たすストックオプションについては権利行使時点ではなく、権利行使後、株式売却時点まで課税を繰り延べることができる(租税特別措置法29条の2)。その適格要件の1つに、権利行使を「付与決議の日後2年を経過した日から当該付与決議の日後10年を経過する日までの間に行わなければならないこと(以下、「権利行使期間要件」という)」として、権利行使する期間を定めるものがある。 本件文書回答事例は、「権利行使期間要件内の期間において、発行法人が権利行使できる期間を別途定めた場合」における税務上の取扱いを示したものである。   2 事前照会内容 (※) 照会内容の詳細は、国税庁ホームページを参照されたい。 「新株予約権割当契約書」において、以下内容を定めた場合、権利行使期間要件を充足するか否か。   3 事前照会者の見解 上記2のような新株予約権割当契約を行うことにより、権利行使期間要件が定める期間の範囲内で、更に権利行使できる期間が制限されるケースもある。 権利行使期間要件は、その期間外の権利行使を除外する趣旨であると考えられることから、その権利行使期間要件に定められた期間内であれば、その付与契約において権利行使期間を短く定めたとしても権利行使期間要件に反することにはならず、権利行使期間要件を満たすものと考える。   4 本件文書回答事例の結論 上記前提において、照会内容のとおり取り扱って差し支えないとの回答がなされた。 本件文書回答事例はストックオプションに係る税制適格要件を拡充するものではないが、要件充足の判断の指標となるものであろう。税制適格要件の充足は権利者にとって大きなインセンティブとなり得るため、慎重に判断したいところである。 (了)

#No. 295(掲載号)
#中尾 隼大
2018/11/27

《速報解説》 東京局、外部金融機関を活用した積立貯蓄制度に係る貯蓄奨励金の課税関係について文書回答事例を公表

 《速報解説》 東京局、外部金融機関を活用した積立貯蓄制度に係る貯蓄奨励金の課税関係について文書回答事例を公表   税理士 仲宗根 宗聡   東京国税局は、平成30年10月18日付(ホームページ公表は11月19日付)で、「外部金融機関を活用した積立貯蓄制度において支給される貯蓄奨励金の課税関係について」の事前照会に対し、照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えないとする回答文書を公表した。 以下では、その内容について解説する。   【事前照会の趣旨】 当組合は、当組合の加盟会社等の従業員及び役員を組合員として、当該組合員の相互共済福利を目的として組織された共済組合であり、従来は、当該組合員に対して、金銭消費寄託契約により金銭の寄託を受け、利息を支出する、いわゆる社内預金制度(旧制度)を実施していた。 しかし、今般、当組合の事務軽減及び組合員へのサービス拡充(ATMの利用可能等)を目的として、金融機関の預金等を活用した積立貯蓄奨励金支給規則(本制度)を制定し、旧制度から移行した。 本制度では、金融機関から支払われる預金等の利息とは別に、当組合から組合員に対し一定の奨励金を当該金融機関を通じて支給することとを予定している。   【事前照会の要約】 当組合から組合員に対して支給される本件奨励金は、所得税法上、雑所得に該当し、当組合は、本件奨励金の支払の際に源泉徴収を要しないと解して差し支えないか。   【事前照会の見解の理由】 (1) 奨励金の所得区分 ① 利子所得について 所得税法第23条第1項では、利子所得とは、公社債及び預貯金の利子並びに合同運用信託の収益の分配等に係る所得と限定列挙により規定しており、一般的に、元本債権から発生する法定果実を指すものと考える。 本件奨励金は、元本債権は金融機関が有するものであり、当組合に対して元本債権を有しないことから、当組合から組合員に対して支給される本件奨励金は、元本債権から発生する法定果実には該当しない。したがって、本件奨励金は利子所得に該当しないものと考える。 ② 給与所得について 所得税法第28条第1項では、給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいう旨を規定している。 本件奨励金は、当組合と組合員との間に雇用関係及びこれに類する関係はないことから、本件奨励金は給与所得に該当しないものと考える。 ③ 一時所得について 所得税法第34条第1項では、一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう旨を規定している。 本件奨励金は、本制度に基づき、一定の貯蓄を有する場合に、当組合から組合員に継続的に支払われることとされていることから、本件奨励金は一時所得に該当しないものと考える。 ④ 雑所得について 所得税法第35条第1項では、雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得と規定している。本件奨励金は、上記①~④までの検討に加え、配当所得、不動産所得、事業所得、山林所得及び譲渡所得にも該当しないことが明らかなため、雑所得に該当するものと考える。 (2) 源泉徴収の要否 源泉徴収が必要となる支払については、所得税法上に下記の①~⑤限定的に列挙されているところ、本件奨励金は、所得税法に規定されている源泉徴収を要する支払のいずれにも該当しないことから、当組合は本件奨励金の支払の際に、源泉徴収を要しないと考える。 (了)

#No. 295(掲載号)
#仲宗根 宗聡
2018/11/26

《速報解説》 「監査品質の指標(AQI)に関する研究報告」が公表される~監査品質の向上に向けた取組状況を定量情報として示す~

《速報解説》 「監査品質の指標(AQI)に関する研究報告」が公表される ~監査品質の向上に向けた取組状況を定量情報として示す~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成30年11月21日、日本公認会計士協会は、「監査品質の指標(AQI)に関する研究報告」を公表した。これにより、平成30年3月7日から意見募集していた公開草案が確定することになる。 これは、上場会社の監査を担う監査事務所が、監査品質の向上に向けた取組を外部に公表する場合や被監査会社の監査役等に説明する場合に用いる監査品質の指標(Audit Quality Indicator:AQI)について検討を行ったものである。 「『監査品質の指標(AQI)に関する研究報告(公開草案)』に対するコメントの概要及び対応について」も公表されている。 公開草案からの主な変更点としては、監査事務所レベル及び監査業務レベルのAQIそれぞれの開示方法に関する説明と図の追加、AQI項目の記載例について、グラフ等の図表を用いることが考えられる旨を加筆し、表形式が標準という印象を与えないような変更などがあげられる。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 概要 監査品質は直接的に測定することは困難であるが、間接的ではあるものの監査品質に関連する定量情報をAQIとして示すことにより、監査品質の向上に向けた取組状況に関する説明に具体性が付与されるものと考えられる(1項)。 被監査会社の監査役等に対しては、監査事務所レベルと監査業務レベルのAQIを説明することとなるが、説明の時期は、従来行われているコミュニケーションの一環として、監査計画時や監査完了時に行われることが多いと考えられる(19項)。 次のような特徴がある。 付録として、「監査品質の指標(AQI)に関する各国の取組」も記載されている。   Ⅲ 監査品質の指標(AQI) AQIには、監査事務所レベルの指標と個々の監査チームの業務レベルの指標がある(8項)。 次のことに留意する。 研究報告11から12ページではAQIの一般的項目が例示されており、AQIの項目について、項目ごとに見出しを付して、(a)監査品質との関連、(b)記載例、(c)参考情報を記載していることが説明されている。 (了)

#No. 295(掲載号)
#阿部 光成
2018/11/26

《速報解説》 会計士協会、監査法人GCを受け「監査法人の計算書類及び監査報告書の文例に関する研究報告」を公表~「監査法人の計算書類に係るひな型」は廃止へ~

《速報解説》 会計士協会、監査法人GCを受け 「監査法人の計算書類及び監査報告書の文例に関する研究報告」を公表 ~「監査法人の計算書類に係るひな型」は廃止へ~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成30年11月21日、日本公認会計士協会は、「監査法人の計算書類及び監査報告書の文例に関する研究報告」を公表した。これにより、平成30年3月23日から意見募集していた公開草案が確定することになる。 これは、平成20年3月に公表した研究報告「監査法人の計算書類作成に係るひな型」について、「監査法人の組織的な運営に関する原則」(監査法人のガバナンス・コード)の公表を契機として、見直しを行ったものである。 「『監査法人の計算書類及び監査報告書の文例に関する研究報告(公開草案)』に対するコメントの概要及び対応について」も公表されている。 研究報告の公表に伴い、公認会計士法改正対策プロジェクトチームからの研究報告「監査法人の計算書類に係るひな型」は廃止された。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 監査法人の説明書類 監査法人は、会計年度ごとに、業務及び財産の状況に関する事項を記載した説明書類(以下「説明書類」という)を作成し、監査法人の事務所に備え置き、公衆の縦覧に供することが義務付けられている(公認会計士法34条の16の3、公認会計士法施行規則39条)。 すべての監査法人は、説明書類の公衆縦覧に加え、会計年度経過後2ヶ月以内に業務報告書とともに計算書類を内閣総理大臣に提出することが求められている(公認会計士法34条の16第2項、公認会計士法施行規則31条)。 業務報告書には、業務の概況、社員、使用人等の概況、事務所の概況及び被監査会社等の内訳等を記載する(公認会計士法施行規則38条)。 計算書類は、貸借対照表、損益計算書、社員資本等変動計算書、注記表及び附属明細書から構成される(公認会計士法34条の16、公認会計士法施行規則31条)。   2 計算書類の作成例 研究報告は、以下の計算書類の作成例を示している。 また、有限責任監査法人は、会計期間における収益の額が10億円以上の場合、当該計算書類について、特別の利害関係のない公認会計士又は監査法人により監査を受けることが求められている(公認会計士法34条の32、公認会計士法施行令24条)ことから、監査法人の計算書類に添付する監査報告書の文例も示されている。 (了)

#No. 295(掲載号)
#阿部 光成
2018/11/26

《速報解説》 国税庁、仮想通貨関連FAQを公表~仮想通貨を相続等により取得した場合の課税関係・評価方法についても言及~

《速報解説》 国税庁、仮想通貨関連FAQを公表 ~仮想通貨を相続等により取得した場合の課税関係・評価方法についても言及~   Profession Journal編集部   〇仮想通貨交換業者による年間取引報告書の交付へ 国税庁は11月21日付けで「仮想通貨関係FAQ」ページを公表し、平成30年の確定申告時期を前に、仮想通貨取引に関する所得計算の方法等について周知を行っている。また本年分から、仮想通貨交換業者による年間取引報告書について、記載内容を統一した形で各利用者へ交付されることを明らかにした。 仮想通貨取引においてはこちらの解説にあるとおり、複数の交換業者を通じた取引や交換業者をまたがっての口座間の移転等が行われ、また年間の取引報告書を利用者に交付していない交換業者もいるなど、利用者が損益(所得)状況を正確に把握することが困難であった。これらの問題を受け国税庁は本年4月より「仮想通貨取引等に係る申告等の環境整備に関する研究会」を設置し政府税制調査会でも「納税環境整備に関する専門家会合」において日本仮想通貨交換業協会などを交え議論が行われていたが、このたび各仮想通貨交換業者による統一された様式の年間取引報告書が来年1月末をめどに各利用者へ提供されることとなり、利用者にとってその損益状況が把握しやすくなる。 【参考】年間取引報告書の様式例 (※) 国税庁ホームページより (※) 国税庁ホームページより さらに国税庁は、年間取引報告書に記載された各項目を入力することで申告に必要な所得が自動計算されるエクセルデータを同ページ内においてダウンロードにて提供、その利用を呼びかけている。 (※) 国税庁ホームページより これらの制度整備によって仮想通貨の利用者にとっては所得の把握から確定申告手続までが行いやすくなった一方、国税当局としては今回公表されたページにおける下記記述のように、仮想通貨取引による所得の申告漏れについてはこれまで以上に徹底した対応をとるものと見られる。 さらに仮想通貨取引による収入が多額となった場合に気になるのが「財産債務調書」及び「国外財産調書」だが、両制度に関するFAQも同日更新されており関連通達の一部改正も行われている。 更新された「財産債務調書の提出制度(FAQ)(平成30年11月)」では、「国内外の仮想通貨取引所に保有する仮想通貨は財産債務調書の対象になりますか。」との問いに対し仮想通貨取引所の所在が国内か国外かにかかわらず財産債務調書への記載が必要としたQ10が追加され、また「国外財産調書の提出制度(FAQ)(平成30年11月)」では「国外の仮想通貨取引所に保有する仮想通貨は国外財産調書の対象になりますか。」との問いに対し居住者が国外の仮想通貨取引所に保有する仮想通貨は「国外にある財産」とはならず国外財産調書の対象にはならないとしたQ11が追加されている。   〇FAQで新たに示された内容 今回の公表に合わせ、国税庁は上記研究会における議論や国税当局へ問い合わせのあった事項等をまとめた「仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」を公表している。全21問の内容は、昨年12月に公表され「仮想通貨を売却した場合」や「仮想通貨同士の交換を行った場合」などの計算例を示した「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」をアップデートしたものが中心となっているが、さらに年間取引報告書の記載内容(問10)や上記自動計算ソフト(エクセルデータ)の紹介(問9)などのほか、次のような内容が示されている。 まず、仮想通貨の売却による所得を申告する場合に必要経費として認められる費用の例として、売却した仮想通貨の取得価額や売却の際に支払った手数料のほか、インターネットやスマートフォン等の回線利用料、パソコン等の購入費用などについても、仮想通貨の売却のために必要な支出であると認められる部分の金額に限り必要経費に算入することができるとした(問8)。 (※) 仮想通貨を売却又は使用することにより生じる利益については、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として雑所得に区分され、所得税の確定申告が必要となる。 また、まだレアケースの可能性もあるが、仮想通貨を相続や贈与により取得した場合の課税関係について、被相続人等から仮想通貨を相続若しくは遺贈又は贈与により取得した場合には相続税又は贈与税が課税されることを示した問15や、その評価方法については評価通達に定めがないことから、評価通達5《評価方法の定めのない財産の評価》に基づき評価通達に定める評価方法に準じて評価するとした問16などが公表されている。 具体的には、①活発な市場が存在する仮想通貨については、外国通貨に準じて、相続人等の納税義務者が取引を行っている仮想通貨交換業者が公表する課税時期における取引価格(仮想通貨交換業者が納税義務者の求めに応じて提供する残高証明書に記載された取引価格など)によって評価し、②活発な市場が存在しない仮想通貨の場合には、客観的な交換価値を示す一定の相場が成立していないため、その仮想通貨の内容や性質、取引実態等を勘案し、個別に評価する(例えば、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する方法など)としている(詳細はこの問16を参照されたい)。 (※) 国税庁ホームページより さらに、こちらもレアケースかもしれないが、月々の給与等の一部を取引所で売買可能な仮想通貨で支払うこととした場合の給与に係る所得税の源泉徴収方法について問17で解説されている。 (了)

#No. 295(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2018/11/22

プロフェッションジャーナル No.295が公開されました!~今週のお薦め記事~

2018年11月22日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.295を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2018/11/22

山本守之の法人税“一刀両断” 【第53回】「消費税対策の問題点」

山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第53回】 「消費税対策の問題点」   税理士 山本 守之   1 軽減税率減収分の財源 消費税の軽減税率による減収分1兆円の財源のうち4,000億円は、低所得者の医療や介護の負担を軽くする「総合合算制度」の見送りによるもので、3,000億円はたばこ増税と給与所得控除の縮小によるものです。 残りの3,000億円のうち2,000億円は、免税事業者への課税による増収分が充てられます。2023年10月にインボイス(税額票)制度が導入される予定ですが、そうなると、大企業や中堅企業と取引するためにはインボイスを出して課税事業者になる必要が出てきます。売上高が1,000万円以下で消費税を納税していなかった事業者はこれにより消費税を納税することになりますので、税収が増えることになります。 残る1,000億円は社会保障の効率化や給付の見直しで捻出した財源を活用することになります。また、低所得者向けの簡素な給付措置(臨時福祉給付金)による事務費の削減なども候補に挙がっています。   2 軽減税率の対象は税率が6%に 安倍首相は10月15日の臨時閣議で、予定通り消費税率を10%に引き上げる方針を改めて示しました。 景気の落ち込みを防ぐ対策として、中小小売店でキャッシュレス決済をした場合、次回から使えるポイントを増税分(2%)を還元するという制度が取り上げられています。 経済産業省は、キャッシュレス決済導入時の経費負担は、中小事業者のうち小売業に限らずサービス業も含めて行う方向です。還元方法としては、クレジットカード、電子マネー、QRコードなどを検討しています。還元率は増税分の2%となり、還元期間は半年から1年程度を予定しています。また、政府はポイント還元に係る費用を決済事業者に払い、機器の導入費用も補助する方針です。 今回は増税と同時に軽減税率が導入されますが、軽減税率で8%に据え置かれる飲食料品もこのポイント還元に含められるので、飲食料品の税率は6%となり、実質今よりも税率は低くなることになります。   3 消費税対策のバラマキ 自民党の支持者の多い中小企業者や公明党の支持者が多い低所得者層には、次のようなバラマキともいえる対策が検討されています。 プレミアム商品券は、購入額に一定額が上乗せされた商品券です。増額分は公費で賄うことになります。現在でも各自治体で発売されているところがありますが、商品券を大量に買い込む人がいるなどの問題点なども指摘されているため、所得制限を設けるなどの案も出ています。 例えば港区の場合は、港区内で使える1万円のプレミアム商品券があり、500円券が22枚(1万1,000円分)入っている商品券と500円券が24枚(1万2,000円分)入っている商品券(小規模店舗等でのみ使用可能)の2種類が用意されています。 今回の消費増税の低所得者対策として①軽減税率、②年金受給者に最大6万円を給付するバラマキ、③高齢者介護保険料の軽減などが決まっています。低所得者対策をどこまで行うかも問題となっています。 また、住宅や自動車の購入支援策の拡大も検討しています。住宅については、2014年の増税時には住宅ローン減税を大幅に拡充しましたが、消費税率10%時には住宅購入時にもらえる「すまい給付金」の上限額を現行の30万円から50万円(年収775万円以下の人を対象)に引き上げることも決めています。これに加えて省エネ性能が高い住宅の新築リフォーム時にもらえる「住宅エコポイント」も復活させる方向で検討しています。 なお、ここで考えるべきことは、消費増税対策と中小企業対策を混合しないことです。   4 金融所得課税 年末にかけての税制改正討論のうち、株式市場が特に神経をとがらせているのが金融所得課税の税率引き上げです。 現在の金融所得課税は株式の配当や譲渡益が課され、金融課税で20.315%(地方税を含む)です。これは、総合課税の最高税率55%(地方税含む)に比べてみると異常に低いのです。 所得階層別の所得税の負担割合を調べてみると次のようになっています。 ※画像をクリックすると別ページで拡大して表示されます。 (合計所得金額:円) (出所) 財務省資料 ひと目でわかるように、平成25年、26年とも所得税負担率は1億円近辺をピークに、それ以上稼ぐと徐々に低下していき、100億円以上では25年で11.1%、26年で17%しか負担していません。 給与所得に対しては、最高税率55%(地方税含む)の累進税が適用されるのに対して、キャピタル・ゲインや配当、債権・預金の利子などの金融所得に対しては、20%(国税)の軽減税率が適用される「分離課税」となっているためです。 分離課税のすべてを総合課税とすることは無理であっても、分離課税の税率を引き上げる程度のことはできるのではないでしょうか。 ところが、政府与党は来年度の金融所得課税の増税を見送ることにしました。金融資産の多い富裕層ほど所得税の実質的な負担が軽くなることが課題になっていましたが、株価を重視する首相官邸では金融所得課税の増税反対の意向が強かったのです。 政府与党は昨年末の税制改正で、高所得者の会社員らへの所得増税を決めました。その際、今後の課題として金融所得課税の見直しを挙げて、与党税制改正大綱に「税負担の公平性を担保する観点から総合的に検討する」としていました。低所得者ほど負担が重くなる所得税を増税し、富裕層への課税強化を見送ることは税の公平性から考えると問題があります。   5 日税連公開研究討論会 第45回日税連公開研究討論会で、北陸税理士会は所得税について次の4点の是正を提案しました。 これによる所得税の税収は13兆1,826億円になるとしています。 (了)

#No. 295(掲載号)
#山本 守之
2018/11/22

谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」 【第4回】「租税法律主義と要件裁量の結果的容認」-租税債務関係説のパラドックス-

谷口教授と学ぶ 税法の基礎理論 【第4回】 「租税法律主義と要件裁量の結果的容認」 -租税債務関係説のパラドックス-   大阪大学大学院高等司法研究科教授 谷口 勢津夫   Ⅰ はじめに 前回は、課税要件法の解釈の場面における要件裁量否定論について、租税債務関係説との結びつきによる租税法律主義の厳格さ(「他律的」厳格さ)の観点から、検討したが、今回は、課税処分取消訴訟の場面における租税法律主義(合法性の原則)及び租税債務関係説の意義に関する検討を通じて、同説が「要件裁量」(Ⅲ1参照)を結果的に容認する事態に至ることがあるいわば「租税債務関係説のパラドックス」ともいうべき現象(【65】=拙著『税法基本講義〔第6版〕』(弘文堂・2018年)の欄外番号。以下同じ)を明らかにし、その克服の試みを検討することにしたい。 課税処分取消訴訟における審理の範囲・対象をめぐっては、同訴訟の訴訟物とも関連して、総額主義と争点主義との対立がみられる(【164】)。この対立が「租税債務関係説のパラドックス」の原因の1つであると考えるところであるが、そのパラドックスが何故あるいはどのような意味で「要件裁量」の結果的容認という事態に至ることになるのか。そのパラドックスはいかにして克服することができるか。これらが今回の検討課題である。   Ⅱ 総額主義と租税法律主義・租税債務関係説との調和 総額主義は、課税処分取消訴訟における審理の範囲は当該課税処分を根拠づける一切の理由に及び、課税標準等又は税額等の正当な総額がいくらであるかが、換言すれば、課税要件法に従って客観的に定まる税額との関係における、当該課税処分によって確定された税額の総額的適否が、審理の対象となる、という考え方である(【64】【164】)。 租税法律主義の内容を構成する合法性の原則によれば、課税要件の充足によって成立した納税義務の内容は、税法の定めに従って確定され履行されなければならない(【37】)。納税義務の確定のための事実認定は、課税要件の充足による納税義務の成立時(課税要件法上の成立時期。【97】)に当該課税要件に該当している事実、すなわち、納税義務の成立時に客観的に存在した課税要件事実(課税要件を組成する法律要件要素すなわち課税要件要素[Steuertatbestandsmerkmale]に高められ抽象化された類型的事実[法律事実]に該当する個々の具体的事実[いわゆるナマの事実]。【56】)、を当該成立した納税義務の内容どおりに全て対象としなければならない。この要請を実体的真実主義と呼ぶならば、総額主義は、課税処分取消訴訟における事実認定の場面では、合法性の原則から導き出される実体的真実主義に合致するといえよう。 また、租税債務関係説の立場からは、課税処分取消訴訟は、納税義務の実体的内容(一種の法定金銭給付債務)を包む「鋳型」としての課税処分(【13】)について、その取消しを求めるための訴訟類型とみることができる。したがって、課税処分について、その「鋳型」それ自体の違法(手続的違法)は別にして、その実体的内容に関する違法(実体的違法)が争われる限りでは、課税処分取消訴訟は、実質的には、一種の債務不存在確認訴訟として性格づけることができる。債務不存在確認訴訟では、債務の総額的適否が審理の対象になる。その意味では、総額主義は租税債務関係説と親和性をもつといえよう。   Ⅲ 租税債務関係説のパラドックス 1 パラドックスの構造 ところが、総額主義は、次の2で述べる処分理由の差替えの問題について顕著にみられるように、事実認定に関する税務官庁の裁量を結果的に容認する場合がある。というのも、課税処分取消訴訟においては、民事訴訟一般に妥当する弁論主義の下で、課税要件事実の存否に関する主張・立証は原則として当事者に委ねられており(行訴法7条参照)、そこに事実認定に関する裁量が介在する余地が生じるからである。行政事件訴訟法は「裁判所は、必要があると認めるときは、職権で、証拠調べをすることができる。」(24条本文)と定め職権証拠調べを認めているが、これは、当事者の主張する事実について裁判所の職権による証拠調べを認めるにとどまるものであって、実体的真実主義の実現を可能にする職権探知主義(裁判所が当事者の主張をまたずに職権で事実を探知し証拠資料を収集することを認める原則)とは区別されるべきものである。 前回Ⅲでみたように、そもそも、租税債務関係説は、租税権力関係説に対するアンチテーゼとして、納税義務の成立について税務官庁の形成的・裁量的判断を法理論上完全に排除するために構想されたものであり、課税要件法の解釈の場面では要件裁量否定論に帰結する。しかし、租税債務関係説は、課税要件事実の認定の場面では、以上で述べてきたように、総額主義及び弁論主義と結びつくことによって、事実認定に関する裁量の余地を生み出すことがある。 そうすると、課税要件法の解釈だけでなく課税要件事実の認定をも含めて「要件判断に関する裁量」の意味で要件裁量という概念を用いる場合には、租税債務関係説は、実際の課税処分取消訴訟において、要件裁量を結果的に容認する論理として、作用・機能することになる。ここに、「租税債務関係説のパラドックス」ともいうべき現象がみられるが、この現象については、次の2でみるとおり、租税法律主義の内容を構成する手続的保障原則(租税の賦課徴収に関する事前手続においても事後的な救済手続においても適正手続の保障を要請する原則。【27】)の観点から、そのパラドックスを克服しようとする試みが従来から展開されてきたところである。 2 パラドックスの克服の試み 課税要件事実の認定に関する税務官庁の裁量を排除するために、課税処分取消訴訟の場面では、特に処分理由の差替えの問題をめぐって、争点主義という考え方が唱えられてきた。これは、課税処分取消訴訟における審理の範囲が課税処分を根拠づける理由の一部(特に処分時の理由)に限定され、その理由との関係における課税標準等又は税額等の適否が審理の対象となる、という考え方である。 争点主義によれば、課税処分取消訴訟における審理の範囲が課税処分を根拠づける処分時の理由に限定されるので、総額主義による場合と異なり、訴訟段階における処分理由の差替えは認められないことになり、その意味において課税要件事実の認定における税務官庁の裁量が排除されることになる。このことは、とりわけ、手続的保障原則の具体化措置として重要な意味をもつ更正の理由附記(青色更正について所税155条2項・法税130条2項、白色更正については税通74条の14第1項括弧書。【148】)の観点から、肯定的に評価されるべきである。更正の理由附記の趣旨は、①税務官庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制すること(処分適正化機能)と②処分の理由を相手方に知らせて不服申立てに便宜を与えること(争点明確化機能)にある(最判昭和38年5月31日民集17巻4号617頁。【148】)。 争点主義は、このように、課税処分取消訴訟における納税者の権利救済に資するが、しかし、前記の実体的真実主義には適合しない結果をもたらすことがある。そこで、その間の調和・バランスを図ろうとする試みがされてきたが、そのような試みとして、まず、課税処分取消訴訟に前置される審査請求手続の争点主義的運営を挙げることができる。 国税不服審判所の創設前の審査請求手続における審理の範囲については、「総所得金額に対する課税の当否を判断するに必要な事項全般に及ぶ」(最判昭和49年4月18日訟月20巻11号175頁)として総額主義の立場が採られていたが、国税不服審判所の創設に関する国税通則法改正に当たって、参議院大蔵委員会は、昭和45年3月24日、「政府は、国税不服審判所の運営に当つては、その使命が納税者の権利救済にあることに則り、総額主義に偏することなく、争点主義の精神をいかし、その趣旨徹底に遺憾なきを期すべきである。」との附帯決議を行った。 この附帯決議の趣旨は、国税不服審判所において「新たな調査は争点で、審理は総額で」という争点主義的運営によって具体化されてきたが、これは、国税不服審判所を原処分の維持や課税漏れの発見のために運営するのではなく、納税者の権利救済の観点から、審査請求人たる納税者が自己の正当な権利利益を安心して主張することができるようにするために、総額主義による審理に一定の制限を加えようとする運営のあり方であると解される。なお、同様の試みは訴訟においても可能である。すなわち、訴訟技術論としては、総額主義の下で処分理由の差替えに係る国側(税務官庁)の主張を制限することによっても、課税処分取消訴訟のいわば「争点主義的運営」が可能である。 次に、「基本的課税要件事実の同一性論」ともいうべき考え方を挙げることができる。これは、納税者の権利救済を重視して争点主義の立場を基本にしつつ、基本的な課税要件事実の同一性が失われない限りにおいてのみ、理由の差替えを認めるという考え方(【165】、金子宏『租税法〔第22版〕』(弘文堂・2017年)1008頁参照。なお、最判昭和56年7月14日民集35巻5号901頁の傍論的判示も参照)であり、これを採用したものと解される裁判例もある。 東京地判平成22年3月5日税資260号順号11392/裁判所ウェブサイトは次のように判示している(下線筆者。同控訴審・東京高判平成22年12月15日税資260号順号1157/裁判所ウェブサイトもこれを基本的に引用し是認した)。   Ⅳ まとめ 租税債務関係説のパラドックスは、以上で述べたように、課税処分取消訴訟における総額主義及び弁論主義との結びつきによって要件裁量が結果的に容認されることになる現象であり、手続的保障原則の観点から、その克服が試みられてきた。その克服の試みとして、国税不服審判所の争点主義的運営や基本的課税要件事実の同一性論という制度的あるいは理論的な試みを若干検討した。 租税債務関係説のパラドックスを克服するためには、それらの制度的・理論的試みに加えて、納税者の側からは、課税処分取消訴訟において課税要件事実の認定に関する国側(税務官庁)の主張・立証に十分に対抗し得る説得力ある主張・立証(対等な攻撃防御)を尽くすことによって、事実認定に関する税務官庁の裁量の余地を狭め、以て、前回みた課税要件法の解釈の場面での要件裁量否定論の主張と相俟って、要件判断全体を通じて税務官庁の要件裁量の余地を狭めることを試みるべきであろう。 (了)

#No. 295(掲載号)
#谷口 勢津夫
2018/11/22

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【第1回】「法人税の課税所得計算と損金経理(その1)」

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【第1回】 「法人税の課税所得計算と損金経理(その1)」   国際医療福祉大学大学院准教授 税理士 安部 和彦   (※1) 平成30年度予算ベース(国税及び地方税合計103兆1,506億円)で、法人税・法人住民税・法人事業税の占める割合は21.5%である。 (1) 益金と損金の意義 それでは、そもそも「損金経理」とは何だろうか。これを理解するために、まずは「益金」及び「損金」の意義からみていきたい。 法人税の課税標準は、法人の各事業年度における所得の金額である(法法21)。ここでいう「所得」については、法人税法では、次の第22条においてその算定方法に関する基本的な原則を示した規定を置いている。 法人税法第22条の全体像は以下の表の通りとなる。 〇法人税法第22条の全体像 第22条では、まず「所得」については、各事業年度の益金の額から損金の額を控除した金額とする、と定義している(法法22①)。これは、企業会計における法人の利益の算定方法である損益法、すなわち、一定期間における収益から費用を控除して利益を算定する方法に対応している。この関係を図示すると以下の通りとなる。 〇法人税法における所得と企業会計における利益との関係 上図の通り、益金と収益、損金と費用、所得と利益とはそれぞれ対応関係にあるが、異なる用語を用いているのは、類似しているとはいえ概念が異なるからである(※2)。損金と費用の具体的な相違点については、本連載において事例を交えながら詳述していきたい。 (※2) 金子宏『租税法(第二十二版)』(弘文堂・2017年)320頁。 まず「益金」とは何かをみていくと、第22条第2項によれば、別段の定めのあるものを除き、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受け、その他の取引で、資本等取引以外のものに係るその事業年度の収益をいう、とされている。当該益金は、所得税法にいう「収入金額」に相当するものと解される(所法36)。 次に、法人税法において「損金」の意義を規定しているのは、第22条第3項である。そこでは、損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、以下の各号に掲げる額とする、と規定されている(①~③にそれぞれ矢印(⇒)で示された用語は、企業会計における対応する用語である)。 ここから、損金というのは、費用のみならず損失を含めた広い概念であるということが言える。所得税法に言う「必要経費」及び「資産の取得費」に相当するものと解される(所法37、38)。 また、損金に該当するためには、必要性(necessary expense)の要件を満たせば十分であり、通常性(ordinary expense)の要件を満たす必要はないというのが通説である(※3)。そこから、通常性の要件を満たさない不法ないし違法な支出も、それが利益を得るために直接に必要なものである限り、損金に算入されることとなる。 (※3) 金子前掲(※2)書325頁。 しかし、不動産売買業を営む法人が架空造成費を計上して所得を圧縮する場合のように、架空の経費を計上して所得を秘匿するために要した支出は、所得を生み出すための支出とは言えず、公正処理基準(法法22④)に照らして否定されるべきものであるから、損金には算入されない(最高裁平成6年9月16日決定・刑集48巻6号357頁)。 なお、上記最高裁決定において損金性を否認する際の根拠とした「公正処理基準」とは、法人の各事業年度の所得の計算は原則として企業会計に準拠して行われるべきこと(企業会計準拠主義)を定めた法人税法の基本規定を指す(法法22④、前掲表参照)。   (2) 企業会計準拠主義と「別段の定め」 益金及び損金を規定する法人税法22条2項・3項には「別段の定め」という文言が付されているが、当該文言は法人税法の解釈上、極めて重要な意義を有する。すなわち、別段の定めは、法人税の課税所得計算の原則を定めた第22条の規定に優先して適用されるという関係にあるのである。したがって、法人の課税所得計算は、「別段の定め」があるもの以外についてのみ、企業会計における計算ルールに依拠すること(企業会計準拠主義)になるのである。 わが国の法人税法において企業会計準拠主義が採用(※4)された理由は、一般に、法人の利益(企業会計)と法人の所得(税務会計)とが概ね共通の概念であることから、二度手間を避ける(計算経済性)という意味で、当該手法が採用されたものと解されている(※5)。また、公正処理基準と企業会計準拠主義は、会計基準と法人所得計算との間において一定の調和を図り、便宜性向上や恣意的な課税所得算定の余地を狭め、もって適正な所得算定に寄与するという性格を現在においても有するといえるだろう(※6)。 (※4) 昭和42年度の税制改正で規定された。 (※5) 金子前掲(※2)書330-331頁。 (※6) 濱田洋「国際化の中の確定決算主義」『租税法研究』40号68頁。 一方、このような企業会計準則主義を修正する「別段の定め」とは、具体的にどのような規定を指すのであろうか。別段の定めは、法人税法のみならず租税特別措置法にも規定があるので注意を要する。 まず法人税法の規定においては、第23条(受取配当等の益金不算入)から第64条の4(公益法人等が普通法人に移行する場合の所得の金額の特例)までと、第81条の4(連結法人の受取配当等の益金不算入)から第81条の10(特定株主等によって支配された欠損等連結法人の連結欠損金の繰越しの不適用)を指すものと考えられる。さらに租税特別措置法においては、第42条の4(試験研究を行った場合の法人税額の特別控除)から第68条の3の4(課税所得の範囲の変更等の場合の特例)までと、第68条の9(連結法人が試験研究を行った場合の法人税額の特別控除)から第68条の96(認定特定非営利活動法人等に対する寄附金の損金算入の特例)を指すものと考えられる。 このように、法人税法は相当なボリュームの別段の定めを有することから、これを「別段の定めの集合体」と称することもある(※7)。 (※7) 渡辺徹也『スタンダード法人税法』(弘文堂・2018年)35頁。 別段の定めは、益金に関する規定もあれば損金に関する規定もある。そのうち損金に関する主たる規定(法人税法第2編第1章第1節第4款(損金の額の計算))は以下の表のとおりであり、本連載で今後適宜触れることになると思われる。 〇損金の額の計算に関する主たる「別段の定め」 (出典) 増井良啓『租税法入門』(有斐閣・2014年)251頁 (※8) 法人税法31条(減価償却資産の償却費の計算及びその償却方法)は同法22条3項の費用計上の要件を定めたもので、別段の定めではないとする見解もある。酒井克彦『プログレッシブ税務会計論Ⅱ』(中央経済社・2016年)130頁参照。 ところで、各事業年度の所得の金額の細目に関する政令への委任を定めた法人税法65条は、果たして「別段の定め」に該当するのであろうか。 これについて通説では、65条は22条から64条の4までにかかる補足的な定め(技術的細目的事項)を政令に委任したものであり、当該規定をもって政令によって新たな「別段の定め」をすることができるものではないとしている(※9)。この点につき、裁判例では以下の通り判示している(大阪高裁平成21年10月16日判決・訴月57巻2号318頁)。 (※9) 渡辺前掲(※7)書34頁。 (了)

#No. 295(掲載号)
#安部 和彦
2018/11/22
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