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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第42回】「資本関係のない会社間での事業譲渡」

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第42回】 「資本関係のない会社間での事業譲渡」   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋   【はじめに】 今回は、資本関係のない会社間での事業譲渡を解説する。分離先企業(買手)にとっては、事業譲渡の範囲を契約で定めることで、帳簿外にある債務(簿外債務、偶発債務等)を引き継ぐことを防止できる。 ※各ステップをクリックすると、それぞれのページに移動します。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 事業を譲渡する側である分離元企業の個別財務諸表における会計処理は、以下のとおりである。 子会社や関連会社以外を分離先企業として、現金等の財産のみを受取対価として行われる事業譲渡は、移転事業に対する投資が精算されたものとして会計処理する。具体的には、以下のとおりである。 事業譲渡日の前日に決算又は仮決算を行い、事業譲渡に係る資産及び負債の適正な帳簿価額を確定させる(企業会計基準第7号「事業分離等に関する会計基準(以下、「事業分離基準」という)10、77)。そして、原則として対価である現金等の財産を時価により計上し、この時価と移転事業に係る株主資本相当額の差額を移転損益として計上する(事業分離基準16、企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針(以下「指針」という)96(1))。 【留意点】 現金等の財産のみを対価として事業譲渡を行った場合であっても、以下のように分離元企業の重要な継続的関与によって、分離元企業が移転した事業に係る成果の変動性を従来と同様に負っている場合には、投資が精算されたとみなされず、移転損益を計上できない(指針96(1))。 ➤移転した事業に対し買戻しの条件が付されている場合 ➤移転した事業から生じる財貨又はサービスの長期購入契約により当該事業のほとんどすべてのコスト(当該事業の取得価額相当額を含む)を負担する場合 重要な継続的関与があるため、受取対価に現金を含むが移転損益を認識しない場合には、移転した事業を裏付けとする金融取引として会計処理する(事業分離基準76)。    事業を譲り受ける側である分離先企業の個別財務諸表における会計処理は、以下のとおりである。 分離先企業にとっては、取得(【第39回】参照)による事業譲受となる。したがって、取得した事業の取得原価は、現金の支出額となる(指針44)。 そして、取得原価を受け入れた資産・負債のうち、事業譲渡の日において識別可能なものに対して、時価を基礎として配分し、取得原価の配分額との差額をのれん(又は負ののれん)とする(指針51)。 分離元企業と分離先企業に資本関係はないことから、事業分離による分離元企業及び分離先企業の連結財務諸表への影響はない。したがって、連結財務諸表では分離元企業及び分離先企業ともに会計処理は不要である。 なお、分離元企業の株主、分離先企業の株主においても特段の会計処理は必要ない。   《設例》 X社は資本関係のないY社に現金を対価(10,000)として、A事業を譲渡した。 当該事業譲渡はY社によるA事業の取得に該当する。 X社のA事業の事業譲渡日前日の貸借対照表は以下のとおりである。 土地の時価は2,000である。 〈会計処理〉 1 分離元企業X社の会計処理 (※1) 帳簿価額 (※2) 差額 2 分離先企業Y社の会計処理 (※3) 時価 (※4) 差額 3 連結財務諸表における会計処理 事業分離年度において、共通支配下の取引や共同支配企業の形成に該当しない重要な事業分離を行った場合、分離元企業は以下の事項を注記する。 なお、個々の取引については重要性が乏しいが、事業分離年度における取引全体について重要性がある場合には、以下の(1)及び(2)について、当該取引全体で注記する。 また、連結財務諸表における注記と個別財務諸表における注記が同じとなる場合には、個別財務諸表においては、連結財務諸表に当該注記がある旨の記載をもって代えることができる(事業分離基準28)。 分離元企業は、貸借対照表日後に完了した事業分離や貸借対照表日後に主要条件が合意された事業分離が、重要な後発事象に該当する場合には、上記に準じて注記を行う(ただし、貸借対照表日後に主要条件が合意された事業分離にあっては、上記(1)及び(3)に限る)。 また、当事業年度中に事業分離の主要条件が合意されたが、貸借対照表日までに事業分離が完了していない場合(ただし、重要な後発事象に該当する場合を除く)についても、上記(1)及び(3)に準じて注記を行う(事業分離基準30)。 なお、計算書類では、上記のような注記は必ずしも求められていない。 *  *  * 以上、4のステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。 (了)

#No. 283(掲載号)
#西田 友洋
2018/08/30

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第142回】企業結合会計⑩「現物配当」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第142回】 企業結合会計⑩ 「現物配当」   仰星監査法人 公認会計士 永井 智恵     〈事例による解説〉 〈会計処理〉 ① A社の会計処理 (※) A社におけるB社株式の簿価50×B社におけるC社株式の簿価40/B社の純資産額(50+150)=10 ② B社の会計処理   〈会計処理の解説〉 株主が現金以外の財産の分配を受けた場合、交換等の一般的な会計処理の考え方に準じて、原則として、これまで保有していた株式が実質的に引き換えられたものとみなして、会計処理します(事業分離会計基準143項)。 本事例においては、上図の通りA社にとって、従来はB社を通してのC社への間接投資が、B社によるC社株式の現物配当によりC社への直接投資になったに過ぎません。そのため、A社にとっては、投資の継続性が認められます。 A社では、これまで保有していたB社株式の帳簿価額のうち、実質的にC社株式に引き換えられたものとみなして算定された金額でC社株式を計上します(①の仕訳を参照)。 このとき、A社においてB社株式のC社株式との引き換えからは損益は認識されません。 実質的にC社株式に引き換えられたものとみなされるB社株式の金額の算定方法には、本事例のように関連する帳簿価額の比率で按分する方法のほか、関連する時価の比率で按分する方法や時価総額の比率で按分する方法が考えられます(企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」295項、参照)。 一方でB社では、配当原資が繰越利益剰余金であるため、C社株式の帳簿価額をもって繰越利益剰余金を減少させます(②の仕訳を参照)。 このときも、企業集団内の企業に対する配当であるため、B社において損益は認識されません。 なお、現物配当であっても会社法上の分配可能額の規制の対象となりますので、剰余金の分配可能額の範囲内で行わなければならないことに留意しなければいけません。   (了)

#No. 283(掲載号)
#永井 智恵
2018/08/30

土地問題をめぐる2018年法改正のポイント 【第2回】「今後の所有者不明土地対策の動向・改正都市再生特措法等の概要」

土地問題をめぐる2018年法改正のポイント 【第2回】 「今後の所有者不明土地対策の動向・改正都市再生特措法等の概要」   弁護士 羽柴 研吾   1 所有者不明の土地問題が民事基本法制に与える影響 (1) 所有者不明土地特措法の位置付け 政府は、2018年6月1日、所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議を開催し、「所有者不明土地等対策の推進に関する基本方針」(以下「所有者不明土地対策基本方針」という)を公表した。この基本方針は、同月15日の閣議決定「経済財政運営と改革の基本方針2018について」においても確認されている。 所有者不明土地対策基本方針は、全8項目から構成されている。 ① 国会提出法案の円滑な施行 ② 土地所有に関する基本制度の見直し ③ 地籍調査等の着実な実施、登記所備付地図の整備 ④ 変則型登記の解消 ⑤ 登記制度・土地所有権等の在り方、相続登記の促進 ⑥ 所有者不明土地の円滑な利活用、土地収用の活用及び運用 ⑦ 土地所有者情報を円滑に把握する仕組み ⑧ 関連分野の専門家等との連携協力 上記①の国会提出法案は、所有者不明土地特措法(前回参照)を意味しており、このことからも分かるように、所有者不明土地特措法は、政府が取り組む所有者不明の土地問題の一部をなすものである。 また、所有者不明土地対策基本方針には、「所有者不明土地等問題 対策推進のための工程表」も添付されており、土地所有に関する基本制度や民事基本法制の見直し等の重要課題については、2018年中に制度改正の具体的方向性を提示した上で、2020年までに必要な制度改正を実現するものとされている。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (※) 国土交通省ウェブサイトより (2) 注目すべき検討事項 所有者不明土地対策基本方針で言及されている民事基本法制の見直しは、従来の物権法の基礎理論に大きな転換を迫る内容を含むものである。債権法の改正、相続法の改正に続く民事基本法制の大きな改正となりうることから、実務家としては、その動向に注視しておく必要がある。そこで、注目すべき検討事項3点について若干言及しておきたい。   2 都市再生特別措置法等改正法の概要 都市再生特別措置等改正法は、都市のスポンジ化対策として、3つの観点から新たな仕組みを設けている。その主な内容は、次のとおりである。 (1) 低未利用地の集約等による利用の促進(都市再生特別措置法及び都市開発資金の貸付けに関する法律関係) ① 「低未利用土地権利設定等促進計画制度」の創設 この制度は、低未利用土地の所有権にこだわらず、使用権を設定するなどして低未利用土地を集約するための制度である。そのイメージは、次の図のとおりである。 (※) 国土交通省ウェブサイトから抜粋 市町村は、立地適正化計画に記載された低未利用土地権利設定等促進事業区域内において、当該事業を行おうするときは、低未利用土地権利設定等促進計画を作成することになる。そして、当該計画の公告があったときに、当該計画に定めるところによって、地上権、賃借権、使用貸借による権利の設定・移転又は所有権の移転が生じることになる。 また、市町村は、立地適正化計画に低未利用土地利用等指針を作成し、低未利用地の管理について、地権者に対して勧告することが可能となった。 ② 都市再生推進法人の業務に、低未利用地の一時保有等を追加 まちづくり団体等の都市再生推進法人の業務に、低未利用地の一時利用等が追加された。 ③ 土地区画整理事業の集約換地の特例 低未利用土地を柔軟に集約し、まちの顔となるような商業施設や医療施設等の敷地を確保しやすくするために、土地区画整理事業の集約換地の特例が設けられた。なお、この特例に基づく換地を実現するために、土地区画整理事業への都市開発資金の無利子貸付けの活用を図ることとされている。 (2) 身の回りの公共空間の創出(都市再生特別措置法及び都市計画法関係) ① 「立地誘導促進施設協定制度」の創設 本制度は、土地所有者等の全員の合意によって、空き地や空き家を活用して交流広場、コミュニティ施設等を整備・監理するための制度である。 本協定には、協定の公告をした後に立地誘導促進施設協定の区域内の土地の所有者になった者にも効力を及ぼさせる「承継効」が認められている点に特徴がある。 また、当該協定に反対する土地所有者等がいる場合に、賛成する土地所有者等が、市町村に対して、当該協定への参加に反対する土地所有者等に働きかけることを要請できるものとされている。 ② 「都市計画協力団体制度」の創設 住民団体や商店街組合のような団体を、市町村長が「都市計画協力団体」として指定することによって、当該団体は、都市計画の決定や変更を提案することができることになった。 (3) 都市機能のマネジメント(都市再生特別措置法及び都市計画法関係) ① 「都市施設等整備協定制度」の創設 本制度は、都道府県や市町村が都市計画を定める際に、当該計画に係る都市施設等の整備を行うものと見込まれる者と協定を締結し、これが公告されることによって、当該施設整備予定者に対する開発行為の許可があったものとみなす制度である。 ② 誘導すべき施設(商業施設、医療施設等)の休廃止届出制度の創設 立地適正化計画に記載された都市機能誘導区域内において、都市機能誘導区域に係る誘導施設の休止や廃止をする場合に、市町村長に対する届出義務が創設された。 (4) その他都市の遊休空間の活用による安全性・利便性の向上(都市再生特別措置法、都市計画法及び建築基準法関係) 都市の遊休空間の活用による安全性・利便性を向上するために、①公共公益施設の転用の柔軟化、②駐車施設の附置義務の適正化、③立体道路制度の適用対象の拡充が行われている。 (5) 施行時期 都市再生特別措置法等改正法は2018年7月15日から施行されている。 (連載了)

#No. 283(掲載号)
#羽柴 研吾
2018/08/30

改正法案からみた民法(相続法制)のポイント 【第8回】「家事事件手続法の見直し」

改正法案からみた 民法(相続法制)のポイント 【第8回】 (最終回) 「家事事件手続法の見直し」   弁護士 阪本 敬幸   最終回となる今回は、相続法改正に伴う家事事件手続法の改正について確認する。   1 はじめに 民法改正に伴い、家事事件手続法も重要な点として2点の改正が行われることとなった。 1点目は、預貯金債権の仮分割の仮処分(以下、「仮払仮処分」という)制度(改正家事事件手続法200条3項)の新設である。最高裁平成28年12月19日決定により、預貯金債権が遺産分割の対象とされることとなった。もっとも、生活費・相続債務の弁済・葬儀費用等の支払のために、預貯金債権を行使すべき必要性が存在する場合もあることから、新たに仮払仮処分の制度が設けられることとなった。 2点目は、特別の寄与に関する審判事件に関する定めの新設である。本連載【第7回】でも解説した通り、相続法改正により、特別寄与者による特別寄与料請求制度が新設され(法案1050条)、特別寄与者・相続人間で特別寄与料の支払に関する協議が成立しない場合には、家庭裁判所が協議に代わる処分を行うこととなった。これを受けて、家事事件手続法においても、特別の寄与に関する審判に関する定めが新設されることとなった。 その他、民法改正による表現の変更に伴い、家事事件手続法における表現も若干修正された。   2 仮払仮処分制度について (1) はじめに 上記の通り、預貯金債権は相続により当然分割されず、遺産分割等の対象となることとなった。このため、預貯金債権については、遺産分割が終了するまで、共同相続人全員で行使しなければならないこととなり、葬儀費用や共同相続人の生活費等の、早急に必要な支払ができないという不都合が生じることとなった。 この不都合に対応するための1つの方策として、相続開始時に存在した預貯金債権額の3分の1に各相続人の相続分を乗じた額について、各相続人が単独で行使できるようにする旨の改正がなされた(法案909条の2)ことは、本連載【第4回】で解説した通りである。 不都合に対応するもう1つの方策が、仮払仮処分制度の新設である。現行法上、遺産の仮分割仮処分制度に関する規定(家事事件手続法200条2項)はあるが、同制度は事件の関係人の「急迫の危険の防止」の必要性という厳しい要件が要求されていることから、緩和された要件の下で、預貯金債権に限って仮払を認める制度が新設されることとなった。 (2) 仮払仮処分の要件 (3) 仮払仮処分が認められた場合の効果 裁判所は、仮払の必要を認めたときは、遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部を、仮払仮処分の申立人に対し仮に取得させることができる。 仮払の必要がある場合に預貯金債権の全部を仮に取得させることができるということは、仮払の額は必ずしも申立人の法定相続分に限定されることはないということである。例えば、相続債務の支払のために仮払が必要なときなどには、法定相続分を超えた額の仮払がなされることもあり得る。 なお、この処分は仮処分であるから、本案における遺産分割においては、仮処分の事実を考慮することなく、仮払された預貯金債権を含め、遺産分割の調停・審判が行われる。 もっとも、仮払によって特定の相続人が預貯金債権を取得し、金融機関から実際に支払を受けた場合、金融機関との関係では有効な弁済となるから、その後の調停・審判の中で仮払仮処分と異なる判断がなされたとしても、弁済の有効性が事後的に覆る余地はないと考えられる。   3 特別の寄与に関する審判事件に関する定めについて (1) 特別の寄与に関する民法上の定め 詳細は本連載【第7回】に記載した通りだが、特別寄与者と相続人との間で、特別寄与料に関する協議が調わず、又は協議ができないときは、特別寄与者は家庭裁判所に対し協議に代わる処分を請求することができ(法案1050条2項)、家庭裁判所は寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して特別寄与料の額を定めるとされた(法案1050条3項)。 (2) 家事事件手続法の定め (連載了)

#No. 283(掲載号)
#阪本 敬幸
2018/08/30

プロフェッションジャーナル No.282が公開されました!~今週のお薦め記事~

2018年8月23日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.282を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2018/08/23

山本守之の法人税“一刀両断” 【第50回】「「リバースモーゲージ」と「ビアジェ」」

山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第50回】 「「リバースモーゲージ」と「ビアジェ」」   税理士 山本 守之   1 リバースモーゲージ 自宅を担保に老後資金を借り入れる「リバースモーゲージ」という制度があります。この制度は、持ち家のある高齢者が、その家を担保に老後の生活費などを一時金または年金形式で借りられる貸付制度です。この制度を使って自宅にそのまま住み続けながら生活費を確保することができます。長寿社会の老後破綻を回避する方法のひとつです。 しかし、この制度はあまり広がっていません。どうしてでしょうか。 【リバースモーゲージが成立しなかった場合】 Bさんは、栃木県宇都宮市で夫であるAさんと2人暮らしをしていましたが、Aさんが病気で死亡しました。Bさんは長男であるCさんと一緒に住むつもりはありません。そこで、Bさんは宇都宮にある住居を担保に融資を受け、その資金を介護施設の入居費用に充てるつもりでした。 Bさんは、家を失うことなく生活費を調整したかったのですが、リバースモーゲージは成立しませんでした。Bさんの場合、担保価値が少なかったのが原因でした。 日本の住居(融資対象)の大部分は木造で、家屋の大半は担保として評価されず、土地に準じて不動産評価額が決められることが常です。すると、リバースモーゲージは成立しない場合があります。 リバースモーゲージには次のようなリスクがあります。 ①~③の状況により、担保割れにつながる恐れがあるため、金融機関が融資額を固めに設定するのです。 この制度のメリットは、自宅を売却することで融資が受けられるという点です。建物は担保価値がないと考えられているので、一般的にマンションは対象外のところがあります。また、子供などの推定相続人の同意が必要になります。 将来の相続も見据える必要から、相続人である子供などが拒否する場合、リバースモーゲージは使えないことがあります。 【リバースモーゲージが成立した場合】 Dさんは東京都港区に住居(一戸建)60坪を持っています。60歳で妻と2人で暮らしています。これからは2人で趣味の旅行を楽しみながら生活したいと思い、リバースモーゲージを申し込みました。 Dさんに収入はありませんが、立地条件が良く担保価値は十分あるので、リバースモーゲージが成立しました。死亡後に売却する場合、貸主にとって危険がなかったためです。   2 ビアジェ フランスでは「ビアジェ」という権利があります。これは、高齢者が不動産(自宅など)に住み続けながら行える所有不動産の売却システムです。 買い手は初期費用に加え、売り手の死亡時まで定期的に支払を行います。売り手は、ゆとりある老後を送るために定期的な収入を受け取れるのです。 買い手のメリットは、売り手が早く死亡すると定期支払金を払わなくてよくなるので、通常よりも低い価格で不動産を取得できることです。 初期費用と定期支払金の金額は、通常の不動産売買と同様に、不動産の価格の鑑定から行い、売り手がその家に住み続けるのであれば、売り手の年齢から計算して平均余命を元に価格を設定します。 事例1 ビアジェを利用し得をしたEさんの場合 総支払額は一時金と合せて56,000€でした。Eさんは市場価額からみて割安でこの物件を買ったことになります。 一方、高齢のHさんのような取引もあります。 事例2 ビアジェを利用し損をしたGさんの場合 Hさんは84歳と高齢であり、物件はパリ屈指の16区と好立地なので、Gさんの毎月の支払額は5,000€と高額でした。このマンションの市場価格は60万€なので、Hさんが8年以内に亡くなればGさんの得となりましたが、Hさんは100歳で亡くなったので、Gさんの支払総額は一時金と合わせて108万€となり、大損になりました。 いつ亡くなるかは誰にも分からないので、早く物件を手に入れて得をするかもしれないし、すごく長生きして損をしてしまうかもしれないのです。そのため、ビアジェの前には健康調査が行われることも多いのです。   3 検討すること 日本のリバースモーゲージはあくまで銀行や国(地方自治体)の融資ですが、フランスのビアジェは物件の譲渡ですので、損得は当然あります。 どちらの方法が良いかは条件にもよりますが、日本ではビアジェは使えません。日本の制度が融資だけにとどまるので、フランスに比べて遅れていると批判されてもしかたありません。 (了)

#No. 282(掲載号)
#山本 守之
2018/08/23

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第51回】

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第51回】   公認会計士 佐藤 信祐   (《第8章》 平成18年から平成21年までの議論) ⑩ 主要な資産及び負債がない場合 拙著『組織再編における税制適格要件の実務Q&A(第3版)』(中央経済社)242-243頁では、ほとんど資産及び負債がない場合であっても、ノウハウや顧客名簿などの無形資産があったり、事業に付随する偶発債務があったりする場合には、これらを移転すれば、主要資産等引継要件を満たすことができるとした。 資産及び負債に含み損益がない場合には、適格分割であっても、非適格分割であっても、譲渡損益が実現しないはずである。そのため、ほとんど資産及び負債がない場合において、実務上、譲渡損益が発生する事案として問題とされているのは、のれんに対する譲渡損益を実現させる場合である。 このような場合には、のれんに相当する重要な無形資産が移転していると考えられるため、事業単位の移転という制度趣旨からしても、現在も同様に解すべきであると思われる。 ⑪ 事業に関連性のない資産の移転 前掲の拙著244頁では、分割事業に係る主要な資産及び負債を移転させる必要があるものの、それ以外の資産及び負債を移転させることについては制約がないため、事業に関連性のない資産の移転については主要資産等引継要件に抵触しないものとした。ただし、移転する資産の含み益と分割承継法人の繰越欠損金を相殺することを目的としている場合には、包括的租税回避防止規定(法法132の2)のリスクがあるものとした。 事業単位の移転という制度趣旨からすれば、事業単位の移転の範疇から外れるような事業に関連性のない資産の移転により、法人税の負担を不当に減少させる行為については、包括的租税回避防止規定が適用されるリスクがあると考えられる。 ⑫ 分割事業とそれ以外の事業に従事している者の取扱い 実務上、分割事業のみに従事している者やそれ以外の事業のみに従事している者だけでなく、分割事業とそれ以外の事業の両方に従事している従業者も存在する。会社分割における従業者引継要件の判定は、分割事業の従業者を引き継いでいるかどうかで判定することから、分割事業に係る従業者をどのように判定すべきかが問題になる。 この点につき、法人税基本通達1-4-4では、「分割事業とその他の事業とのいずれにも従事している者については、主として当該分割事業に従事しているかどうかにより判定する」ことが明らかにされているが、具体的にどのような場合に「主として当該分割事業に従事している」ということができるのかは明らかにされていないからである。 そのため、前掲の拙著246-248頁では、「分割会社及び承継会社等が講ずべき当該分割会社が締結している労働契約及び労働協約の承継に関する措置の適切な実施を図るための指針(平成12年労働省告示第127号)」において、以下のように定められていることから、法人税法における従業者引継要件の判定においても参考にすべきであるとした。 すでに本連載でも解説したが、平成13年当時において、従業者引継要件が労働承継法を意識しながら運用されていたことからも、現在においても同様に解すべきであると考えられる。 ⑬ 事業の一部のみの移転 実務上、飲食業を営んでいる法人が北海道事業部のみを分社型分割により移転させる場合には、飲食業という事業の一部とそれに係る一部の資産及び負債、従業者が移転するため、主要資産等引継要件、従業者引継要件及び事業継続要件に抵触するのではないかという議論があった。 そこで、前掲の拙著256-257頁では、以下のように解説を行った。 50%超100%未満グループ内で行われる組織再編成であっても、事業単位の移転が行われているものであれば、税制適格要件を満たすものと整理したことから、対象となる分割事業が事業として認められるのであれば、税制適格要件に抵触させるべきではないため、現在においても同様に解すべきであると考えられる。 前述のように、実務で問題となっていたのは、北海道事業のみを移転させる場合である。しかし、平成19年度税制改正により、事業関連性要件における関連性の範囲がかなり広いことが明らかになったため、理論上、建設業と不動産賃貸業を営んでいる法人が、不動産賃貸業のみを移転させる事案であっても、同様に考えるべきであることが明らかになった。 そのように考えると、分割法人に残る事業(建設業)と一体的に営まれている分割事業(不動産賃貸業)を移転することが事業単位の移転ではないと解してしまうと、全部の事業を移転する場合を除き、税制適格要件を満たさないという不都合が生じる。そう考えると、北海道事業のみを移転した場合に、税制適格要件に抵触するという議論が生じることは、今後は考えにくいと思われる。 *   *   * 次回では、繰越欠損金、特定資産譲渡等損失の内容について触れる予定である。 (了)

#No. 282(掲載号)
#佐藤 信祐
2018/08/23

〈平成30年度改正対応〉賃上げ・投資促進税制(旧・所得拡大促進税制)の適用上の留意点Q&A 【Q7】「教育訓練費、比較教育訓練費、中小企業比較教育訓練費の意義」

〈平成30年度改正対応〉 賃上げ・投資促進税制(旧・所得拡大促進税制)の 適用上の留意点Q&A 【Q7】 「教育訓練費、比較教育訓練費、中小企業比較教育訓練費の意義」   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   [Q7] 平成30年度の税制改正によって新たに設けられた、上乗せ控除のための要件とされている教育訓練費の取扱いについて教えて下さい。   [A7] ◆教育訓練費の範囲は、①自社実施、②他者委託、③他者実施研修等への参加の各ケースについて定められています。 ◆比較教育訓練費は大企業向け、中小企業比較教育訓練費は中小企業者等向けの上乗せ控除制度の適用要件として用いられます。 ◆比較教育訓練費は過去2年平均、中小企業比較教育訓練費は前年度の教育訓練費の額を基礎に算定します。 【解説】 (1) 上乗せ控除のための適用要件 改正後の制度では、人材投資に積極的な企業に対して、税額控除の上乗せ措置を講じることとされており、そのための要件は大企業と中小企業者等で下表のように異なる。 大企業については教育訓練費の要件のみ定められており(措法42の12の5①三)、中小企業者等については継続雇用者給与等支給額の要件及び、教育訓練費の要件又は経営力向上の要件のいずれかを満たすことが必要である(同②二)。 (2) 教育訓練費の意義 所得拡大促進税制における「教育訓練費」とは、法人がその国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるために支出する一定の費用とされ(措法42の12の5③十)、具体的には以下のような費用が該当する(措令27の12の5⑱、措規20の10③~⑤)。 また、教育訓練費とならない費用についても、経済産業省から公表されているガイドブックの中で、以下のように明示されている。 上で示された教育訓練費の範囲は、平成17年4月1日から平成20年3月31日まで(中小企業者等については平成24年3月31日まで)の間に開始する事業年度において適用されていた「人材投資促進税制」(教育訓練費が増加した場合の法人税額の特別控除)における教育訓練費の範囲とほぼ同じであるが、当時の制度で含まれていた「教科書その他の教材費(H17措令27の12③四)」は除外されている。 なお、対象となる教育訓練等は「国内雇用者」に対するものに限られるから、受講者の範囲についても留意が必要である。 (3) 比較教育訓練費の意義 比較教育訓練費とは、法人の適用年度開始の日前2年以内に開始した各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される教育訓練費の額の合計額を当該2年以内に開始した各事業年度の数で除して計算した金額をいい(措法42の12の5③十一)、大企業向けの上乗せ控除制度の適用要件の判定に用いられる。 この点に関し、当該2年以内に開始した各事業年度の月数と適用年度の月数が異なる場合には、当該教育訓練費の額に当該適用年度の月数を乗じてこれを当該各事業年度の月数で除して計算した金額に補正される(月数補正)。 なお、比較教育訓練費の額がゼロである場合には、適用年度の教育訓練費の状況に応じて以下のように取り扱われる(措令27の12の5㉓)。 したがって、過去において教育訓練費の支出がなく、当事業年度(適用年度)に初めて教育訓練費を支出する場合には、比較教育訓練費に係る要件を満たすものとして、上乗せ控除の適用を受けることができる。 (4) 中小企業比較教育訓練費の意義 中小企業比較教育訓練費とは、中小企業者等の適用年度開始の日前1年以内に開始した各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される教育訓練費の額の合計額を当該1年以内に開始した各事業年度の数で除して計算した金額をいい(措法42の12の5③十二)、中小企業者等向けの上乗せ控除制度の適用要件の判定に用いられる。 この点に関し、当該各事業年度の月数と適用年度の月数が異なる場合には、当該教育訓練費の額に当該適用年度の月数を乗じてこれを当該各事業年度の月数で除して計算した金額に補正される(月数補正)。 なお、中小企業比較教育訓練費の額がゼロである場合には、適用年度の教育訓練費の状況に応じて以下のように取り扱われる(措令27の12の5㉔)。 したがって、過去において教育訓練費の支出がなく、当事業年度(適用年度)に初めて教育訓練費を支出する場合には、中小企業比較教育訓練費に係る要件を満たすものとして、上乗せ控除の適用を受けることができる。 (5) 新制度適用初年度における比較教育訓練費及び中小企業比較教育訓練費の額の算定 法令上の定めはないが、経済産業省及び中小企業庁から公表されたガイドブックにおいて、新制度適用初年度における比較教育訓練費及び中小企業比較教育訓練費(以下「比較教育訓練費等」という)の額の算定方法に関する例外的な取扱いが示されている。 それによれば従来、教育訓練費に該当するものと該当しないものを区分して管理又は会計処理がされていない場合において比較教育訓練費等を計算する際には、当該年度分の教育訓練費について、教育訓練費を包含する費用について企業実態に即した合理的な方法(自社の定めによる教育訓練費の範囲)により計算することが認められることとされている。 ただし、このような計算は適用初年度のみ認められる点、及び、自社の定める教育訓練費の範囲の中に財務省令で定める教育訓練費の範囲((2)参照)の一部又は全部を含まないものが含まれている場合には、これによる計算は認められないので留意が必要である。 (6) 中小企業者等における上乗せ控除制度の選択適用 【Q6】で説明したとおり、中小企業者等は、上乗せ控除制度に関しては大企業向けの取扱いを選択することができ、その場合には、大企業向け上乗せ控除制度の要件を満たす必要がある(措法42の12の5③)。 このような選択適用が認められたのは、教育訓練費の水準によっては、前事業年度からの増加要件を満たすことはできなくても過去2年平均の金額からの増加要件を満たすことが考えられ、その場合には上乗せ控除率は低くなるが大企業向けの制度の適用を認めることにより、広く人材投資の促進機会を確保するためと考えられる。 (7) 添付書類 法人が、比較教育訓練費又は中小企業比較教育訓練費の要件を満たすものとして上乗せ控除制度の適用を受けようとする場合には、これらの規定の適用を受ける事業年度の確定申告書等に教育訓練費の明細を記載した書類を添付しなければならない(措令27の12の5⑲)。 当該明細書には特に定められた様式はないが、以下の事項を記載することが必要である(措規20の10⑥)。 (参考) 明細書のイメージ (出典) 経済産業省ホームページ「平成30年度創設賃上げ・生産性向上のための税制ご利用ガイドブック」 (8) 決算・申告上の留意点 以上説明したとおり、比較教育訓練費又は中小企業比較教育訓練費については、範囲の確認を含めて既に集計が可能であると考えられる。決算申告の時期を迎える前に、あらかじめ金額を集計し、上乗せ控除の適用を受けられるかどうかの事前検討をすることが望まれる。   (了)

#No. 282(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2018/08/23

平成30年度税制改正における「一般社団法人等に関する相続税・贈与税の見直し」 【第4回】

平成30年度税制改正における 「一般社団法人等に関する相続税・贈与税の見直し」 【第4回】   国際医療福祉大学大学院准教授 税理士 安部 和彦   (3) 平成30年度税制改正の内容 前回の(2)でみたような一般社団法人を用いた相続税・贈与税回避スキームに対する、平成30年度の税制改正の内容は以下の通りである。 ① 一般社団法人等(※1)に対する贈与税等の課税規定の明確化 (※1) 一般社団法人又は一般財団法人で、公益社団法人等の非営利型法人その他一定の法人を除く。 現行の相続税法によれば、個人から一般社団法人等に対して財産の贈与又は遺贈があった場合には、贈与等により、その贈与等を行った者の親族その他これらの者と特別の関係がある者の相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められるときには、その一般社団法人等を個人とみなして相続税又は贈与税が課税される(相法66④)。 ただし、次の要件を満たしている場合には、相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果になるとは認められないものとされる(相令33③)。 (※2) さらに、法令解釈通達(昭和39年6月9日直(審)24、直資77、平成20年課資2-8改正)「贈与税の非課税財産(公益を目的とする事業の用に供する財産に関する部分)及び持分の定めのない法人に対して財産の贈与等があった場合の取扱いについて」の「15 その運営組織が適正であるかどうかの判定」において、例えば、定款等に法人の理事の定数が6人以上、監事の定数が2人以上であることが定められていることというように、「運営組織が適正である」かどうかの判断基準が細かく規定されている。 前回の(1)で見たとおり、一般社団法人等は持分が存在しないため、相続発生前に被相続人がその財産を法人に贈与することにより移転してしまえば、原則として、相続時において当該財産につき相続税が課されないこととなる。このような取扱いは、一般社団法人等に被相続人がその財産を移転すれば、以後当該財産は被相続人や相続人の支配下から外れることを前提としていると考えられるが、実際には、財産移転後も一般社団法人等の運営を相続人やその親族が担っている場合には、当該財産を相続人等が引き続き支配し続けることが可能となっており、租税回避を許容しているとも考えられるところである。 このような場合、現行税制の下でも課税庁は、上記(イ)の要件を満たしていないものとして、贈与税を課税するという対抗措置を採り得る。しかし、上記規定の文理解釈上、「相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果になるとは認められない」場合とは、(ア)~(エ)の「いずれもすべて満たす」場合なのか、それとも「いずれか1つを満たす」場合なのか、必ずしも明確ではなかったところである。 仮に、後者であるとした場合、いずれか1つの要件を満たせば十分(不当減少に該当しない)ということになり、贈与税の課税はかなり限定されたケースにとどまることから、多くの租税回避事例が放置されるという不合理な結果となることが懸念されるところであった。 そこで、今回の改正においては、このような文理解釈上の不明確さを解消するため、相続税法施行令33条3項で規定する「相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果になるとは認められない」場合に挙げられた上記(ア)~(エ)の要件のうち、「いずれか1つでも満たさない」場合には課税されることが明確化されたところである(相令33④)。さらに、「贈与又は遺贈前3年以内に国税又は地方税について重加算税等を課されたことがないこと」という新たな要件も課されることとなった(相令33④三)。 そのため、例えば、理事の過半数が3親等内の親族により構成されている一般社団法人等に対して、理事が財産の贈与を行った場合、一般社団法人等に対して贈与税が課税されることとなる。 また、個人から一般社団法人等に対して財産の贈与又は遺贈があった場合において、その財産が譲渡所得の起因となる資産等の贈与(寄附)である場合には、贈与者に対しても所得税が課される点にも留意すべきであろう(みなし譲渡所得課税、所法59)。 なお、当該改正は平成30年4月1日以後に贈与又は遺贈により取得する財産に関する贈与税又は相続税に適用される。 ② 特定一般社団法人等に対する相続税の課税 一般社団法人等のうち、特定一般社団法人等(※3)に該当するものの役員(理事に限る)である者(理事でなくなった日から5年を経過していない者を含む)が死亡した場合には、以下により、特定一般社団法人等に相続税が課税されることとなる(新相法66の2)。 (※3) 以下に掲げる要件のいずれかを満たす一般社団法人等をいう。 ① 相続開始の直前における同族役員数の総役員数に占める割合が2分の1を超える。 ② 相続開始前5年以内において、同族役員数の総役員数に占める割合が2分の1を超える期間の合計が3年以上である。 (ア) 課税対象額 特定一般社団法人等の純資産額をその死亡時における「同族理事(被相続人を含む)」の数に1を加えた額で除して計算した金額に相当する金額を、特定一般社団法人等が被相続人から遺贈により取得したものをみなして、相続税が課税される。この場合、特定一般社団法人等は一親等の法定血族及び配偶者以外の者であることから、相続税額の2割加算の対象となる(相法18①)。 なお、上記でいう「同族理事」とは、一般社団法人等の理事のうち、被相続人又はその配偶者、3親等内の親族その他の被相続人と特殊の関係がある者(被相続人が会社役員となっている会社の従業員等)をいう(新相法66の2②二)。 (イ) 贈与税及び相続税の控除 上記(ア)により特定一般社団法人等に相続税が課税される場合には、その相続税の額から、贈与又は遺贈により取得した財産について既に特定一般社団法人等に課税された贈与税又は相続税の額が控除される(新相法66の2③)。 (ウ) 適用関係 当該改正は、平成30年4月1日以後の一般社団法人等の理事の死亡に係る相続税に適用される。ただし、同日前に設立された一般社団法人等については、平成33年4月1日以後の当該一般社団法人等の理事の死亡に係る相続税について適用し、平成30年3月31日以前の期間は、特定一般社団法人等を判定する際の2分の1を超える期間(※4)に該当しないものとされる(改正法附則43⑤⑥)。 (※4) 前記(※3)の②の要件に係る期間をいう。   (了)

#No. 282(掲載号)
#安部 和彦
2018/08/23

〔Q&A・取扱通達からみた〕適格請求書等保存方式(インボイス方式)の実務 【第3回】「適格請求書等保存方式の下での仕入税額控除の要件」

〔Q&A・取扱通達からみた〕 適格請求書等保存方式(インボイス方式)の実務 【第3回】 「適格請求書等保存方式の下での仕入税額控除の要件」   アースタックス税理士法人 税理士 島添 浩   【請求書等の保存】 仕入税額控除の適用を受けるための請求書等に該当する仕入明細書等は、相手方の確認を受けたものに限られる。 この相手方の確認を受ける方法としては、例えば、以下のようなものがある。   任意組合の共同事業として課税仕入れを行った場合に、幹事会社が課税仕入れの名義人となっている等の事由により各構成員の持分に応じた適格請求書の交付を受けることができないときにおいて、幹事会社が仕入先から交付を受けた適格請求書のコピーに各構成員の出資金等の割合に応じた課税仕入れに係る対価の額の配分内容を記載したものは、その他の構成員における仕入税額控除のために保存が必要な請求書等に該当するものとして取り扱われ、その保存をもって、仕入税額控除のための請求書等の保存要件を満たすことになる。 また、任意組合の構成員に交付する適格請求書のコピーが大量となる等の事情により、立替払を行った幹事会社が、コピーを交付することが困難なときは、幹事会社が仕入先から交付を受けた適格請求書を保存し、精算書を交付することにより、幹事会社が作成した(立替えを受けた構成員の負担額が記載されている)精算書の保存をもって、仕入税額控除を行うことができる。   他社が立替払をした場合、その他社宛に交付された適格請求書をそのまま受領したとしても、当社の適格請求書とすることはできない。 この場合において、立替払を行った会社から、立替金精算書等の交付を受ける等により、経費の支払いを行った他社の課税仕入れが当社のものであることが明らかにされている場合には、その適格請求書及び立替金精算書等の書類の保存をもって、当社は、課税仕入れに係る請求書等の保存要件を満たすこととなる。   当社が事務所を賃借しており、口座振替により家賃を支払っている場合で、不動産賃貸契約書は作成しているが、請求書や領収書の交付は受けておらず、家賃の支払の記録としては、銀行の通帳に口座振替の記録が残るだけであっても、適格請求書の記載事項の一部(例えば、課税資産の譲渡等の年月日以外の事項)が記載された契約書とともに通帳(課税資産の譲渡等の年月日の事実を示すもの)を併せて保存することにより、仕入税額控除の要件を満たすこととなる。 なお、取引の都度、請求書等が交付されない取引について、取引の中途で取引の相手方(貸主)が適格請求書発行事業者でなくなる場合も想定され、その旨の連絡がない場合には貴社(借主)はその事実を把握することは困難となる可能性があるが、その場合には、国税庁のホームページで相手方が適格請求書発行事業者か否かを確認することとなる。   【帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合】 取引先への移動に際し、券売機で乗車券を購入し、公共交通機関である鉄道を利用した場合において、適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるが、3万円以上の公共交通機関を利用した場合には、その利用に係る適格請求書の保存が仕入税額控除の要件となるので注意が必要である。 ただし、3万円以上であっても、公共交通機関である鉄道事業者から適格簡易請求書の記載事項を記載した乗車券の交付を受け、その乗車券が回収される場合は、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる。   古物営業法上の許可を受けて古物営業を営む古物商が、適格請求書発行事業者以外の者から古物(古物商が事業として販売する棚卸資産に該当するものに限る)を買い受けた場合には、一定の事項が記載された帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる。 なお、相手方が適格請求書発行事業者である場合は、適格請求書の交付を受け、それを保存する必要がある。   社員に支給する出張旅費、宿泊費、日当等のうち、その旅行に通常必要であると認められる部分の金額については、課税仕入れに係る支払対価の額に該当するものとして取り扱われる。この金額については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる。   従業員等で通勤する者に支給する通勤手当のうち、通勤に通常必要と認められる部分の金額については、課税仕入れに係る支払対価の額として取り扱われる。この金額については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる。   【帳簿の保存】 平成31年10月1日から平成35年9月30日(適格請求書等保存方式の導入前)までの間は、仕入税額控除の要件について、現行の請求書等保存方式を基本的に維持しつつ、軽減税率の適用対象となる商品の仕入れかそれ以外の仕入れかの区分を明確にするための記載事項を追加した帳簿及び請求書等の保存が要件(区分記載請求書等保存方式)とされているが、適格請求書等保存方式では、現行の請求書等保存方式において必要とされている記載事項に、次の事項が追加される。   請求書等の交付を受けることが困難であるなどの理由により、次の取引については、一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められる。 この場合、帳簿の記載事項に関し、通常必要な記載事項に加え、以下の記載が必要となる。 【参考】 免税事業者からの仕入れに係る経過措置 適格請求書等保存方式導入から一定期間は、適格請求書発行事業者以外の者からの仕入れであっても、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられている。 なお、この経過措置の適用を受けるためには、次の事項が記載された帳簿及び請求書等の保存が要件となる。 1 帳簿 区分記載請求書等保存方式の記載事項に加え、例えば、「80%控除対象」など、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨の記載が必要となる。 具体的には、次の事項となる。 2 請求書等 区分記載請求書等と同様の記載事項が必要となり、具体的には、次の事項となる。   (了)

#No. 282(掲載号)
#島添 浩
2018/08/23
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