《速報解説》 会計協、「監査基準の改訂に関する意見書」及び監査基準委員会報告書の改正を受け、公益法人、医療法人、社会福祉法人等、非営利法人に係る5つの実務指針の改正(公開草案)を公表 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2019年5月10日、日本公認会計士協会は、次のものを公表し、意見募集を行っている。 これは、「監査基準の改訂に関する意見書」(2018年7月5日、企業会計審議会)及び関連する監査基準委員会報告書の改正を受けたものである。 意見募集期間は2019年6月10日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な改正内容 主な改正内容は次のとおりである。 Ⅲ 適用時期等 2020年3月31日以後終了する事業年度に係る監査から適用する予定である。 (了)
《速報解説》 会計士協会から研究報告 「気候変動を知る-動き始めた資本市場・情報開示-」が公表される ~企業リスクと情報開示の重要性高まりを受け公認会計士に向けた解説~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2019年5月10日、日本公認会計士協会は、「気候変動を知る-動き始めた資本市場・情報開示-」(経営研究調査会研究報告第64号)を公表した。 これは、企業の気候変動に対するリスク・機会の認識と情報開示の重要性が高まりつつあることから、公認会計士が気候変動に関する基礎知識を得ることに資するためのものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 目次を含めて70ページに及ぶものである。 主な内容は次のとおりであり、以下では特定の項目について解説する。 1 気候変動に関する問題意識 気候変動が深刻化する時代に、企業が将来的にその「価値」を高めていくための投資資金や優秀な人材を獲得し、顧客を維持・拡大するためには、気候変動に対して、どのような認識を持ち、どう対処し、将来的にビジネスをどう変革しようとしているのかといった情報開示が不可欠となりつつあるとの問題意識がある。 金融安定理事会(Financial Stability Board:FSB)では、気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:TCFD)を設置して気候変動開示の議論を進めている。 2 企業のリスク 企業にとって、気候変動は、ビジネスモデルを根底から覆されるかもしれない市場リスクであり、事業活動を大幅に制約されるかもしれない規制リスクであり、物理的な損害を被るかもしれない災害リスクであり、さらには不誠実な対応が顧客心理に悪影響を及ぼしかねない風評リスクでもあると述べられている(4ページ)。 3 金融等を通じた取組 金融業界による取組として、ESG投資が述べられている。 ESG投資は、端的には、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)に配慮して投資を行うことである。ESG投資は、責任投資原則(PRI)が制定されたことを契機に、その概念が世界的に広まり始めた(22、23ページ)。 ESG投資における気候変動の位置付けは、ESG投資の一要素であるE(環境)の詳細項目の1つであるが、気候変動が個々の企業の事業だけでなく経済社会全体に重大な影響を及ぼすことが懸念されていることから、投資関係者は、ESG要素の中でも、特にその重要性に注目しているとのことである(24ページ)。 そのほか、ダイベストメント、グリーンボンドなどについても述べられている。 4 有価証券報告書の開示など アニュアルレポート及びサステナビリティレポート等の企業報告書や、企業の気候変動対応を格付けする非営利組織であるCDPのプラットフォームを通じて多くの企業が気候変動情報を開示しているとのことである(4ページ)。 次のような開示に関連することが考えられる(3、68ページ)。 (了)
《速報解説》 改元に伴い財務省令に定める申告書等の様式が「令和」対応へ ~旧様式も当分の間使用可、国税庁HP上では順次更新~ Profession Journal編集部 5月1日から「令和」が始まり税実務も新元号の下で行われることとなったが、既報のとおり国税庁では4月にホームページ上で「新元号に関するお知らせ」を公表、新元号の移行に伴い国税庁ホームページや申告書等の各種様式は順次更新される一方、納税者から「平成31年6月1日」など平成表記の日付で提出された書類についても有効なものとして取り扱う方針を明らかにしている。 そしてこのほど、令和元年5月7日付けの官報号外第1号において「元号を改める政令の施行に伴う財務省関係省令の整理に関する省令」が公布され、新元号へ対応した税法含む財務省所管の申告書・届出書等様式類の内容が明示された(官報同号では、内閣府、農林水産省、経済産業省所管の様式類についても令和対応の見直しが行われている)。 改正省令では、相続税法施行規則や所得税法施行規則、租税特別措置法施行規則、税理士法施行規則等において定められた申告書・届出書等の様式について、申告日付等様式内に「平成」と記載のある箇所が「令和」へ変更されている。具体的には「障害者非課税信託申告書」(相規第1号書式)や「非課税貯蓄申告書」(所規別表第2(1))、「特別非課税貯蓄申告書」(措規別表第2(1))の他、「税務代理権限証書」(税理士法施行規則第8号様式)などについても見直しが行われている。 なお、法人税法施行規則についてはすでに4月12日付で改元への対応含む今年度改正に対応した申告書(別表)様式が公表されているが、今回の改正省令ではさらに、記載要領において「平成33年」等と記載された箇所の見直しが行われている。 改正省令は公布の日(2019.5.7)から施行されているが、本稿公開時点において国税庁HP上に掲載された様式類は未だ「平成」と記載されたものが見受けられる。この点、冒頭の国税庁からの告知の通り、改正省令附則2条において「この省令の施行の際、現に存する改正前の様式又は書式による用紙は、当分の間、これを取り繕い使用することができる。」とした経過措置が定められている。 出力紙による申告等手続の場合は上記のような柔軟な対応も可能だが、ペーパーレスによる手続の場合、下記のように想定外の対応が必要となるケースもあるため、今後も使用する税務・会計等ソフトの挙動については留意されたい。 (了)
2019年5月9日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.317を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
monthly TAX views -No.76- 「働き方改革に対応した税制を」 東京財団政策研究所研究主幹 中央大学法科大学院特任教授 森信 茂樹 4月1日から、「働き方改革」が始まった。これまでのわが国の代名詞ともいえる長時間労働の是正や、正規・非正規労働者の格差の縮小・改善など、時代に適合しなくなった一連の労働法制が見直される大改革である。 高度プロフェッショナル(年収1,075万円以上)の労働時間にとらわれない働き方も可能になるなど、規制緩和的な要素も入っており、日本型雇用制度を大きく変えていくインパクトがある。 また、長時間残業の解消は、余裕時間を活用した子育てやワークライフバランスの改善に役立ち、さらにリカレント教育(社会人の学び直し)を通じ自らの人的資本価値を向上させることで多くの分野に好影響が及ぶ。結果として、わが国経済社会のクリエイティビティ(創造力)の向上につながっていくことが期待されている。 * * * このような働き方をめぐる大改革は、副業・兼業の拡大や、ネットを経由したクラウドワーカー・ネットワーカーの増大をもたらし、いわゆる「伝統的自営業者」から「雇用的自営業者」への大きなシフトが予想される。 そしてそのことは、わが国の所得税制に大きな影響を与える。 副業・兼業者やクラウドワーカーの得る所得は、基本的に雑所得か事業所得である。この所得区分が、給与所得者の給与所得と比較して、公平性の問題がないかどうか、という点が問われることになる。 給与所得には、源泉徴収、年末調整(申告不要)、給与所得控除という3点セットが適用される。しかし、雑所得・事業所得の場合にはそれがなく、自ら申告をする義務を負う。その場合の経費は実額控除である。 一方、給与所得者に適用される給与所得控除は、そもそも概算控除である上に、他の所得との負担調整(サラリーマン特有の事情やクロヨンとよばれる捕捉率の相違)に配慮し、実額の経費より手厚い(高い)水準になっている。そこで、双方の負担の公平性が改めて問題となる。 * * * この問題を緩和するため、平成30年度税制改正では、給与所得控除を10万円縮小し、その分を基礎控除に付け替えるという改革が行われ、令和2年分(2020年分)以後の所得から適用される。雑所得者や個人事業者には、基礎控除の拡大という減税が与えられることとなった。 「給与所得控除を削減し、その分を基礎控除に付け替える」という政策は今後も継続すると、平成30年度の与党税制改正大綱に記述されている。 問題は、クラウドワーカーと給与所得者の働き方の差異が縮小していく中で、より抜本的な改革が必要となるのではないか、ということである。 具体的には、労務の提供を主とするクラウドワーカーなど一定水準以下の所得の個人事業主に対して、給与所得控除と同程度の経費の概算控除を認めることを検討すべきではないか、という問題意識である。 このためには、「他の所得との負担調整」という要素の入った給与所得控除のさらなる縮減とセットで見直していくことが必要である。 もう1つ検討すべきは、年末調整により確定申告が不要となる給与所得者との申告の手間の問題だ。これについては、筆者が長年提案してきた日本型記入済み申告制度(※)、つまり、マイナポータルの課税情報とe‐Taxとを連動させて申告の簡素化を図ることにより解消できる。現に税務当局はそちらの方向に舵を切っており、今後着々と準備が進んでいく。 (※) 日本型記入済み申告制度については、本連載No.53、No.55、No.71を参照されたい。 令和の時代は、働き方改革に伴って税制も変わっていかなければならない、ということであろう。 (了)
平成30年分の年末調整に誤りがあった場合の企業対応 ~配偶者控除・配偶者特別控除の適用を中心に~ 公認会計士・税理士 篠藤 敦子 【1】 はじめに 平成30年分の年末調整実務においては、配偶者控除及び配偶者特別控除の改正が大きく影響した。 平成29年分までの所得税計算においては、配偶者控除及び配偶者特別控除を適用するときに納税者本人の合計所得金額を把握する必要はなかった。よって、平成29年分までの年末調整では、配偶者の合計所得金額を確認すれば適正な控除額を算出することができた。 しかし、平成30年分の所得税計算からは、配偶者控除及び配偶者特別控除の適用に納税者本人の合計所得金額も関係することとなり、年末調整で配偶者控除又は配偶者特別控除を適用する場合には、配偶者の合計所得金額に加え、役員又は従業員(以下、従業員等という)の合計所得金額を確認することが必要となった。 具体的には、配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受けようとする従業員等から「給与所得者の配偶者控除等申告書(以下、配偶者控除等申告書という)」の提出を受け、従業員等本人と配偶者の合計所得金額(見積額)を確認することになる。 なお、改正内容の詳細については、以下の拙稿をご参照いただきたい。 【2】 控除額に誤りがあったとき 配偶者控除や扶養控除等の適用誤りがあると想定される場合に、所轄税務署から会社に対し、扶養控除等の見直し(調査)を依頼する書面が届くことがある。 税務署からこの書面が届いた場合には、見直しが求められた従業員等について、各種控除の適用に関する調査を行い、誤りが判明した場合には、年末調整をやり直した上、従業員等から不足額を徴収し、納付する。 従来は、この書面が届くケースの多くは、配偶者や扶養親族の合計所得金額が控除の対象となる額を超えている場合であった。しかし、平成30年分以後は、配偶者控除及び配偶者特別控除の改正により、従業員等本人の合計所得金額に関係する見直しが増えると予想される。 従業員等に自社の給与以外に所得がある場合、会社は、配偶者控除等申告書の記載内容から従業員等の合計所得金額を把握することになる。従業員等が、配偶者控除等申告書に自身の合計所得金額を誤って記載したり、所得の一部が記載されていなかった場合には、配偶者控除又は配偶者特別控除を誤って適用している可能性がある。 以上を踏まえ、以下では想定される「誤りの例」を取り上げる。 ※いずれも配偶者(70歳未満)の合計所得金額は38万円以下 (※) 「合計所得金額」とは、総所得金額、山林所得金額、退職所得金額、特別控除前の土地建物等に係る譲渡所得の金額、株式等に係る譲渡所得等の金額、上場株式等に係る配当所得の金額(申告分離課税を選択したもの)、先物取引に係る雑所得等の金額の合計額をいう(所法2①三十ロ、所基通2-41(2)(注)、措法8の4③一、31③一、32④、37の10⑥一、41の14②一)。ただし、損失(純損失、雑損失、居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失、特定居住用財産の譲渡損失、上場株式等の譲渡損失、特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失、先物取引の差金等決済に係る損失)の繰越控除の適用がある場合には、繰越控除を適用する前の金額が合計の対象となる。 【3】 実務での対応 扶養控除等の見直しに関する書面が届いたときの対応を順に示すと、次のとおりである。 (了)
《相続専門税理士 木下勇人が教える》 一歩先行く資産税周辺知識と税理士業務の活用法 【第1回】 「特別寄与料に関する今後の相続実務と事前コンサル」 公認会計士・税理士 木下 勇人 1 民法改正による新設規定 現行民法では、被相続人の介護や看病などに尽くした「相続人」のみ、その貢献により被相続人の遺産の増加又は維持に貢献したと認められる場合、遺産分割に際して、相続分を増加させる「寄与分」の制度が存在する。つまり、相続人でない親族(例えば長男の嫁)が被相続人の介護や看病に尽くしても、現行民法上は遺言がない限り、相続財産を取得することはできない。 しかし、民法改正における「特別寄与料」の新設により、寄与した親族(相続人を除く6親等内の親族と3親等内の姻族。以下、「特別寄与者」という)は相続人に対して特別寄与料を請求できることになった(本制度の施行日は2019年7月1日)。 2 相続税申告実務における影響 (1) みなし遺贈 平成31年度税制改正により、この特別寄与料について、被相続人から遺贈により取得したものとみなし、相続税を課すこととされた(相法4②)。 (2) 2割加算の適用 上記(1)のとおり、みなし遺贈により財産の取得者が被相続人の一親等の血族及び配偶者以外の者となるため、相続税額につき2割加算の対象となる(相法18)。 (3) 支払う相続人側の処理 相続人が支払うべき特別寄与料の額は、当該相続人に係る相続税の課税価格から控除する(相法13、21の15)。 (4) 修正申告・更正の請求等の「特則」対象 相続税法上で定められている修正申告や更正の請求等の「特則」の対象に、「特別寄与料を被相続人から取得した場合」が加わり(相法31②、32①七、35②五)、改正民法と合わせ、本年7月1日以後に開始した相続から適用されることとなった。更正の請求期間は、他の特殊事情が生じた場合と同様に、特殊事情が生じた日の翌日から4ヶ月以内となる。 3 相続手続における影響 (1) 各種書類への署名押印 特別寄与者には、あくまで相続人に対する特別寄与料の請求権のみ認められており、遺産分割協議には参加できない。つまり、遺産分割協議書への署名押印はないが、相続税申告書への署名押印は生じる。 (2) 特別寄与料の請求手続 特別寄与料の金額は、請求者と相続人との協議にて決定されるが、協議が整わない場合等は相続が開始したこと及び相続人を知った時から6ヶ月又は相続開始の時から1年以内に限り、家庭裁判所に審判の申立てを行うことが可能である(改正民法1050)。 特別寄与料を請求するためには、被相続人の介護や看病などに尽くしたエビデンスを残すことも実務上必要になるため、生前からの意識的な対応が望まれる。 4 特別寄与料に対する生前対策 税理士が「相続税申告」実務において留意すべき事項は上記2のとおりとなるが、あくまでこれは特別寄与者による特別寄与料の請求とその支払が生じた場合における対応である。つまり、事後的な処理に過ぎない。 検討すべきは、①特別寄与料を請求する特別寄与者の心理的負担、②特別寄与者が相続税申告書に署名押印することによる財産開示の可能性である。つまり、①特別寄与者が特別寄与料を相続人へ請求するということは親族間で遺恨を残すことになり、特別寄与者本人にも心理的に負担となる。また、②相続財産全てを相続税申告書で特別寄与者へ開示する結果となるため、相続人側からしても可能であれば特別寄与者へは未開示である方が望ましいと考える。 そこで、税理士として生前にアドバイスをするならば、特別寄与者が特別寄与料を相続人へ請求しない仕組み作りの提案ではないだろうか。 仮に、遺言や死亡保険金で長男の嫁に財産を残しても②は解決できない。これに対して、被相続人から特別寄与者へ生前贈与を実行すれば、①②も解決可能となる。相続又は遺贈により財産を取得しないため、3年内贈与加算も適用されない。また、被相続人から生前に感謝の気持ちを伝えることで介護をする方、介護をされる方もどちらも良好な関係が築けると考える。 以上より、民法改正を学ぶことにより「生前贈与」の必要性を説くという視点も、相続のコンサルティングを行う立場として有用と考える。 (了)
〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第68回】 「消費税率等引上げに伴い作成される消費税額等増額分に係る変更契約書②」 税理士・行政書士・AFP 山端 美德 消費税率引上げに伴い、基本契約書の契約金額等を変更する契約書を作成しましたが、印紙税の取扱いはどうなりますか。 (事例1) (※) 原契約は清掃請負業務の基本契約で、第2号文書(請負に関する契約書)に該当すると同時に、継続的取引の基本となる契約でもあるため、第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)にも該当するものとします。 (事例2) (※) 原契約は物品の売買基本契約で、継続的取引の基本となる契約であるため、第7号文書に該当するものとします。 事例1は第2号文書に該当し、印紙税額は記載金額なしの200円となる。 事例2は不課税文書となる。 [検討1] 事例1の月額清掃金額は第2号、第7号文書の重要な事項に該当するか 第2号文書の重要な事項には「契約金額」が定められている。消費税額等の変更は契約金額そのものを変更するものではないが、契約金額に付随するものであり、重要な事項に該当する。 また、第7号文書の重要な事項には「単価」が定められているが、単価そのものを変更するものではないため、重要な事項には該当しない。 したがって、事例1は第2号文書に該当することとなり、記載金額については契約金額そのものを変更するものではないため、記載金額なしの第2号文書に該当する。 ただし、契約金額、単価に消費税額等が区分記載されていない場合は、契約金額、単価に変更があることとなるので注意が必要である。 [検討2] 事例2の単価は第7号文書の重要な事項に該当するか 事例2の文書は、物品の譲渡に関する契約である。第7号文書の重要な事項の「単価」の変更に該当するかどうかであるが、[検討1]のとおり単価自体は変更がないため、重要な事項の変更には該当しない。このため、物品の譲渡に関する契約であり、第7号文書にも該当しないため、不課税文書となる。 ただし、[検討1]と同様に、契約金額、単価に消費税額等が区分記載されていない場合は単価に変更があることとなるので注意が必要である。 ▷まとめ 第2号文書の非課税規定には、記載金額が1万円未満であれば非課税とする規定がある。このことから、消費税額等の金額を区分記載した場合の変更契約は記載金額がない第2号文書となるものの、消費税額等の具体的な金額が1万円未満の場合は非課税として取り扱われている。 しかし、事例1の文書に記載の、新たに課される消費税額等の具体的な金額について、月額の消費税額等は明らかにされているが、原契約の残りの契約期間がわからないため、その総額は計算できない。したがって、この場合は第2号文書の1万円未満かどうかの非課税判定ができないため、非課税文書には該当しない。 (了)
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例5】 「医療法人の有する医業未収金の償却と損金経理」 国際医療福祉大学大学院准教授 税理士 安部 和彦 【Q】 私は都内で病院を経営する医療法人の理事長兼院長で、医師です。都内有数の観光地の近隣という私の病院の立地する場所柄、外国人の旅行者が患者として訪れるケースが年々増加しておりますが、最近、病院経営上、私の頭を悩ましている問題が、外国人患者の治療費に係る未収金についてです。 日本人の患者さんは、わが国が誇る公的医療保険制度によりその治療費の大半がカバーされますので、治療費の回収漏れはそれほど大きな問題とはなっておりませんが、外国の患者さんはその背景が様々であり、高額の医療費をカバーする海外旅行保険に加入している人もいれば、旅行代金を捻出するのが精一杯で保険にまで気が回らないという人も少なからずいるようです。 外国人旅行者が救急車で運ばれてきて、緊急手術となり、入院するとなると治療費は高額となり全額自費となりますが、無保険の旅行者の場合、その金額を払えないというケースがここ数年頻発しています。しかもこの場合、旅行者が本国に治療費を支払う前に帰国してしまうと、以後その費用を回収することは事実上不可能となります。 そのため、やむを得ず未回収の治療費を回収不能であるとして償却することを余儀なくされるわけですが、先日医療法人が受けた法人税の税務調査で、申告調整で貸倒損失として減算した回収不能な医業未収金につき、損金経理を行っていないため損金算入が認められないと調査官に言われました。 医業未収金の償却については、法人税法上、損金経理は要件とされていないものと理解していますが、それでよろしいでしょうか、ご教示ください。 【A】 医業未収金につき、回収努力を行ったにもかかわらず回収の見込みがないため、債権としての経済的価値が無価値化したものと考えられる場合、法人税法上、その損金算入には損金経理要件が課されていないため、申告調整で貸倒損失として償却・減算した場合においても、損金算入が認められるものと考えられます。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ (1) 医業未収金の性格 医業未収金とは、会計上は流動資産の一類型で、医療機関が患者に対し治療等のサービス(医業活動)を提供したのにもかかわらず、未だ回収できていない債権(未収入金)をいう。医業未収金は病院会計特有の勘定科目で、一般企業の売掛金に該当するが、運営費補助金収入など医業活動以外の収益に対する未収金及び未収収益とは発生要因が異なるため、貸借対照表の表示上、厳密に区別されなければならないといえる。 近年、医業未収金が医療機関の経営に深刻な影響を及ぼしていることが指摘されている。すなわち、回収が遅延しているないしできない医業未収金(※1)は、病医院のキャッシュフローや収益に甚大な影響を及ぼしかねないのである。 (※1) 医業未収金の大部分は、保険診療に係る収益計上時期と支払基金等からの入金のタイミングのずれ(概ね2ヶ月程度)に基づき生じるもので、当該金額に関しては、査定減の問題はともかくとして、回収不能の問題はほとんど生じないものと考えられる。 これに関する実態調査としては、例えば、厚生労働省の平成29年度「『病院経営管理指標及び医療施設における未収金の実態に関する調査研究』報告書」があり、それによれば、医業未収金のうち回収可能性に問題がある「異常債権(※2)」の状況は以下の通りである。 (※2) 一定期間入金のない債権や回収されない可能性があると医療機関が判断した債権をいう。なお、同報告書によれば、医業未収金に占める異常債権の割合(入院外来合計)は約20%である。 〇医療機関の異常債権額の推移(入院外来合計) (出典) 厚生労働省 平成29年度「『病院経営管理指標及び医療施設における未収金の実態に関する調査研究』報告書」47頁 また、損金処理した医業未収金額及びその異常債権額に対する割合は、以下の表の通りである。 〇損金処理した医業未収金額及びその異常債権額に対する割合の推移(入院外来合計) (出典) 厚生労働省 平成29年度「『病院経営管理指標及び医療施設における未収金の実態に関する調査研究』報告書」50頁 (2) 外国人旅行者と医業未収金 さらに、厚生労働省の当該報告書によれば、訪日外国人(観光やビジネス等の目的で来日し、かつ日本の公的医療保険に加入していない外国人)の異常債権額及び件数は以下の通りである。下記の表から、救急搬送の場合、その件数に比して異常債権額がかさむ傾向にあることがわかる。 〇訪日外国人の異常債権額及び件数の推移(入院外来合計) (出典) 厚生労働省 平成29年度「『病院経営管理指標及び医療施設における未収金の実態に関する調査研究』報告書」51頁 訪日外国人の医業未収金は、一度発生すると回収が困難となるケースが少なくない。なぜなら、質問にもある通り、旅行者である訪日外国人が治療費を支払う前に本国(居住地国)に帰国してしまうと、国内の場合と異なり、裁判等の法的手段により強制的にその費用を回収することは事実上不可能となるためである。 なお、前記報告書によれば、訪日外国人に対する医業未収金予防策として、以下の表の通りクレジットカードやデビットカードでの支払い対応といった対策を採っているが、十分とはいえないようである。 〇訪日外国人に対する医業未収金予防策 (出典) 厚生労働省 平成29年度「『病院経営管理指標及び医療施設における未収金の実態に関する調査研究』報告書」60頁 (3) 医業未収金の損金算入 それでは、医療法人が抱える医業未収金が何らかの理由で回収不能となった場合、税務上どのタイミングで損金処理されるのであろうか。通達によれば、医業未収金等の債権が回収できないことから貸倒損失として損金算入が認められるのは、以下のケースである。 ① 法律的に債権が消滅した場合(法基通9-6-1) これは、具体的には以下のケース及び金額をいう。 本件のように、外国人旅行者が無保険で支払い能力がない場合や、支払う前に本国へ帰国し追跡が不可能な場合については、当該要件には該当しないものと考えられる。 ② 事実上の貸倒れ・経済的無価値化による貸倒れ(法基通9-6-2) 債務者の状況、支払能力等からその全額が回収できないことが明らかになった場合は、その明らかになった事業年度において貸倒損失として損金に算入される。ただし、担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ損金に算入されない。 入院等のケースで、連帯保証人がいる場合には、連帯保証人の資産の状況や支払能力等をも勘案して、回収不能か判断することとなる。 本件の場合、回収努力にもかかわらず回収できない場合には、債権(医業未収金)が経済的に無価値化したと考えられることから、貸倒損失として損金に算入される余地は十分あるものと考えられる。 ③ 一定期間弁済がなされない場合(法基通9-6-3) 継続的な取引を行っていた債務者の資産の状況、支払能力等が悪化したため、その債務者との取引を停止した場合において、その取引停止の時と最後の弁済の時などのうち最も遅い時から1年以上経過したとき(担保がない場合)は、貸倒処理した金額が損金に算入される。これは医業未収金の場合、適用されるケースは稀であろう。 また、同一地域の債務者に対する売掛債権の総額が取り立て費用より少なく、支払いを督促しても弁済がない場合にも、貸倒処理した金額が損金に算入される(取立費用>債権額)。こちらの方は、医業未収金の場合にも適用されるケースがあるだろう。 (4) 医業未収金と損金経理 上記(3)の検討から、本件は事実上の貸倒れ・経済的無価値化による貸倒れ(法基通9-6-2)に該当する可能性が十分あるものと考えられる。そうなると、次に検討すべきは、課税庁が指摘したように「申告調整で貸倒損失として減算した回収不能な医業未収金につき、損金経理を行っていないため損金算入が認められない」ということなのかどうかである。 法人税基本通達の9-6-2は、その全額が回収不能となった金銭債権は、「貸倒れとして損金経理することができる。(※3)」としているが、これを根拠に損金経理を損金算入の「要件」としていると解することはできないものと考えられる。なぜなら、納税者の租税負担に直接影響を及ぼす損金算入の要件(課税要件)は法令によって定められるべき事項であり、租税法の法源には該当しない通達によって定めるのは適切ではないからである。 (※3) なお、昭和55年の基本通達改正前は「損金経理をした場合に限り損金の額に算入する。」とされていたが、これは法人税法の法令解釈通達としては「誤っていた」と考えられるであろう。 また、法人税法が損金算入に際し損金経理を要件とするのは、いわゆる「内部取引」についてであるが、貸倒損失は客観的な事実に基づく「外部取引」に属するものであるから、損金経理を要件としていないのである。もちろん、回収不能債権は直ちに貸倒処理を行うというのが会社法ないし企業会計の基本的な考え方であるが(会規5④)、そうであるからといって、法人税法にない要件を通達で新たに課すということはできないものと解される。 この点につき、裁判所は以下の通り判示している(福井地裁昭和59年11月30日判決・税資140号421頁、控訴審名古屋高裁金沢支部昭和62年3月30日判決・TAINSコード:Z157-5898も同旨)。 したがって、申告調整で貸倒損失として減算した回収不能な医業未収金については、損金経理を行わなくとも損金算入が認められることとなる。 (5) 医業未収金の貸倒(償却)処理の税務実務 理論的には上記の通りであるが、実務上、医業未収金の損金処理に関し重要なのは、貸倒(償却)処理すれば税務上も自動的に損金算入されるわけではないということである。また、貸倒れの事実を証憑等で客観的に立証できれば、税務調査においても利益調整であるとして否認される可能性は低いであろう。 税務上損金処理が認められるような、医業未収金の償却処理のためには、以下の点が重要と考えられる。 (了)
~税務争訟における判断の分水嶺~ 課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から 【第25回】 (最終回) 「相続財産の範囲について預金等を管理運用していた事実のみから 直ちに判断することはできないとした事例」 税理士 佐藤 善恵 (※) ( )内の青色文字は、略称設定であり、以下その略称を使用する。 〔概要等〕 本件は、Y税務署長が被相続人の妻名義の預金等(本件預金等)の一部は被相続人の遺産であるなどとして、相続税の更正処分等を行ったことから、相続人ら(原告)がその処分の取消しを求めて提訴した事案である。 〔納税者の主張〕 本件処分で問題となった丁名義の預金等(本件預金等)は、丁が被相続人に働きかけた結果、被相続人から贈与されたものである。 本件丁名義の預金口座等は、丁の筆跡により開設等されており、またそれらの通帳及び印鑑は丁が管理していた。また、不動産権利証、定期預金証書、有価証券等の重要書類を保管していた貸金庫の名義も丁であり、丁は被相続人名義の預金等とともに管理していた。 本件調停では、丁は一貫して本件預金等は被相続人から生前贈与されたものである旨主張するなど、丁自身が贈与を受けた旨の認識を有しているのだから、本件預金等は同人の財産であり相続財産ではない。そのことは本件調停の前提事実ともなっており、本件処分に関する名義預金の帰属判定においても重要な判断要素となる。 〔裁判所の判断〕 実際に生前贈与をした土地建物の持分については贈与契約書が作成された上で、丁がY税務署長に対して同贈与によって納付すべき贈与税はない旨の申告書を提出していた。しかし、本件預金等についてはそのような手続を何ら採っていないことも考慮すると、被相続人がその原資に係る財産を丁に対して生前贈与したものと認めることはできないというべきである。 遺産分割調停は、遺産の存在を前提に、当該遺産の分割について当事者間の自由な合意により成立することを基本とする制度であって、調停機関は当事者間の意思に反した何らかの判断を示すものではない。そして、仮に当事者間における自由な合意が課税庁を拘束することになると、当事者間において遺産の範囲を狭くする旨の合意をすることによって、容易に相続税の課税を免れることが可能になるのであり、そのような事態は、税負担の実質的公平を害することとなって、妥当でないというべきである。したがって、原告らが主張する上記事由をもって、本件預金等が丁の財産であるということはできず、原告らの上記主張を採用することはできない。 〔判断の分水嶺〕 本判決は財産の帰属判定について上記〔本判決の解釈〕のように解した上で、特に「当該財産の名義人がその名義を有することになった経緯等」に着目した。丁が被相続人の(本人名義の財産も含む)財産を全般的に専ら管理運用等していたといった状況も重要な要素であった。 裁判所の判断の背景には、上記の下線部分(実質的公平を害する旨)の価値判断が大きいと考えられる。 〔本判決が示唆するもの〕 名義預金等の帰属については、一般的には、本判決のように原資の出捐者や管理運用状況などが判断要素となるが、被相続人の財産全般について特定の相続人が専ら管理運用等していたような場合は、管理運用等の状況のみをもって直ちに帰属判定をすることにはリスクが伴うということである。 以下、参考までに本情報の「コメント」を紹介する。 (連載了)