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経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第147回】退職給付会計⑬「リスク分担型企業年金の会計処理等に関する実務上の取扱い」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第147回】 退職給付会計⑬ 「リスク分担型企業年金の会計処理等に関する実務上の取扱い」   仰星監査法人 公認会計士 竹本 泰明     〈事例による解説〉   〈会計処理〉 ◎ X1年3月期の会計処理   〈会計処理の解説〉 1 リスク分担型企業年金とは リスク分担型企業年金とは、簡単にいうと、これまで事業主又は加入者の一方が負っていた「資産運用リスク」を、両者で負担しあう企業年金制度です。 《リスク負担のイメージ図》 具体的には、年金資産の運用に伴う財政悪化を想定し、あらかじめ退職給付債務を超える掛金の積み立てを行うことで、財政悪化が想定の範囲内であれば、企業は追加の掛金拠出を負うことなく、また、加入者も将来支給される年金の額が減少することもありません。 リスク分担型企業年金制度においては、通常、企業は、①標準掛金、②特別掛金、③リスク対応掛金の3つの掛金から構成される固定された掛金を拠出します。このリスク対応掛金が、財政悪化に備えて積み立てられる掛金です。この金額の多寡によって企業・加入者のリスク負担が一方に偏る可能性があるため、あらかじめ労使合意により固定的な金額が決定されることが一般的です。 2 会計処理 リスク分担型企業年金のうち、企業の拠出義務が、給付に充当する各期の掛金として、次の拠出に限定され、企業が当該掛金相当額の他に拠出義務を実質的に負っていないものは、企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」(以下、「退職給付会計基準」という)第4項に定める確定拠出制度に分類されます。 退職給付会計基準では、退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度については、当該制度に基づく要拠出額をもって費用処理するとされています(退職給付会計基準第31項)。そのため、退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金については、規約に基づきあらかじめ定められた各期の掛金の金額を、各期において費用として処理することになります(実務対応報告第 33 号「リスク分担型企業年金の会計処理等に関する実務上の取扱い」第7項)。 なお、上記以外のリスク分担型企業年金は、退職給付会計基準第5項に定める確定給付制度に分類され、退職給付会計基準第13項から第26項に定める会計処理が必要となります。 (了)

#No. 308(掲載号)
#竹本 泰明
2019/02/28

〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領《棚卸資産》編 【第1回】「棚卸資産の評価方法(1)~総平均法、移動平均法」

〔事例で使える〕 中小企業会計指針・会計要領 《棚卸資産》編 【第1回】 「棚卸資産の評価方法(1)~総平均法、移動平均法」   公認会計士・税理士 前原 啓二     はじめに 「中小企業会計指針」における棚卸資産の評価方法は、個別法、先入先出法、総平均法、移動平均法、売価還元法等、一般に認められる方法によることとされ、また、期間損益の計算上著しい弊害がない場合には、最終仕入原価法を用いることもできるとされています(中小企業会計指針28)。 今回は、これらの評価方法のうち、「総平均法」、「移動平均法」による具体的な棚卸資産の算定方法をご紹介します。 【設例1】 A社(12月31日決算)は、様々な商品を仕入して販売する会社です。その様々な取扱商品のうちの1つである「商品B」の当期(×1年1月1日~×1年12月31日)の仕入状況と売上状況は、次のとおりです。 仕入状況(当期仕入計10個、620円)⇒ 仕入時に仕入計上しています。 2月18日:8個×@60円/個=480円 8月6日:2個×@70円/個=140円 売上状況(当期売上計9個、900円)⇒ 売上時に売上計上のみ仕訳しています。 3月25日:4個×@100円/個=400円 9月30日:5個×@100円/個=500円 「商品B」の前期末棚卸高、当期末棚卸高は、下記のとおりです。 前期末棚卸高(×0年12月31日):2個、100円(いずれの評価方法でも@50円/個) 当期末棚卸高(×1年12月31日):3個 1 決算整理仕訳 A社の「商品B」に係る決算整理仕訳は、次のとおりです。 〈×1年12月31日〉 (※) 総平均法の場合:180、移動平均法の場合:183 棚卸資産は、上場企業等が適用する「棚卸資産の評価に関する会計基準」では、期末における正味売却価額等時価が帳簿価額より下落している場合には、時価をもって貸借対照表価額としなければなりません(いわゆる「低価法」)。 一方、中小企業会計指針では、取得価額を貸借対照表価額とすること(いわゆる「原価法」)を原則とし、金額的重要性がある場合に、いわゆる「低価法」を適用することとされます(中小企業会計指針27)。 今回の《棚卸資産》編では、中小企業会計指針において原則とされるいわゆる「原価法」での各評価方法を、ご紹介します。 (1) 総平均法 「総平均法」は、棚卸資産をその種類等の異なるごとに区別し、その種類等の同じものについて、その事業年度開始の時において有していた種類等を同じくする棚卸資産の取得価額の総額とその事業年度において取得をした種類等を同じくする棚卸資産の取得価額の総額との合計額をこれらの棚卸資産の総数量で除して計算した価額をその一単位当たりの取得価額とする方法です(法令28①一ハ)。 この設例では、期末棚卸高の単価は下記の算式により算出されます。 したがって、期末棚卸高は@60円/個×3個=180円と算定されます。 この結果、当期の売上原価は、期首商品棚卸高100円+当期仕入620円-期末商品棚卸高180円=540円となります。 他の評価方法と比較するためにあえて当期の商品Bの受払記録簿を作成すると、下記のようになります。期末棚卸高が算定された後に売上原価を算出するため、期中の払出単価・金額は、その都度の算定ができません。 (2) 移動平均法 「移動平均法」は、棚卸資産をその種類等の異なるごとに区分し、その種類等の同じものについて、当初の一単位当たりの取得価額が、再び種類等を同じくする棚卸資産の取得をした場合にはその取得の時において有するその棚卸資産とその取得をした棚卸資産との数量及び取得価額を基礎として算出した平均単価によって改定されたものとみなし、以後種類等を同じくする棚卸資産の取得をする都度同様の方法により一単位当たりの取得価額が改定されたものとみなし、その事業年度終了の時から最も近い時において改定されたものとみなされた一単位当たりの取得価額をその一単位当たりの取得価額とする方法です(法令28①一ニ)。 この設例では、まず、2月18日仕入時に、移動平均単価を下記のように改定します。 次の売上時(3月25日)の払出直後の残高単価は、この移動平均単価になります。 3月25日の残高の金額は、6個×@58円/個=348円です。 その次の仕入時(8月6日)には、移動平均単価を下記のように再び改定します。 これ以降、期末まで仕入がなく、期末棚卸高は@61円/個×3個=183円と算定されます。 この結果、当期の売上原価は、期首商品棚卸高100円+当期仕入620円-期末商品棚卸高183円=537円となります。当期の商品Bの受払記録簿を作成すると、下記のようになります。期中の払出単価・金額は、その都度算定されるため、その都度の記録ができます。   2 決算書 決算書の金額のうち「商品B」に係る部分は、次のとおりです。 【×1年12月31日決算期】   3 法人税法上の取扱い (1) 棚卸資産の評価方法の届出書 新たに設立した会社の場合、その設立した日の属する事業年度の確定申告書の提出期限(合併により設立された法人が仮決算をした場合の中間申告書を提出するときは、その中間申告書の提出期限)までに、また、設立後新たに他の種類の事業を開始し又は事業の種類を変更した会社の場合、その開始又は変更した日の属する事業年度の確定申告書の提出期限(法人が仮決算をした場合の中間申告書を提出するときは、その中間申告書の提出期限)までに、所定の「棚卸資産の評価方法の届出書」を所轄税務署長へ提出して、棚卸資産の評価方法の選定を行うことになっています。 (2) 法定評価方法 この届出をしなかった場合、最終仕入原価法により算定された取得原価による原価法が選定されたものとされます。 (3) 棚卸資産の評価方法の変更承認申請書 選定した棚卸資産の評価方法を変更するには、変更しようとする事業年度開始の日の前日までに所定の「棚卸資産の評価方法の変更承認申請書」(合理的な理由が必要)を所轄税務署長へ提出してその承認(合併・分割等特別な事情により認められる場合を除いて、現に評価方法を採用してから3年以上経過していないときは、原則として評価方法の変更は認められないとされています)を受けなければなりません。 (了)

#No. 308(掲載号)
#前原 啓二
2019/02/28

改正相続法に対応した実務と留意点 【第3回】「権利義務の承継と第三者保護に関する留意点」

改正相続法に対応した実務と留意点 【第3回】 「権利義務の承継と第三者保護に関する留意点」   弁護士 阪本 敬幸   今回は、権利義務の承継と第三者保護に関し、具体例を交えて解説する。なお本改正事項については、下記拙稿を合わせて参照されたい。   1 権利の承継と第三者保護 (1) 改正後民法899条の2〔新設〕の概要 法定相続分を超えて権利の承継があった場合、当該相続人と第三者との間で優劣の問題が生じることがある。改正後民法899条の2は、このような場合の相続人と第三者との関係を、登記・登録・債務者に対する通知等の対抗要件の先後により決するとしたものである。 (2) 具体例 以下のような事例を考えてみる。 被相続人Aには、相続人として子B・Cがいる。Aの相続財産は、100万円の預貯金と1,000万円の不動産である。またAは、Xに対して500万円の債務を負っていた。 Bは相続により、不動産の5分の4の共有持分を取得することとなった。 この場合に、Bが法定相続分を超えて権利取得したことにつき、登記手続がされていなかったとすると、「Cも相続分に応じて不動産を相続した」と信じたXが、不動産のCの法定相続分を差し押さえ、「Bが法定相続分を超えて権利取得した部分」に関して、BとXとの間で優劣関係が生じることがあり得る(Bの法定相続分については、BX間で優劣関係とはならないことは当然である)。 この場合、改正前民法の規律の下では、BとXとの優劣関係の処理は以下のように行われてきた。 しかし、③④の場合に相続人が優先する点については、遺言内容に関与できない債権者保護に欠けるのではないかという批判があったところであり、今回の改正で変更されることとなった。 「相続させる」旨の遺言は多用されており、上記④についてもご存知の方が多いと思われるが、改正後民法施行後は③④の場合も、すべて登記の先後で決することになるので注意が必要である。自動車所有権等、登録制度が存在する権利の場合も同様である。 債権については、債権譲渡の対抗要件である、確定日付のある証書による通知(民法467条2項)の先後により決することとなる。 また、債権の場合には、遺言の内容を明らかにして債務者に承継の通知をした場合には、共同相続人全員が通知をしたとみなすとする、899条の2第2項が存在することも、頭に置いておくことをお勧めする。 (3) 施行時期 上記の改正は、2019年7月1日以後に開始した相続に関して適用され、同日前に開始した相続については、改正前の取扱いとなる(改正法附則1条、2条)。ただし、899条の2第2項に関しては、2019年7月1日より前に開始した相続に関し遺産の分割による債権の承継がされた場合において、同日以後にその承継の通知がされるときにも適用される(改正法附則3条)。   2 義務の承継と第三者保護 (1) 改正後民法902条の2〔新設〕の概要 相続債務について相続分の指定があった場合でも、遺言内容に関与できない債権者を保護することを考え、債権者は各共同相続人に対して法定相続分に応じた権利行使が可能と定めたものである。最高裁平成21年3月24日判決の判断を明文化したものである。 (2) 具体例 改正前民法の下での最高裁判決を明文化したものであるから、改正後民法施行後も取扱いに変更はないが、具体例を元に考えてみる。 被相続人Aには、相続人として子B・Cがいる。Aの相続財産は、1,000万円の不動産である。またAは、Xに対して500万円の債務を負っていた。 Aは、「Bに不動産の5分の4、債務の5分の4を相続させる」旨の遺言を作成していた。 この場合、改正後民法902条の2により、上記遺言にかかわらず、XはCに対しても、Aに対して有していた債権にCの法定相続分2分の1を乗じた250万円を請求することができる。 そして上記1で説明したように、相続される不動産について、Bが5分の4を相続したことの登記がない場合、Xは、Cの法定相続分2分の1についてBより先に登記を得る(Cの共有持分につき差押を行う)ことにより、Bに優先することになる。 (了)

#No. 308(掲載号)
#阪本 敬幸
2019/02/28

〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例32】株式会社ハードオフコーポレーション「代表取締役の異動に関するお知らせ」(2019.1.10)

〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例32】 株式会社ハードオフコーポレーション 「代表取締役の異動に関するお知らせ」 (2019.1.10)   事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹   1 今回の適時開示 今回取り上げる適時開示は、株式会社ハードオフコーポレーション(以下「ハードオフ」という)が平成31年1月10日に開示した「代表取締役の異動に関するお知らせ」である。平成31年4月1日付で、同社の「代表取締役会長兼社長」である山本善政氏(以下「善政氏」という)が「代表取締役会長」に、同社の「取締役副社長」である山本太郎氏(以下「太郎氏」という)が「代表取締役社長」になるという内容である。 「異動の理由」は、次のように記載されている。代表取締役が2人になることが「経営体制の一層の強化を図ること」なのかどうか、筆者には分からないが。   2 経営者の世襲 姓が同じなので容易に推測できるが、ハードオフの有価証券報告書(第46期)の「役員の状況」の記載によると、太郎氏は善政氏の長男とのことである。よくあることではあるが、上場会社において経営者の世襲が行われたのである。 今回の開示に記載された「新代表取締役社長の略歴」によると、太郎氏は、大学卒業後、約2年半、株式会社ファーストリテイリングに勤めた後、ハードオフに入社している。そして、社長室次長を経て、約3年半で常務取締役に就任している。現在38歳である。 その経歴から、新たな代表取締役となったのが、たまたま太郎氏だったわけではなく、太郎氏が代表取締役となるのは既定路線であったことが分かるだろう。 同社が平成30年12月13日に開示しているコーポレートガバナンス報告書の「コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由」には、次のような記載がある。しかし、同社において「総合的な後継者計画の策定」がなされることは、おそらくないだろう。   3 無借金経営 ハードオフの本社がある新潟県には、同県に本社を持つ上場会社の経営者が集まる「新潟県上場企業経営者の会」というものがあり、善政氏はその発起人代表とのことである。同氏は、上場会社の経営者であることをかなり誇りに思われているようだが、その考え方は、経営者の世襲を行うことも然りだが、どうも上場会社の経営者らしくない。 同社の貸借対照表を見ると、有利子負債がなく、自己資本比率は80%を超えていることが分かる。いわゆる無借金経営を方針としているようである。同社の有価証券報告書(第46期)の「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」には、次のような記載がある。   4 配当方針を変更したが ハードオフの自己資本利益率(ROE)は低下傾向にあり、平成30年3月期は4.3%である。株主が会社に求めるのは、「蓄積に努める」ことではないだろう。特にこの低金利の下、無借金経営は、株主が望む方針では決してないはずである。 批判をかわすためだろうか、同社が平成30年5月10日に開示した「2018年3月期決算短信〔日本基準〕(連結)」の添付資料の「利益配分に関する基本方針および当期・次期の配当」には、次のような記載がある。 これをよほど強調したかったのだろう。同社は、同日、加えて「配当方針の変更に関するお知らせ」も開示している。その「理由」は、次のように記載されている。   5 開示に対する姿勢 ハードオフの株主の中には、そうした開示を見て、配当が上がるのだと思ってしまう方がいるかもしれない。しかし、そうではない。配当方針変更後の配当予想額は1株当たり40円とされており、変更前のこれまでの額と変わらないのである。 「配当方針の変更に関するお知らせ」には、配当性向を引き上げることのみが記載されており、配当額については記載されていない。この開示だけを見ると、投資判断を誤ってしまう可能性がある。 同社は、同じ平成30年5月10日に「通期業績予想と実績値との差異及び通期個別業績と前年実績値との差異並びに特別損失の計上に関するお知らせ」も開示しているのだが、これも望ましい開示とは言えない。決算短信とともに、業績予想と実績の差異に関して開示しているのだが、本来であれば、それよりも前に業績予想の修正として開示すべきである。 同社の開示に対する姿勢は、東証一部上場の会社としては見劣りするものだと言わざるを得ない。   6 学歴の過小申告? 筆者は、上場会社における経営者の世襲自体を否定するわけではない(それが無批判に何となく受け入れられてしまう状況に対しては、強い違和感を抱いてしまうが)。しかし、それを行う場合、株主に対して、抽象的な説明でごまかすのではなく、きちんと説明して、理解を得る必要があるはずである。 なお、今回の開示で筆者が最も気になったのは、実は「新代表取締役社長の略歴」の中の「最終学歴」の記載である。「早稲田大学商学部卒業」と記載されているのだが、太郎氏の最終学歴はそれではない。その後、経営大学院で学んでいるのである。正しい最終学歴は「事業創造大学院大学事業創造研究科修了」である。ちなみに、事業創造大学院大学は、筆者が現在勤務している大学である。 これは誤りではなく、意図的なものだろう。某社の前代表の「報酬の過小申告」が最近話題になったが、こちらは「学歴の過小申告」と言える。筆者にとって極めて残念な虚偽記載である。 (了)

#No. 308(掲載号)
#鈴木 広樹
2019/02/28

プロフェッションジャーナル No.307が公開されました!~今週のお薦め記事~

2019年2月21日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.307を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2019/02/21

日本の企業税制 【第64回】「電子経済課税に関する動向」

日本の企業税制 【第64回】 「電子経済課税に関する動向」   一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴   経済のデジタル化に対応した国際的な法人課税のあり方に関する検討が急ピッチで進んでいる。本年6月にはG20財務大臣会合が福岡で開催されるが、そこでは2020年に予定される国際的合意に基づく長期的解決策の取りまとめに向け、一定の方向性を見出し、ゴールに向けた作業計画を策定することとされている。   〇昨年3月公表の「中間報告書」 これまでの議論のベースとなってきたのは、2018年3月にブエノスアイレスで開催されたG20財務大臣会合においてOECDから提出された「経済の電子化に伴う課税上の課題に関する中間報告書」である。 この中間報告書のポイントは次の3点であった。 第1に、デジタル経済の特徴として、①国境を越え物理的拠点を伴わないビジネス、②知的財産など無形資産への大きな依存、③データ及びユーザー参加の重要性、を提示した。 第2に、今後、デジタル化に伴う課税上の課題に対応すべく、グローバルな長期的解決策を取りまとめること、そして、必要に応じ、2つの国際課税原則を見直していくことで合意した。2つの国際課税原則とは、①ネクサス原則(各国の非居住者である企業に対する課税権の決定ルール:「PEなければ課税なし」)と②利益配分原則(課税対象所得の算定及び配分ルール:「独立企業原則」)である。 第3に、グローバルな長期的解決策が合意に至るまで、暫定的措置で対応することを志向する国があることを踏まえ、暫定的措置の導入にあたっての6つの「考慮すべき事項」を提示した。   〇2月公表の「コンサルテーションペーパー」で示された2つの柱 本年2月13日、OECDは、現在検討中の長期的解決策に係る提案について説明した「経済の電子化に伴う課税上の課題に関するコンサルテーションペーパー」を公表した。 今回のコンサルテーションペーパーで示された長期的解決策は、次の2つの柱から構成されている。 【第一の柱】 ネクサス原則及び利益配分原則について、次のいずれか(相互に排他的ではない)の概念を踏まえて見直すことが提示された。 ①の場合、ネクサスを見直す観点から、ユーザーの積極的な参加が考えられる「高度に電子化されたビジネス(Highly Digitalized Businesses:HDB)」においては、ユーザーの所在地国に課税権を配分しようとするものである。 なお、ユーザーの積極的な参加が考えられる「高度に電子化されたビジネス(HDB)」として、ソーシャルメディア・プラットフォーム、検索エンジン、オンライン・マーケットプレイスが挙げられている。これは、イギリスが2020年からの導入を目指しているデジタル・サービス・タックス(Digital Services Tax:DST)の課税対象と重なっている。 ②の場合、利益配分を見直す観点から、個々の企業ではなく市場国に帰属するマーケティング上の無形資産(MIs)に応じて残余利益を配分しようというものである。ブランドや商標、顧客データなどのマーケティング上の無形資産(MIs)はそれぞれの市場国と一体の関係にあると見られることに着目して移転価格を算定するもので、HDBに限らず、伝統的な消費者向けビジネスも含めて、対象を広くとっている点が特徴である。 ③の場合、ネクサスを見直す観点から、非居住者であっても、市場国から定期的に収入を得、かつ一定の要件(例えば、現地通貨又は現地の支払方法での請求や回収、現地語でのホームページの維持、等)を満たす場合に、市場国での課税権を認めるというものである。 【第二の柱】 第一の柱と相互補完的な関係にあるものとして、無税・低税率国への利益移転を防止する措置として、①所得合算ルール(income inclusion rule)及び、②税源浸食的支払いの損金不算入(tax on base eroding payments)が提示された。 これらは、すでに米国でトランプ税制改革の一環として導入された、CFCの課税所得のうちCFCが保有する有形償却資産額の10%を超える額を合算対象とするGILTI(Global Intangible Low-Taxed Income)、国外関連者への特定支払額に対する追加課税(ミニマムタックス)であるBEAT(Base Erosion and Anti-Abuse Tax)と類似するように見える。 (了)

#No. 307(掲載号)
#小畑 良晴
2019/02/21

谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」 【第7回】「租税法律主義と実質主義との相克」-税法の目的論的解釈の過形成①-

谷口教授と学ぶ 税法の基礎理論 【第7回】 「租税法律主義と実質主義との相克」 -税法の目的論的解釈の過形成①-   大阪大学大学院高等司法研究科教授 谷口 勢津夫   Ⅰ はじめに 今回から何回かにわたって、前回と同じ主題(「租税法律主義と実質主義との相克」)の下で、税法の解釈適用の「過形成」について、裁判例を素材にして検討していくことを、前回の最後(Ⅳ)で予告しておいたが、今回は、税法の目的論的解釈の「過形成」として、課税減免制度濫用の法理(【47】=拙著『税法基本講義〔第6版〕』(弘文堂・2018年)の欄外番号。以下同じ)を取り上げることにする。 課税減免制度濫用の法理については、既に第2回のⅢ2で簡単に前触れしたところであるが、外国税額控除規定(法税69条)を利用した租税回避事案(外国税額控除余裕枠利用事件のうちりそな銀行事件)において同規定の適用を否認した最判平成17年12月19日民集59巻10号2964頁を検討していく中で、同判決の基礎にある考え方をそのように呼ぶようになったのである(拙著『租税回避論』(清文社・2014年)第2章第1節[初出・2007年]も参照)。この判決は次のとおり判示している(下線筆者。最判平成18年2月23日訟月53巻8号2461頁も参照)。 この判決を検討した頃から、税法の目的論的解釈の「過形成」に関する筆者の研究が(当初は「過形成」という言葉は用いていなかったものの)本格化したのであるが、以下では、その前段階の研究も含めて「過形成」研究を簡単に振り返りながら、課税減免制度濫用の法理の論理構造及び本質的性格を明らかにすることにしよう。   Ⅱ 課税減免規定の限定解釈 筆者が外国税額控除余裕枠利用事件を検討する契機となったのは、租税法学会第32回総会(2003年10月19日・岡山大学)で「司法過程における租税回避否認の判断構造-外国税額控除余裕枠利用事件を主たる素材として-」と題する報告(租税法研究32号(2004年)53頁[前掲『租税回避論』第1章第2節所収])をすることになったことである。この報告では、同事件のうち特に三井住友銀行事件・大阪高判平成14年6月14日訟月49巻6号1843頁を検討した。 この判決は、外国税額控除規定について「その趣旨・目的に合致しない場合を除外するとの解釈」をとる余地を認めた。そのような解釈は課税減免規定の限定解釈(【46】)と呼ばれるが、これは、課税減免規定に係る適用除外規定の欠缺(いわゆる隠れた欠缺)を補充する「解釈」であり、厳密にいえば、狭義の法解釈(可能な語義の枠内での法解釈)とは区別されるべき一種の法創造である。もっとも、当該課税減免規定の趣旨・目的が、文言による表現に匹敵するほどの明確性をもって、一般に認識可能である、というような厳格な要件を充たす場合には、その趣旨・目的に照らして当該課税減免規定の限定解釈を行うことは、一般論としては、租税法律主義の下でも許容されよう。 これを外国税額控除規定についてみると、同規定の趣旨・目的が国際的二重課税の排除であることは、文言による表現に匹敵するほど明確であると考えられるので、同規定における外国法人税の「納付」という要件から、その趣旨・目的に合致しない場合(例えば国際的二重課税の発生のみを目的とする取引に基因する外国法人税の「納付」。今回取り上げる事件における外国法人税の「納付」も見方によってはこれに該当する)を除外するとの解釈をとることは、租税法律主義の下でも許容されよう。そのような解釈は、狭義の法解釈の限界を超える一種の法創造であるとはいえ、それでもなお依然として要件の文言を「解釈」しようとする方法論的立場を堅持しているのである(「解釈的」方法による法創造)。   Ⅲ 課税減免制度濫用の法理 これに対して、前掲りそな銀行事件・最判は、先に引用した判示から明らかなように、外国法人税の「納付」という要件についてその文言の解釈には(少なくとも判決文上は)全く言及していない。 この点については、確かに、次の見解(金子宏『租税法〔第23版〕』(弘文堂・2019年)140-141頁)にみられるように、同最判を課税減免規定の限定解釈の「例」としてその射程内に位置づける理解も示されてはいる。 しかし、繰り返しになるが、同最判は、端的に、「本件取引に基づいて生じた所得に対する外国法人税を法人税法69条の定める外国税額控除の対象とすることは,外国税額控除制度を濫用するものであり,さらには,税負担の公平を著しく害するものとして許されないというべきである。」(下線筆者)と判示するのみである。もっとも、この判示部分のうち「外国税額控除制度を濫用するもの」は、外国税額控除制度の趣旨・目的に反する同制度の利用を意味するが、このことから直ちに、「本件取引に基づいて生じた所得に対する外国法人税を法人税法69条の定める外国税額控除の対象とすること」が「許されない」と判断しているわけではない点については、更に立ち入った検討が必要である。 同最判は、上記の判断において「税負担の公平を著しく害するもの」という判示を介在させている。租税負担の公平は、租税理論・政策上も租税憲法(租税平等主義)上も租税法律の内容を構成し規定する基本的要素であり(含み公平観。【21】・第2回Ⅱ参照)、これを(著しく)害するものは、租税法律の観点から(著しく)不当と評価されるべきものである(【69】も参照)。「租税負担の公平=租税正義」(ドイツ語ではいずれもSteuergerechtigkeit)という「等式」が成り立つ所以である。つまり、同最判は、「外国税額控除制度を濫用するもの」に対して不当という税法的評価を加え、「外国税額控除制度を濫用するもの」をその不当性に基づき「許されない」と判断したものと解される。 要するに、外国税額控除制度という課税減免制度の趣旨・目的を探知すれば、当該制度の利用が当該制度の濫用(趣旨・目的に反する利用)に該当するかどうかを認識することはできるが、しかし、濫用の認識から直ちに、当該制度の濫用を「許されない」とする価値判断を導き出すことはできず、濫用の認識に不当という税法的評価が付加されて初めて、「許されない」とする価値判断が成立するのである。 同最判による外国税額控除否認の判断構造は、以上のようなものであると解されるが、そうすると、それは、課税減免規定の限定解釈による外国税額控除否認の判断構造とは明らかに異なるので、筆者としては、同最判の基礎にある考え方を課税減免制度濫用の法理と呼んで、課税減免規定の限定解釈とは一線を画することにしたのである。すなわち、課税減免制度濫用の法理は、課税減免規定の限定解釈とは異なり、当該規定をその趣旨・目的に照らして限定的に解釈することによって当該規定に係る適用除外規定を創造する考え方ではなく、課税減免制度の趣旨・目的それ自体を「規範」として用い、当該制度の濫用(趣旨・目的に反する利用)を認識し、その認識に不当という税法的評価を付加することによって、当該制度の濫用を否認するための「法規範」を創造する考え方であると考えるところである。 前述のとおり、「租税負担の公平=租税正義」という「等式」が成り立ち、しかも課税減免制度の濫用が、当該制度の趣旨・目的に従って当該制度の適用を受ける者及び受けない者との間で「不公平」を発生させる以上、税法の解釈適用者(税務官庁や裁判官)の「気持ち」が、課税減免制度の濫用を「(正義に反するという意味で)不当」とみて、その濫用を否認するための「法規範」を創造しようとする方向に動くのも、理解できないわけではない(【67】も参照)。 さらには、次の見解(平野嘉秋「外国税額控除余裕枠の利用の可否(大阪地裁平成13年5月18日判決)」税務弘報50巻4号(2002年)60頁、71-72頁)が指摘するような国家財政に対する悪影響、一般の納税者の納税道義の低下のおそれ等も、税法の解釈適用者の前記のような「気持ち」の動きを後押ししたのかもしれない(杉原則彦「判解」最高裁判所判例解説民事篇平成17年度(下)990頁、997頁も参照)。 課税減免制度濫用の法理の下で行われる法創造は、「解釈的」方法による法創造ではなく、「租税法規の趣旨・目的の法規範化」による法創造ともいうべきものである(【47】)。これを認める考え方を筆者は「租税法規の趣旨・目的の法規範化論」と呼んでいるが、課税減免制度濫用の法理はその(代表的な)1つである(拙稿「租税回避と税法の解釈適用方法論-税法の目的論的解釈の『過形成』を中心に-」岡村忠生編著『租税回避研究の展開と課題〔清永敬次先生謝恩論文集〕』(ミネルヴァ書房・2015年)1頁、13頁以下参照)。   Ⅳ おわりに 最後に、租税法規の趣旨・目的の法規範化論、とりわけ課税減免制度濫用の法理について、租税法律主義及び実質主義との関係を述べておこう。 租税法規の趣旨・目的の法規範化論は、租税法規の要件の解釈によって法規範を定立しこれを事案に適用するのではなく、租税法規の趣旨・目的それ自体を法規範として事案に適用し、その趣旨・目的に反する納税者の行為を租税法規の適用上否認する考え方である。とりわけ課税減免制度濫用の法理は、課税減免制度の濫用(趣旨・目的に反する利用)に租税負担の公平の観点から不当という税法的評価を付加し、もって課税減免制度の趣旨・目的からいわば「不文の濫用規制要件」ともいうべき法規範を創造し、これを事案に適用して課税減免制度の適用を否認する考え方である。 課税減免制度にそのような「不文の濫用規制要件」が内在することを認めこれを適用して課税減免制度の濫用を否認することを容認することは、課税に租税法律上の明文の根拠を要求する租税法律主義にとって「自己否定」ともいうべきものである。換言すれば、租税法律主義の下では、「租税負担の公平=租税正義」という「等式」は、租税法律上の明文の規定の存在を前提にして、その規定の枠内においてのみ、成立すべきものなのである(含み公平観。【21】・第2回Ⅱ参照)。要するに、租税法律主義の下では、課税減免制度の濫用を否認するためには、平成13年度税制改正によって新たに定められた濫用規制要件(法税69条1項括弧書・同令141条4項[現行142条の2第5項])のような明文の否認規定が不可欠である。 他方、前記のような「不文の濫用規制要件」を創造するために租税負担の公平の観点から課税減免制度の濫用に対して不当という税法的評価を加えるという思考過程は、経済的実質主義への「先祖返り」(前回Ⅲ2参照)の道に通じるものである。その道程の「分岐点」にあるのが、税法の目的論的解釈である。 税法の目的論的解釈と実質主義との関係について、実質主義を定める規定の創設が税制調査会「国税通則法の制定に関する答申(税制調査会第二次答申)」(昭和36年7月。公益社団法人日本租税研究協会ウェブサイト「税制調査会答申集」)4頁で答申されたにもかかわらず国税通則法の制定に当たっては結局のところ見送られたことを受けて、以下のような見解が示されるようになった(①植松守雄「税法上の実質主義について」税経通信23巻10号(1968年)129頁、130頁、②広瀬時江『判例を中心とする税金問題の研究』(財経詳報社・1971年)63頁、③下村芳夫「租税法律主義をめぐる諸問題-税法の解釈と適用を中心として」税務大学校論叢6号(1972年)1頁、28頁)。 しかし、次の見解(前記②66頁)が正当にも指摘するように、先に述べた「分岐点」にある税法の目的論的解釈を誤って「過形成」してしまうと、租税法律主義の下では許容されない解釈方法をその「分岐点」において選ぶことになり、経済的実質主義への「先祖返り」の道を進むことになるのである。 この見解は、目的論的解釈の「過形成」に関する研究の必要性(前回Ⅳ参照)を指摘するものとして、現代においてもなお傾聴すべき価値を失っていない、いやむしろ課税減免制度濫用の法理など最近の判例の考え方をみるとその価値を増している、とさえ考えるところである。 (了)

#No. 307(掲載号)
#谷口 勢津夫
2019/02/21

〔平成31年3月期〕決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第3回】「「法人税率の段階的引下げ」「欠損金の繰越控除限度額の見直し・繰戻し還付の不適用の延長」「租税特別措置法の適用期限の延長」」

〔平成31年3月期〕 決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第3回】 「「法人税率の段階的引下げ」 「欠損金の繰越控除限度額の見直し・繰戻し還付の不適用の延長」 「租税特別措置法の適用期限の延長」」   公認会計士・税理士 新名 貴則   平成30年度税制改正における改正事項を中心として、平成31年3月期の法人税申告においては、いくつか留意すべき点がある。【第2回】は「情報連携投資等の促進税制(IoT税制)」及び「法人税における収益の認識等の基準」について解説した。 【第3回】は、「法人税率の段階的引下げ」、「欠損金の繰越控除限度額の見直し・繰戻し還付の不適用の延長」及び「租税特別措置法の適用期限の延長」について、平成31年3月期決算申告において留意すべき点を解説する。   1 法人税率の段階的引下げ 平成28年度税制改正により、法人税率の段階的な引下げが行われている。平成28年4月1日以後に開始する事業年度においては23.4%が適用されていたが、平成30年4月1日以後に開始する事業年度においては、23.2%が適用される。したがって、平成31年3月期の決算申告においては、法人税率の変更が必要となる。平成28年度税制改正による段階的引下げとしては、今回が最後の引下げになる。 また、平成31年3月31日までに開始する事業年度については、中小法人等に対する軽減税率(本来は19%)が、特別措置により15%に引き下げられている。したがって、平成31年3月期決算においては、中小法人等の軽減税率としては前年度と同じ15%が適用される。 【法人税率】 (※) 資本金又は出資金1億円以下の法人のこと(資本金又は出資金5億円以上の大法人の完全子会社等を除く)。 なお、平成31年度税制改正により、中小法人等に対する軽減税率の適用期間が2年間(平成33年3月31日までに開始する事業年度まで)延長される予定である。   2 欠損金の繰越控除限度額の見直し・繰戻し還付の不適用の延長 ① 繰越控除限度額の見直し 平成27年度税制改正及び平成28年度税制改正により、中小法人等を除き、欠損金の繰越控除限度額は、繰越控除前所得の50%相当額まで、段階的に引き下げられることになった。平成30年3月期決算申告においては、控除前所得の55%が控除限度であったが、平成31年3月期決算申告においては、控除前所得の50%まで引き下げられるので、注意が必要である。 ただし、中小法人等については、引き続き繰越控除前所得の100%相当額を繰越控除限度額とし、引下げは行われていない。 また、欠損金の繰越期間は9年であったが、平成31年3月期以降の発生分については、繰越期間が10年に延びる。 (※1) 資本金又は出資金1億円以下の法人(資本金又は出資金5億円以上の大法人の完全子会社等を除く)。 (※2) 平成31年3月期において発生した欠損金の繰越期間は10年だが、平成30年3月期以前に発生した欠損金の繰越期間は9年のままである。 ② 繰戻し還付の不適用の延長(中小企業者等以外の法人) 欠損金の繰戻し還付とは、青色申告法人において欠損金が生じた際に、これを過去の事業年度に繰り戻して、法人税の還付を受けられる制度のことである。 (※) 分母の金額を限度とする。 現在、中小企業者等以外の法人については、この制度が適用できないこととされている。さらに、不適用の期間が平成30年度税制改正によって2年間延長されたため、平成32年3月31日までに終了する事業年度においては適用することができない。   3 租税特別措置法の適用期限の延長 平成30年度税制改正において、いくつかの租税特別措置の適用期限が延長されている。ここでは、その中でも主なものについて解説する。 ① 交際費等 税務上の交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が得意先、仕入先等に対する接待、供応、慰安、贈答等のために支出する費用のことである。 平成26年度税制改正により、税務上の交際費等の課税関係は次表の通りとなった。これが平成28年度税制改正及び平成30年度税制改正を経て、平成32年3月31日までに開始する事業年度まで延長されている。したがって、平成31年3月期決算申告においても、交際費等の課税関係は平成30年3月期と変わらない。 【交際費等の課税関係】 (※1) 1人当たり5,000円以下の接待飲食費(社内接待費は除く)は、そもそも「交際費等」から除かれ、損金算入される。 (※2) 資本金又は出資金1億円以下の法人(資本金又は出資金5億円以上の大法人の100%子会社等は除く)。 ② 少額減価償却資産 取得価額10万円以上の減価償却資産であっても、30万円未満であれば、青色申告書を提出する中小企業者等においては、少額減価償却資産として取得時に全額損金算入できる特例が設けられている。ただし、次の点に注意が必要である。 また、取得価額30万円未満の減価償却資産が対象であるため、有形固定資産だけでなく、ソフトウェアや特許権等の無形固定資産も対象となる。新品の資産だけでなく、中古資産も同様である。 この特例は、平成30年3月31日までの取得等が対象とされていたが、平成30年度税制改正により、2年間(平成32年3月31日までの取得等)延長されている。したがって、平成31年3月期決算申告においては、中小企業者等は引き続きこの特例を適用できる。 (了)

#No. 307(掲載号)
#新名 貴則
2019/02/21

基礎から身につく組織再編税制 【第1回】「組織再編税制の考え方」

基礎から身につく組織再編税制 【第1回】 「組織再編税制の考え方」   太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 川瀬 裕太   ◇◆◇連載開始に当たって◇◆◇ いわゆる「組織再編税制」は、平時の法人税務において頻出するものではなく、以前は基本的に一部の専門家のみが必要とする知識でしたが、企業のグローバル化を後押しする法整備によってM&A市場が活況を呈し、また事業承継問題を解決する一策としてその有効性がうたわれるようになってからは、中小企業を巻き込んだ組織再編も既に珍しいものではなくなりました。 このような状況下において、税理士だけでなく企業の財務・法務担当者など幅広い方々が組織再編税制を理解する重要性は非常に高まっているといえます。 そこで本連載では、初めて組織再編税制を学ぶ方々を対象に、その基礎となる知識をしっかりと身につけていただくことを念頭に、できるだけ分かりやすく解説していきたいと思います。   1 基本的な考え方 法人が組織再編成によりその保有する資産を他の法人に移転した場合には、譲渡(売却)をした場合と同様に、移転資産に対する譲渡損益を計上するのが法人税法上の原則です。 ただし、組織再編成により資産を移転する場合にも、移転前後で経済実態に実質的な変更がないと考えられるようなときは、新たな課税関係を生じさせず、従前の状態を継続させることが適当と考えられます。 したがって、組織再編成により移転する資産に対する支配が組織再編成後も継続していると認められるものについては、特例として、移転資産の譲渡損益の計上を繰り延べることとされています。   2 組織再編税制の対象 組織再編税制の対象となる「組織再編」は、次のものをいいます。   3 税務上の取扱い 組織再編成においては、資産を移転する法人は、原則(非適格組織再編成)は移転資産の譲渡損益を計上することとされ、特例(適格組織再編成)で移転資産の譲渡損益の計上を繰り延べることとされています。 資産を取得する法人については、原則(非適格組織再編成)は移転資産を「時価」で取得することとなり、特例(適格組織再編成)では移転資産を「簿価」で引き継ぐこととされています。 一方、株主側の取扱いは、非適格組織再編成に該当する場合にはみなし配当が生じることとされ、対価として株式のみが交付されている場合には旧株式の譲渡損益の計上を繰り延べ、株式以外の資産の交付を受ける場合には旧株式の譲渡損益を計上することとされています。 (※) 金銭等の交付がなければ株式譲渡損益なし   4 適格組織再編成 「適格組織再編成」とは、以下の組織再編成をいいます。 ① 企業グループ内の組織再編成 企業グループ内組織再編成は、さらに、100%関係のグループ内で行われるもの(完全支配関係がある場合の組織再編成)と50%超関係のグループ内で行われるもの(支配関係がある場合の組織再編成)に分かれます。 支配関係がある場合の組織再編成については、組織再編成による資産の移転を個別の資産の売買取引と区別する観点から、資産の移転が独立した事業単位の移転であること、組織再編成後も移転した事業が継続されることが要件として必要です。 ② 共同事業を営むための組織再編成 共同事業を営むための組織再編成に該当するかどうかについては、①の要件に加え、組織再編成により1つの法人組織で行うこととした事業が相互に関連性を有するものであること、それぞれの事業の規模が著しく異ならないことなどにより判定するものとされています。 ③ スピンオフ(独立して事業を行う場合の組織再編成) 平成29年度税制改正により創設されたもので、支配株主のない法人の実質的な支配者はその法人そのものであり、その法人自身の分割であるスピンオフについては、単にその法人が2つに分かれるような分割であれば、移転資産に対する支配は継続していることから適格組織再編成として取り扱われることになりました。 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 適格要件を満たすものについては、移転資産等に対する支配が継続しているとされ、譲渡損益が繰り延べられますが、適格要件の詳細については次回以降で説明することとします。   5 繰越欠損金と資産に係る含み損の制限 適格合併が行われた場合には、資産移転法人の未処理欠損金を引き継ぐこととされています。ただし、欠損金の利用のみを目的として適格合併が行われることが想定されるため、一定の引継制限が課されています。 適格組織再編成で資産移転法人の帳簿価額で資産の引継ぎをすると、含み損益が資産取得法人に移転するため、含み益資産を譲渡することで含み益を実現させ、資産取得法人の欠損金を使用することができます。したがって、資産移転法人の含み益と資産取得法人の欠損金を相殺させる租税回避を防止するため、資産取得法人の欠損金についても一定の使用制限が課されています。 適格組織再編成により移転する資産は、資産移転法人の帳簿価額で引き継ぐこととされていますが、その資産の含み損の利用を目的とする租税回避を防止する観点から、一定の適格組織再編成を行った法人が移転を受けた資産を譲渡することで含み損を実現した場合には、その損失を損金の額に算入しないという規定が設けられています。   6 租税回避防止規定 組織再編成の形態や方法は複雑かつ多様であり、資産の売買取引を組織再編成による資産の移転とするなど、租税回避の手段として濫用されるおそれがあります。 その防止を目的として、組織再編成に係る包括的な租税回避防止規定が設けられており、組織再編成における資産移転法人(※)又は資産取得法人(※)に係る法人税の負担を不当に減少される結果となると認められるときは、その行為又は計算が否認されることとされています(法法132の2)。 (※) 株主についても所得税、相続税に同様の規定が設けられています。 ◆組織再編成における税務上のポイント◆ 適格組織再編成に該当するかどうかの検討 繰越欠損金の引継制限、使用制限に該当するかどうかの検討 資産の含み損の使用制限に該当するかどうかの検討 組織再編成を利用した租税回避行為に該当すると指摘されるリスクの検討   (了)

#No. 307(掲載号)
#川瀬 裕太
2019/02/21

相続税の実務問答 【第32回】「相続人間で相続分の譲渡が行われている場合の相続税の申告」

相続税の実務問答 【第32回】 「相続人間で相続分の譲渡が行われている場合の相続税の申告」   税理士 梶野 研二   [答] 相続税の申告期限までに遺産分割が調わない場合には、法定相続分の割合で相続財産を取得したものとして、相続税の課税価格を計算して相続税の申告をすることとなります。 この場合、相続人間で相続分の譲渡が行われていた場合には、相続分の譲渡が行われた後の相続分の割合により相続税の課税価格の計算をすることとなります。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 相続分の譲渡 民法に相続分の譲渡について直接規定した条文はありません。しかし、「共同相続人の1人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる」との民法第905条第1項の規定は、共同相続人の1人が、相続開始から遺産分割までの間に、その相続分を譲渡できることを前提としていることから、民法は、遺産分割前の共同相続人の相続分を他の共同相続人又は第三者に譲渡することを認めていると解されます。 他の共同相続人に対して相続分の譲渡がされた場合には、当該譲渡の当事者である共同相続人の相続分が変わるにすぎません。これに対して、共同相続人以外の第三者に相続分が譲渡された場合には、当該第三者が、相続人と同じ地位に立ち、相続財産の管理・遺産分割の手続きにも加わることとなります(新基本法コンメンタール「相続」103頁(木村敦子)・2016年日本評論社)。   2 相続分の譲渡があった場合の相続税法第55条の適用 相続税法第55条は、遺産の全部又は一部が未分割の場合には、未分割財産については、各共同相続人が民法(904条の2を除きます)の規定による相続分に従って未分割財産を取得したものとして相続税の課税価格を計算する旨を定めています。 相続税の申告期限までに遺産分割が行われず、共同相続人間で相続分の譲渡が行われた場合に、各共同相続人が民法(904条の2を除きます)の規定による相続分に従って未分割財産を取得したものとして相続税の課税価格を計算する場合の具体的な計算方法について、①相続分の譲渡が行われた場合であってもそれにかかわらず本来の相続分により計算すべきか、又は②相続分の譲渡が行われた後の相続分により計算すべきか、判断に迷うところです。 この点について、最高裁判所第三小法廷平成5年5月28日判決は、相続税法第55条本文にいう「相続分」には共同相続人間の譲渡に係る相続分が含まれるとした原審判決(平成元年8月30日東京高裁判決)を正当として是認することができるとしました。 この判決により、相続税の申告書を提出する際に、共同相続人間で遺産分割が行われておらず、かつ、共同相続人間で相続分の譲渡が行われていた場合には、相続分の譲渡が行われた後の相続分により、相続税の課税価格の計算を行うことが明らかになりました。 〇昭和62年10月26日東京地裁判決(下線筆者)   3 ご質問の場合 相続税の申告書の提出期限である平成31年3月25日までに、あなた方姉妹4人による遺産分割協議が調わない場合には、相続税法第55条の規定に基づきそれぞれの相続分の割合でお父様の遺産を取得したものとして、相続税の申告を行います。 あなた方姉妹の相続分は、本来、4分の1ずつですが、あなたが妹さん(四女)の相続分(4分の1)を無償で譲り受けた場合には、あなたの相続税法第55条に定める相続分は2分の1(本来の4分の1に妹さんの相続分を加算した割合)となり、妹さん(四女)の相続分はないこととなります。 したがって、あなたが2分の1、二女の方と三女の方が各4分の1の割合でお父様の遺産を取得したものとして、相続税の申告を行うこととなります。   (了)

#No. 307(掲載号)
#梶野 研二
2019/02/21
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