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相続空き家の特例 [一問一答] 【第23回】「「相続空き家の特例」の譲渡価額要件(1億円以下)の判定⑤(「適用前譲渡」又は「適用後譲渡」が著しく低い価額による譲渡の場合)」-譲渡価額要件の判定-

相続空き家の特例 [一問一答] 【第23回】 「「相続空き家の特例」の譲渡価額要件(1億円以下)の判定⑤ (「適用前譲渡」又は「適用後譲渡」が 著しく低い価額による譲渡の場合)」 -譲渡価額要件の判定-   税理士 大久保 昭佳   Q X(兄)は、昨年5月に死亡した父親の居住用家屋(昭和56年5月31日以前に建築)とその敷地(200㎡)を相続により取得し、その家屋を取り壊し更地にした上で、その敷地の半分(100㎡)を、同年9月に不動産会社へ6,000万円で売却しました。 また、Xは、本年1月に、残りの敷地(100㎡)を通常の取引価額が6,000万円であるところ、Y(妹)へ2,000万円で売却しました。 この場合、Xの譲渡は、「相続空き家の特例(措法35③)」の譲渡価額要件(1億円以下)を満たすこととなるのでしょうか。 A Yへの譲渡は「著しく低い価額の対価による譲渡」となるため、通常の取引価額で判定され、「対象譲渡」と「適用後譲渡」の合計額が1億円を超えることから、「相続空き家の特例」の適用を受けることができません。 ●○●○解説○●○● 「相続空き家の特例」は、被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等の譲渡の対価の額が1億円以下であることが、その適用要件の1つとされています(措法35③)。 そして、居住用家屋取得相続人が「適用前譲渡」又は「適用後譲渡」をした場合において、その「適用前譲渡」又は「適用後譲渡」が贈与(著しく低い価額の対価による譲渡として財務省令で定めるものを含む)によるものである場合における譲渡価額要件の判定については、その贈与の時における価額に相当する金額をもってその対価の額とする旨が規定されています(措令23⑩)。 おって、財務省令で定めるところの「著しく低い価額の対価による譲渡」とは、その対価の額がその譲渡の時における通常の取引価額の2分の1に相当する金額に満たない金額である場合の譲渡とされています(措規18の2③)。 また、「贈与(著しく低い価額の対価による譲渡を含む)の時における価額」とは、その贈与の時又はその著しく低い価額の対価による譲渡の時における通常の取引価額をいうこととされています(措通35-24(被相続人の居住用財産の一部を贈与している場合))。 したがって、本事例の場合、XからYへの譲渡価額は2,000万円であるものの、通常の取引価額が6,000万円であることから、「対象譲渡」と「適用後譲渡」の合計額が1億円を超えて譲渡価額要件を満たさず、「相続空き家の特例」の適用を受けることができないこととなります。 (了)

#No. 247(掲載号)
#大久保 昭佳
2017/12/07

租税争訟レポート 【第35回】「専ら従業員の慰安のために行われた「感謝の集い」に要した費用の交際費等該当性(福岡地方裁判所判決)」

租税争訟レポート 【第35回】 「専ら従業員の慰安のために行われた「感謝の集い」に要した費用の交際費等該当性(福岡地方裁判所判決)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝     【事案の概要】 本件は、養鶏事業、食肉等食料品の販売事業等を営む原告が、原告の役員及び従業員並びに下請先である協力会社等の役員及び従業員合計1,000人程度が参加する「感謝の集い」を年に1回、大型リゾートホテルの宴会場で行っていたところ、熊本国税局調査課の税務調査において、「感謝の集い」に要した費用は交際費等に該当するとの指摘を受け、処分行政庁である高鍋税務署がその指摘に従った更正処分を行った。当該更正処分を不服とした原告は、異議申立、審査請求を経て、本件訴訟の提起に踏み切ったものである。 争点は、原告が福利厚生費とした「感謝の集い」に要した費用が、交際費等に該当するか否かである。 各事業年度における「感謝の集い」の参加者は約1,000人、参加率は71%から75%程度であり、1人当たりの費用は概ね2万円台前半であった。   【被告の主張】 次の1及び2のとおり、本件各事業年度の「感謝の集い」に係る費用は、いずれも租税特別措置法(平成24年改正前のもの。以下「措置法」という)61条の4第3項柱書の「交際費等」に当たり、交際費等から除かれる費用には該当しないから、本件各更正処分は適法である。 1 「感謝の集い」に係る費用は、いずれも「交際費等」に該当すること 「感謝の集い」は、原告及び協力会社等の全従業員を対象としており、これらの従業員は、措置法61条の4第3項の「その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等」に該当することから、「交際費等」に該当する支出の相手方となる。また、「感謝の集い」は、参加者の慰安を目的として飲食の提供及びコンサート鑑賞を行ったものである。 したがって、「感謝の集い」に係る支出は、措置法61条の4第3項柱書の「交際費等」に該当する要件を満たしている。 2 「感謝の集い」に係る費用は、措置法61条の4第3項1号の「通常要する費用」の範囲を超えていること 措置法61条の4第3項並びに措置法通達61の4(1)-10及び同(1)-18によれば、会社の従業員等の慰安行事に係る費用は、「通常要する費用」の範囲内である限り、福利厚生費として「交際費等」から除外されるところ、当該費用が「通常要する費用」の範囲内であるか否かについては、当該行事が、法人が費用を負担して行う福利厚生事業として社会通念上一般的に行われていると認められるものであることを要し、その判断に当たっては、行事の規模、開催場所、参加者の構成及び1人当たりの費用額、飲食の内容等を総合して判断すべきである。 「感謝の集い」については、 などから、平日の昼の時間帯に、開演から終了まで4時間ないし4時間50分という比較的短い時間で行われた慰安行事に費やされた額としては極めて高額であることは明らかであり、法人が費用を負担して行う福利厚生事業として社会一般的に行われていると認められる行事の程度を著しく超えているといわざるを得ない。 よって、「感謝の集い」に係る費用については、「交際費等」から除かれる福利厚生費(除外費用)には該当せず、「交際費等」に該当するというべきである。   【原告の主張】 次の1及び2によれば、「感謝の集い」に要した費用が「交際費等」に該当しないことは明らかであるから、本件各更正処分等は違法である。 1 全従業員を対象とした慰安目的の行事に係る費用は福利厚生費に該当し、「通常要する費用」であるか否かを問わず「交際費等」には該当しないこと 措置法61条の4第3項は、「交際費等」の支出の相手方を「その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等」と規定していることから、従業員に対する支出は福利厚生費であって、「交際費等」には該当しないものの、特定の一部の従業員を対象とする場合には、法人の冗費が増大し、損金不算入制度の趣旨に反するから、福利厚生費ということはできず、例外的に「交際費等」に該当するものと解すべきである。 この点、措置法通達61の4(1)-1においても、「福利厚生費」は交際費等には含まれないものとするとされており、福利厚生費が「通常要する費用」を超える場合を除くとは規定されていない。このような通達の規定からも、福利厚生費は、費用の多寡にかかわらず、「交際費等」には含まれないというべきである。 「感謝の集い」は、原告及び協力会社等の全従業員に受益の機会が保障されたものであって、特定の一部の従業員を対象とするものではない。したがって、「感謝の集い」に係る費用は、福利厚生費に当たり、「交際費等」には含まれないというべきである。 2 被告主張のとおり、福利厚生費について、「通常要する費用」を超える場合には「交際費等」に含まれると解されるとしても、本件各福利厚生費は「通常要する費用」の範囲内であると認められること 福利厚生費が「通常要する費用」の範囲内であるか否かについては、実際の支出に即して、その目的達成との関係において通常要する費用かどうかという観点から、行事の規模、開催の場所、参加者の構成、飲食等の内容、1人当たりの費用額、会社の規模を判断要素として、判断すべきであって、実際の支出の目的達成とは無関係に、抽象的一般的に判断すべきではない。 「感謝の集い」については、「感謝の集い」の目的が全従業員に対して感謝の意を表するとともに、労働意欲の向上を図ることなどにあって、1,000人を超える従業員全員を一堂に集める必要があること、工場での操業を2日以上停止させることはできないことなどに照らせば、上記判断要素のどの点についても「通常要する費用」の範囲に含まれるというべきである。 したがって、本件各福利厚生費は除外費用に該当し、措置法61条の4第3項の「交際費等」には該当しないというべきである。   【裁判所の判断】 こうした主張を受け、福岡地方裁判所は、次のように判示した。 1 「専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用」の意義と「交際費等」該当性 (1) 措置法61条の4第3項による除外規定の趣旨 裁判所は、措置法61条の4第3項が、「専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用」について、損金不算入の取扱いを受ける「交際費等」から除外した理由について、 と説明したうえで、こうした行事が、 として、「社会通念上一般的な福利厚生費」であれば、「交際費等」から除外されるとの見解を示した。 そのうえで、その判断基準については、「当該法人の規模や事業状況等を踏まえた上で、当該行事の目的、参加者の構成、開催頻度、規模及び内容、効果、参加者1人当たりの費用額等を総合して判断するのが相当である」とした。 (2) 原告の主張に対する判断 上記【原告の主張】1のとおり、原告は、従業員全員を対象とした慰安目的の行事に係る費用は、福利厚生費に該当し、費用の多寡にかかわらず、「交際費等」に該当しないと主張しているが、この主張に対して裁判所は、 として、「従業員の慰安行事に係る費用については、対象が従業員の全員であるか、一部であるかを問わず、当該費用が「通常要する費用」を超える場合には「交際費等」に該当するというべきであり、原告の上記主張を採用するのは困難である」と斥けた。 2 原告による「感謝の集い」行事に係る費用 (1) 「感謝の集い」の開催趣旨 裁判所は「感謝の集い」の開催趣旨について、次のように認定した。 「感謝の集い」は、原告及び協力会社等の従業員全員を対象とし、原告代表者が従業員に対する感謝の意を表し、従業員の労働意欲を向上させるために、他の従業員との歓談や交流の機会、コース料理及びコンサート鑑賞の機会を提供するものである。 「感謝の集い」の特徴は、 などが挙げられ、裁判所は、こうした特徴から、「感謝の集い」は従業員全員を対象とする「日帰り慰安旅行」であったといえる、と判断した。 (2) 「感謝の集い」に要した費用が「通常要する費用」に該当するか否か 裁判所は、「感謝の集い」の開催目的について、原告が債務超過による倒産の危機を乗り越え、グループ会社を含めて黒字経営となったという経営再建の歴史的経緯を踏まえて、原告代表者が、その原動力となった従業員に感謝の気持ちを伝えて労苦に報いるとともに、従業員の労働意欲を更に向上させ、従業員同士の一体感や会社に対する忠誠心を醸成することにあったと認定したうえで、従業員の一体感や会社に対する忠誠心を醸成して、更なる労働意欲の向上を図るためには、従業員全員において非日常的な体験を共有してもらうことが有効、必要であると考えられるとして、「感謝の集い」を開催することの必要性を認めた。 そのうえで、「従業員の慰安目的の福利厚生事業においては、慰安目的を達成するために、従業員に対し感動や感銘をもたらすような非日常的な要素が含まれているのが通常」であるとして、非日常的な要素として、「県外や国外への旅行、普段味わう機会のない食事や生の音楽鑑賞等が考えられる」とした。そして、慰安旅行については、 と判断した。 そのうえで、年間稼働日数が300日を超える原告の事業状況や従業員の女性比率の高さに照らせば、原告の事業に支障を来すことなく、可能な限り全員参加が可能な慰安旅行としては、宿泊を伴う旅行は現実的ではなく、日帰り旅行にせざるを得ない状況にあったことから、裁判所は、「感謝の集い」について、 と判断した。 そして、「感謝の集い」が、原告のような事業規模を有する優良企業が年1回の頻度で行う福利厚生事業として社会通念上一般的に行われている範囲を超えるものであると認めるのは困難であると判断できるとともに、「感謝の集い」に係る参加者1人当たりの費用である2万1,972円から2万8,726円についても、通常要する費用額を超えるものとは認め難いと結論づけた。 その結果、裁判所は、「感謝の集い」について、福利厚生事業(慰安行事)として社会通念上一般的に行われている範囲を超えており、当該行事に係る費用が社会通念上福利厚生費として認められる程度を超えているものと認めることは困難であると判断し、原告の主張を認めた。 (3) 被告の主張に対する判断 さらに、被告による、①「酒食等の提供を主としてなされる慰安行事」と②「移動や宿泊等を伴う旅行を主としてなされる慰安行事」とは、その一般的に必要となる1人当たりの支出費用が異なるのであり、酒食等が旅行等より安価だからといって当然に当該支出が福利厚生費(通常要する費用)に該当するということはできないという主張について、裁判所は、「感謝の集い」は「日帰り慰安旅行」であると認められるとしたうえで、被告による上記①及び②の各要素は、いずれも従業員の慰安目的達成のために必要な非日常的要素であり、互いに排他的なものではなく、当該法人の規模や事業状況等によって、両要素を含む慰安行事も一般的に行われていると説明して、「感謝の集い」に係る費用は、「日帰り慰安旅行」に係る費用額と比較すれば、通常要する程度であるといえることから、被告の主張を採用することは困難であると判断した。   【解説】 「養鶏業」という生物相手の事業であり、年間300日を超える工場稼働日数、1,000名を超える参加者とそのうち過半数を超える女性社員の存在などから、宿泊を伴う慰安旅行が企画できない原告が催した「感謝の集い」に対して、税務調査に当たった熊本国税局の調査担当者は、その内容から、福利厚生費として「通常要する費用」の範囲を超えているとして、「交際費等」として損金の額に算入しないという判断を下し、所轄税務署の高鍋税務署長がその判断に従った更正処分等を行った事案で、福岡地方裁判所は、原告の主張を認めて、「感謝の集い」に要した費用を福利厚生費として損金の額に算入することを認めた。 1 措置法通達の確認 まず、被告が課税処分を行うにあたり、依拠したと思われる措置法通達を確認したい。 福利厚生費とすることができる社内行事に係る費用としては、以下の規定がある(一部、かっこ書き等を省略している。以下、引用する通達について同じ)。 通達の文言にある「社内において」については、「社内に適当な場所がないため、社外で行う場合であっても、その内容が社内で行う場合と同程度」であれば福利厚生費として損金の額に算入することができると解されており、また、「通常の飲食に要する費用」とは「社会通念上一般に供与される程度」であり、「会議に際して提供する昼食の程度を超えない飲食」という説明が一般的である(※1)。 (※1) 「実務問答式 交際費等の税務(平成28年版)」編者:駒崎清人・若林孝三・有賀文宣・吉田行雄・鈴木博(一般社団法人大蔵財務協会、平成28年6月)265頁以下 また、会社の周年行事などについては、宴会費用は「交際費等」に該当する旨の通達が存在している。 被告は、こうした通達の規定を根拠に、「酒食等の提供を主としてなされる慰安行事」と「移動や宿泊等を伴う旅行を主としてなされる慰安行事」ではその通常要する費用の判断基準は異なるとして、「酒食等が旅行等より安価だからといって当然に当該支出が福利厚生費(通常要する費用)に該当するということはできない」という主張を展開したものと思われるが、すでに【裁判所の判断】で見たように、こうした主張は裁判所によって一蹴されている。 2 慰安旅行としての「感謝の集い」 本件では、裁判所は「感謝の集い」を「日帰り慰安旅行」と判断し、福利厚生事業(慰安行事)として社会通念上一般的に行われている範囲を超えていないため、福利厚生費とすることを認めた。そこで、所得税基本通達から、レクリエーション費用の取扱いについて規定したものを確認しておきたい。 この通達の解説として、国税庁が公開しているタックスアンサーでは、従業員レクリエーション旅行について、「旅行の期間が4泊5日以内であること」と「旅行に参加した人数が全体の50%以上であること」を要件としており(※2)、原告の「感謝の集い」はこれらの要件に合致するため、所得税課税の面からみても、福利厚生費として損金の額に算入することは問題ないものと解釈できる。 (※2) 国税庁タックスアンサーNo.2603「従業員レクリエーション旅行や研修旅行」 3 国税不服審判所はどうして課税処分を取り消す裁決を出せなかったのか 本件は、原告による異議申立、審査請求を経て、訴訟が提起されたものである。国税不服審判所による裁決の内容は公表されていないため、その要旨を検索したところ、概ね次のような判断のもとに棄却されているようである(一部、抜粋のうえ、文章を改めた)。 この裁決要旨を見る限り、国税不服審判所は、本件訴訟における被告の主張を大筋で認めたものであると言えよう。このように、宴会時間と1人当たり費用にのみ着目し高額と判断した課税庁の社会通念のずれについては、以下のような批判もある(※3)。 (※3) 『リゾートホテルにおける「感謝の集い」と交際費』林仲宣・髙木良昌、税務弘報2017年10月号、150頁以下 こうした批判については、筆者も同感であり、課税庁(税務調査担当者)の社会通念が世間一般とずれているのであれば、本来は、国税不服審判所がそのずれを修正する役目を担うはずであると思料するが、残念ながら、本件では(本件でも、と言うべきか)、審判所はそうした機能を発揮できず、納税者の救済は法廷の場に委ねられてしまった。 国税不服審判官の半数に民間人を登用して、国税不服審判所の改革が図られてすでにかなりの年月が経過し、成果をあげているという評価もあるようだが、本件については、そうした民間人の視点は裁決に活かされず、社会通念・社会常識については、国税不服審判所は課税庁にかなり近かったということであろう。   (了)

#No. 247(掲載号)
#米澤 勝
2017/12/07

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第37回】「寄附金(貸倒損失)」~貸倒損失が寄附金に該当すると判断した理由は?~

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第37回】 「寄附金(貸倒損失)」 ~貸倒損失が寄附金に該当すると判断した理由は?~   千葉商科大学商経学部講師 泉 絢也   今回は、青色申告法人X社に対して行われた「貸倒損失が寄附金に該当すること」を理由とする法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた東京地裁昭和54年3月5日判決(訟月25巻7号1941頁。以下「本判決」という)を素材とする。   1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記) (注)  素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。   2 本件理由付記から読み取ることができる関係図   3 本判決の判断 本判決は、大要次のとおり、理由付記に不備はないと判断した。   4 検討 (1) 求められる理由付記の程度 本件更正処分は、X社が貸倒金△△△円を計上していることを前提としているものの、これが関与税理士A個人の債務弁済のためのものであり、X社とは何ら関係がないので貸倒金としては認められず、A税理士に対する贈与として法人税法37条の寄附金に当たるとするものである。 貸倒金に係る債務は、後で見るように、X社の帳簿書類上、関与税理士A以外に対する債務として記載されていたことを前提とするならば、本件更正処分はX社の帳簿書類の記載自体を否認して更正する場合に該当する。 したがって、理由付記の程度としては、 ことになる(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁等参照)。 (2) 理由付記の十分性 次のとおり、本件理由付記は、法の求める理由付記として十分なものではないと考える。 本件理由付記には、貸倒金の債務者名や損失として計上した日付などの記載がない。したがって、本件理由付記の記載から、否認の対象となる貸倒金が特定できるかが問題となる。素材とした本件訴訟において、課税庁は、貸倒金△△△円の特定性について、要旨次のとおり主張している。 このことを踏まえ、本件理由付記について、貸倒金に係る債務者名等の記載を欠くとしても、更正処分の対象となる貸倒金△△△円の特定性には問題がないものとして、検討を進める。 本件理由付記は、本件更正処分の理由として、「関与税理士A個人の債務弁済のためのものであり、貴法人とは何ら関係ありませんので貸倒金としては認められません。上記金額は関与税理士Aに対する贈与となり寄附金の限度計算をなし、所得に加算しました。」と記載するのみである。貸倒金△△△円について、関与税理士A個人の債務弁済のためのものであり、X社と何ら関係がないと判断した根拠となる具体的事実やその証拠資料は示されていない。 また、本件理由付記は、X社が債務免除・債権放棄をした事実やその証拠資料を示していない。貸倒金として認めないにとどまらず、A税理士に対する贈与に当たるとして寄附金と処理する具体的な根拠が記載されていないのである。いわば、X社が内部的に貸倒れ処理をしたことをもって、A税理士との関係においても債権債務関係がなくなったと認定するための具体的事実や証拠資料が示されていないと言い換えてもよいであろう。A税理士に対する贈与に当たると記載されてはいるが、私法上の贈与と判断したのか(民法549)、私法上の贈与ではないが実質的な贈与に該当すると判断したのか(法法37⑧)が、わかりづらいという指摘もできる。 もちろん、帳簿書類上、貸倒金△△△円についてA税理士個人の債務弁済のためのものであることが明らかな場合には、かような記載のみでも理由付記の趣旨目的に反しないと見る余地もある。この点、本件訴訟において、課税庁は、貸倒金の内訳はOM、K(株)及びB(株)に対する貸付金であることを述べた上で、貸付金の事実上の債務者は「いずれもAであり、同人は、X社代表者Nの娘婿で税理士業務を営み、X社の関与税理士でもあるほか、H市〇番の山林1983平方メ-トルを所有し、資力が十分あったのであるから、X社が同人に対する右貸付金を単純に貸倒れとして処理したことは、同人に対し右貸付金債務の免除をしたものというべきである」と主張している。 上記主張と本件理由付記とを比較してみると、本件理由付記は、貸倒金に係る各債務ついて、A税理士に対する債務であると認定するための具体的事実、その根拠資料、その判断過程を記載していないことが浮かび上がってくる。 以上からすると、本件理由付記は、上記(1)①ないし③のいずれも満たさず、法の求める理由付記として十分なものではないと考える。 (3) 更なる議論 ~借地権相当額の売却益に係る理由付記~ 本件訴訟においては、要旨次のように記載された理由付記の十分性も争われている。 上記理由付記について、否認対象である取引の特定の可否の問題を措くとしても、どのような理由から、取締役NがD信金から受領した27,000,000円の中に、X社の借地権相当額の売却益2,000,090円が含まれていると判断したのか、その根拠資料はいかなるものか、借地権相当額の売却益の算出根拠はいかなるものか、という点が記載されていないという問題がある。 本判決は、次のとおり、取引当事者として容易に理解できる事項や一般に了知されている事項などを勘案して、理由付記に不備はないと判断した。 本判決は、売却益の金額の算出根拠についての記載がない上記理由付記についても不備はないと判断するにあたり、売却益の算出方法が一般に了知されていることのみならず、本件はX社の帳簿書類に計上されている売却益の数額を否認する場合でないことを指摘している点にも注意が必要である。 *  *  * 次回は、「子会社に対する貸倒損失が寄附金に該当すること」を理由とする法人税更正処分の理由付記の事例を取り上げる。 (了)

#No. 247(掲載号)
#泉 絢也
2017/12/07

〔経営上の発生事象で考える〕会計実務のポイント 【第17回】「工事進行基準案件で見積りの変更が必要な場合」

〔経営上の発生事象で考える〕 会計実務のポイント 【第17回】 「工事進行基準案件で見積りの変更が必要な場合」   仰星監査法人 公認会計士 田中 良亮   1 工事契約に係る認識の単位 《解説》 建設業では、施工を進めていくなかで、施主の要望に応じた設計変更や追加工事を行う場合がある。このうち、当初の契約とは別の認識の単位とすべき工事の追加、内容の変更等については、既存の契約部分とは独立して会計処理を行うことになる。 例えば、工事の追加がなされた場合で、追加部分に関する対価の確定的な請求権が、当初の契約の対象とされた工事に関する対価と独立して獲得されるときには、追加部分は当初の契約に係る部分とは別の認識の単位を構成することになる。 一方、工事の追加、内容の変更等が当初の工事契約とは別の認識単位として扱われないものは、見積りの変更として会計処理を行うことになる(工事契約に関する会計基準の適用指針20)。 実務的には、別の認識の単位を構成するような追加契約が締結される例はあまり多くないものと考えられるが、当該変更契約が実質的に別の取引単位を構成しているか否か、慎重に検討する必要がある。   2 工事契約に係る認識基準 《解説》 (1) 工事収益総額の信頼性をもった見積り 信頼性をもって工事収益総額を見積るためには「対価の定め」が必要であり、今回の場合のように設計変更・追加工事が見込まれる場合には、当事者間で合意されていることが明確な契約書等で定められている金額に加えて、一部又は全部が将来の不確実な事象に関連付けて定められている金額も合わせて検討する必要がある。 なお、工事契約の変更により対価の定めが変更される場合には、そのことが当事者間で実質的に合意され、かつ、合意の内容に基づいて、対価の額を信頼性をもって見積ることができることとなった時点で工事収益総額の見積りに含めるものとする(工事契約に関する会計基準の適用指針5)。 【図1】 工事収益総額の見積り (2) 工事原価総額の信頼性をもった見積り 工事原価総額は、工事契約に着手した後も様々な状況の変化により変動することが多い。このため、信頼性をもって工事原価総額の見積りを行うためには、こうした見積りが工事の各段階における工事原価の見積りの詳細な積上げとして構成されている等、実際の原価発生と対比して適切に見積りができる状態となっており、工事原価の事前の見積りと実績を対比することによって、適時・適切に工事原価総額の見積りの見直しが行われる必要がある。 この条件を満たすためには、当該工事契約に関する実行予算や工事原価等に関する管理体制の整備が不可欠であると考えられる。このため、工事契約に金額的重要性がない等の理由により、個別にこうした管理が行われていない工事契約については、工事進行基準の適用要件を満たさないことに留意する必要がある(工事契約に関する会計基準50)。 通常、建設業においては、長期間かつ大規模の工事を受注する前段階において積算部門等で実行予算を作成していると考えられることから、進捗に応じて当該実行予算の見直しを実施し、適時に工事原価総額の見積りに反映しなければならず、追加工事等が発生した場合には、当該追加工事も含めた工事原価総額の見積りを行う必要がある。 (3) 決算日における工事進捗度 決算日における工事進捗度を見積る方法として原価比例法を採用する場合には、工事原価総額の信頼性をもった見積りの要件が満たされれば、通常、決算日における工事進捗度も信頼性をもって見積ることができる(工事契約に関する会計基準13)。 しかし、工事契約の内容によっては、原価比例法以外にも決算日における工事進捗度をより合理的に把握する方法もあり得ると考えられる。このような場合には、直接作業時間や施工面積を基準とした原価比例法以外の方法が適用されることがある。 また、原価比例法による場合であっても、発生した工事原価が工事原価総額との関係で、決算日における工事進捗度を合理的に反映しない場合には、これを合理的に反映するように調整が必要となる。 (4) 工事完成基準の会計処理 工事進行基準を適用する要件を満たさないため工事完成基準を適用している工事契約について、その後、単に工事の進捗に伴って完成が近づいたために成果の確実性が相対的に増すことがある。しかし、このことのみをもって途中で工事契約に係る認識基準の変更を容認することは、収益認識の恣意的な操作のおそれがあり、適切ではないと考えられている(工事契約に関する会計基準55)。 しかし、当初に成果の確実性が認められないために、工事進行基準を適用できないケースの中には、本来、工事の着手に先立って定められるべき工事収益総額や仕事の内容等といった工事契約の基本的な内容の決定が遅れる場合もあり、その後、工事契約の基本的な内容が決定されるなど、工事進行基準適用上の障害が取り除かれた時点から、工事進行基準を適用することになる。 さらに、当初に成果の確実性が認められ、工事進行基準を適用していた工事契約についても、事後的な事情の変化により成果の確実性が失われた場合には、それまでに計上した工事収益及び工事原価の修正をすることなく、それ以降の工事収益及び工事原価について工事完成基準を適用することとなる(工事契約に関する会計基準の適用指針13~19参照)。 【図2】 工事契約に係る認識の概念フロー   3 工事契約から損失が見込まれる場合 工事損失引当金の計上の要否は、企業会計原則注解18で定められている引当金の認識要件に照らして検討する。 工事損失の発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、工事契約の全体から見込まれる工事損失(販売直接経費を含む)から、当該工事契約に関して既に計上された損益の額を控除した残額(すなわち、当該工事契約に関して、今後見込まれる損失の額)について、工事損失引当金を計上することになる(工事契約に関する会計基準63)。 当初契約で採算のとれている工事であっても、設計変更や追加工事の発生により、工事損失の発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、その時点から工事損失引当金の計上が必要となる点に留意が必要である。 【図3】 追加契約に伴う将来損失の発生   【検討事項のチェックリスト】 ~工事進行基準案件で見積りの変更が必要な場合~ ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (了)

#No. 247(掲載号)
#田中 良亮
2017/12/07

外国人労働者に関する労務管理の疑問点 【第9回】「外国人と住民票・マイナンバー(個人番号)の関係」

外国人労働者に関する 労務管理の疑問点 【第9回】 「外国人と住民票・マイナンバー(個人番号)の関係」   社会保険労務士・行政書士 永井 弘行     1 2012年7月以降は外国人住民にも住民票が作成される 2012年(平成24年)7月8日までは、外国人の住民は住民票制度の対象外で、住民票がありませんでした。その後、住民基本台帳法の改正により、2012年(平成24年)7月9日以降は、外国人住民にも住民票が作成される制度に変わりました。 現在は日本人と同様に、後述する「中長期在留の外国人」には住民票が作成されます。 例えば「日本人と外国人の夫婦2人の世帯」でしたら、その情報が住民基本台帳に登録され、日本人と外国人が同じ(世帯の)住民票に記されます。 中長期在留の外国人は、日本に入国し、住居地を定めてから14日以内に、市区町村の役所に住居地の届出(転入届)を行うことが必要です。その後、日本国内で転居(住居地の変更)があった場合には、日本人と同様に市区町村で転出届、転居届、転入届などの届出をすることが必要です。   2 住民票の対象となる中長期在留者の外国人とは? 住民票が作成されるのは、入管法上の在留資格が許可され、日本に中長期間在留する外国人(中長期在留者)です。 入管法上の「中長期在留者」とは、次の①~⑥のいずれにも当てはまらない外国人です。つまり、次のいずれかに当てはまる外国人には、在留カードが交付されません。 (注) 特別永住者には「特別永住者証明書」が交付され、住民票の対象になります。 そして、中長期在留者には次のような流れで個人番号(マイナンバー)が付与されます。 このように、観光目的で来日した「短期滞在」の外国人などは、中長期在留者ではありませんので、住民票や個人番号制度の対象外になります。 また、上記の中長期在留者の要件のうち①については、以下のように留意が必要です。 【在留資格と在留期間(例示)】 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格では、在留期間「5年」、「3年」、「1年」が付与された外国人が中長期在留者となります。つまり、住民票や個人番号制度の対象者です。 一方、在留期間「3月」が付与された場合は、パスポートに証印シールは貼られますが、在留カードは交付されません。つまり住民票は作成されず、住民票や個人番号の制度の「対象外」となるのです。   3 マイナンバー制度とは すでにご存知の方も多いと思いますが、ここでおさらいしておきますと、マイナンバー制度とは、社会保障・税番号制度のことです。以前は、日本には住民一人ひとりの税番号(Tax Number)の制度がありませんでしたが、平成27年10月から新たに社会保障・税番号制度が始まりました。「マイナンバー」という呼び方はニックネームで、総務省の英文リーフレットでは“Social Security and Tax Number”と記されています。 この制度は「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(2013年5月公布)により定められています。この法律名は長いため、通称で「番号法」または「マイナンバー法」と呼ばれています。マイナンバーには「個人番号」(12桁の数字)と「法人番号」(13桁の数字)の2つがありますが、ここで解説しているのは「個人番号」です。 平成27年10月には、日本人にも外国人住民にも、住民票のある市区役所(市区町村長)から自宅に「通知カード」が郵送されました。妻や子(または夫や子)と同居している人は、世帯全員分の通知カードが郵送されています。 この通知カードには「12桁の個人番号」が書かれています。通知カードは、顔写真付きの個人番号カードに切り替えるか、切り替えない場合は通知カードを保管しておく必要があります。   4 海外の番号制度 世界の多くの国や地域では、国民一人ひとりに付与される「税番号」があります。例えば次のようなものです。 これらの番号は、2国間で二重課税を回避するための「租税条約に関する届出書」を提出する際にも使用されます。 例えば「日本年金機構が支給する老齢年金」をアメリカに住む日本人が受け取るときは、「租税条約に関する届出書」にアメリカのTINを記して(日本年金機構を経由して)日本の税務署に届出します。これにより老齢年金は日本では課税されず、アメリカの税法、確定申告のルールに従ってアメリカで申告、税の納付を行うことになります。 マイナンバー制度が導入されるまで、日本側にはアメリカのTINに相当する番号が存在しませんでした。日本に住むアメリカ人にマイナンバーの制度を説明するときは、「アメリカのTINに相当する番号です」と伝えるほうが、理解されやすいことがあります。 外国人労働者にもこのような例えで説明するとよいかもしれません。   5 新規入国の外国人に個人番号が付与されるのはいつ? 先ほど、平成27年10月には外国人住民にも市区役所から「通知カード」が郵送されたと述べました。 では、新たに日本に入国した外国人には、どのタイミングで住民票が作成され、通知カードが送られるのでしょうか。 下記の図表をご覧ください。 【在留資格の決定・変更・更新(イメージ図)】 図表中の⑤で「在留カード」が交付された外国人(中長期在留者)は、住居地を定めてから14日以内に在留カードを持参し、住居地の市区町村(役所)で、転入届を行うことが必要です。 入管法では、住居地の市区町村長を経由して法務大臣に住居地を届出する義務がある旨、定められています(入管法第19条の7(新規上陸後の住居地届出)に基づく届出義務。罰則有り)。 この法務大臣への届出は、住民基本台帳法に基づく「転入届」と一括で行うことができます。つまり市区町村の役所で「転入届」を行えば、法務大臣への届出を行ったものとして取り扱われます。 (日本に入国後、初めて)転入届を行い、住民基本台帳制度の対象となった人には、住民票が作成されます。住民票のある外国人住民には個人番号(マイナンバー)が付与されます。そして、後日、市区町村長から「通知カード」が、外国人住民に交付されるという仕組みです。   6 外国人住民の「個人番号カード」の有効期限 平成28年1月から交付が始まった「個人番号カード」の有効期限は次のとおりです(通知カードには有効期限はありません)。 上記の通り、日本人や外国人の永住者の場合、個人番号カードの有効期限は原則10年です。 一方、永住者以外の中長期在留者の場合、個人番号カードの有効期限は「在留期間の満了日まで」です。つまり、その外国人の「在留期間が許可された期限」が、個人番号カードの有効期限になります。 例示すると次の通りです。 この外国人が「個人番号カード」を作成した場合、その有効期限は、在留期間の満了日である「2019年3月20日」になります。そして、2019年3月頃に在留期間を更新して入国管理局から新しい「在留カード」が交付された場合、個人番号カードの有効期間を「新たな在留期間の満了の日」に変更する申請手続きが必要になります。 このように在留カードが更新される都度、個人番号カードの有効期限の変更手続が必要になるのです。 このように手続きが煩雑であるため、【第6回】で述べたように、当面「通知カード」のまま所持している外国人が少なくないと思います。   7 政府が制度を紹介するホームページ 今回解説した内容の詳しい情報は、次のホームページを参照してください。 *  *  * 次回は「外国人の不法就労とは、事業主への罰則は」をテーマに解説する予定です。 (了)

#No. 247(掲載号)
#永井 弘行
2017/12/07

家族信託による新しい相続・資産承継対策 【第27回】「家族信託の活用事例〈株式編②〉(非上場会社において、親から子への事業承継をするにあたって、贈与税の発生を抑制できるタイミングで子に受益権を渡す事例)」

家族信託による 新しい相続・資産承継対策 【第27回】 「家族信託の活用事例〈株式編②〉 (非上場会社において、親から子への事業承継をするにあたって、贈与税の発生を抑制できるタイミングで子に受益権を渡す事例)」   弁護士 荒木 俊和   前回に続き非上場株式の承継を行う場合の信託の活用事例を解説していく。 今回は非上場会社において、親から子への事業承継をするにあたって、贈与税の発生を抑制できるタイミングで子に受益権を渡す事例を解説する。 - 相談事例 - 私は今年65歳になりますが、従業員を80名ほど抱える建設会社の社長をしています。会社の業績は、ここ数年は好調で、利益もかなり出ています。ただし、目立った税金対策をしてこなかったため、毎年かなりの法人税を支払っています。 私には40歳の息子が1人いて、その息子に事業承継をしなければならないと考えており、これまでに十分準備も進めてきたので、会社を全部任せられる状況になっています。息子は実質的に私の会社を取り仕切っているため、私が社長の名前を名乗っていると却って息子がやりにくいのではないかと思い、株も社長の座も早く譲ってしまいたいと考えています。 しかし、顧問税理士に相談したところ、現時点で株を全て贈与するとなると株価総額が莫大な金額になるため、やめておいた方がいいと言われました。一方でこれから株価対策を行う余地はあるということだったのですが、どうやら数年単位の時間がかかるようです。 株を含めて会社を息子に任せてしまえば、引退して趣味の釣りに専念できると思っていたのですが、もう少し先になってしまうのでしょうか。   1 家族信託活用のポイント (1) 信託による自益権と共益権の分離(財産的な価値の分離) 前回解説を行ったように、株式を信託することによって自益権と共益権を分離することができる。 このうち財産的な評価の対象になるのは自益権の部分であり、それを化体した受益権である。すなわち、実質的に共益権だけを行使する受託者には信託をしたとしても財産権の移転はなく、課税の対象になるものではない。 このため、本件において本人(相談者)を委託者兼受益者、子を受託者とする信託を設定しても財産権の移転は認められない一方、受託者は議決権をはじめとする共益権を行使することができることとなる。 これにより受託者は株主として会社の意思決定を行えることになる。 (2) 財産権の移転のタイミングと株価対策の実施 株式に関する家族信託のポイントは、財産権の移転のタイミングを遅らせることができることにある。 すなわち、権利(所有権)の移転の場合には財産権とその財産に関する管理処分権限が不可分となることが通常であるが、信託を利用することにより管理処分権限だけを先に移転することができる。 本件においては、共益権のみを先に受託者に渡した上で、後で財産権たる受益権を譲渡することができる。 このため、共益権を子に先に移した状態で、子において会社の利益を減少させる等の株価対策を時間をかけて行い、株価が安くなった段階で贈与することが可能となる。   2 本件におけるスキーム (1) スキームの概要 以上のことから、本件では大要、以下のような家族信託のスキームが考えられる。 (2) 株主権の行使 本件のスキームでは、前回解説を行ったスキームとは異なり、受益者に指図権を設定していない。 このため、本人が認知症になったとしても、子が議決権等を行使できるため、役員の選解任ができないなどといった問題は生じないことになる。 一方で、子が受託者として議決権等を行使することになるため、本人は議決権等の行使に直接的に関与することはできなくなる。 ただし、本人は子に対して、子が受託者としての権限違反行為や利益相反行為を行った場合にはその行為を取り消すことができ(信託法第27条第1項、第31条第6項、第7項)、損失が生じた場合には損失のてん補等を求めることができる(第40条第1項)。 (3) 受益権の贈与 本件のスキームは株価が下がるのを待ってから贈与を行うことに眼目があるため、株価の下がるタイミングと贈与のタイミングを計画的に合わせる必要がある。 このため家族信託とは関係なく、子において会社経営に不測の事態が生じないように留意する必要がある。 また、本人の認知症のリスクについて、議決権をはじめとする共益権の行使については信託によって回避できるものの、受益権の贈与に関しては残存している。 すなわち、受益権の贈与を予定していたタイミングで本人が認知症に罹患して意思表示が行えない状態になってしまうと、贈与ができなくなってしまう。 認知症が危ぶまれる場合には、緊急避難的に贈与を進めてしまうか、相続を待つかを早期に決定して迅速に対応する必要が生じる。 (了)

#No. 247(掲載号)
#荒木 俊和
2017/12/07

これからの会社に必要な『登記管理』の基礎実務 【第10回】「株主管理の仕組みづくり」-株主名簿整備の必要性-

これからの会社に必要な 『登記管理』の基礎実務 【第10回】 「株主管理の仕組みづくり」 -株主名簿整備の必要性-   司法書士法人F&Partners 司法書士 本橋 寛樹   はじめに 本稿では、【第2回】でその必要性を説明した「会社主導で中長期的に管理し続けられる体制づくり」の一環として、「株主管理」をテーマに解説する。 本稿の目的は、会社の実務担当者が、自社の株主情報の管理方法をいま一度振り返り、今後の事業活動をより盤石に支えるためのきっかけづくりである。   自社の株主情報を確認する方法 通常業務で自社の株主を意識する場面はあるだろうか。読者のなかには、役員改選等の登記手続において、平成28年に登記の添付書面となった「株主リスト」の作成に携わった方もおられるだろう。その際、自社の株主情報を確認しているはずである。 株主リストを作成する際の資料として、法人税の申告書の一部となる「別表二 同族会社等の判定に関する明細書」 (以下、「別表二」という)を参照する読者も多いと思われる。別表二は顧問税理士等が作成することが一般的である。 しかし、別表二には全ての株主が記載されているとは限らない。例えば、株主が創業家ではない役員や従業員、会社関係者の知人、友人である場合は、別表二に記載される対象とはならない。   株主名簿の活用 株主情報を確認する資料として、株主名簿を活用されたことはあるだろうか。株主名簿には全ての株主が記載されており、株主を漏れがなく把握することができる。 法令上、株主名簿の作成、備置きの事務を信託銀行等に委託している株式会社(会社法第123条)は別として、株式会社は、株主名簿を作成し、それを会社の本店に備え置かなければならない(会社法第121条・第125条第1項)。 このように、会社の本店には株主名簿を備え置かなければならないことから、株主リストを作成する際、別表二ではなく、株主名簿を用いることができるはずである。 しかし、自社の株主情報を確認する資料が株主名簿ではないという読者の場合、その理由は、株主名簿を整備していないため、別表二を活用せざるを得ないという実情があるのではないだろうか。   株主名簿を整備していないことによるリスク ここで株主名簿が整備されていないと、次に述べるように、会社が将来的に不利益を被ることになる。 現状の事業活動へ即座に影響が及ばない「潜在的なリスク」と、事業活動に打撃を与える「潜在的なリスクの顕在化」について解説していく。まず全体のイメージとして、【第2回】のイラストを再掲する ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ① 事業活動が否定される 《潜在的なリスク》 《リスクの顕在化》 ② 重要な取引や手続等に対応できない 《潜在的なリスク》 《リスクの顕在化》 ③ 会社の意思決定を行うことができない 《潜在的なリスク》 《リスクの顕在化》 上記①~③で紹介した潜在的なリスクを顕在化させないための予防策は、潜在的なリスクが顕在化する前に株主名簿を整備することである。 そこで次回は株主名簿を活用した、株主管理の仕組みづくりについて詳しく解説していく。 *  *  * なお、以下の拙稿は、株主名簿から株主リストを作成する場合のプロセスについて解説している。今後株主リストを作成する際の資料として参考とされたい。 (了)

#No. 247(掲載号)
#本橋 寛樹
2017/12/07

〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第3話】「措置法26条と概算経費」

〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第3話】 「措置法26条と概算経費」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   「統括官、ちょっと聞いていただきたいのですが・・・」 中尾統括官の後ろから浅田調査官が声をかける。 中尾統括官が振り返ると、浅田調査官はすかさず手に持っていた用紙を差し出す。 「これって、おかしくありませんか?」 平成28年分の確定申告書である。 「・・・」 中尾統括官は渡された確定申告書を見る。 「この申告書は・・・措置法26条(社会保険診療報酬の所得計算の特例)を適用しているみたいだけど・・・何か・・・計算間違いでもあるのかい?」 中尾統括官が尋ねる。 「いえ、課税所得の計算は間違っていないのですが、措置法26条を選択適用することによって17,986,620円の措置法差額が出るのです。・・・つまり、本来の課税されるべき所得金額から17,986,620円が少ないということです・・・」 浅田調査官は少し怒ったような表情で話をする。 「・・・しかし、法律でそのように規定されているのだから・・・われわれ税務職員がとやかく言っても仕方がないことだろう。」 中尾統括官は飄々と答える。 「・・・僕は・・・この法律は廃止すべきだと思うんです。」 浅田調査官は中尾統括官の顔を見る。 中尾統括官は、浅田調査官の発言に少し戸惑いながら、措置法26条を確認するために税務六法を開く。 そして、同項に収入金額と必要経費率を示した次の表が挿入されている。 「この規定はもともと・・・零細な医院を救済しようとして設けられたもので・・・」 中尾統括官が説明しようとすると、浅田調査官はその言葉を遮る。 「それは分かっています・・・しかし、この確定申告では、実際の経費と措置法26条で認められる経費が17,986,620円も違うなんて・・・信じられません・・・すなわち、17,986,620円の所得金額について課税しないのですよ。私なんか・・・500万円ぐらいの給与しか国から貰っていないけれども、税金は徴収されているのに・・・」 浅田調査官の頬は少し赤くなっている。 「確かに・・・私の年収だってもちろん17,986,620円もないけれど・・・まあ、税金はかなり支払っている・・・」 中尾統括官は頷く。 「・・・もっとも、この条文(下線②)にも示されているが・・・平成26年分から、その年の医業及び歯科医業に係る収入金額の合計額が7,000万円を超える者は除外されることになっただろう。社会保険料収入以外の医業収入を加えると、7,000万円を超える医者・歯医者は多いから、この特例経費を使える者はかなり減っているといわれている・・・」 中尾統括官は、浅田調査官から手渡された「所得税青色申告書決算書」の下欄に示されている「措置法差額17,986,620円」を見ながら言う。 その決算書の収入金額は「42,599,564円」で、実際の経費を控除した後の青色申告特別控除前の所得金額は「31,829,521円」となっている。しかし、概算経費率57%を適用することによって、青色申告特別控除額650,000円を控除した所得金額は「13,192,901円」となる。 「ところで・・・この申告の医者の業種名・・・『心療内科』と記載されているね。」 中尾統括官は、青色決算書の「事業所所在地」欄の真下にある「業種名」欄を指さす。 「心療内科・・・ですか。」 浅田調査官も決算書を覗き込む。 「たしか・・・医者の中で『心療内科』という種目は、医療を行う際に発生する経費が最も少ないといわれているらしいよ・・・」 浅田調査官は、損益計算書を見る。 「たしかに・・・給料賃金も3,717,580円で、その内訳をみると、2人の従業員のうち1人はパートで、年間950,000円となっています・・・心療内科って、あまりスタッフが必要ないのですね。」 浅田調査官は、中尾統括官の顔を見る。 「心療内科は内科や整形外科などと違って、注射などの具体的な治療行為はあまり行わない・・・つまり・・・心の病気に罹っている患者と先生との対話が治療の中心になるから、経費はほとんど発生しないということかな・・・」 中尾統括官は苦笑いする。 「だからこの申告のように、措置法差額が17,986,620円にもなるんですね。」 浅田調査官はまだ不満そうな様子で言う。 「しかし・・・よく考えてみれば、患者のカウンセラーだけで、1人の医者が1年間で42,599,564円も稼ぐなんて・・・大したものだと思わないかい?」 中尾統括官はそう言うと、笑顔で浅田調査官を見た。 (つづく)

#No. 247(掲載号)
#八ッ尾 順一
2017/12/07

《速報解説》 監査役協会、「選任等・報酬等に対する監査等委員会の関与の在り方」を公表~意見陳述権に係る監査等委員会の活動についてベストプラクティスを提示~

《速報解説》 監査役協会、「選任等・報酬等に対する監査等委員会の関与の在り方」を公表 ~意見陳述権に係る監査等委員会の活動についてベストプラクティスを提示~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成29年12月1日、日本監査役協会の監査等委員会実務研究会は、「選任等・報酬等に対する監査等委員会の関与の在り方-実態調査を踏まえたベストプラクティスについて-」を公表した。 平成28年11月に公表した「選任等・報酬等に対する監査等委員会の意見陳述権行使の実務と論点-中間報告としての実態整理-」で整理した論点をさらに深掘りするとともに、意見陳述権(会社法342条の2第4項、361条6項)に係る監査等委員会の活動についてベストプラクティスを提示している。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 主な論点として次の事項を述べており、表紙や参考資料を含めて76ページに及ぶものである。 別紙として次のものが添付されているほか、アンケート結果が記載されている。 1 意見陳述権を考察する際の重要ポイント 意見陳述権を考察するに際して最も重要と思われるポイントについて、次のように述べている。 意見陳述権は株主総会において必ず行使することを義務付けられているものではないが、少なくとも関連する制度や議案等を審議して監査等委員会として意見陳述権行使の要否を確認することは監査等委員会の義務と捉えるべきであるとしつつ、個社の判断による部分があることについて述べている。 2 検討(評価)のプロセス 監査計画の策定に当たっては、監査活動の年間計画を勘案しつつ意見陳述権に関する年間の活動を検討することから、優先順位を勘案した効率的な計画を策定する必要があるとしている。 また、選任等・報酬等に関する検討に際しての情報は、他社の事例や世間一般の動向といった外部情報も有用であるが、執行側や非業務執行取締役等からの社内情報が主となるとしている。 3 基礎となる指名方針・サクセッションプラン等 平成29年3月31日付の経済産業省CGS研究会「CGSガイドライン」にも明記されているとおり、取締役候補者について、個別の候補者の議論の前に、どのような資質を有する者が自社の取締役としてふさわしいのかという指名方針やサクセッションプラン等が策定されているべきであるとしている。 4 意見の表明 監査等委員会の監督機能への期待という意見陳述権の趣旨に鑑みて、意見陳述権は責任を伴うものと解釈すべきとしている。 監査等委員会は、期中においても、検討した事項について執行側や取締役会に対し適宜意見を表明することも可能であり、そのような機会を積極的に活用していくことが望ましいと述べている。 5 株主総会での意見陳述 意見陳述権を行使する場合は、監査等委員会において決議し、株主総会参考書類に記載し(選任等について会社法施行規則74条1項3号、報酬等について同82条1項5号)、株主総会の場で口頭陳述する(会社法342条の2第4項、361条6項)こととなる。 監査等委員会としての見解を外部に対して明確にするため、意見陳述権の行使として「陳述すべき事項はない」という趣旨の意見を、また、株主総会付議事項につき「議案が妥当」との意見を陳述することもある。 ただし、意見陳述権は、執行側や取締役会の対応に疑義を呈する場合にのみ行使されるべきものではなく、執行側や取締役会の対応が適切として支持する意見を形成することも可能であり、選任等・報酬等の決定プロセスに監査等委員会として正当性を与える効果があると述べている。 また、「意見はない」と「指摘すべき事項はない」の違いに触れ、意見陳述権の行使として「陳述すべき事項がない」との結論(決議等)に至ったのであれば、意見不存在との混同を避けるため、その結論を明確に表現することが望ましいとしている。 (了)

#No. 246(掲載号)
#阿部 光成
2017/12/05

《速報解説》 会計士協会、「『経営者保証に関するガイドライン』における公認会計士等が実施する合意された手続に関する手続等及び関連する書面の文例」を公表

《速報解説》 会計士協会、「『経営者保証に関するガイドライン』における公認会計士等が実施する合意された手続に関する手続等及び関連する書面の文例」を公表   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成29年12月1日、日本公認会計士協会は、「『経営者保証に関するガイドラン』における公認会計士等が実施する合意された手続に関する手続等及び関連する書面の文例」(中小企業施策調査会研究報告第1号。以下「研究報告」という)を公表した。 これは、経営者保証に関するガイドライン研究会から、平成25年12月に公表され、平成26年2月1日から適用されている「経営者保証に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」という)及び「『経営者保証に関するガイドライン』Q&A」(以下「Q&A」という)に関して、公認会計士等が、専門業務実務指針4400「合意された手続業務に関する実務指針」に基づき、ガイドラインに関連して主たる債務者が開示することとされている「法人と経営者との関係の明確な区分・分離」に関する情報の信頼性を向上することに資するために公認会計士等が合意された手続の業務を行う際の手続を例示するものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 主な内容は次のとおりであり、目次を含めて44ページである。 以下では主なポイントについて解説する。 1 概要 経営者保証のない融資の実現に当たって求められる中小企業の経営状況として挙げられている項目は、次のものがあり、①と③は、ガバナンスや情報開示に係る事項であって、経営方針や経営体制の改善によって計画的に実現を図ることが可能であり、公認会計士等による適切な検証が期待されているものである。 研究報告は、ガイドラインに関連して主たる債務者が開示又は保証人が表明保証することとされている「法人と経営者との関係の明確な区分・分離」に関する情報の信頼性を向上することに資するために、合意された手続業務を行う際の手続を例示するものである。 2 公認会計士等が実施する手続等 ガイドラインの項目及びQ&Aの関連項目(Q4-1からQ4-4)に基づいて、「法人と経営者との関係の明確な区分・分離」について、公認会計士等により合意された手続の業務を行う際の手続の例として、(a)要点、(b)実施する「合意された手続」の例、(c)「合意された手続の実施結果」の記載例が一覧形式で示されている。 上記のほか、「法人と経営者との関係の明確な区分・分離のための体制の整備・運用の状況に関する情報(事前確認情報)の例示」、「様式例」(合意された手続業務契約書の作成例、報告書利用に係る合意書の作成例、合意された手続実施結果報告書の作成例、確認書の例示)が示されているので、実際に業務を行う際に参考となると考えられる。 (了)

#No. 246(掲載号)
#阿部 光成
2017/12/01
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