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〈IT会計士が教える〉『情報システム』導入のヒント(!) 【第12回】「導入ベンダーの賢い選び方、使い方」

〈IT会計士が教える〉 『情報システム』導入のヒント (!) 【第12回】 (最終回) 「導入ベンダーの賢い選び方、使い方」   公認会計士 五島 伸二     はじめに 基幹システムや会計システムはパッケージ製品を導入することが多い。わざわざ、企業独自で新規開発することは少なくなってきた。 そのため、基幹システムや会計システムの導入に際しては、まずは導入するパッケージ製品を選択することになる。 しかし、忘れてならないのは、パッケージを選択すると同時に、そのパッケージの導入を支援する導入ベンダーも選択する必要があるということである。 パッケージ製品によっては、必ず製品ベンダーが販売し導入する形態(直接販売)を採る製品もあるが、多くの製品は、製品ベンダー以外のITベンダーが、製品ベンダーとパートナー契約を結び、その製品の販売と導入を行う形態(間接販売)を採っている。   ▼とても重要な導入ベンダー選び▼ 導入ベンダーは、その製品の導入に際して、ユーザー企業のプロジェクトメンバーに対するトレーニング、テスト環境の構築、製品とユーザー企業業務のフィット&ギャップ、ギャップを解消するソリューションの提案など、ユーザー企業側のプロジェクトを全面的に支援し、そのシステム導入プロジェクトを成功に導くために重要な役割を果たす。 したがって、どんなに良いパッケージ製品を選定できたとしても、導入ベンダーの選択を間違えると、スムーズなシステム導入が実現できないことになる。 場合によっては、導入ベンダーの力不足で導入プロジェクト自体が頓挫することもありえるのである。 それくらい、導入ベンダーの役割は重要といえよう。 基幹システムや会計システムの導入というと、どうしても製品選択に重点がおかれがちであるが、今回は、導入ベンダーの選択に焦点を絞って、いくつかの切り口でそのポイントを解説する。   ▼なにはともあれ製品知識▼ 導入ベンダー選定にあたっては、まずは、どれだけそのパッケージ製品に精通しているかという観点が重要となる。 具体的には、 こういったことを確認することが、パッケージ製品の導入ベンダーを選定する際の最初のポイントとなる。 自信のあるベンダーであれば、それらのことは明確に教えてくれるであろう。逆に、過去の実績等に関してあいまいな回答しかしないベンダーは、慎重に吟味する必要がある。   ▼製品ベンダーに推薦してもらうのも一手▼ ある程度、選択候補となるパッケージ製品が絞られているのであれば、その製品の製品ベンダーに、パートナー契約している導入ベンダーを推薦してもらうのも有効な手段である。 製品ベンダーとしては、ぜひとも自社製品を選択してほしいと思っているし、導入が決まったとしたら、ぜひとも導入を成功させたいと思っている。したがって、良い導入ベンダーを推薦してくる可能性が高い。 では、製品ベンダーの推薦であれば安心かというと、そういうわけでもない。 やはり、合う、合わないということはありうるのである。 ユーザー企業としては、自社の業務分析や要件定義のフェーズからしっかり支援してほしいというケースもあれば、そのあたりは自社で十分できていて、どちらかというと、その要件定義を実現するためのソリューションの提案に的を絞って支援してほしいというケースもある。 したがって、製品ベンダーに、導入ベンダーの推薦を依頼する場合には、何に重点をおいて支援してほしいのかということを明確にして製品ベンダーに伝えるのが肝要である。   ▼「どこに頼むか」より「誰に頼むか」が重要▼ 導入するパッケージ製品が決まり、実際に導入フェーズが始まったら、実際に導入支援作業を行うのはその導入ベンダーに属する導入コンサルタントのチームである。 彼らが、そのシステムの稼働を目指してユーザー企業側のプロジェクトメンバーを支援し、プロジェクト進捗の過程で出てくる様々な課題の解決を図り、より良いシステムにするための提案を行う。 したがって、導入ベンダーを選択するということは、導入コンサルタントを選択することと同義といってもよい。 そして、その際に、特に重視して評価すべきは、そのコンサルタントチームのリーダーである。 コンサルチームのリーダーの資質は、そのシステム導入プロジェクトの成否に大きく影響する。 したがって、導入ベンダーの選択にあたっては、コンサルチームの良否、とりわけ、リーダーの資質をよく見極める必要がある。 リーダーの過去の職務経歴や、そのパッケージ製品の導入経験等を教えてもらうことは当然であるが、実際に、製品や導入に関するプレゼンテーションを行ってもらい、その説明能力や質疑応答を通じたコミュニケーション能力などを確認することが有効である。 また、通常想定されるプロジェクト遂行上のリスクについて質問してみるのも有効である。リスク感知能力もまた、プロジェクトを支援するにあたって極めて有効な要素である。 経験のあるコンサルタントであれば、プロジェクトの概要を理解すれば、想定される一般的なリスクを説明してくれるはずである。選定側はその妥当性をよく評価してベンダー選定の参考とすべきである。 もちろん、リーダー以外のメンバーの確認も重要である。 全くの新人コンサルタントが他のコンサルタントと同じ単価でチャージされていた、というケースはままあることである。このあたりもシビアに評価すべきである。   ▼ベンダーの知名度や規模はどう評価するか?▼ 確かに、誰が当社を担当するかが重要であることは理解できても、やはり基幹システムや会計システムの導入は、それなりの金額の投資になる。そういう意味では、ある程度知名度のあるベンダーや、規模の大きなベンダーに依頼するということも、さまざまなリスクを考えると容認しうる選択方法といえる。 導入ベンダーの選定に関わった人も、万一、導入がうまくいかなくても「〇〇に頼んでダメだったんだし。」といった言い訳も可能となるという側面もあるのが事実である。 ただし、著名ベンダー、大手ベンダーに依頼することのほぼ唯一のデメリットは、そのコストの高さにある。同じような規模の案件でも、小規ベンダーに比べて倍以上のコスト差があるケースもある。 裏返すと、小規模ベンダーに依頼することの大きなメリットは、そのコストの安さである。 実際、筆者が知るユーザー企業の中には、小規模ベンダーをうまく使って、成功している例を多く聞く。 筆者自身も、ユーザー企業の会計システム導入プロジェクトの責任者として導入ベンダー選定に関わった時、信頼できると判断した小規模ベンダーに導入を依頼し、コンペとなった大手ベンダーに比べてはるかに安いコストで導入に成功した経験がある。 しかも、その小規模ベンダーのコンサルタントはほぼ全員が大手有名ベンダーのOBで、そのスキルレベルやコミュニケーション能力は極めて高く、こちらが要望することをきっちり実現してくれ、非常に満足度が高かった。 知名度や規模にこだわらず、自分たちのやりたいことを実現してくれるかどうかを基準にして導入ベンダーを選択するのも意味があるといえよう。   ▼プロを選べるのはプロだけ▼ ここまで、導入ベンダー選定についていくつかの観点で書いたが、いずれにしてもいえることは、選ぶ側のユーザー企業の選定メンバーにもシステム導入やプロジェクト運営の知識、経験が必要であるということである。 そう、プロを選ぶことができるのはプロだけなのである。 ただ、ユーザー企業側にそのようなプロをそろえるのは、なかなか難しいのも現実である。そのような場合は、外部の専門家を活用するのも有効である。 実際、最近は、パッケージ選定、導入ベンダー選定に、特定ベンダーとは関係のない中立的立場のコンサルタントを活用する事例が多くなっている。   ▼賢く選んで賢く使おう▼ 導入ベンダーの導入コンサルタントという人たちは、基本的にユーザー企業の役に立って、最終的には「頼んでよかった」と言われたいと思っている人たちばかりである。 良いベンダーを選んで、導入コンサルタントと良好な関係を築き、賢く使って、十分に成果をあげてもらいたいものである。 (連載了)

#No. 136(掲載号)
#五島 伸二
2015/09/17

女性会計士の奮闘記 【第33話】「根気強く数値を埋めていきましょう」

女性会計士の奮闘記 【第33話】 「根気強く数値を埋めていきましょう」   公認会計士・税理士 小長谷 敦子   〈ノビ(株)部門別損益表〉 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (※) 営業部門の③売上総利益率は、②売上総利益の社外売上に対する割合とする。  製造部門の③売上総利益率は、②売上総利益の①売上(社外売上+社内売上)に対する割合とする。 〈ノビ株式会社の業務フロー〉 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ◆ワンポントアドバイス◆ 部門のリーダーに自部門の数字を意識してもらうことが第一の目的です。 部門別損益表に少々不備があっても、まずは数字を入れて表を完成させましょう。 毎月、実地棚卸をしていない場合にも、簡便的に帳簿棚卸の数字を用いて、在庫増減の欄を計算する等、とりあえず表を完成するような工夫が大切です。 (了)

#No. 136(掲載号)
#小長谷 敦子
2015/09/17

《速報解説》 改正マイナンバー法が公布~預貯金口座へのマイナンバー付番は平成30年からを予定~

《速報解説》 改正マイナンバー法が公布 ~預貯金口座へのマイナンバー付番は平成30年からを予定~   仰星監査法人 公認会計士 岡田 健司   去る平成27年9月3日、改正個人情報保護法とともに、改正マイナンバー法が衆院本会議を通過し成立、平成27年9月9日に平成27年法律第65号として公布された(個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律)。当該改正と併せて、関連する国税通則法及び地方税法等も改正されることとなった。 改正個人情報保護法は、いわゆる機微情報の規定の整備、匿名加工情報と本人の同意を得ない第三者提供(オプトアウト)の規定の整備等など、重要な内容を含む改正である。とりわけ、個人情報取扱事業者の定義の見直しについては、民間の中小企業に極めて影響が大きいと考えられる。 改正個人情報保護法の解説については別の機会に譲ることとし、ここでは、主に預金口座へのマイナンバーの付番を主たる改正内容とする改正マイナンバー法の概要について解説する。 (1) マイナンバー法の改正について 改正マイナンバー法における改正内容は主に以下の4点である。 以下、それぞれについて、国民の生活、民間の事業者への実務への影響という点から、解説する。 なお、いわゆるマイナンバー法について、個人情報保護法など他の法律から参照する場合、これまでは「番号法」と称していたが、「番号利用法」と称することと改正されている(改正個人情報保護法第51条)。 (2) 改正マイナンバー法の内容について ① 預貯金口座へのマイナンバーの付番について この点については、本年1月に公開した下記拙稿において解説したとおりである。 地方自治体や年金事務所等による社会保障給付等のための資力調査、税務署等による国税及び地方税の税務調査、並びに預金保険機構等によるペイオフのための預貯金金額の合算(預金保険)のために、これらの主体はマイナンバーが付された預貯金情報の照会を銀行等にできるようになる。そのため、預貯金にマイナンバー(個人番号及び法人番号)が付与される。そこで、銀行等には預貯金情報をマイナンバーにより検索できるような状態で預貯金情報を管理する義務が課されることになる。 なお、預金者である個人や法人には、銀行等からマイナンバーの告知が求められるようになるが、これらの個人や法人にはマイナンバーの告知義務は課されないことから、告知は義務ではない。 当該規定の適用は平成30年1月からの予定である。 ② 医療分野への利用範囲の拡充 主に次の2点において、マイナンバーの利用が可能となる。 これにより、健康保険組合の被保険者や予防接種を受ける乳児をもつ世帯の、転居や退職等を理由とする異動の際に、保険者間、地方公共団体間でメタボ健診の情報並びに予防接種の履歴を効率的に連携することができるようになる。そこで、今後の特定健康診査や予防接種の受診にあたっては、マイナンバーの提供が求められることになる。 これらの改正は、比較的抵抗の少ないと思われる医療分野での活用を限定的に進め、これを契機に他の医療分野(例えば、医療機関における診察の受診結果、投薬の情報)に拡大していこうとする布石であるとみる向きがある。 ③ 地方公共団体からの要望を踏まえた利用範囲の拡充 主に次の2点において、マイナンバーの利用が可能となる。 (イ)は、既に個人番号利用事務とされている低所得者向け公営住宅と連携することで、地方公共団体等が所有する公営住宅及び特優賃を一体的に効率的に管理・活用することを企図したものである。 (ロ)については、例えばある都道府県が条例により高等学校等修学支援金支給法を超えて高等学校の授業料の補助を行おうとする場合、現行法であれば、上乗せ部分については、マイナンバーを利用して市町村との情報連携ができない。 したがって、上乗せ部分の支給を必要とする場合、改めて世帯の課税証明書の添付が必要であるが、改正マイナンバー法によれば当該上乗せ部分(当該地方公共団体の条例事務部分)も含めて情報連携が可能となり、改めて課税証明書が必要となることはない。 ④ 改正個人情報保護法との足並みをそろえるための所要の調整 改正個人情報保護法により個人情報保護委員会を新設し、これまでの各主務大臣の権限を統一することとされたことを受け、マイナンバー法上の「特定個人情報保護委員会」を「個人情報保護委員会」として改組されることとなった。 *  *  * 以上の改正の内容については、内閣官房「国会提出法案資料(平成27年3月10日付)」も参考にされたい。 また、これらマイナンバー法をめぐる改正の動きは、平成25年6月14日に閣議決定された、「世界最先端IT国家創造宣言」の内容を踏まえるとわかりやすい。 今後も、マイナンバーによる情報連携等により、行政の効率化、国民生活等の利便化の向上が見込まれる分野については、個人情報の保護等に配慮しつつ、マイナンバーの利用範囲の拡充等の検討が進められるものと思われる。 今回は、時勢を踏まえて改正が見送られたが、年金情報との連携も今後のマイナンバーの利用範囲の拡充の一つとして再度争点に含められることになろう。 今後も、マイナンバー法の動向について注視しておきたい。 (了) ↓お薦め連載↓

#No. 135(掲載号)
#岡田 健司
2015/09/16

《速報解説》 国税庁、「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等に関するQ&A」を改訂~新たに3問の取引事例を追加

《速報解説》 国税庁、「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等に関するQ&A」を改訂 ~新たに3問の取引事例を追加   Profession Journal 編集部   先月8月17日には登録国外事業者名簿が公表され、来月10月1日より適用が開始されるリバースチャージ方式等「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等」について、このたび9月10日付、国税庁ホームページにおいて、当該制度に関し5月に公表されたQ&Aが改訂され、国内の代理店が配信先の事業者との契約等を代行する場合の取扱いなど、新たに3問が追加された。   1 国外事業者が著作権を有するソフトウェアの国内事業者による配信 問2-2として新設されたのは、日本に本店を有する法人が、国外事業者が著作権を有するソフトウェアについて、その国外事業者から日本国内のエンドユーザーに販売するための権利を取得し、インターネット配信で販売する場合(下図参照)であり、この国内事業者の①国外事業者との取引、及び、②エンドユーザーとの取引における課税関係が確認されている。 (国税庁「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等に関するQ&A(平成27年9月改訂)」問2-2より) このケースにおいて、回答としては、①の国外事業者と国内事業者の取引については「著作権・著作隣接権という資産の譲渡又は貸付けに該当し、電気通信回線を介して行われる役務の提供には該当しませんので、(中略)改正前後においても国外取引として消費税の課税対象外となります」と説明されている。 また②の取引については、国内事業者が国内のエンドユーザー向けに販売するものであり、これまでと課税関係に変更はなく、国内取引として消費税の課税対象となるとの説明がなされている。   2 国内の代理店が国内事業者と交渉・契約し国外事業者から電子書籍の配信を行うケース 新設された問3-2では、事業者向けに電子書籍の配信を行う国外事業者について、配信先である日本の事業者との契約交渉・契約書の作成・代金決済等の事務を日本国内の事業者(代理店)が代行しているケースが取り上げられている(下図参照)。 なお、この国外事業者が配信先である日本の事業者と直接連絡を取ることはなく、代理店が各顧客と個別に交渉等を行い契約書を取り交わしており、代理店を通じて配信先が事業者であることを確認していると説明されている。 (国税庁「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等に関するQ&A(平成27年9月改訂)」」問3-2より) このような電子書籍の配信が「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当するかという回答としては、 と解説されており、さらに との注意喚起を行っている。 なお、このケースのように、日本の代理店が契約の代行等を行って国外事業者から手数料等を受領する取引については、国外事業者(非居住者)に対して行う役務の提供に該当し、国外事業者が国内で直接便益を享受するものではないことから、法令に定める契約書等の書類を保存することで「輸出免税取引」に該当するとしている。   3 非居住者であるスポーツチームの「監督やコーチ」が行う役務提供 今回の改正では、「芸能・スポーツ等の役務の提供に係る消費税の課税方式の見直し」として、国外事業者が行う、映画若しくは演劇の俳優、音楽家その他の芸能人又は職業運動家の役務の提供を主たる内容とする事業として行う役務の提供のうち、その国外事業者が他の事業者に対して行うものを「特定役務の提供」とし、この「特定役務の提供」を受けた事業者にはリバースチャージ方式が適用され、特定課税仕入れとして申告・納税を行わなければならない(平成28年4月1日以後行われる課税資産の譲渡等及び課税仕入れから適用)。 上記の「特定役務の提供」の具体例として、問45-1(改訂前は問45)では、国外事業者が、国内において、対価を得て他の事業者に対して行う、①芸能人として行う映画の撮影、テレビへの出演、②俳優、音楽家として行う演劇、演奏、③スポーツ競技大会等への出場、等が該当する旨、説明されている。 このたび新設された問45-2では、非居住者であるスポーツチームの監督やコーチが行う監督・コーチとしての役務の提供が「特定役務の提供」に該当するかが確認されている。 回答としては、監督・コーチ等は上記の職業運動家には該当しないため、当該役務の提供は「特定役務の提供」には該当しないとの説明がなされている。 *  *  * これら新設された3問のうち特に問2-2、問3-2は他の問答に比べより具体的な取引のケースについて触れたものであるため、実際に課税当局へ問い合わせのあった事例を紹介したものと推察される。 企業間取引においては他にも様々なケースが存在するため、今後もこの問答の内容については追加等、改訂される可能性がある。 (了)

#No. 135(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2015/09/11

プロフェッションジャーナル No.135が公開されました!~今週のお薦め記事~

2015年9月10日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.135を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2015/09/10

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第33回】「租税法の解釈における厳格性(その3)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第33回】 「租税法の解釈における厳格性(その3)」   中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦     4 政策的規定における厳格な解釈姿勢 (1) 租税特別措置規定における歪み(アプローチ①) 政策による課税の歪みは小さくすべきとの考え方によるアプローチ①は、特に租税特別措置規定の解釈論にみられる代表的なものである。以下、アプローチ①を考えるに当たり、租税特別措置規定を中心に検証してみたい。 そもそも、租税特別措置規定をいかに考えるべきであろうか。ここでは、差し当たり2つの考え方があり得る。すなわち、第一に、法人税法や相続税法のような本法が原則であり、租税特別措置「法」は例外的規定であるから、厳格に解釈されなければならないとする考え方である【図3】。 【図3】 この点、例えば、大阪地裁昭和54年4月17日判決(判タ395号122頁)は次のように述べ、最高裁昭和48年11月16日第二小法廷判決(民集27巻10号1333頁)を引用している。 これは、平たくいえば、「租税特別措置法とは本来のあるべき課税を歪めているのだから、厳格に解釈すべき」という理解といえよう。 また、一方で、本法と租税特別措置法という捉え方ではなく、一般的規定か租税特別措置規定かという捉え方も考え得るだろう。 これは、例えば、法人税法や相続税法といった本法の中にも租税特別措置規定があることを踏まえ、「本法か否か」ではなく、一般的規定か租税特別措置規定かという分類で厳格解釈を説明するものである。ここでは、一般的規定を原則と考え、租税特別措置規定は例外であるから厳格に解釈しなければならないという構成となる。 租税に係る特別措置は、なにも租税特別措置法のみに規定されているわけではなく、本法内にも存在することに鑑みれば、かような理解は整合的であるといえよう。 なお、昭和35年12月付け政府税制調査会「当面実施すべき税制改正に関する答申(税制調査会第一次答申)説明」によれば、租税特別措置とは、同じ経済的地位にある者に対しては同じ負担という、いわゆる負担公平の原則を大なり小なり犠牲にしながら、経済政策的目的を特定の経済部門ないしは国民層に対する租税の軽減免除という誘因手段で達成しようとする目的をもつ規定、ないしは措置を指すものであると説明されている。 つまり、租税特別措置規定とは、政策目的達成のための誘因手段であり、租税負担の公平を犠牲にして成り立っているといい得るのではなかろうか。 こうした中、なるべく租税負担の公平を保っていくためには、租税特別措置規定の射程は狭くすべき、すなわち、より厳格に解釈すべしという考え方が導出されることになる【図4】。 【図4】 このように見てみると、厳格解釈をすべき根拠は、「財産権の保障の例外であるから」という自由主義的側面からではなく、むしろ、租税負担の公平という「平等原則の例外であるから」という民主主義的側面の見地から考えるべきということになるようにも思われる。 つまり、形式論的側面のみならず、実質論的側面による解釈をした結果、非課税規定・減免規定たる租税特別措置規定は、国民は公平に租税負担をすべきとする民主主義に対するある種の脅威をはらんでいることが理解できるのではなかろうか。 もっとも、租税特別措置規定も租税法はじめ法律の規定するところであるから、租税法律主義の範囲内であり、民主主義的統制に反しているということではない。 とはいえ、租税特別措置規定が租税法にとっていわゆるディストーション(歪み)を生じさせているのであるなら、こうした規定の適用は極小化されなければならず、まして、解釈によってその射程を拡張することは許されるべきではないと理解すべきであろう。 こうした理解は種々の判決にも見受けられるが、たとえば和歌山地裁昭和62年3月31日判決(判時1247号85頁)は次のように論じている。 そこで、次いで、前回(その2)でアプローチ②として挙げた政策の趣旨・目的の範囲内で解釈すべきとの解釈論を確認してみたい。 (2) 政策の趣旨・目的による拘束(アプローチ②) 東京地裁昭和54年9月19日判決(判タ414号138頁)は次のように論じる。 これは、コンテクストを重んじるアプローチ①による解釈論よりも、むしろ、租税特別措置規定の内容が政策的なものであるから、そのような政策的規定については、政策の趣旨・目的に合わせたところでこれを厳格に解釈しなければならないという点でコンテンツ重視にシフトした解釈姿勢であると考えられる。 かように政策の趣旨・目的によって限定的に解釈されるべきであるという解釈姿勢は肯定されるべきであると考える。もっとも、政策的目的を有する非課税規定・減免規定はみだりに拡張解釈をすべきではなく、その趣旨・目的に応じて限定的に解釈をすべきではあるが、これに加えてさらに新たに課税要件を付加するかのごとき解釈が許容されるものではないのはいうまでもない。  (了)

#No. 135(掲載号)
#酒井 克彦
2015/09/10

消費税の軽減税率を検証する 【第7回】「適用税率誤りのリスク・事務負担・簡易課税への影響等」

消費税の軽減税率を検証する 【第7回】 「適用税率誤りのリスク・事務負担・ 簡易課税への影響等」   税理士 金井 恵美子     【4】 優遇措置としての効果の反面、事業者には適用税率の誤りのリスクが生じる 適用するべき税率について疑義がある場合、「その商品の販売価額をどう設定するか」という問題が生じる。 見切り発車をした結果、軽減税率の適用が誤りであったことが税務調査で明らかになった場合、売上先に対して、遡って取引額を修正し追加の支払いを求めることができるだろうか。 対消費者取引ではほとんど不可能と考えられ、その増差税額(多くの場合、数年分の累計額となろう)は、事業者の負担となり、経営状態を一気に悪化させることになる。 また、軽減税率が適用される課税資産の譲渡等に誤って標準税率を適用した場合には、たとえ事業者が標準税率によって納付すべき税額を計算していたとしても、公正な取引の見地から法的問題となる可能性があり、「税率を偽って不正な取引を行った企業」と批判されることも予想される。 仮にその誤りが相談を受けた税理士の判断であったならば、税理士はその責任を問われることとなる。 軽減税率は、事業者にとって、「販売促進と納税額の圧縮というメリット」と、「税率の適用誤りによるリスク」とをもつ諸刃の剣である。   【5】 事業者の事務負担を増大させる 複数税率制度においては、取引ごとに税率を判断し、売上げと仕入れを適用税率別に管理しなければならない。 適用する税率について売手側と買手側の判断が異なる場合には、いずれが適正であるかを議論し、確認する作業を行わなければならないし、その結果、契約内容の訂正を行う必要も生じよう。取引はその都度停滞し、企業間の信頼関係に影を落とす事態すら起こりかねない。 商品開発に当たっては、軽減税率適用の基準をにらんでの詳細な検討が必要となり、価格決定についても軽減税率の適否が重要なポイントとなる(※1)。これらは、単一税率にはない新たな負担である。 (※1) 「EU 諸国に物を出荷するときにはEU各国の軽減税率と該当品目を把握していないと正しい売価設定ができないということになりますので、販売事業者の事務コストが増えるということになります。」(石黒徹哉=髙田正昭「我が国の消費税の現状と今後の方向性について(中間報告):日本公認会計士協会租税調査会研究報告第24号/第2回」租税研究756号169頁(平成24年))。 消費税は、消費者に負担を求める税であるが、事業者は、「『納税事務』という無償の役務の提供を行うこと」を法律上の義務として課せられている。コンプライアンスコストは企業の日常業務に溶け込んで、その負担量を測定することは容易ではないが、確実に負担しているものである。 これが、消費税制度の検討に当たって重要な論点の1つであることは間違いがない。 ニュージーランドの消費税導入当時の財務大臣であるロジャー・ダグラスは、単一税率で非課税項目を置かない税としたのは、事業者への配慮であって、それにより一連の税制改革が首尾よく受け入れられたと回顧している(※2)。また、自由民主党税制調査会会長の野田毅氏は、納税義務者である事業者の理解を得ることができなければ導入することはできないと言及している(※3)。 (※2) 西山由美「EU付加価値税の現状と課題-マーリーズ・レビューを踏まえて-」フィナンシャル・レビュー102号161頁(2011年)。 (※3) 野田毅「インタビュー軽減税率導入の諸問題」税務弘報61巻9号9頁(2014年)。 制度の転換時には、新システム導入のための費用が必要となる。金額的な測定が難しいコンプライアンスコストに対し、これらは追加の支出という形で現れるから、システム投資への支援策を求める動きも生じ、貸付制度の整備が必要となり、財政支出を伴う可能性もある。 売上げには軽減税率が、仕入れには標準税率が適用されることによって、経常的に還付税額が計算される事業者も相当数生じるものと考えられ、納税事務負担を免除される小規模の事業者が還付を受けるために課税事業者を選択する、という可能性が生じる。 事務負担の増加は、このような場合に、より顕著となる。   【6】 対象品目の選定が難しく適用対象となるかどうかで不公平感が生じる 軽減税率を導入する場合には、対象の選定をめぐって、その境界をどのように線引きするかという問題と、その線引きをめぐる実務上の判断に混乱が起こるという問題がある。 これは、かつて物品税が抱えていた問題であり、一般消費税に移行した理由の1つでもある。 現行の消費税には非課税があり、当然に課税除外として課税資産の譲渡等と区別されている。実務において、ある取引が非課税となるか否かという課税と非課税の境界をめぐる争いは、他に比較して特に多いとはいえない(※4)。それは、「隠れた税負担」が生じるという非課税の欠陥を踏まえ、その範囲の拡大が極力抑えられ、転々流通する物品を対象としていないこと、そのため、必要に応じて譲渡を行う者を限定するといった要件を付していること等の成果と考えられるであろう。 (※4) 国税不服審判所が公開する消費税の裁決は126件、そのうち「非課税」に分類されているのは9件である(平成27年3月30日現在)。ただし、平成8年6月6日裁決等、「課税仕入れ等の範囲」等に分類された事件についても、非課税取引であるかどうかが争点となっているものもある。 非課税におけるこの基本的な選定の基準は、軽減税率には通用しない。「検討資料」は、「購入頻度の高さによる痛税感を緩和する」ことを軽減税率の対象の要件としているからである。 対象品目の線引きについては、次回以降、稿をあらためて検討しよう。   【7】 簡易課税制度の事業区分を細分化する必要が生じる 簡易課税制度は、小規模の事業者の納税事務負担を軽減することを目的としているが、軽減税率を導入した場合、簡易課税制度は極めて煩雑な制度になると考えられる。 現行の単一税率にあって、みなし仕入率は6区分であるが、複数の税率が存在することになれば、それぞれの事業区分の内に、軽減税率が適用される度合いを加味した細区分を設ける必要がある。 「検討資料」によれば、ドイツには日本の簡易課税制度に当たる平均率制度があるが、その平均率は、40業種に細分化されている。 複数税率への移行に伴い、インボイス方式に転換すれば簡易課税制度は必要がなくなる、とする意見もある。しかし、インボイス方式では、小規模事業者がインボイスを発行するために課税事業者を選択することになる。現行においては、課税事業者の選択は、専ら還付を受けることを目的としているが、インボイス方式では、納税することを前提に、インボイスを発行するために課税事業者を選択した零細な事業者の存在を想定しなければならない。 そうすると、かえって、小規模の事業者の納税事務負担に配慮するという簡易課税制度の意義が鮮明になり、これを完全に廃止することは難しいと考えられる。 (了)

#No. 135(掲載号)
#金井 恵美子
2015/09/10

こんなときどうする?復興特別所得税の実務Q&A 【第34回】「国外転出時課税の適用を受ける場合の所得税及び復興特別所得税の処理」

こんなときどうする? 復興特別所得税の実務Q&A 【第34回】 「国外転出時課税の適用を受ける場合の 所得税及び復興特別所得税の処理」   税理士・社会保険労務士 上前 剛   私は、フリーの経営コンサルタントです。9月30日に日本を出国し、シンガポールに拠点を移すことにしました。顧客は東京の会社なので、出国後も毎月来日する予定です。日本に住居や事務所は設けません。国外転出時課税制度が創設されましたが、対象になるのでしょうか? 9月10日現在、納税管理人の届け出はしておらず、保有資産は以下の通りです。 国外転出時課税制度についてご教示ください。   1 概要 国外転出時課税制度とは、平成27年7月1日以後に国外転出する居住者(国外転出日前10年以内に国内在住期間が5年超)が1億円以上の対象資産を所有又は契約の締結をしている場合には、国外転出時にその対象資産の譲渡又は決済があったものとみなして、対象資産の含み益に所得税及び復興特別所得税が課税される制度である。 国外転出日から5年以内に帰国した場合には、国外転出時課税により課された税額を取り消すことができる。また、納税猶予の適用を受けることで納税を猶予することができる。   2 対象資産   3 確定申告書の提出時期 ① 9月30日(国外転出日)までに納税管理人の届け出をした場合 平成28年3月15日までに経営コンサルタント業の平成27年1~12月の事業所得に国外転出時課税の適用による所得を含めて所得税及び復興特別所得税の確定申告書を税務署へ提出するとともに、納税しなければならない。 対象資産1億円以上の判定は、9月30日(国外転出日)で行う。東京証券取引所のA社株式の9月30日(国外転出日)の最終価格に株式数を乗じた額が1億円以上になった場合は国外転出時課税の適用を受け、1億円未満の場合は国外転出時課税の適用を受けない。 ② 納税管理人の届け出をしない場合 9月30日(国外転出日)までに経営コンサルタント業の平成27年1~9月の事業所得に国外転出時課税の適用による所得を含めて所得税及び復興特別所得税の準確定申告書を税務署へ提出するとともに、納税しなければならない。 対象資産1億円以上の判定は、6月30日(国外転出日の3ヶ月前の日)で行う。東京証券取引所のA社株式の6月30日(国外転出日の3ヶ月前の日)の最終価格に株式数を乗じた額が1億円以上なので、国外転出時課税の適用を受ける。 図表 確定申告書の提出時期 出典:国税庁「国外転出時課税FAQ」P8 (了)

#No. 135(掲載号)
#上前 剛
2015/09/10

連結納税適用法人のための平成27年度税制改正 【第12回】「国際税務の改正」

連結納税適用法人のための 平成27年度税制改正 【第12回】 (最終回) 「国際税務の改正」   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト パートナー 足立 好幸   [13] 連結納税適用法人に係る国際税務の改正 1 連結納税制度に係る外国子会社配当益金不算入制度の見直し (1) 改正の内容 連結納税制度に係る外国子会社配当益金不算入制度については、外国子会社の範囲において、他の連結法人が保有する外国法人の株式等を含めて、25%以上の保有割合要件を判定すること以外は単体納税制度と同じ取扱い(同じ番号の条文が適用される)となるため、税制改正についても単体納税法人と同様のものなる。 ① 損金算入配当等の額の益金不算入からの除外措置(原則法) 今回の改正では、外国子会社からの配当等の額で、その配当等の額の全部又は一部が外国子会社の本店所在地国の法令において外国子会社の所得金額の計算上損金の額に算入することとされている場合には、その配当等の額(損金算入配当等の額)を、益金不算入制度の適用対象から除外することとなった(法法23の2②一)。 具体的には、現時点では、オーストラリアの優先株式、ブラジルの株式が該当することになるが、今後は、外国子会社からの配当金について、現地の税務上の取扱い(税制改正を含む)を確認する必要が生じる。 ② 一部のみが損金算入配当等の額となる場合の除外措置(実額法) ただし、外国子会社から受ける配当等の額の一部のみが損金の額に算入された場合には、次の計算方法その他合理的な方法により損金算入配当等に対応する金額(損金算入対応受取配当等の額)を、益金不算入制度の適用対象から除外する金額とすることができる(法法23の2③、法令22の4④)。 また、この実額法に係る配当等を受けた日の属する事業年度後の各事業年度において、外国子会社において損金算入額が増額された場合には、その増額後の損金算入対応受取配当等の額を、益金不算入制度の適用対象から除外する修正を行う(法法23の2④)。 増額後の損金算入対応受取配当等の額は、次の計算方法その他合理的な方法により計算する(法令22の4⑤)。 この実額法の取扱いは、この配当等の額を受ける日の属する事業年度に係る確定申告書、修正申告書又は更正請求書にこの規定の適用を受けようとする旨並びに損金算入対応受取配当等の額及びその計算に関する明細を記載した書類の添付があり、かつ、外国子会社の所得金額の計算上損金の額に算入された剰余金の配当等の額を明らかにする書類その他の財務省令で定める書類を保存している場合に限り、適用される(法法23の2⑦)。 ③ 外国源泉税等の額の外国税額控除の取扱い 上記により益金不算入制度の適用対象から除外する配当等の額に対して課される外国源泉税等の額を、外国税額控除の対象とする(法令142の2⑦)。 (2) 適用時期 損金算入配当等の額の益金不算入からの除外措置は、平成28年4月1日以後に開始する連結事業年度において連結法人が外国子会社から受ける配当等の額について適用する(平成27年所法等改正法附則24①)。 ただし、平成28年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する各連結事業年度において連結法人が外国子会社から受ける配当等の額(平成28年4月1日において保有する同日において外国子会社に該当する外国法人の株式又は出資に係るものに限る)については、従前どおりの取扱いとする(平成27年所法等改正法附則24②)。   2 連結納税制度に係る外国子会社合算税制の見直し (1) 改正の内容 連結納税適用法人の外国子会社合算税制については、単体納税適用法人と基本的には同様の取扱いであり、連結納税制度に係る外国子会社合算税制について、次の見直しが行われた。 〈改正1〉 トリガー税率 特定外国子会社等に該当することとされる著しく低い税負担割合の基準(いわゆるトリガー税率)が20%未満(現行20%以下)に変更された(措令39の114①)。 税負担割合は法定税率とは異なるが、タイ20%(2013年1月~)、イギリス20%(2015年4月~)、ベトナム20%(2016年1月~)の法定税率であるため、これらの国に本店所在地を有する外国関係会社は、改正により影響を受けることとなる。   〈改正2〉 適用除外基準(事業基準)の判定   〈改正3〉 合算対象金額の計算(損金算入配当等を受けた場合) (2) 適用時期 特定外国子会社等の平成27年4月1日以後に開始する事業年度から適用される(平成27年所法等改正法附則94①②)。この点、連結法人ではなく、特定外国子会社等の平成27年4月1日以後に開始する事業年度から適用されることに注意を要する。 また、〈改正3〉の①②は、特定外国子会社等の平成28年4月1日以後に開始する事業年度に係る合算対象金額について適用される(平成27年改正措令附則44②)。この点、連結法人ではなく、特定外国子会社等の平成28年4月1日以後に開始する事業年度から適用されることに注意を要する。 〈改正3〉の③については、平成28年4月1日以後に開始する連結事業年度において連結法人が特定外国子会社等から受ける配当等について適用される(平成27年所法等改正法附則94③)。 (連載了)

#No. 135(掲載号)
#足立 好幸
2015/09/10

組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第34回】「非公開裁決事例⑤」

組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第34回】 「非公開裁決事例⑤」   公認会計士 佐藤 信祐   今回、紹介する事件は、株式を取得する目的で支出した財務調査費が有価証券の取得価額に含まれるか否かについて争われた事件である。 法人税法施行令119条1項1号において、「購入手数料その他その有価証券の購入のために要した費用」を有価証券の取得価額に含めることが明記されているが、財務調査費が有価証券の取得価額に含まるか否かについては、その金額が多額であることから、付随費用として取り扱うことに違和感があり、一部において誤解があったため、実務上も参考になる事件であると思われる。   19 平成22年2月8日裁決(TAINSコード:F0-2-500) (1) 事件の概要 本事件は、審査請求人(以下「請求人」という)が財務調査費(4,500,000円)及び店舗の側溝改修工事費等を損金の額に算入していたところ、原処分庁が、財務調査費については有価証券の取得価額に算入すべきであり、また、工事費等については資本的支出に当たるなどとして、法人税の更正処分等を行ったのに対し、請求人が、これらの処分の違法を理由としてその一部の取消しを求めた事件である。 なお、本連載は組織再編・資本等取引についての連載であるため、本稿においては、前者の財務調査費についてのみ解説することとする。 (2) 原処分庁の主張 請求人は、本件株式を取得するに当たり、■■■■■の買収監査を行うものとされていたことから、■■■■に買収のための財務調査を依頼したものであり、請求人が本件事業年度の損金の額に算入した本件財務調査費は、本件株式を取得するために要した費用と認められ、本件株式の購入のために要した費用に該当し、本件株式の取得価額に算入すべきである。 (3) 請求人の主張 本件財務調査費は、次のことから、本件株式の取得価額には算入されず、本件事業年度の損金の額に算入される。 (イ) 本件財務調査は、■■■■から、連結財務諸表を監査するに当たり、財務調査が必要との指導を受けたため、やむを得ず、監査目的で実施した。 (ロ) ■■■■■の会計処理については、税務上損金不算入となる退職給与引当金や役員退職慰労引当金等が保守的に計上されており、財務諸表は、上場企業と同程度に信頼性の高い決算書であったため、請求人は、本件株式を取得する目的での財務調査は必要ないと判断していた。 (ハ) 請求人は、純資産■■■■■■■(平成19年3月31日現在)の価値がある■■■■■を■■■■■■■程度で譲り受ける旨基本合意していたのであるから、本件株式を取得する目的で改めて財務調査を実施する必要はないと判断していた。 (4) 国税不服審判所の判断 平成19年7月18日に開催した臨時取締役会において、本件株式を取得する旨決議していることからすれば、請求人は同日において、本件株式を取得することを決意していたと認められる。 本件財務調査が本件株式の買収についての意思決定の参考とするために行われたものと認められることからすれば、特定の有価証券を購入することを決定した後に当該有価証券の購入に関連して支出される費用に該当することになるから、有価証券の購入のために要した費用として、本件株式の取得価額に算入されることとなる。 (5) 評釈 本事件の争点は、財務調査費が有価証券の取得価額に含まれるか否かであるが、請求人の主張を見てみると、原則として有価証券の取得価額に含めざるを得ないことは認識した上での主張であり、やや強引であるという印象を受ける。 これに対し、国税不服審判所の判断において、「特定の有価証券を購入することを決定した後に当該有価証券の購入に関連して支出される費用に該当する」という理由により有価証券の取得価額に含めている。 実務上、どの企業を買収するのかを決めないで複数の企業を調査している段階において発生した財務調査費は有価証券の取得価額に含めずに損金として処理することが可能であり、特定の企業を買収することを決めた後に発生した財務調査費は有価証券の取得価額に含める必要があると解されており、上記の国税不服審判所の判断はそれに従ったものであると考えられる。 この論点については、拙著『企業買収の税務』(中央経済社)において、初版から第3版に至るまで継続して指摘させていただいた。 例えば、初版は、本事件よりも前の平成18年に出版したものであるが、その33頁において、「購入手数料その他その有価証券の購入のために要した費用」の具体例として、仲介会社等に支払う仲介手数料、弁護士に支払う売買契約書の作成費用、デューデリジェンスに係わる費用を列記したうえで、当該デューデリジェンスに係わる費用については、34頁において、「被買収会社が決まっていない状態において、買収のターゲットを探すための調査費用を支出した場合には有価証券の取得価額に含める必要は無いが、買収のターゲットが決まり、買収するか否か、買収価格はいくらにするのかを決定するためにデューデリジェンスを行う段階になった場合には、当該デューデリジェンスに要した費用については、被買収会社の株式を取得するために要した費用であることから、有価証券の取得価額に含めるべきであると考えられている。」と解説させていただいた。 請求人の主張は、「連結財務諸表を監査するに当たり、財務調査が必要との指導を受けたため、やむを得ず、監査目的で実施した」ためであり、買収することも、買収価格についてもすでに合意されていたということを根拠としているため、前掲書の解説に沿ったうえで、有価証券の取得価額には含まれないということを主張しているようではある。 そうなると、請求人の主張をそのまま鵜呑みにすれば、財務調査費というよりも、会計監査を受けるための費用であり、有価証券の取得価額に含めるべきではないという整理になってくる。このような主張は、内部統制が導入された当初に、会計監査の現場において、やや手続きが形式的になった時期があったため、違和感のない主張であり、このような主張を行う気持ちは分からないでもない。 しかしながら、その主張を全面的に受け入れるとなると、財務調査費が株主責任を果たすためだけの無駄な費用であったということになるし、財務調査を行ったことにより、結果として大きな問題が発覚し、M&Aが成立しないということもあり得るため、このような主張はやや強引であると思われる。 そのため、本事件における国税不服審判所の判断は妥当なものであったと考えられる。  (了)

#No. 135(掲載号)
#佐藤 信祐
2015/09/10
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