〈検証〉 「コーポレート・ガバナンス報告書」からみた CGコード初適用への各社対応状況 【第2回】 「“説明”率の高い原則に関する主な事例検証(その1)」 弁護士・公認会計士 中野 竹司 4 “説明”率の高い原則 (1) 概要 3(前回)で検討したように、8月末提出会社に比較して、全提出会社でみると、原則に対する説明率は大幅に高くなった。 そして、説明率が高い原則(すなわち、実施率の低い原則)も明らかになった。 そこで今回より、“実施”でなく“説明”を選択した企業の多かった原則は何か、また各社はどのような“説明”を行っているかを分析していきたい。 (2) 実施率の低い原則 上に掲げた説明率の高い原則をさらに分類すると、以下のように分けられる。 ① 社外取締役の活用に関する原則 ② 特定の手段・内容の情報開示を求める原則 ③ その他 このうち、①の社外取締役の活用については、独立取締役の2名以上の選任について“説明”している会社が4割以上存在する。ただし、下図の通り、独立取締役を複数名選する市場一部上場企業について、平成26年7月末時点では21.5%だったものが、平成27年7月末時点では48.4%と26.9%の大幅増加となっている。したがって、社外取締役の複数選任の増加傾向は顕著であり、今後は社外取締役の選任の有無ではなく、近時増加した社外取締役を具体的にどう活用していくかが焦点となってくると思われる。このため、現在はその移行期だと考えられるのではないか。 出所:スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議 第1回配布資料 資料4「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況及び関連データ」P17 また、②の特定の手段・内容の情報開示を求める原則については、8月末までに開示が完了した上場企業と提出会社全体の“実施”割合のかい離が非常に高く、海外投資家の持ち株比率が高い会社、海外での事業比率の高い会社では実施率が高く、そうでない企業との差が大きいのではないかと思われる。 また、原則4-11③「取締役会による取締役会の実効性に関する分析・評価、結果の概要の開示」については、提出会社全体での実施率が36.4%と4割を切り、その必要性の理解が十分得られておらず、また“実施”を検討している会社にとっても、どのように“実施”すればよいか模索中なのではないだろうか。 ③のその他の原則では、特に業績連動報酬、株式報酬等に関する原則の実施割合が低いが、これも我が国の実務より一歩踏み込んだ原則であることから実施率が低いと思われる。 ただし、投資助言機関などは、業績連動型報酬を報酬制度の中に適切に組み込んでいるか否かを重視しており、平成27年7月24日に、経済産業省から公表された「コーポレートガバナンスの実践~企業価値向上に向けたインセンティブと改革~」でも、 と新しい中長期業績連動型株式報酬についても言及している。さらに、平成28年度の税制改正大綱では、 という記載がなされ、税制面からもインセンティブ報酬の普及をバックアップすることが記載されている。 こうした制度面のバックアップが進み、業績連動報酬、株式報酬等に関する原則の実施割合が今後高まっていくと予想される。 5 原則1-4「政策保有株式に関する対応」記載例 (1) 記載が難しい原則 従来、コーポレート・ガバナンス報告書で対応に苦慮している原則として挙げられていたものは、原則1-4「政策保有株式に関する対応」、原則3-1「情報開示の充実」、補充原則4-11③「取締役会全体の実効性の分析・評価」などであった(出典:野村総合研究所 News Release 2015.6.26)。また、これらの原則は、東証資料に基づけば、“説明”する企業数も多いことから、以下この3つの原則について、実際の記載例を確認しながら検討していく。 (2) 原則1-4「政策保有株式に関する対応」記載例 政策保有株式保有については、従来、投資家側から批判を受けていたものであり、原則1-4は政策保有株式自体を禁止した原則ではないが、開示の強化を図ることにより合理的説明のできない政策保有株式の見直しを図ることとなる原則となっている。そして、この原則は“実施”していたとしても、一定の事項を“開示”することが求められている原則である。 このため、政策保有株式を有する上場企業では、この原則にいかに対応すべきか苦慮することとなった。 原則1-4は必要的開示事項であり、「政策保有に関する方針」と「議決権行使についての基準」の2つの開示が求められている。これに加えて、保有のねらい・合理性について記載したコーポレート・ガバナンス報告書も見られた。 そして、「政策保有に関する方針」では、保有の目的、保有の数量基準、政策保有株式の売却方針などを記載する事例があった。 また、「議決権行使についての基準」では、投資先の企業の企業価値・株主価値に関して記載したものや、自社の利益をどのように考慮するかを記載したものがあった。 以下、具体的な記載事例を挙げる。 ① 原則として保有しないことを明示する例(ニッセンHD(同社HPにて開示)) ② 保有基準を記載する例(大東建託) (了)
〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例2】 セーラー万年筆株式会社 「代表取締役および役員の異動に関するお知らせ」 (2015.12.12) 事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹 1 今回の適時開示 今回取り上げる適時開示は、セーラー万年筆株式会社(以下「セーラー万年筆」という)が平成27年12月12日に開示した「代表取締役および役員の異動に関するお知らせ」である。代表取締役の中島義雄氏が取締役に、取締役の比佐泰氏が代表取締役になるという代表取締役の異動があったため、それに関して開示している。 代表取締役又は代表執行役の異動は決定事実の一つとされており、それに関しては適時開示が必要とされる。なお、単なる取締役(いわゆる「平取締役」)や執行役の異動に関しては、特に適時開示が必要とされていない(ただし、重要性の高い社内体制の変更を伴うものであるような場合は、必要となることもある)。 2 平凡な開示かと思ったら この開示自体は、何の変哲も無い極めて平凡な開示といえるものだった。「異動の理由」には、「経営体制の刷新を図り、業績の一層の伸展を期するものであります。」と記載されているだけであり、特に社会の注目を集める要素は含まれていなかった(「異動の理由」には、通常、「一身上の都合」や「世代交代」といった内容がごく簡潔に記載されるだけである)。 しかし、この開示の後、平成27年12月14日、代表取締役だった中島氏が、東京地方裁判所に対して、代表取締役解職の無効の申立を行ったのである。中島氏は、納得したうえで代表取締役を退任していたのではなく、取締役会によって解職されていたことが明らかになったのである。 不本意に退任に追い込まれるような、実質的な解職といえるケースは、よくあるのかもしれないが、このように正式に解職され、しかもそれが明るみになるというケースは、あまり多くない。 3 解職の理由 中島氏による申立を受けて、同じ平成27年12月14日、セーラー万年筆は、「代表取締役の異動の経緯に関するご説明」を開示した。12日の開示とは異なり、そこには異動の理由が詳細に記載されている。それによると、同社の社内取締役が中島氏に対して以下の要請を行ったにもかかわらず、中島氏が実行しなかったことが、解職の理由とのことである。 また、以下のような記載も行い、取締役会の決議の有効性も主張している。 4 なぜこうした展開に? 中島氏は平成21年12月にセーラー万年筆の代表取締役社長となっている。下図のとおり、その後、同社の業績は上向いてきているように思われる。本稿執筆時点では平成27年12月期の業績は不明だが、同期の第3四半期は黒字となっている。それなのに、なぜこうした展開になってしまったのだろうか。 中島氏は、もともと大蔵省(現 財務省)出身で、京セラや船井電機を経て、平成21年にセーラー万年筆の取締役、同年12月に代表取締役社長となったという人物である。それに対して、今回、中島氏の代表取締役解職決議に参加した4名の社内取締役は、全員がセーラー万年筆生え抜きの人達である。 中島氏と他の社内取締役は価値観が違いすぎたのだろうか。それゆえ、6年の間に信頼関係を築くことができなかったのだろうか。あくまで筆者個人の印象であるが、「代表取締役の異動の経緯に関するご説明」の文面からは、そんな印象を受けてしまう。 【セーラー万年筆の連結業績推移】(単位:百万円) 5 結末は? その後、平成27年12月24日、中島氏は代表取締役解職の無効の申立を取り下げることとなった。もともと中島氏に勝目はなかったと思われるし、仮に勝って代表取締役に返り咲いたとしても、他の社内取締役を辞めさせることはできないため(中島氏はセーラー万年筆の株式を少数しか持っていない)、何もできなかったであろう。 セーラー万年筆は、中島氏の申立取下げを受けて、同日、「役員の地位を仮に定める仮処分申立の取下に関するお知らせ」を開示した。その「今後の見通し」には、以下のように記載されている。やはり中島氏は、価値観を共有できていないと思われていたのだろうか。 (了)
税理士ができる 『中小企業の資金調達』支援実務 【第14回】 「金融機関提出書類の作成ポイント(その6 事業計画書)」 ~融資のためのポイント~ 公認会計士・中小企業診断士・税理士 西田 恭隆 前回は事業計画書の形式面のポイントについて解説した。今回は、融資判断という点から事業計画書の内容に関するポイントを述べる。これを押さえることで、金融機関の印象は良くなり、融資獲得の可能性は高まるだろう。 今回も、まず、文章部分についてポイントを解説し、次に計数部分のポイントについて述べる。 融資のためのポイント①:売上増加の計画には具体的な根拠が必要 事業計画書は予測に過ぎないので、実現可能性を考慮しないのであれば、都合の良い売上や利益をいくらでも作ることができる。金融機関側もこの点は理解しており、事業計画書上の売上増加に対する彼らの態度は、基本的に「信用しない」である。このため、売上増加を計画に盛り込むのであれば、具体的な根拠も合わせて示す必要がある。数字をただ並べて抽象的に「一生懸命、しっかり頑張ります」というのでは説得力が弱い。 具体的な根拠とは、物証や具体的な行動計画である。 物証の例としては、新規取引先と締結した契約書または仮契約書や、直近の業績が好調であることを証明する売上入金記録等がある。 具体的な行動計画とは、いつ、どこで、誰が、何を、どのように行動することによって売上を確保するのかを論理的に説明した計画文章である。売上増加といっても、それは新規客増加によるものなのか、リピート客増加によるものなのか。新規増加であれば、いつ、どこで、誰が、何を、どのように広告宣伝することによって増加するのか。新製品や新サービスの提供によって売上を獲得するのであれば、いつ、どこで、誰が、何を、どのように開発して提供するのか、詳細に説明する必要がある。 これら具体的な根拠を、事業計画書の文章部分、「セールスポイント(強み)」に記述する。社長が書く文章は抽象的な場合が多い。税理士がフォローして具体的表現に変えてあげると良い。 融資のためのポイント②:横ばいの売上が好まれる 上記のとおり、売上の増加には根拠が必要であるから、横ばいもしくは微増の売上計画とした方が無難である。金融機関は会社の成長性よりも、毎月確実に返済が行われるか、返済原資となる売上、利益を確保できるかに関心を持つ。慎重で控えめな、最低限これだけは確実にあがるという売上高を示した方が安心感を与える。根拠が無いにも関わらず売上が2倍3倍になる強気の事業計画を立ててしまうと、事業計画書全体の信用にも影響を及ぼしかねない。 以前、筆者はベンチャーキャピタルから出資を受けている会社の融資支援をしたことがあった。将来、上場を目指す会社であった。ベンチャーキャピタルに提出した事業計画書は融資に使えるか、と質問されたので拝見したところ、かなり強気の売上計画であった。「ベンチャーキャピタルに対しては、上場へのやる気や勢いをアピールする必要があるので、それで問題ない。しかし、金融機関向けには控えめな売上が好まれる。」と社長に説明し、改めて売上計画を練り直して頂いた。 融資のためのポイント③:できるだけ黒字の計画にする 融資を受けた1年目はできるだけ黒字の計画にする。新事業や設備投資を目的とする融資の場合、それによって利益が生み出され、返済原資が確保されるという事業計画にする。もちろん、投資の効果が現れるまで時間差があるので、投資直後は赤字になることはあるけれども、融資1年後のトータルでは黒字という形が良い。 慎重に数字を見積もるのも大切であるけれども、赤字の事業計画書は金融機関を不安にさせるだけである。「社長は事業に自信がないのではないか」、「赤字になるのであれば、そもそも事業を行うべきではないのでは」と思われてしまう。黒字の事業計画書を提出するのが礼儀作法である。 黒字の事業計画書を作成するのが難しい場合もある。例えば、赤字続きの会社が、運転資金を調達する場合である。昨年まで赤字だったのが、融資を受けた後に突然V字回復、黒字転換するという事業計画は説得力が弱い。その場合は、確実に実施できる経費の削減計画を盛り込み、できるだけ赤字幅を減らすような事業計画書にする。一般に、経費全体に占める割合が大きい経費項目から削減を検討する。削りやすいからである。複数の経費項目から少しずつ削って効果を高める。人件費カットは従業員の士気や売上根拠に影響するので、慎重に検討する必要がある。 売上の数字を増加させることで簡単に黒字の計画にできるけれども、ポイント①で述べた通り、それだけでは金融機関は納得しない。説得力とのバランスを考えながら調整する必要がある。 融資のためのポイント④:その他の資料も積極的に添付する 金融機関の融資判断に有益と思われる資料は、積極的に事業計画書に添付する。文章だけでは事業内容が伝わりづらい、視覚から商品の良さをアピールしたいという場合、図や写真を添付する。 筆者が以前、女性用水着の製造販売会社の支援をした時は、事業計画書に水着の写真やデザインを添付してもらい、融資交渉面談時には、水着の現物を持参するようアドバイスした。他にも、ドイツ産のお菓子を日本で販売したいという会社には、お菓子と製造工程の写真を添付してもらい、読み手がイメージしやすくなるよう工夫した。飲食店にはグルメサイトの評価ページ、旅館業の会社には宿泊予約サイトの評価ページを添付してもらった。既存顧客のリピート獲得が強みという会社には、証拠として、顧客リストを添付するように助言している。会社または社長が担保として使える不動産を持っているならば、不動産一覧表を作成し、登記簿謄本と合わせて金融機関に提出すると良い。 * * * 以上、融資判断という観点から事業計画書のポイントを述べた。次回は、資金繰り表の作成ポイントについて述べる。融資においては、資金繰り表が最も重要な書類とされる。 (了)
《速報解説》 企業版ふるさと納税では法人税額控除に所得制限アリ!? ~国税・地方税にまたがる税額控除額の計算過程に留意 Profession Journal編集部 平成28年度税制改正で創設される「企業版ふるさと納税」(地方創生応援税制)だが、地方自治体が行う一定の事業に対し法人が行った寄附について、現行の損金算入特例(約3割)に加え、新たに法人事業税・法人住民税及び法人税の税額控除制度(約3割)が導入されるもので、全体として寄附金額の約6割が軽減されることとなる。 さて、本制度の概要だが、財務省が作成した資料『「平成28年度税制改正(案)のポイント」(平成28年2月発行)』では、次のような解説図が掲載されている。 (※) 財務省ホームページ ここで気になるのが、上図が「所得が大きい法人」と「所得が小さい法人」に分けられている点だ。 2つの図の違いは「法人税の税額控除」の記載の有無にあり、「所得が大きい大法人などでは、所得制限が設けられ、法人税の控除ができないのか」との疑問の声が湧き起こっている。 この点について、本誌取材によると、上図については所得要件を示したものではなく、法人住民税については「寄附金額の20%」が控除できるものの、法人住民税の控除限度額が「法人住民税額の20%」であるため、法人住民税の中で控除しきれないケースに該当する法人を「所得が小さい法人」(=法人税額が小さい=法人住民税額が小さい=控除しきれない部分は法人税額から控除できる)と説明していることが分かった。 つまり所得が小さい法人は「法人住民税額の20%」では「寄附金額の20%」を控除しきれないため、控除しきれなかった額を法人税額から控除することを示したものというわけだ。こうしたことから、心配された所得制限についての要件は設けられないこととなる。 なお、本制度の適用は「地域再生法の一部を改正する法律の施行の日から平成32年3月31日までに支出した寄附金」とされているが、国会審議中の改正地域再生法案を確認すると、施行日は「平成28年4月1日」(同法附則第1条)とされており、4年間の時限立法が予定されている。 なお、本誌掲載の『日本の企業税制』【第28回】(経団連経済基盤本部長 小畑良晴氏)の解説にあるように、1企業における1事業当たりの寄附額の下限額が10万円、本社の立地する地方公共団体への寄附は対象外等、適用に当たっては様々な制約があるため、慎重な判断が求められる。 (了) ↓お勧め連載記事↓
《速報解説》 「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」、CGコードにおける取締役会対応状況について意見書を公表 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成28年2月18日、金融庁から「会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上に向けた取締役会のあり方」(「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」意見書(2))が公表された。東京証券取引所のホームページでも公開されている。 意見書では、日本企業のコーポレートガバナンス・コードにおける取締役会に関する取組み状況について論点や要請事項が示されていること、また、コーポレートガバナンス・コードに対する取組みの例が記載されていることから、企業の方にも参考になるものと考えられる。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 取締役会のあり方 「企業を取り巻く経営環境の変化と取締役会のあり方」として、主な事項として、次の論点が述べられている。 意見書では、下記以外についても述べられており、また、取組み例も紹介されているので、ぜひ全文をお読みいただきたい。 (了)
「連載終了記事」一覧表 リニューアルのお知らせ
《速報解説》 不服申立制度の改正に伴い 「不服審査基本通達」が改正 ~改正行政不服審査法等の施行にあわせ平成28年4月1日以後の取扱いを整備~ 弁護士 坂田 真吾 1 はじめに 平成28年2月5日付けで、国税庁長官より「不服審査基本通達(異議申立関係)の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)、及び「不服審査基本通達(審査請求関係)の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)、が発遣された(国税庁ホームページ公開は2月12日)。 国税通則法については、行政処分一般についての訴訟前の不服申立制度を規律する行政不服審査法の改正(平成26年)を踏まえ、異議申立、審査請求制度の改正がなされており、今回、これにあわせて上記通達の該当箇所の改正が行われたものである(※)。 (※) 今回の通達改正により、通達の標題についても以下のように変更されている。 ・「不服審査基本通達(異議申立関係)」⇒「不服審査基本通達(国税庁関係)」 ・「不服審査基本通達(審査請求関係)」⇒「不服審査基本通達(国税不服審判所関係)」 なお、国税通則法施行令も、平成27年11月26日付で改正されている(下記拙稿を参照)。また、当該改正法等は、平成28年4月1日以降になされた課税処分等に係る不服申立てに適用される。 2 主な改正項目 国税通則法改正の主な項目及び今回の通達の改正点等について紹介する(以下では、改正後の国税通則法を「改正法」、改正後の通達を「改正通達」という)。 【参考図】 (※) 国税不服審判所ホームページより 3 終わりに 税務上の不服申立制度は、特に近時の審判所の任期付職員制度(国税の外部の税理士、公認会計士、弁護士等を審判官に登用する制度)の採用・拡大によって転換期を迎えているが、今回の改正によって、従前の二段階不服申立制度が選択的なものとされ、また、納税者の証拠へのアクセス権限が拡充されたこと等から、さらに大きな変化が生じるものと考えられる。 (了) ↓お薦め連載記事↓
2016年2月18日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.157を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
日本の企業税制 【第28回】 「企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)について」 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴 (※) 今回より筆者変更となります。 1 はじめに 平成28年度税制改正で創設されることとなった『地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)』とは、地方自治体が行う地方創生を推進する上で効果の高い一定の事業として国が認定した事業=「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」に対して法人が行った寄附について、現行の損金算入措置に加えて、法人事業税・法人住民税及び法人税の税額控除を導入し、寄附金額の約6割の負担を軽減する制度である。 地方創生=ローカル・アベノミクスへの支援税制措置としては、平成27年度税制改正において本社機能の地方移転等を促進するための企業地方拠点強化促進税制が措置されたのに続く第2弾の措置である。 2 地方創生応援税制の概要 (1) 対象となる地方公共団体 地方版総合戦略を策定する地方公共団体が対象となる。ただし、次のいずれにも該当する地方公共団体は、対象団体から除外される。 たとえば、東京都は不交付団体であり対象とならず、また、23特別区、東京圏に所在する不交付団体(現在18市町)が対象外となる。 (2) 優遇措置を受けるための手続 (3) 優遇措置の内容 現行の損金算入措置に加え、法人住民税、法人事業税、法人税の税額控除の措置を創設する。 寄附額に対する控除額の割合は、法人住民税、法人事業税、法人税の合計で寄附額の3割とする。 〈参考図〉 (※) 財務省ホームページより (4) 寄附企業に対する地方公共団体の行為の制限 地方公共団体は、寄附を行う企業に対し、寄附の代償として経済的利益を与える次のような行為を行ってはならない。 3 まち・ひと・しごと創生寄附活用事業とは 地方創生応援税制の対象となる「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」は、今通常国会で審議中の地域再生法改正案の中で、就業の機会の創出、ならびにそのための基盤となる施設の整備とされているが、内容的な制約はなく、自治体の創意工夫に委ねられている。 ちなみに政府の資料では、具体例として以下のようなものが示されている。 4 おわりに あらかじめ企業からの寄附を前提とする取組みとして、実際にどのような「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」が生まれてくるのかは、まさに自治体の取組み次第である。 政府は、この仕組みが機能するならば、以下のような効果があるとする。 一方、寄附の代償として経済的利益を与えてはならないとされており、寄附を行う企業にとって、宣伝広告あるいはイメージ・アップ以上のものではないのかもしれない。 (了)
裁判例・裁決例からみた 非上場株式の評価 【第1回】 「論点分析」 公認会計士 佐藤 信祐 本連載の目的は、非上場株式の評価について、会社法、租税法の両面からの分析を行うことにある。 税務専門家の立場からすると、「非上場株式の評価」と言われると財産評価基本通達を思い浮かべてしまうが、実務においては、会社法からの分析も必要である。 【第1回】にあたる本稿では、会社法、租税法の両面からの論点について解説したい。 1 論点分析 (1) 会社法の観点からの分析 会社法上、非上場株式の評価が問題となる場面として、以下のものが挙げられる。 上記の論点は、訴訟事件と非訟事件とに大きく分けることができ、その場合の価格の算定が異なる場合があるという点に留意が必要である。 なぜならば、価格決定の申立ては非訟事件に該当することから、裁判所の裁量により決定される。そのため、上場株式については顕著であるが、統計学的手法を用いた分析もなされていたり、プレミアムを20%とするといった大雑把な算定がされていたりするものも少なくない。 これに対し、例えば、取締役の損害賠償責任を追及する訴訟事件では、損害の額を認定しなければならないため、裁判所の裁量により大雑把な算定をすることは許されない。そのため、非訟事件に比べて、取締役に有利な判決が下されることも少なくない。 さらに、会社法の観点からの分析は、それぞれの事件の目的により異なる価格になることがあり得るという点に留意が必要である。例えば、組織再編やスクイズアウトでは、マイノリティ・ディスカウントや非流動性ディスカウントが認められない可能性が高いのに対し、譲渡制限株式の譲渡では、マイノリティ・ディスカウントや非流動性ディスカウントが認められる余地があるからである。 (2) 租税法の観点からの分析 租税法の観点では、非時価取引に該当するか否かという点が問題となる。この場合、贈与をした者、贈与を受けた者が自然人なのか、法人なのかにより、所得税、法人税、贈与税のいずれに該当するのかが異なるが、それぞれの税目の目的に応じた分析が必要となる。 さらに、財産評価基本通達により評価を行うにしても、原則的評価方式により評価を行うのか、特例的評価方式により評価を行うのかをまずは検討する必要があるという点に留意が必要である。 例えば、贈与税では、贈与を受けた者の贈与後のポジションにより、これらの評価が決定される(相続税法22条)。これに対し、譲渡所得税では、贈与をした者の譲渡をする直前のポジションにより、これらの評価が決定される(所得税法基本通達59-6)。 これらの評価方法は、会社法と目的が異なるため、当然に評価方法が異なる場合も考えられる。 (3) 本稿の目的 これらを踏まえ、本稿では、非上場株式の評価につき、会社法の裁判例、租税法の裁判例、裁決例をそれぞれ分析することを目的にしている。 非上場株式の評価についての筆者の平成26年度の研究実績は、「特例的評価方式による少数株主の締出し」税務弘報62巻12号73-79頁、「配当還元方式により現金交付型合併を行った場合」税務QA2014年9月号 36-39頁であり、平成27年度の研究実績は「非上場会社の少数株主の締出しにおける公正な価格」法学政治学論究106号133-165頁である。 これらは、少数株主の締出しについての研究であるため、租税法の観点からの分析は、原則的評価方式によるものが多く、わずかに売り手側の少数株主の譲渡所得税の計算において特例的評価方式を採用する余地が認められた。これに対し、会社法の観点からの分析は、支配株主にとっての株式価値により評価を行う必要があり、さらに、非流動性ディスカウントが認められないものと結論づけた。そして、少数株主の締出しにより将来フリー・キャッシュ・フローが増加する場合には、増加するフリー・キャッシュ・フローに基づいて株式価値の算定をすべきであると結論づけた。本稿では、さらに踏み込んで、募集株式の発行等や譲渡制限株式の譲渡などの裁判例について触れるとともに、租税法の観点から、より細かな分析をしていきたい。 本稿の目的は、学術的な研究を行うことではなく、裁判例、裁決例から、実務上の問題点を抽出していくことにある。そのため、裁判所、国税不服審判所の見解と筆者の見解が異なる場合であっても、あえてその点については触れず、裁判所、国税不服審判所の見解を中心に解説していきたい。 本稿の構成は、まずは会社法の分析をひと通り行った上で、租税法の分析を行い、そこから導き出される実務上の留意事項をまとめていく予定である。 次回以降は、募集株式の発行等の裁判例について触れていく予定である。なお、平成17年改正前商法では、新株の発行と自己株式の処分はそれぞれ分けて規定されていたが、会社法の施行により、両者は募集株式等の発行として1つの条文にまとめて規定されることになった。裁判例の多くは平成17年改正前商法に基づくものであるが、現行会社法でも同様に解されるかどうかについて、検討が必要になるものもあり得るという点にご留意されたい。 (了)