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〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例91】株式会社スノーピーク「MBOの実施及び応募の推奨に関するお知らせ」(2024.2.20)

〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例91】 株式会社スノーピーク 「MBOの実施及び応募の推奨に関するお知らせ」 (2024.2.20)   公認会計士/事業創造大学院大学教授 鈴木 広樹   1 今回の適時開示 今回取り上げる開示は、株式会社スノーピーク(以下「スノーピーク」という)が2024年2月20日に開示した「MBOの実施及び応募の推奨に関するお知らせ」である。同社の開示を取り上げるのは、本連載【事例76】に続いて2回目になる。 今回の開示は、題名からわかるとおり、MBO(経営陣による企業買収)の一環として同社株式に対するTOB(株式公開買付け)が行われ、それへの応募を推奨するという内容である。TOBを行うのは投資会社のベインキャピタルである(正確にはベインキャピタルが投資助言を行う投資ファンド及びそのグループにより株式の全てを間接的に所有されている会社の子会社)。 なお、今回の開示の情報は開示前に漏れており、スノーピークが株式の非公開化を検討しているという報道がなされたため、同社は、今回の開示の4日前の2024年2月16日に「本日の一部報道について」を開示している。情報が漏れたことは、同社の情報管理体制上の問題を映し出しているが、報道から4日経っての開示も、同社の開示体制上の問題を映し出している。開示がなされるまでの間、投資家の間に様々な憶測を生じさせたはずである。   2 なぜ非公開化? 今回の開示の「3.本公開買付けに関する意見の内容、根拠及び理由 (2)意見の根拠及び理由 ②公開買付者が本公開買付けの実施を決定するに至った背景、目的及び意思決定の過程、並びに本公開買付け後の経営方針 (ⅰ)本公開買付けを実施するに至った背景、目的及び意思決定の過程」には、スノーピークが株式の非公開化を決定するに至った理由について次のような記載がある(一部省略。下線は筆者による)。「山井氏」とは、同社の代表の山井太氏のことである。 下線を引いた箇所の山井氏の考え方は理解し難い。投資家は短期的な利益を追求する者ばかりではない。短期的には痛みを伴うが、長期的な視点に立って必要な施策があれば、それを投資家に対して説明し、納得してもらうのが上場会社の経営者の役割だろう。そして、それに納得してくれる投資家に株主になってもらえばいいのである。 こうした考え方の山井氏は、そもそも上場会社の経営者に向いていない。株式の非公開化を決定するに至った理由を率直に言ってしまえば、「株主の意見や質問に耳を傾け、それに対して丁寧に答えるということが面倒くさかったから」ではないだろうか。 なお、山井氏は2023年3月に株式を非公開化するべきであるという考えに至ったとのことだが、2024年2月20日付の日本経済新聞(信越版)によると、その後の2023年の秋、株式上場を目指す若手経営者向けイベントにおいて、「上場のメリットは大きく、デメリットは小さい。上場しないとアクセスできない情報やチャンスがたくさんある」と力説していたという。イベントの主催者は人選を間違えたようである。株式上場の意義を本当に理解し、上場の大変さもきちんと説明できる経営者を招くべきだった。   3 コロナ特需の終わり コロナ禍は多くの企業にマイナスの影響を与えたが、スノーピークにとっては違った。同社にとってコロナは禍ではなく福であり、「コロナ特需」をもたらした。2019年12月期は14,260百万円だった連結の売上高が2020年12月期は16,764百万円に、2021年12月期は25,713百万円に上昇した(2020年2月13日開示「2019年12月期決算短信〔日本基準〕(連結)」、2021年2月12日開示「2020年12月期決算短信〔日本基準〕(連結)」、2022年2月14日開示「2021年12月期決算短信〔日本基準〕(連結)」)。それに伴い事業規模を拡大していき、2019年12月期は452人だった正規従業員の数が2022年12月期には697人にまで増えた(第59期有価証券報告書)。 コロナ禍の終わりは多くの企業にとって当然福だったが、スノーピークにとっては逆にそれこそ禍だったようである。コロナ禍の終わりとともに同社の業績は悪化することになる。2023年12月期の連結の売上高は前期と比べて16.4%の減少、親会社株主に帰属する当期純利益は前期と比べて99.9%の減少で、1百万円までに落ちこんだ(2024年2月13日開示「2023年12月期決算短信〔日本基準〕(連結)」)。 しかし、実はコロナ禍の終わりよりも前に業績悪化の兆しは見えていた。2022年12月期の連結の売上高は前期と比べて増加していたものの、利益(営業利益から)は前期と比べて減少していた。それでもまだ黒字だったが、営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスだった(2023年2月13日開示「2022年12月期決算短信〔日本基準〕(連結)」)。仮にコロナ禍がまだ続いていたとしても、同社の経営は行き詰まり、株式の非公開化を決定していたかもしれない。 コロナ禍のなか、上場会社の中にはそれに柔軟に対応しようとする会社とそうではない会社が見られた。スノーピークは後者に近いのかもしれない。「コロナ特需」の恩恵を受けた同社は、その終了にまったく柔軟に対応できていない。株式の非公開化は柔軟な対応に当てはまらない。それを決定する前に行うべきことがあったはずである。   4 思いどおりの経営ができるか? 山井氏は、株式の非公開化により、うるさい株主がいなくなり、思いどおりの経営ができるようになると思っているのかもしれない。しかし、果たしてそうなるだろうか。 MBO実施後、スノーピークの持株比率は山井氏側(山井氏とその親族など)が45%、ベインキャピタルが55%になり(正確には複数の会社を挟んで間接的にスノーピークの株式を所有)、山井氏側は株主総会の特別決議における拒否権は持てるものの、スノーピークの経営権は基本的にベインキャピタルに移ることになる。 さらに、MBO実施にあたり山井氏側とベインキャピタルの間で次のような契約を締結したという(今回の開示の「4.公開買付者と自社の株主との間における公開買付けへの応募に係る重要な合意に関する事項 (3)本株主間契約」の中の記載。下線は筆者による)。なお、「相手方株主」は山井氏側のことであり、スノーピーク株式を「公開買付者」が100%、その「公開買付者」株式を「公開買付者親会社」が100%、その「公開買付者親会社」株式を「BCPE Myoko」(ベインキャピタル傘下)が55%、山井氏側が45%所有する形になる。 このようにスノーピークの経営権は、基本的にどころか完全にベインキャピタルに移ることになる。投資を回収しなければならないベインキャピタルは、徹頭徹尾経済合理性に基づく経営判断を行うはずである。これまでは、上場会社でありながら、例えば代表取締役に相応しくない親族を代表取締役に据えるといった、経済合理性を欠く決定が可能だったが、今後は不可能になる。「思いどおりの経営」は上場していたときよりも遠のくのである。山井家のファミリー企業としての意識はいよいよ完全に捨てなければならない。 (了)

#No. 562(掲載号)
#鈴木 広樹
2024/03/28

《速報解説》 ASBJ、「中間財務諸表に関する会計基準」等の改正を公表~四半期開示義務の廃止に対応。同日、JICPAからは資本連結実務指針の改正案も~

《速報解説》 ASBJ、「中間財務諸表に関する会計基準」等の改正を公表 ~四半期開示義務の廃止に対応。同日、JICPAからは資本連結実務指針の改正案も~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2024年3月22日、企業会計基準委員会は、次のものを公表した。 これにより、2023年12月15日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。公開草案に対する主なコメントの概要とその対応も公表されている。例えば、中間会計基準の適用初年度における比較情報の取扱いを明確化すべきとのコメントを受けて(論点の項目5)、後述するように、中間会計基準等を遡及適用すると規定したものがある。 2023年11月29日に公布された「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第79号)により、四半期開示の見直しとして、上場企業について金融商品取引法上の四半期開示義務(第1・第3四半期)が廃止され、開示義務が残る第2四半期報告書を半期報告書として提出することになった。 これにより、改正後の金融商品取引法上、半期報告書において中間連結財務諸表又は中間個別財務諸表(以下合わせて「中間財務諸表」という)が開示されることになる。 今回の中間会計基準等は、当該改正に対応するものである。 なお、同日、中間会計基準等の公表を受けて、日本公認会計士協会は次のものを公表し、意見募集を行っている(意見募集期間は2024年4月22日まで)。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 適用会社 中間会計基準等は、次の会社が半期報告書制度に基づき作成する中間財務諸表に適用する。 金融商品取引法上、四半期報告書制度は廃止されるが、上場会社においては引き続き取引所規則に基づき第1・第3四半期決算短信の報告が行われるため、今後、期中財務諸表に関する会計基準等の開発が行われるまでの間、四半期会計基準等は適用を終了しないことを予定しているとのことである。   Ⅲ 開発にあたっての基本的な方針と主な内容 中間会計基準等は、期首から6ヶ月間を1つの会計期間(中間会計期間)とする中間財務諸表に係る会計処理について規定する。 中間財務諸表の記載内容は、従前の第2四半期報告書と同程度の記載内容となるように、基本的に、「四半期財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第12号)及び「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第14号)(両者を合わせて、以下「四半期会計基準等」という)の会計処理及び開示を引き継いでいる。 このため、中間会計基準と企業会計基準第12号との比較を見ると、「四半期財務諸表」が「中間財務諸表」に、また、「四半期会計期間」が「中間会計期間」に置き換わっていることがわかる。 期首から6ヶ月間を1つの会計期間(中間会計期間)とした場合と、四半期会計基準等に従い第1四半期決算を前提に第2四半期の会計処理を行った場合とで差異が生じる可能性がある項目については、従来の四半期での実務が継続して適用可能となる取扱いを規定する。 次の項目である(③から⑥は経過措置による)。   Ⅳ 適用時期等 中間会計基準等は、「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第79号)の附則3条に基づき、同法により改正された金融商品取引法24条の5第1項の規定による半期報告書の提出が求められる最初の中間会計期間から適用する(中間会計基準37項)。 適用初年度においては、開示対象期間の中間財務諸表等(中間会計基準8項、9項)について本会計基準を遡及適用する(中間会計基準38項、BC22項~BC24項)。 中間会計基準等が適用される中間財務諸表においては、これまでに公表された会計基準等で使用されている「四半期会計期間」、「四半期決算」、「四半期財務諸表」、「四半期連結財務諸表」又は「四半期個別財務諸表」という用語(会計基準等の名称を除く)は、「中間会計期間」、「中間決算」、「中間財務諸表」、「中間連結財務諸表」又は「中間個別財務諸表」と読み替えるものとする(中間会計基準39項、BC25項)。 これまでに公表された会計基準等には、日本公認会計士協会が公表した企業会計に関する実務指針(Q&Aを含む)のうち会計処理の原則及び手続を定めたものが含まれる(中間会計基準BC25項)。   Ⅴ 資本連結実務指針の改正案 前述のⅢの「② 子会社を取得又は売却した場合等のみなし取得日又はみなし売却日(中間会計基準20項)」を受けて、資本連結実務指針7項において、「この場合の決算日には四半期決算日、中間決算日又はその他の適切に決算が行われた日が含まれる。」とする改正を提案している。 「その他の適切に決算が行われた」とは、子会社において中間会計基準に準じた決算が行われたことを想定している(中間会計基準BC18項、資本連結実務指針(案)54-3項)。 (了)

#阿部 光成
2024/03/27

《速報解説》 パーシャルスピンオフ税制に対応した自己株式等会計適用指針等の改正が確定~配当財産の時価でなく、適正な帳簿価額で会計処理~

《速報解説》 パーシャルスピンオフ税制に対応した 自己株式等会計適用指針等の改正が確定 ~配当財産の時価でなく、適正な帳簿価額で会計処理~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2024年3月22日、企業会計基準委員会は、次のものを公表した。 これにより、2023年10月6日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。公開草案に対する主なコメントの概要とその対応も公表されている。コメントを受けて公開草案から変更している部分もあり、その記載は実務に適用する場合に参考になると思われる。 これは、いわゆるパーシャルスピンオフの会計処理を取り扱うものである。 また、同日、日本公認会計士協会は、次のものを公表した。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 基準開発の範囲 令和5年度税制改正において、完全子会社株式について一部の持分を残す株式分配のうち、当該一部の持分が当該完全子会社の株式の発行済株式総数の20%未満となる株式分配について、他の一定の要件を満たす場合には、完全子会社株式のすべてを分配する場合と同様に、課税の対象外とされる特例措置が設けられている(いわゆるパーシャルスピンオフ税制)。 基準開発の範囲は、保有する完全子会社株式(配当を実施する会社が当該子会社の株式すべてを直接的に保有している場合のみを想定している)の一部を株式数に応じて比例的に配当(按分型の配当)し子会社株式に該当しなくなった場合に限定している(28-4項)。 これは、いわゆるパーシャルスピンオフ税制が時限的なものであり早期に基準開発を完了すべきことから、まずは発生する可能性が高いと考えられるケースとしたためである。 基準開発の範囲外としたケースについては、今後の子会社株式の配当に関する取引の進展や会計実務の状況により、他のテーマとの優先順位等を考慮して、今後の基準開発の範囲とするかどうか企業会計基準委員会において判断する(28-4項)。   Ⅲ 個別財務諸表の会計処理 現物配当を行う会社の個別財務諸表上、保有する完全子会社株式の一部を株式数に応じて比例的に配当(按分型の配当)し子会社株式に該当しなくなった場合、配当の効力発生日における配当財産の適正な帳簿価額をもってその他資本剰余金又はその他利益剰余金(繰越利益剰余金)を減額する(自己株式等会計適用指針10項(2-2)、38-2項)。 つまり、基準開発の範囲のケースについては、配当財産の時価ではなく、配当財産の適正な帳簿価額をもって会計処理することになる。   Ⅳ 現物配当を行う会社の税効果会計 保有する完全子会社株式の一部を株式数に応じて比例的に配当(按分型の配当)し子会社に該当しなくなった場合において、連結決算手続の結果として生じる一時差異については、連結財務諸表固有の将来減算一時差異又は連結財務諸表固有の将来加算一時差異に準ずるものとして定義に追加する(税効果適用指針4項)。 「保有する完全子会社株式を株式数に応じて比例的に配当(按分型の配当)し子会社に該当しなくなった場合の取扱い」について、税効果適用指針124-2項から124-5項において詳細に記載されている。   Ⅴ 適用時期等 改正後の自己株式等会計適用指針は、公表日(2024年3月22日)以後適用する。 また、改正後の自己株式等会計適用指針の適用前に行われた本適用指針10項(2-2)で定められた取引について、改正後の自己株式等会計適用指針の適用日における会計処理の見直し及び遡及的な処理は行わない。   Ⅵ 連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針 保有する完全子会社株式のすべて又は一部を株式数に応じて比例的に配当(按分型の配当)し子会社に該当しなくなった場合、次のとおり、連結財務諸表上の会計処理を行う(資本連結実務指針46-3項、46-4項、66-8項、66-9項、66-10項)。 (了)

#阿部 光成
2024/03/25

《速報解説》 ASBJからGM課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱いが公表される~財務諸表作成時点で一部情報が入手困難な場合の見積りに関する考え方示す~

《速報解説》 ASBJからGM課税制度に係る法人税等の 会計処理及び開示に関する取扱いが公表される ~財務諸表作成時点で一部情報が入手困難な場合の見積りに関する考え方示す~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2024年3月22日、企業会計基準委員会は、「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」(実務対応報告第46号)等を公表した。 これにより、2023年11月17日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。「〈補足文書〉グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等に関する見積りについて」も公表されている。 また、公開草案に対する主なコメントの概要とその対応も公表されている。 実務対応報告第46号は、後述するグローバル・ミニマム課税について、法人税及び地方法人税(以下「法人税等」という)の会計処理及び開示の取扱いを示すものである。 なお、グローバル・ミニマム課税については、「グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の適用に関する取扱い」(2024年3月22日、改正実務対応報告第44号)が公表されているところである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ グローバル・ミニマム課税の概要 2021年10月に経済協力開発機構(OECD)/主要20ヶ国・地域(G20)の「BEPS 包摂的枠組み(Inclusive Framework on Base Erosion and Profit Shifting)」において、当該枠組みの各参加国によりグローバル・ミニマム課税についての合意が行われている。 これを受けて、我が国においても国際的に合意されたグローバル・ミニマム課税のルールのうち所得合算ルール(IIR)に係る取扱いが2023年3月28日に成立した「所得税法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第3号)において定められ、2024年4月1日以後開始する対象会計年度から適用することとされている。 これは、一定の要件を満たす多国籍企業グループ等の国別の利益に対して最低15%の法人税を負担させることを目的とし、当該課税の源泉となる純所得(利益)が生じる企業と納税義務が生じる企業が相違する新たな税制である。 実務対応報告第46号では、グローバル・ミニマム課税制度の特徴が記載されている(BC2項~BC4項)。   Ⅲ 会計処理 1 連結財務諸表及び個別財務諸表 グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等については、対象会計年度となる連結会計年度及び事業年度において、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき当該法人税等の合理的な金額を見積り、損益に計上する(6項)。 「対象会計年度」とは、法人税法15条の2に規定する多国籍企業グループ等の最終親会社等の連結等財務諸表(法人税法82条1号)の作成に係る期間をいう(5項)。 2 見積りに関する取扱い グローバル・ミニマム課税制度の特徴を踏まえて、対象範囲の判定や個別計算所得等の金額等の算定にあたって必要な情報を適時かつ適切に入手することが困難である場合があり、対象会計年度となる連結会計年度及び事業年度の決算時において、これらの情報を適時に入手し、当該金額を算定することは困難である場合があるとの意見があった(BC9項)。 実務対応報告第46号では、当該意見を踏まえて、財務諸表の作成時点において一部の情報の入手が困難な場合の見積りに関する考え方が示されている(BC9項~BC11項)。 3 四半期財務諸表及び中間財務諸表 四半期連結財務諸表及び四半期個別財務諸表並びに中間連結財務諸表及び中間個別財務諸表においては、6項の定めにかかわらず、当面の間、当四半期連結会計期間及び当四半期会計期間並びに当中間連結会計期間及び当中間会計期間を含む対象会計年度に関するグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等を計上しないことができる(7項)。   Ⅳ 開示 1 貸借対照表における表示 グローバル・ミニマム課税制度に係る未払法人税等のうち、貸借対照表日の翌日から起算して1年を超えて支払の期限が到来するものは、「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(企業会計基準第27号)11 項の定めにかかわらず、連結貸借対照表及び個別貸借対照表の固定負債の区分に長期未払法人税等などその内容を示す科目をもって表示する(8項)。 グローバル・ミニマム課税制度に係る未払法人税等については、貸借対照表日の翌日から起算して1年を超えて支払の期限が到来するか否かに基づき、流動負債に表示するか、固定負債に表示するか区分することとし、固定負債に表示する場合には、上述のとおり、長期未払法人税等などその内容を示す科目をもって表示する(BC15項、BC16項)。 2 連結損益計算書における表示及び注記 連結損益計算書において、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等は、法人税、地方法人税、住民税及び事業税(所得割)を示す科目(「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」2項なお書き、9項)に表示する(9項、BC17項~BC23項)。 連結損益計算書において、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等が重要な場合は、当該金額を注記する(10項、BC23項)。 3 個別損益計算書における表示及び注記 個別損益計算書において、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等は、法人税、地方法人税、住民税及び事業税(所得割)を表示した科目の次にその内容を示す科目をもって区分して表示するか、法人税、地方法人税、住民税及び事業税(所得割)に含めて表示し当該金額を注記する(11項、BC25項)。 個別損益計算書において、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の金額の重要性が乏しい場合、11項の定めにかかわらず、法人税、地方法人税、住民税及び事業税(所得割)に含めて表示することができる。この場合は当該金額の注記を要しない(12項)。 4 四半期財務諸表及び中間財務諸表における注記 当四半期会計期間等及び当中間会計期間等において、7項を適用するときは、その旨を注記する(13項)。   Ⅴ 適用時期等 実務対応報告第46号は、2024年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する(14項)。 実務対応報告第46号13項の四半期財務諸表及び中間財務諸表における注記の定めについては、14項の定めにかかわらず、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する(15項)。   Ⅵ 補足文書 補足文書は、企業会計基準、企業会計基準適用指針及び実務対応報告(以下「企業会計基準等」という)を追加又は変更するものではなく、企業会計基準等の適用にあたって参考となる文書である。 補足文書では、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の見積りについて、情報の入手が困難な場合に考えられる見積りの一例を示している。 これは、特にグローバル・ミニマム課税制度の適用初年度については、当該制度に係る法人税等の見積りに関する困難さがあるため、見積りに関する具体的な指針を求める意見が聞かれたことによる。 (了)

#阿部 光成
2024/03/25

《速報解説》 ASBJがGM課税制度に係る税効果会計の適用に関する取扱いを公表~税効果適用指針にかかわらず、GM課税制度の影響を反映しないとする取扱いを継続~

《速報解説》 ASBJがGM課税制度に係る税効果会計の適用に関する取扱いを公表 ~税効果適用指針にかかわらず、GM課税制度の影響を反映しないとする取扱いを継続~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2024年3月22日、企業会計基準委員会は、「グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の適用に関する取扱い」(改正実務対応報告第44号)を公表した。 これにより、2024年1月24日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。公開草案に対する主なコメントの概要とその対応も公表されている。 グローバル・ミニマム課税のルールには、所得合算ルール(Income Inclusion Rule(IIR))のほかに、軽課税所得ルール(Undertaxed Profits Rule(UTPR))及び国内ミニマム課税(Qualified Domestic Minimum Top-up Tax(QDMTT))があり、改正実務対応報告第44号は、今後法制化された場合のこれらの取扱いも含めたグローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の取扱いを定めるものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 改正実務対応報告第44号は、所得合算ルール(IIR)に係る取扱いだけでなく、今後の税制改正により法制化される予定の軽課税所得ルール(UTPR)及び国内ミニマム課税(QDMTT)等の取扱いも含めて、国際的な動向等に変化が生じない限り、税効果会計の適用にあたっては、税効果適用指針の定めにかかわらず、グローバル・ミニマム課税制度の影響を反映しないこととする取扱いを継続するとしている(15-5項)。 会計処理について、改正前の「改正法人税法の成立日以後に終了する」と「(四半期連結決算及び四半期決算を含む。)」の文言を削除し、次のように規定する(3項、3-2項)。   Ⅲ 適用時期等 改正実務対応報告第44号は、公表日(2024年3月22日)以後適用する。 (了)

#阿部 光成
2024/03/25

《速報解説》 JICPA、「監査ツール(実務ガイダンス)」の改正案を公表~「グループ監査における特別な考慮事項」の改正を受け、一部様式も大きく変更~

《速報解説》 JICPA、「監査ツール(実務ガイダンス)」の改正案を公表 ~「グループ監査における特別な考慮事項」の改正を受け、一部様式も大きく変更~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2024年3月21日、日本公認会計士協会は、「監査基準報告書300実務ガイダンス第1号「監査ツール(実務ガイダンス)」の改正」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、監査基準報告書600「グループ監査における特別な考慮事項」(2023年1月12日改正)を受けたものである。 意見募集期間は2024年4月22日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容 「《3.グループ監査における特別な考慮事項》」について、監査基準報告書600「グループ監査における特別な考慮事項」を受けた記載に改正されている。 次の様式についても大きく変更されている。 (了)

#阿部 光成
2024/03/25

《速報解説》 会計士協会が「財務報告に係る内部統制の監査」の改正案を公表~監査報酬、非監査報酬及び報酬依存度に係る報酬関連情報の開示の記載例を追加~

《速報解説》 会計士協会が「財務報告に係る内部統制の監査」の改正案を公表 ~監査報酬、非監査報酬及び報酬依存度に係る報酬関連情報の開示の記載例を追加~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2024年3月19日、日本公認会計士協会は、「財務報告内部統制監査基準報告書第1号「財務報告に係る内部統制の監査」の改正」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、報酬関連情報(監査報酬、非監査報酬及び報酬依存度)の開示の記載例を追加するものである。 意見募集期間は2024年4月3日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容 公開草案の「付録3 一体型内部統制監査報告書の文例」において、「報酬関連情報」の記載例が追加されている。 具体的な文例は公開草案をお読みいただきたい。   Ⅲ 適用時期等 2023年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度に係る内部統制監査から適用する。 ただし、倫理規則(2022年7月25日変更)と併せて2023年4月1日以後終了する連結会計年度及び事業年度に係る内部統制監査から早期適用することを妨げない。 (了)

#阿部 光成
2024/03/22

プロフェッションジャーナル No.561が公開されました!~今週のお薦め記事~

2024年3月21日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.561を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2024/03/21

日本の企業税制 【第125回】「新税制及びストックオプション・プール実現に係る“産業競争力強化法の改正”」

日本の企業税制 【第125回】 「新税制及びストックオプション・プール実現に係る “産業競争力強化法の改正"」   一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴   3月2日、令和6年度税制改正に係る「所得税法等の一部を改正する法律案」が衆議院を通過した。衆議院財務金融委員会では、6項目にわたる附帯決議がなされた。 例えば、所得税の定額減税に関しては、その実施にあたり、「対象者が確実に減税措置を受けられるよう、適切な執行体制を確保するとともに、十分な周知・広報を行うほか、各事業者や自治体の事務負担にも配慮し、減税事務の円滑な実施に努めること」とされた。 また、戦略分野国内生産促進税制やイノベーション拠点税制(イノベーションボックス税制)等の新たに創設される各種の企業関係税制に関しては、「今後、各措置の適用実態を検証し、企業等の行動変容を促すインセンティブ措置として機能しているか否か等の観点から、政策効果や必要性をよく見極めた上で、一部の企業等に対する過度の優遇にならないよう、不断の見直しを行うこと」とされた。   〇産業競争力強化法の改正 令和6年度税制改正で創設される戦略分野国内生産促進税制やイノベーション拠点税制等に関しては、産業競争力強化法の規定が参照されている。 これらの税制措置等に対応し、2月16日、「新たな事業の創出及び産業への投資を促進するための産業競争力強化法等の一部を改正する法律案」が閣議決定され、国会に提出された。 今回の改正では、令和6年度税制改正で創設される戦略的国内投資の拡大に向けた、戦略分野への投資・生産に対する大規模・長期の税制措置及び研究開発拠点としての立地競争力を強化する税制措置や、国内投資拡大に繋がるイノベーション及び新陳代謝の促進に向けた、我が国経済のけん引役である中堅企業・スタートアップへの集中支援等の措置を講じることとしている。 産業競争力強化法は、平成25年に制定以来、平成30年と令和3年に改正が行われており、今回は3回目の改正となる。   〇戦略分野国内生産促進税制に関連する改正 産業競争力強化法の改正においては、第一に、国際競争に対応して内外の市場を獲得すること等が特に求められる商品を「産業競争力基盤強化商品」として定義し(電気自動車等、グリーンスチール、グリーンケミカル、持続可能な航空燃料(SAF)、半導体)、これを「生産及び販売」する計画(事業適応計画)を主務大臣が認定した場合、戦略分野国内生産促進税制及びツーステップローン等の金融支援を行う。 戦略分野国内生産促進税制では、事業適応計画の認定から10年間にわたり、「産業競争力基盤強化商品」の生産及び販売量に比例した減税措置(法人税額の40%(半導体は20%)を上限とする税額控除)が講じられる。   〇イノベーション拠点税制に関連する改正 第二に、知的財産の活用状況等の調査規定を新設し、一定の知的財産を用いていることを確認できた場合に、令和7年度から開始するイノベーション拠点税制(令和6年4月1日以降に取得した特許やAI関連のプログラムの著作権の譲渡所得・ライセンス所得について30%の所得控除)を適用する。   〇中堅企業のカテゴリーの創設 第三に、常用従業員数2,000人以下の会社等(中小企業者除く)を「中堅企業者」、特に賃金水準が高く国内投資に積極的な中堅企業者を「特定中堅企業者」と定義し、特定中堅企業者等による成長を伴う事業再編の計画を主務大臣が認定した場合、令和6年度税制改正で拡充された中堅・中小グループ化税制(中小企業事業再編投資損失準備金制度)、大規模・長期の金融支援(ツーステップローン)、独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)による助成・助言等の措置を講じる。 中堅・中小グループ化税制では、成長意欲のある中堅・中小企業が、複数回のM&Aを実施する場合には、積立率を現行の70%から、2回目には90%、3回目以降は100%に拡充し、据置期間を現行の5年から10年に延長することとされている。   〇ストックオプション・プール(会社法の特例) 第四に、スタートアップがストックオプションを柔軟かつ機動的に発行できる仕組み(いわゆるストックオプション・プール)を特例的に可能とする。 具体的には、現行の会社法では、非公開会社については、ストックオプションの発行にあたっては株主総会の特別決議が必要であり、取締役会に決定を委任できる事項が限られ、しかも委任の有効期間は1年である。 今回の改正法案では、設立の日以後の期間が15年未満の株式会社について、「株主の利益の確保に配慮しつつ産業競争力を強化することに資する場合」として経済産業省令・法務省令で定める要件に該当することについて、「経済産業大臣及び法務大臣の確認を受けた場合」には、取締役会へ委任できる事項を拡充するとともに(権利行使価額、権利行使期間)、委任の有効期間の制限を撤廃し、設立後15年までとする。 (了)

#No. 561(掲載号)
#小畑 良晴
2024/03/21

〈令和5年度改正及び改正通達を踏まえた〉生前贈与加算・相続時精算課税制度のポイント 【第3回】「相続時精算課税制度の見直し②」~被災土地・建物の特例~

〈令和5年度改正及び改正通達を踏まえた〉 生前贈与加算・相続時精算課税制度のポイント 【第3回】 「相続時精算課税制度の見直し②」 ~被災土地・建物の特例~   太陽グラントソントン税理士法人 パートナー 税理士 佐藤 達夫   1 被災土地・建物の特例 (1) 改正の内容 相続時精算課税の適用を受けて取得した土地又は建物が、贈与日からその特定贈与者の死亡に係る相続税の期限内申告書の提出期限までの間に、令和6年1月1日以後の災害(※1)によって一定の被害を受けた場合(※2)には、税務署長の承認を受けることにより、相続税の課税価格へ加算又は算入される土地又は建物の価額を、その贈与時の価額から災害による被災価額を控除した残額とすることができる(措法70の3の3①、措通70の3の3-1)。 (※1) 災害は、震災、風水害、火災、冷害、雪害、干害、落雷、噴火その他の自然現象の異変による災害及び火災、鉱害、火薬類の爆発その他の人為による異常な災害並びに害虫、害獣その他の生物による異常な災害をいう(措令40の5の3①)。 (※2) 被害を受けた場合とは、土地又は建物が災害により物理的な損失(例えば、地割れ等土地そのものの形状が変わったことによる損失又は建物の損壊及び滅失等)を受けた場合をいい(措通70の3の3-2)、一定の被害とは、その土地の贈与時の価額又は建物の想定価額のうち、被災価額の占める割合が10%以上となる被害をいう。 〈特例の計算イメージ〉 (例) 建物が被災した場合 (注) 国税庁HP「令和5年相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」3頁の図を筆者一部加工 (2) 適用を受けるための要件 この規定の主な適用要件は、次のとおりである(措法70の3の3①)。 (3) 適用を受けるための手続き 受贈者は、原則として災害が発生した日から3年以内に、災害による被害を受けた部分の価額などを記載した申請書(※1)及び添付書類(※2)を贈与税の納税地の所轄税務署長に提出する必要がある(措法70の3の3①、措令40の5の3⑤⑥、措規23の6の2④)。また、申請をした後に被災価額に変動が生じた場合には、遅滞なく、贈与税の納税地の所轄税務署長に届け出る必要がある(措令40の5の3⑨、措規23の6の2⑦⑧)。 (※1) 申請書には、受贈者及び特定贈与者の氏名及び住所又は居所、災害により被害を受けた財産、災害が発生した日、災害による被害額及び保険金、損害賠償金などにより補填される金額などを記載する。 (※2) 添付書類は、贈与日から災害発生日まで継続所有していたことがわかる書類、り災証明書、原状回復に要する費用の見積書、保険金や損害賠償金などにより補填される金額がわかる書類などである。 (4) 適用時期 この改正は、相続時精算課税による贈与を受けた土地又は建物が、令和6年1月1日以後に、災害により被害を受けた場合に適用される(改正法附則51⑤、措通70の3の3-1)。   2 実務上のポイント   (了)

#No. 561(掲載号)
#佐藤 達夫
2024/03/21
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