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〈一から学ぶ〉リース取引の会計と税務 【第6回】「セール・アンド・リースバック取引と転リース取引」

〈一から学ぶ〉 リース取引の会計と税務 【第6回】 「セール・アンド・リースバック取引と転リース取引」   公認会計士・税理士 喜多 弘美   【第5回】では、所有権移転ファイナンス・リース取引と所有権移転外ファイナンス・リース取引の判定について整理しました。今回はリース取引の中でも、セール・アンド・リース取引と転リース取引について概要を見ていきます(会計処理は別の回で扱います)。   1 セール・アンド・リースバック取引 (1) セール・アンド・リースバック取引とは セール・アンド・リースバック取引とは、「所有する物件を貸手に売却し、貸手から当該物件のリースを受ける取引」をいいます(「リース取引に関する会計基準の適用指針」48)。 つまり、ユーザーが保有している物件をリース会社などに売却した後、すぐに同じ資産をリース会社などから借り受ける取引のことです。一度、「売却」(セール)し、同じ物件を「借り受ける」(リース)ので、セール・アンド・リースバック取引といいます。 では、セール・アンド・リースバック取引は、具体的にどのような時に利用されるのかというと、資金調達手段の1つとして利用されます。 ユーザーが保有している物件をリース会社へ売却することによって、ユーザーは資金を手に入れることができます。売却した後、すぐに同じ物件を借り受けるので、同じ物件をそのまま使用することができます。つまり、物件の使用はそのままで、資金調達が可能になるのです。 (2) メリット セール・アンド・リースバック取引のメリットは、主に3つあります。 上記の他にも、買主から再購入できるケースが多かったり、周りから売却したことがわからなかったりすることもメリットとして挙げられます。 (3) デメリット デメリットとしては、主に以下2点が挙げられます。   2 転リース取引 (1) 転リース取引とは 転リース取引は、「リース物件の所有者から当該物件のリースを受け、さらに同一物件を概ね同一の条件で第三者にリースする取引」をいいます(「リース取引に関する会計基準の適用指針」47)。いわゆる「また貸し」になります。 具体的には、グループ会社の親会社がリース会社との契約窓口となり、親会社から子会社へ転貸する場合、中途解約せざるを得ないユーザーが新しいユーザーへ同一条件で転貸する場合などが挙げられます。 (2) メリット リース契約を中途解約する場合、ユーザーはリース会社へ未経過リース料を支払ったり、違約金も発生したりすることがあります。そんな時に、転リース取引を契約できると違約金の発生を回避し、また、新しいユーザーからリース料を受け取ることができるメリットがあります。 (3) 注意点 一般的にリース契約では、また貸しが禁止されていることが多いため、転リース取引をする場合にはリース会社の承諾を得る必要があります。リース契約違反にならないように注意が必要です。   (了)

#No. 526(掲載号)
#喜多 弘美
2023/07/06

〔中小企業のM&Aの成否を決める〕対象企業の見方・見られ方 【第39回】「売り手が気にしたい財務状況のポイント(後編)」~経営指標の活用と、分析や見方のポイント②~

〔中小企業のM&Aの成否を決める〕 対象企業の見方・見られ方 【第39回】 「売り手が気にしたい財務状況のポイント(後編)」 ~経営指標の活用と、分析や見方のポイント②~   公認会計士・税理士 荻窪 輝明   《今回の対象者別ポイント》 買い手企業 ⇒売り手の財務状況や財務分析の見方を知り、良い売り手探しのヒントに役立てる。 売り手企業 ⇒売り手自身の財務状況の理解を深めて、改善とM&Aに向けたヒントを得る。 支援機関(第三者) ⇒売り手の財務状況のポイントをつかんで、M&Aの助言に役立てる。 その他の対象者 ⇒売り手の財務状況の見方とポイントを知って、実務に役立てる。   1 中小企業M&AはB/S面の経営指標も大事 前回は、中小企業M&Aに関連して、売り手の財務面の観点から活用できる経営指標のうち、資本利益率や回転率・回転期間分析を中心に説明しました。今回もその続きですが、B/S面の指標を中心に説明します。 日頃の経営では、経営指標を活用する機会は多くないと思います。活用するにしても、P/L面の現象への関心が強いのではないでしょうか。しかし、M&Aでは、B/Sの情報が重要で、買い手からの関心も高いため、近い将来、M&Aを予定される売り手においては、B/Sに関係する経営指標も知っておくと、いざという時に便利です。   2 B/S関連の主な経営指標 (1) 資産の部に関係する主な経営指標 まずは、資産の部に関係する主な経営指標です。 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 ① 流動比率・当座比率・固定長期適合率 流動比率は、短期の支払能力を見る指標の1つです。あまり、数字が独り歩きしてはいけませんが、150%以上あれば十分、200%以上あるのが望ましいとされます。流動比率が200%の状況は、流動資産が流動負債の倍の金額であるという意味になります。ここで、流動負債には、通常、1年以内の短期に返済期限を迎える事象などが記録されていますので、短期のキャッシュアウトに対して、流動資産でどれだけ賄えるかという安全性の程度を表します。流動資産は流動負債と同様に、1年以内に回収が予定される資産などが記録されていますので、返済予定の原資をどれだけ手元資金などで賄えるか、という短期の倒産可能性の低さの程度をつかむのに適している情報源です。 ただし、流動資産の中には販売用不動産を含めた在庫も含まれます。販売用不動産の残高が多い業種に属する場合は、在庫の影響を除いた当座資産を使った当座比率で見る方が、より正確な分析結果を得やすいとされています。 「法人企業統計年報特集(令和3年度)」にある業種別財務営業比率表によると、全産業の令和3年度の流動比率及び当座比率のデータは以下のとおりでした。 これらに対して固定長期適合率は、資金の主な調達源泉に対して、固定資産をどの程度の割合で所有しているかが分かる点で、流動比率などと同様に資産の安全性を示す指標になっています。 ここで着目したいのは、流動比率と固定長期適合率との関係です。B/Sを図示すると、両者の関係がよくわかります。流動比率が高ければ固定長期適合率は低くなり、流動比率が低ければ固定長期適合率は高くなるという関係を押さえておくと便利です。 固定長期適合率が100%を上回ってしまうと、自己資本と固定負債を超える固定資産への投資が行われていることを意味し、換金可能性、流動性が低い固定資産への過大投資によって資金繰りの悪化につながる恐れがあると判断します。このため、資金繰りの観点から、少なくとも流動比率は100%を上回っていて、固定長期適合率は100%を下回った状態をキープできているのが重要です。 ② 固定比率 固定比率と固定長期適合率は、いずれも固定資産に着目した経営指標ですが、両者は使われ方が異なります。固定比率が100%を下回るときは、自己資本の範囲内で固定資産を賄えていますので、一般的に安全性が高いとされています。 しかし、この場合には注意も必要で、有利子負債への依存なしに固定資産を賄える状態ですから、たとえば、借入金など外部からの資金調達を加えて積極的な投資をせずに、自己資本の範囲内でしか投資をしていないとも考えられ、消極的な投資姿勢と見られる場合もあります。 資本集約型の企業か労働集約型の企業かで判断は異なりますが、固定比率が低いからといって直ちに優良で安全性が高いと捉えきれない点には留意します。 「法人企業統計年報特集(令和3年度)」にある業種別財務営業比率表によると、全産業の令和3年度の固定比率のデータは以下のとおりでした。 このデータによれば、固定比率が100%を上回っていますので、自己資本の額を超えて固定資産を所有する、つまり、一定程度の資金は負債に依存しながら、固定資産への投資を行っているだろうと推測されます。 (2) 負債の部・純資産の部に関係する主な経営指標 続いて、負債の部・純資産の部に関係する主な経営指標を見ていきます。 ① 自己資本比率・財務レバレッジ 自己資本比率はすでに売り手においても日頃から把握済みの指標の1つだと思います。50%を超えているとエクイティファイナンスをより重視する姿勢といえます。一方、自己資本比率の程度が低いと、負債偏重型ですので、返済負担を考慮すれば、自己資本比率が低すぎる状態はあまり好ましくありません。 「法人企業統計年報特集(令和3年度)」にある業種別財務営業比率表によると、全産業の令和3年度の自己資本比率のデータは以下のとおりでした。 このデータによると、自己資本比率が約4割ですから、若干、負債寄りの調達によって資金が賄われていると考えられます。 また、自己資本比率と関係性のある財務レバレッジは「負債への依存度」「総資本に占める負債の割合」「自己資本でどの程度の資産を活用しているか」「梃子(てこ)の作用がどの程度あるか」といった割合を把握できる点で重要な指標の1つです。 ② 負債比率・DEレシオ 上図では、負債比率と関係性のあるDEレシオを並列で示しました。DEレシオについては、本稿では倍率で表示しましたが、%で表示する場合もあります。DEレシオは、負債から有利子負債分のみを抽出した、いわば狭義の負債比率であり、債権者負担と株主負担の割合を見るのに適しています。また、DEレシオを修正し「(有利子負債-現金(キャッシュ))/自己資本」と展開すれば、ネットDEレシオという指標になります。 負債比率、DEレシオのいずれも、調達源泉をD(debt:デット)とE(equity:エクイティ)のいずれに頼っているかを知るのに役立ちます。買い手からしても、返済義務を負うデットが多いか、原則として返済不要なエクイティが多いかは、M&A後の資金戦略に関わってきますので、重要視するはずです。 *  *  * 今回まで確認した各経営指標は、中小企業M&Aで重視するのはもちろん、普段の経営においても活かしたいものばかりです。これらは、売り手が将来のM&Aを見据えて、各経営指標の改善を図ろうとするのに活用できるだけでなく、買い手が、売り手の決算書(財務諸表)を読む際に、どのような経営指標に着目しておけばよいかを知る手がかりにも活用できます。 (了)

#No. 526(掲載号)
#荻窪 輝明
2023/07/06

電子書類の法律実務Q&A 【第9回】「勤務中、私的メールをしていた時間は労働時間に当たるのか」

電子書類の法律実務Q&A 【第9回】 「勤務中、私的メールをしていた時間は労働時間に当たるのか」   弁護士法人 咲くやこの花法律事務所 弁護士 池内 康裕   〔Q〕 当社に未払残業代を請求してきた従業員が、勤務中に業務と無関係な私的メールのやり取りをしていたことが判明しました。 このような私的メールをしている時間は、労働時間に当たらないと考えてよいのでしょうか。裁判所で、このような主張をする場合の留意点をご教示ください。 〔A〕 私的なメールといっても、メールの相手方と仕事をする場所によって結論が変わってきます。 また裁判や労働審判では、どの時間が労働時間に当たらないのかについて、会社の側で特定する必要がある点にも留意が必要です。裁判等になった場合、業務と関係のない私的メールを証拠としたうえで、1通当たりの平均的作成時間を特定して主張するのがよいでしょう。 ● ● ● ● 解 説 ● ● ● ● 1 労働基準法上の労働時間とは 仕事と関係のない私的メールをしている時間は、作業をしていない。作業をしていないのだから直感的に、労働時間ではないと考える方が多いと思われる。 ところが法的には、作業をしていなくても、労働基準法上の労働時間と判断される場合がある。 労働基準法上の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいう。 そして、労働者が作業をしていないというだけでは、使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず、労働者が労働から離れることを保障されていて初めて、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価されることになる(最判平成14年2月28日)。 厚生労働省の通達でも、「休憩時間とは単に作業に従事しない手待時間を含まず労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間の意であって、その他の拘束時間は労働時間として取り扱うこと」とされている(昭和22年9月13日発基第17号)。 例えば、飲食店等でお客さんが来ていない手待時間は、作業をしていないが、その場所から勝手に離脱することができないので、労働時間に当たるのが原則だ。煙草休憩の時間について、東京地判平成30年3月9日は「作業と作業との間に休息したり、喫煙したりできても、当座従事すべき作業がないために過ぎず、作業の必要が生じれば直ちに作業を再開すべき手待時間に当たるときは、原告は依然として被告の指揮命令下に置かれており、労働から離れることが保障されているとはいえない」ことを理由に労働時間に当たると判断している。   2 所定労働時間内の事務所内での上司や同僚との私的メール 所定労働時間中、上司や同僚と私的メールをしていた時間は、労働時間に当たるか。過去の裁判例では、1日当たり300回以上、時間にして2時間程度、上司や同僚と私的な内容が含まれるチャットをしていた事案で、所定労働時間内に事務所の自席のパソコンで行われたものについて、労働から離れることが保障されていないことを理由に、労働時間に当たると判断されている(東京地判平成28年12月28日)。 上記裁判例は、業務とは無関係なチャットの回数が多く、チャットの内容も部下のことを「バカなの」「極度に無能です」などと誹謗中傷する等問題のあるものだったが、上司はこれを黙認していた。上司として、監督責任を果たさなかったので、作業中の雑談と同視することができると判断されてしまったのである。 このように事務所内で所定労働時間中、同僚や上司と私的メールのやり取りをしていた場合、私的メールの時間も含めて労働時間に当たると判断される可能性が高い。   3 所定労時間内の事務所内での家族や友人との私的メール 所定労働時間中、事務所内で家族や友人と私的メールをしていた場合は、どうだろうか。この場合、上記2のケースと異なり、作業中の雑談と同視できない。 しかし、事務所内での私的メールの場合、後述する在宅勤務の場合と異なり、裁判所で、指揮命令下から離脱したと判断される可能性は低い。筆者が知る限り、事務所内で私的メールをしていた時間について、労働時間に当たらないと判断した裁判例はない。 反対に、1ヶ月2通程度の私的メールであれば、残業代の金額に影響を及ぼさないと判断した裁判例はある(東京地判平成27年4月14日)。 以上を踏まえると、所定労時間内の事務所内での家族や友人との私的メールについては、相当程度長時間でなければ、裁判所では労働時間に当たると判断される可能性が高そうだ。   4 在宅勤務中の家族や友人との私的メール 在宅勤務中に、家族や友人と私的なメールのやり取りをしていた場合はどうだろうか。 在宅勤務の場合、自宅等での作業は使用者の支配管理下になく、しかも、任意の時間、方法及びペースで行うことが可能である。そのため、在宅勤務者就業規則等において私的メール等が禁止されている企業において、在宅勤務中、行うべき作業があるのに家族や友人と私的なメールやLINEのやり取りをした場合、その時間は、基本的には労働時間に当たらないと考えてよい。 在宅勤務者用の就業規則の記載例は、以下のとおりである。参考にしていただきたい。   5 裁判で、会社側はどの部分が労働時間に当たらないか特定しなければならない 上記4のとおり私的メールをした時間が労働時間に当たらない場合があるとしても、もう1つ大きな問題がある。 裁判所において、労働時間は原則として分単位で認定されるので、使用者側としては、どの時間が労働時間に当たらないのかを特定しなければならないのだ。 具体的には、業務と関係のない私的メールを証拠として、裁判所に提出し、1通当たりの平均的メール作成時間を特定して主張することになる。メール作成時間には、メールの文案を考えるために必要な時間を含めてよいだろう。 例えば、「2023年6月20日、業務と無関係な私的メールが10通送信されており、作成に要する時間として平均して10分かかると考えられるので、100分間については労働時間から控除されるべきである」などと主張することになるだろう。この1通当たり10分というのは一例で、実際には平均的なメールの内容や分量に応じて主張することになる。 このような会社側の主張が認められるかどうかだが、筆者としては認められる可能性が十分あると考えている。 例えば、福岡地判平成30年6月27日は、労災の事案だが、業務と無関係なウェブサイトのアクセスについて、1アクセスにつき平均閲覧時間を1分として、この閲覧時間を労働時間から控除することができると判断している。   (了)

#No. 526(掲載号)
#池内 康裕
2023/07/06

空き家をめぐる法律問題 【事例51】「区分所有建物の共用部分の瑕疵について損害賠償義務を負う主体」

空き家をめぐる法律問題 【事例51】 「区分所有建物の共用部分の瑕疵について損害賠償義務を負う主体」   弁護士 羽柴 研吾   - 事 例 - 私は、築30年を超えるマンション(全個室50部屋)の1室を区分所有しておりますが、上階のバルコニーからの雨漏りによって、自室の専有部分が損傷して修繕費用を支払いました。上階に居住者はおらず空き部屋になっております。このような場合、私は、誰に対して損害賠償請求をすればよいですか。   1 はじめに 区分所有者が区分所有建物の瑕疵によって損害を被った場合、損害賠償請求を行うことになる。もっとも、区分所有建物には専有部分と共用部分の区別があるほかに、管理組合も存在するなど複雑な権利関係にあるため、上記のような請求をする場合に誰に対してどのような請求をするか問題となることがある。 そこで、本事例では、区分所有建物の共用部分に瑕疵がある場合の損害賠償請求の方法について検討する。以下「建物の区分所有等に関する法律」を「区分所有法」と表記する。   2 共用部分と専用使用権 区分所有建物の共用部分は、区分所有者全員の共用に属するものであるから、区分所有者全員が使用する権利を有し(区分所有法第11条、第13条)、管理組合が共用部分の管理を行うことになる(同法第18条、マンション標準管理規約(以下「標準管理規約」という)第21条第1項本文)。 一方で、共用部分の中には、バルコニー、玄関扉、窓枠、窓ガラス等のように、合意や管理規約で、特定の区分所有者に排他的な使用を認めても支障のないものもある。このような合意や管理規約に基づいて共用部分を排他的に使用できる権利のことを専用使用権という(標準管理規約第14条)。 専用使用権を有する区分所有者(以下「専用使用権者」という)は、通常の用法に従って専用共用部分を使用する義務を負う(区分所有法第13条、標準管理規約第13条)。また、専用使用権者は、通常の用法に伴う保存行為について、同人の責任と負担において管理を行うことになる(標準管理規約第21条第1項ただし書)。このように、専用使用権者は、通常の用法に従って専用共用部分を使用し、保存行為の範囲内で管理する義務を負う。   3 管理組合の管理規約に基づく管理責任の有無 上記2のとおり、管理組合には、区分所有法等によって共用部分を管理する権能が認められている。問題は、管理組合が各区分所有者に対して管理義務を負うかである。この問題に関して、区分所有法等の管理に関する規定は管理組合の権能を定めたものにすぎないため、管理組合は、各区分所有者に対して、管理義務違反を理由とする債務不履行責任を負わない旨判示した裁判例がある(東京高判平成29年3月15日判タ1453-115等)。一方で、これらの関係規定は、管理組合が各区分所有者に対して管理義務を負うことまで認めたものであり、管理組合は、各区分所有者に対して、管理義務違反を理由とする債務不履行責任を負う旨判示した裁判例(福岡高判平成12年12月27日判タ1085-257)もあるので留意が必要である。 また、共用部分に専用使用権が設定されている場合、通常の使用に伴う保存行為は専用使用権者が行うべきものであるから、その限度で管理組合は各区分所有者に対して管理義務を負わないことになる。管理規約で定められる専用使用権の内容によっては、専用使用権者が各区分所有者に対して管理義務違反を理由とする損害賠償責任を負う可能性もあると考えられる。   4 共用部分の瑕疵と土地工作物責任 区分所有建物を含む土地工作物の設置又は保存の瑕疵によって損害が生じた場合、第一次的には占有者が損害賠償責任を負い、第二次的に所有者が損害賠償責任を負う(民法第717条第1項)。共用部分の設置又は保存の瑕疵によって損害が生じた場合、占有者又は所有者が損害賠償義務を負うことになるので、損害の回復が行われるように思われる。しかし、区分所有建物の構造の把握や瑕疵の特定は困難を伴うこともあり、瑕疵が共用部分にあることの立証を被害者に求めることは必ずしも適切ではない。そこで、区分所有法は、区分所有建物の設置又は保存の瑕疵によって損害が生じた場合、当該瑕疵は共用部分の設置又は保存にあることを推定している(同法第9条)。 上記のとおり、共用部分の設置又は保存の瑕疵によって損害が生じた場合、被害者は、最終的には所有者である区分所有者全員に対して損害賠償請求を追及できる。しかし、区分所有者数が多い場合に、区分所有者全員を相手方として損害賠償請求を行うことは、少なくない負担となる。そこで、管理組合が民法第717条第1項本文に規定する占有者に該当することを理由に、管理組合に対して損害賠償請求することができないかが問題となる。 区分所有法の立法担当者は、管理組合の占有者該当性を否定しており、これに沿う裁判例も存在する(前掲東京高判)。一方で、民法第717条第1項本文に規定する占有者は、工作物から生じる危険を予防できる立場にある者との解釈を前提に、管理組合が区分所有法及び管理規約上、そのような立場にあることを理由に占有者に該当することを認める裁判例も存在する(東京地判令和2年2月7日判例秘書)。区分所有者が多数になるような案件の場合には、管理組合に対して請求していくことが適当であるように思われる。 なお、専用使用権が設定されており、通常の使用に伴って瑕疵が発生したような場合には、管理組合は専用使用部分から生じる危険を防止する立場にないため、管理組合の占有者性は否定され、専用使用権者が占有者になると考えられる。   5 本件について 雨漏りが生じた箇所は上階のバルコニーであり、一般的には共用部分と考えられる。区分所有者数が50室にも及ぶため、損害賠償請求を行うにあたっては、区分所有法や管理規約を踏まえて管理組合を相手方に選ぶ方が合理的である。 管理規約にバルコニーの専用使用権が設定されていない場合、区分所有法や管理規約に依拠して、管理組合に対して管理義務違反に基づく損害賠償請求を行うことが考えられる。もっとも、具体的にどのような管理義務違反があり、当該義務違反によってどのような損害が生じたかが別途争いになりうるので留意が必要である。また、区分所有法第9条の推定規定を利用して、管理組合に対して、民法第717条第1項本文に基づく損害賠償請求を行うことが考えられる。 管理規約上、バルコニーに専用使用権が設定されている場合には、専用使用権者は、通常の使用に従って使用し、これに伴う管理責任を負うことから、通常の使用から生じた損害に関して、管理組合に対する管理義務に基づく損害賠償請求は否定される。また、管理組合のバルコニーの占有者性も否定されることから、当該専用使用権者を占有者として、民法第717条第1項本文に基づく損害賠償請求を行うことになると考えられる。 (了)

#No. 526(掲載号)
#羽柴 研吾
2023/07/06

〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第70話】「信託型ストックオプション」

〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第70話】 「信託型ストックオプション」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   「・・・信託型ストックオプションか・・・」 浅田調査官は、新聞を見ながら呟く。 (※) 産経新聞2023年5月29日掲載記事より抜粋。 「・・・ストックオプションは、もともと、最高裁平成17.1.25判決で給与所得と判定されたのですが、信託型ストックオプションは、仕組みが違うのですか?」 昼休み、浅田調査官は傍らにいる中尾統括官に尋ねる。 ウトウトと居眠りをしていた中尾統括官は、突然、目を開ける。 「・・・」 浅田調査官は、不機嫌そうな顔をしている中尾統括官に対して、同じ質問を繰り返す。 「・・・信託型のストックオプションって・・・ストックオプションを・・・信託銀行などに信託することだろう・・・」 中尾統括官は、目をこすりながら、机の上に置かれているペットボトルのお茶を飲む。 「・・・信託型ストックオプションとは、有償ストックオプションの一種であり、信託を利用した報酬制度で・・・具体的には・・・発行したストックオプションを信託銀行等に信託し、それを信託期間満了まで保管してもらい、会社に対する業績貢献度に応じて、ストックオプションに交換できるポイントを役員・従業員等に付与し、信託期間満了時に獲得したポイント数に応じてストックオプションが割り振られるというスキームだ・・・」 中尾統括官は、そう言うと、図を描き始める。 (※) SO・・・ストックオプション 「・・・今回・・・国税庁は、この信託型ストックオプションについて、権利行使時に給与所得として課税するとの見解を発表したが、このスキームの開発者側は、株式の譲渡所得として、約20%の税金が課税されると主張し、また、権利行使時に株を取得しても課税しないとの回答を税務署から得ているとも言っているのですが・・・」 浅田調査官は、開発者側の主張を読む。 「・・・また、給与所得か譲渡所得かの見解だけではなく、課税の時期についての考えも違うわけだな・・・」 中尾統括官は、図を描きながら、思案顔になる。 「・・・行使時(②)に給与所得として課税するということになれば・・・会社が役員・従業員等から源泉徴収しなければならないということになるのですが・・・」 浅田調査官は、中尾統括官の顔を見る。 「・・・現実に株式を譲渡しておらず・・・役員・従業員等は源泉納付すべきお金を持っていないから・・・納付は困難だろう・・・」 中尾統括官は、そう言いながら、それに対応する国税庁の「信託型ストックオプションの課税上の取扱いについて」(令和5年6月2日)の最後の文章を読む。 「・・・しかし、分割で納付といっても・・・株式を売らなければ、税金は支払えない・・・」 浅田調査官は、呟く。 「それに、既に行使している人は、遡って、源泉徴収されるということですか?」 浅田調査官は、中尾統括官に聞く。 「それは・・・そうだろう・・・会社側は、遡って、ストックオプションを行使した役員・従業員等から、給与所得として源泉徴収する必要がある・・・ただ、源泉徴収は、自動確定の国税(国通法15)だから、除斥期間ではなく、徴収権の時効(国通法72)を考えなければならない・・・すなわち、徴収権は、5年間行使しないことによって、時効により消滅するのだから、行使から5年が過ぎれば、徴収できないことになる・・・」 中尾統括官は、税務六法の国税通則法のページを開き、浅田調査官に説明する。 (つづく)

#No. 526(掲載号)
#八ッ尾 順一
2023/07/06

《速報解説》 国税庁、R5改正に対応した電帳法通達及び一問一答を公表~新たな猶予措置における「相当の理由」についても明示~

 《速報解説》 国税庁、R5改正に対応した電帳法通達及び一問一答を公表 ~新たな猶予措置における「相当の理由」についても明示~   Profession Journal編集部   令和5年度税制改正では、国税関係書類の更なる電子化を進めるため、事業者等の対応状況や適正な課税の確保の観点からの必要性を考慮しつつ、電子帳簿保存制度につき必要な見直しが行われた。 主な改正事項としては、「電子取引データの保存制度」においては新たな猶予措置の創設や検索機能の確保要件の見直し、「スキャナ保存制度」においては解像度等情報の要件緩和、「電子帳簿等保存制度」においては過少申告加算税の軽減措置の対象となる優良な電子帳簿の範囲の見直し等が行われている。 なお、改正事項の詳細については下記連載をご覧いただきたい。 上記の改正については、適用関係等において一部不明確な部分もあったところ、6月30日付で国税庁より令和5年度改正を受けた「電子帳簿保存法取扱通達」等及び「電子帳簿保存法一問一答」がそれぞれ見直され、詳細が明らかとなった。 今回公表された情報は以下の通り。 冒頭述べたとおり「電子取引データの保存制度」では新たな猶予措置が創設されており、保存要件に従って電子取引データの保存ができなかったことについて、税務署長が「相当の理由」があると認める場合には、従前行われていた出力書面の提示・提出の求めに応じることに加え、その電子データのダウンロードの求めに応じることができるようにしておけば、保存要件を不要としてその電子取引データの保存が可能となる措置が設けられている。 しかし、この「相当の理由」の詳細や、令和4年度改正の宥恕規定に係る「やむを得ない事情」との差異についてはこれまで明らかではなかったところ、上記公表の「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和5年6月)」の問61の【回答】において、「相当の理由」とは、「例えば、その電磁的記録そのものの保存は可能であるものの、保存時に満たすべき要件に従って保存するためのシステム等や社内のワークフローの整備が間に合わない等といった、自己の責めに帰さないとは言い難いような事情も含め、要件に従って電磁的記録の保存を行うための環境が整っていない事情がある場合については、この猶予措置における「相当の理由」があると認められ、保存時に満たすべき要件に従って保存できる環境が整うまでは、そうした保存時に満たすべき要件が不要」となること等が示された。 加えて、「ただし、システム等や社内のワークフローの整備が整っており、電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存時に満たすべき要件に従って保存できるにもかかわらず、資金繰りや人手不足等の理由がなく、そうした要件に従って電磁的記録を保存していない場合には、この猶予措置の適用は受けられない」(取扱通達7-12)として、不適用の場合についても例示がされている。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#Profession Journal 編集部
2023/07/04

《速報解説》 国税庁が令和5年分の路線価を公表~新型コロナの影響脱し全国平均は2年連続上昇~

《速報解説》 国税庁が令和5年分の路線価を公表 ~新型コロナの影響脱し全国平均は2年連続上昇~   Profession Journal編集部   7月3日、国税庁は相続税及び贈与税の算定基準となる令和5年分の路線価(1月1日時点)を公表した。 令和5年分の全国平均路線価は1.5%の上昇となり、昨年の0.5%を1ポイント上回った。昨年から緩やかな回復がみられていたが、今年は新型コロナの影響を脱したことで、回復が鮮明になったといえる。 上昇の要因としては、コロナ禍で大きく減少していた訪日客数が戻りはじめたことから、今後の更なるインバウンド需要を見込んで上昇地点が広がったほか、在宅勤務から通常の出社に戻る企業も多く都市部のオフィス需要についても回復傾向にあること、また、都心についてはマンション需要が依然として根強くあり、円安かつ低金利が続いている状況も相まって日本の不動産が海外投資家の投資対象として注目されていることなどが考えられる。コロナ禍において路線価が下落したうえで回復後に急な上昇がみられる地域もあるため、思わぬ税負担が生じないよう留意しておきたい。 上記のような要因から繁華街や観光地、都市部のオフィス街などを中心に路線価が上昇しており、三大都市圏については、東京都3.2%、大阪府1.4%、愛知県2.6%の上昇となっている。なお、上昇率の大きかった東京都の地点別の路線価最高額は、今年も中央区銀座5丁目の「鳩居堂」前で、1平方メートルあたり4,272万円を記録し38年連続全国路線価トップとなった。 なお、各国税局において令和5年分の国税局管内各税務署の最高路線価を以下のとおり公表している。 〈各局が公表した最高路線価(別表)のページ〉 上記のとおり、令和5年分路線価については繁華街や観光地を中心に上昇が目立つ結果となった一方で、地方部については下落が続いている地域もあり、コロナ禍前から問題とされている2極化については、以前解消が難しい状況となっている。 (了)

#Profession Journal 編集部
2023/07/04

《速報解説》 経産省、社外取締役の質向上の後押しとして「社外取締役向け研修・トレーニングの活用の8つのポイント」及び「社外取締役向けケーススタディ集」を公表

《速報解説》 経産省、社外取締役の質向上の後押しとして 「社外取締役向け研修・トレーニングの活用の8つのポイント」及び 「社外取締役向けケーススタディ集」を公表   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2023年6月30日、経済産業省は、「社外取締役向け研修・トレーニングの活用の8つのポイント」及び 「社外取締役向けケーススタディ集-想定される場面と対応-」を公表した。 これは、社外取締役の質の向上に向けて、社外取締役向けの研修やトレーニングの活用の後押しを図るためのものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 社外取締役向け研修・トレーニングの活用の8つのポイント 社外取締役やその候補者が研修等を活用する際や、企業が社外取締役向けの研修等の活用方法や支援体制を検討する際に参照されることを想定しているとのことである。   1 主な内容 主な内容は次のとおりである。   2 研修・トレーニングの活用の8つのポイント 次の8つのポイントが記載されている。   Ⅲ 社外取締役向けケーススタディ集 「社外取締役向けケーススタディ集-想定される場面と対応-」は、表紙を含めて121ページに及ぶものである。 社外取締役が取締役会や各種委員会で直面するであろう場面と課題を提示し、社外取締役として求められる行動や留意すべき点等について、「ケース設例」、「解説・回答例」、「補足情報」について記載している。 ケーススタディを題材とする研修等での活用だけではなく、実際に取締役会や各種委員会で課題に直面したときに社外取締役としてどう振る舞うかを考える際に参照されることも想定しているとのことである。 次の事項に関するケーススタディが記載されている。 (了)

#阿部 光成
2023/07/03

《速報解説》 「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案が金融庁から公表される~有価証券報告書等及び臨時報告書における「重要な契約」の開示について改正~

《速報解説》 「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案が金融庁から公表される ~有価証券報告書等及び臨時報告書における「重要な契約」の開示について改正~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2023(令和5)年6月30日、金融庁は、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正(案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、有価証券報告書及び有価証券届出書(以下「有価証券報告書等」)及び臨時報告書における「重要な契約」の開示について改正するものである。「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」も改正する。 意見募集期間は2023年8月10日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 企業・株主間のガバナンスに関する合意 有価証券報告書等の提出会社(提出会社が持株会社の場合には、その子会社(重要性の乏しいものを除く)含む)が、提出会社の株主との間で、次のガバナンスに影響を及ぼし得る合意を含む契約を締結している場合、当該契約の概要や合意の目的及びガバナンスへの影響等の開示を求める。   Ⅲ 企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意 有価証券報告書等の提出会社が、提出会社の株主(大量保有報告書を提出した株主その他の重要な株主)との間で、次の株主保有株式の処分等に関する合意を含む契約を締結している場合、当該契約の概要や合意の目的等の開示を求める。   Ⅳ ローン契約と社債に付される財務上の特約 1 臨時報告書の提出 2 有価証券報告書等への記載 有価証券報告書等の提出会社が、財務上の特約の付されたローン契約の締結又は社債の発行をしている場合であって、その残高が連結純資産額の10%以上である場合(同種の契約・社債はその負債の額を合算する)、当該契約又は社債の概要及び財務上の特約の内容の開示を求める。   Ⅴ 施行期日等 改正後の規定は公布の日から施行する予定である。 なお、改正後の規定は、以下の適用を予定している。 (了)

#阿部 光成
2023/07/03

《速報解説》 金融庁、上場承認前届出書の記載事項にかかる開示府令等の改正案を公表~日程・株式数・価格関連の記載に関する改正~

《速報解説》 金融庁、上場承認前届出書の記載事項にかかる開示府令等の改正案を公表 ~日程・株式数・価格関連の記載に関する改正~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2023(令和5)年6月30日、金融庁は、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正(案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、新規公開(IPO)の公開価格設定プロセス等について見直すものであり、上場日程の短縮化や日程設定の柔軟化の課題に対する改善策として、あらかじめ上場承認前に有価証券届出書(以下「承認前届出書」という)を提出することが考えられ、その際の承認前届出書の記載事項について改正するものである。 「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」も改正する。 意見募集期間は2023年7月31日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 日程関連の記載(「企業内容等開示ガイドライン」5-8-2-3) 承認前届出書において、上場日に紐づく次の日程について、一定の幅を持った期間での記載を可能とする改正を行う。   Ⅲ 株式数関連の記載(「企業内容等の開示に関する内閣府令」9条9号) 承認前届出書において、発行数や売出数について「未定」と記載することを可能とする改正を行う。   Ⅳ 価格関連の記載(「企業内容等の開示に関する内閣府令」9条9号、「企業内容等開示ガイドライン」5-8-2-2及び5-8-3) 承認前届出書において、価格関連の次の項目について記載しないことを可能にする改正を行う。 上記のほか、承認前届出書の位置づけに関連した事項として、承認前届出書に、上場承認前の募集又は売出しの相手方に関する記載を求める等の改正を行う。   Ⅴ 施行期日等 パブリックコメント終了後、所要の手続を経て公布、施行(2023年10月1日)の予定である。 (了)

#阿部 光成
2023/07/03
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