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〔まとめて確認〕会計情報の月次速報解説 【2023年3月】

〔まとめて確認〕 会計情報の月次速報解説 【2023年3月】   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2023年3月1日から3月31日までに公開した速報解説のポイントについて、改めて紹介する。 具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。   Ⅱ 有価証券報告書関係 金融庁から次のものが公表されている。 ① 「記述情報の開示の好事例集2022」の更新(内容:「コーポレート・ガバナンスの概要」、「監査の状況」、「役員の報酬等」及び「株式の保有状況」に関する開示の好事例の追加) ② 有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項及び有価証券報告書レビューの実施について(令和5年度)(内容:重点テーマ審査として「サステナビリティに関する企業の取組みの開示」を示す)   Ⅲ 企業内容等開示関係 次の法令が公布されている。 ① 「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第21号)(内容:監査報告書の記載事項に公認会計士又は監査法人が被監査会社等から受領する報酬に関連する事項を追加するもの) ② 「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第22号)(内容:「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(企業会計基準第27号)等の改正を受けたもの)   Ⅳ 東京証券取引所関係 東京証券取引所から「IPOに関する上場制度等の見直しに係る有価証券上場規程等の一部改正について」が公表されている。 これは、スタートアップにおける新規上場手段の多様化を図る観点から、新規上場プロセスの円滑化やダイレクトリスティングの環境整備などについて、所要の上場制度等の見直しを行うものである。   Ⅴ 監査法人等の監査関係 監査法人及び公認会計士の実施する監査などに関連して、次のものが公表されている。 ① 「監査基準報告書300実務ガイダンス第1号「監査ツール(実務ガイダンス)」の改正」(公開草案)(内容:「監査事務所における品質管理」(品質管理基準報告書第1号)、倫理規則の改正などに対応) ② 「監査法人の組織的な運営に関する原則」(監査法人のガバナンス・コード)の改訂について(内容:「会計監査の在り方に関する懇談会(令和3事務年度)」、「金融審議会公認会計士制度部会」などの議論を受けて改訂) (了)

#No. 515(掲載号)
#阿部 光成
2023/04/13

ハラスメント発覚から紛争解決までの企業対応 【第37回】「就活ハラスメント対策における注意点」

ハラスメント発覚から紛争解決までの 企 業 対 応 【第37回】 「就活ハラスメント対策における注意点」   弁護士 柳田 忍   【Question】 就活シーズンが始まり、当社でも会社説明会や採用選考の準備などが進められていますが、いわゆる就活ハラスメントについて、注意するべきポイントがあれば教えてください。 【Answer】 基本的には、従業員に対するパワハラやセクハラにおける注意点と同様ですが、特にセクハラについて注意する必要があります。また、就活生からの申告や相談により就活ハラスメントが発覚することは期待できないことが多いため、採用担当者と就活生との間のコミュニケーションを適宜監視したり、口コミサイトをチェックしたりして、就活ハラスメントの把握に努める必要があります。 ● ● ● 解 説 ● ● ●   1 はじめに 近年、求職者の保護を企図した規制などが強化される傾向が見られる。例えば、リクナビ事件を受けた職業安定法の改正などが挙げられるが(※1)、ハラスメントの分野においても、いわゆる就活ハラスメントへの防止対策の強化に向けた動きが見られている。 (※1) 就活サイト「リクナビ」の運営企業が就活生の内定辞退率を予測して有償で企業に提供していた問題を契機に、2022年10月施行の改正職業安定法により、募集情報等提供事業者(求人情報・求職者情報等を提供する事業者)に対する規制が強化された。 いわゆる「パワハラ指針」及び「セクハラ指針」は、「労働者」に対するパワハラやセクハラを対象としており、就活ハラスメントについては、就職活動中の学生等の求職者等に対する言動についても、職場におけるパワハラ・セクハラを行ってはならない旨の方針を示すことが望ましいとするに留まっている。しかし、その一方で、厚生労働省は、2022年3月29日、就活ハラスメントの被害にあった学生へのヒアリングの実施や就活セクハラを起こした企業に対する指導を徹底する方針などを打ち出し、2023年3月7日には「就活ハラスメント防止対策企業事例集」(以下「企業事例集」という)等を公表するなどしており、これらの動きは就活ハラスメント防止の強化の一環といえよう。 会社においては就活シーズンの開始に伴い就活生と接触する機会が増えるであろうことから、本稿においては就活ハラスメントの対応策や注意点を取り上げるものであるが、特に、就活生の選考にインターンシップを活用する企業においては、就活シーズンに限らず就活ハラスメントに気をつけるべきであることはいうまでもない。   2 就活ハラスメントの定義と傾向 就活ハラスメントとは、「就職活動中やインターンシップの学生等に対するセクシュアルハラスメントやパワーハラスメント」のことをいう(企業事例集1頁等)。 「令和2年度 職場のハラスメントに関する実態調査報告書」(厚生労働省)は、2017年から2019年度卒業で就職活動(転職活動を除く)又はインターンシップを経験した男女を対象としたものであるが、これによると、就活ハラスメント(セクハラ)を経験したと回答した人の割合は約4人に1人(25.5%)に上り、就活ハラスメント(セクハラ)を受けた場面として回答が多かったのは、インターンシップに参加したとき(34.1%)や、企業説明会やセミナーに参加したとき(27.8%)、就職採用面接を受けたとき(19.2%)である。また、就活ハラスメントのタイプとしては、インターンシップについては別として、採用活動においては基本的には業務指導がなされる場面が想定されないことから、業務指導に伴いなされることが多いパワハラよりも、業務指導とは関係なくなされるセクハラが問題とされることが多い。もっとも、圧迫面接やオワハラ(就活終われハラスメント)(※2)のように、パワハラに該当し得る就活ハラスメントも見られる。 (※2) 企業が内定や内々定を出した学生に対して就職活動を終えて自社に入社するよう圧力をかける行為。 上記のとおり、パワハラ指針やセクハラ指針は就活ハラスメントを措置義務の対象としていないが、措置義務の対象となっているか否かと行為者等が法的責任を負うか否かは別問題であり、就活ハラスメントの行為者や企業は民事責任や刑事責任を負う可能性があることに注意する必要がある。   3 就活ハラスメントの防止対策 就活ハラスメントについても、パワハラやセクハラと同様、ハラスメントの防止のための体制整備を行うことが重要である。具体的には、ハラスメント防止の方針の明確化及びその周知・啓発、相談体制の整備、適切かつ迅速な事後的対応等である(厚生労働省のウェブページ「会社を揺るがす大きなリスク 今すぐ始めるべき就活ハラスメント対策!」においても、就活ハラスメントの防止策として、「ハラスメント防止の方針の明確化」及び「ハラスメント防止体制の整備」が挙げられている)。   4 就活ハラスメント防止にかかる具体的な取り組み 就活ハラスメント防止にかかる具体的な取り組みとして、前掲「会社を揺るがす大きなリスク 今すぐ始めるべき就活ハラスメント対策!」は、以下(1)ないし(3)を挙げている。 (1) 基本的な対策:「公正な採用選考」に基づいた面接実施 「公正な採用選考」とは、厚生労働省が示す「公正な採用選考の基本」等に掲載された基準のことであり、同基準においては、本籍・出生地や家族に関すること、人生観など、適性や能力に関係がない事項を尋ねたり、身元調査などを実施したりすることは就職差別に繋がるおそれがあるとして注意喚起がなされている。 上記「公正な採用選考」に挙げられた事項の中にはプライバシーに関わる事項などが含まれており、これらをしつこく尋ねるなどするとパワハラやセクハラにも該当し得ることから、「公正な採用選考」を遵守することは就活ハラスメントの防止にも資するものである。 (2) 効果的な対策:リクルーターの行動指針やマニュアル策定 前掲「会社を揺るがす大きなリスク 今すぐ始めるべき就活ハラスメント対策!」によると、就活ハラスメントの中でも特にセクハラは、若手の社員がリクルーターとして活動するOB・OG訪問や面接時などに起こりやすいことから、リクルーターの行動指針やマニュアルを策定することが、就活ハラスメントの防止に有効であるとのことである。 「リクルーター」の定義は各社によるであろうが、上記のとおり、就活ハラスメントはOB・OGなどによるものには限られないことから、OB・OGや面接担当者を含む採用担当者全てを対象とした行動指針やマニュアルを策定するべきである。また、採用活動の一環としてインターンシップを利用する場合は、採用担当者以外においても(全社的に)就活生と接する可能性があるのであるから、場合によっては全社員を対象とする行動指針やマニュアルを策定したうえで、研修などを実施することが望ましい。 (3) 一歩踏み込んだ対策:応募者の個人情報の限定利用 就活ハラスメントが発生しない状況を作るため、面接官等に対し、学生の個人情報を一部非公開にして、個人情報の悪用(学生への正当な理由のない接触のための個人情報の利用)を防止するなどの対策を取り入れるものであり、有効であると思われる。   5 就活ハラスメント特有の注意点 (1) インターンシップ参加者に対する就活ハラスメント インターンシップの参加者は基本的には「労働者」に該当せず、よって、パワハラやセクハラの措置義務の対象にもならない。しかし、以下のような場合には、インターンシップの参加者も労働者に該当し、措置義務の対象になり得ることから、注意が必要である。 (2) 就活ハラスメントの存在を把握することは困難であること 就活生から就活ハラスメントの被害の相談や申告がなされることはあまり期待できないと思われる。なぜなら、既に企業に所属しており容易に転職できない従業員とは異なり、(特に昨今の買い手市場においては)就活生は、就活ハラスメントを行うような企業への就活を取りやめて他の企業に入社すればよいだけであり、わざわざ就活ハラスメントの事実を当該企業等に相談・申告するインセンティブに乏しいからである(※3)。すなわち、就活ハラスメントは、就活生の口コミなどを通じて、企業が気づかないうちに企業の評判を傷つけるおそれのあるものであり、その意味では、従業員に対するパワハラやセクハラより、企業にとってリスクが高いものともいえる。 (※3) 前掲「令和2年度 職場のハラスメントに関する実態調査報告書」(厚生労働省)によると、就活ハラスメント(セクハラ)に対して何もしなかったとの回答が24.7%であり、その理由は「何をしても解決にならないと思ったから」との回答が47.6%であるとのことである。「何をしても解決にならないと思った」との趣旨は、相談・申告しても適切な対応を期待できないから、という意味の他に、相談・申告したからといって特段のメリットはないからだという意味も含まれるものと思われる。 よって、企業においては、採用担当者と就活生との間のコミュニケーションを適宜監視したり、口コミサイトをチェックしたりして、就活ハラスメントの把握に努めたうえで、就活ハラスメントが発覚した場合には厳重に処罰を行い、これを社内に公表するなどして、抑止力を働かせるべきである。 (了)

#No. 515(掲載号)
#柳田 忍
2023/04/13

《速報解説》 金融庁より「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)」が公表される~「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」等の改訂に対応~

《速報解説》 金融庁より「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)」が公表される ~「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」等の改訂に対応~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2023(令和5)年4月10日、金融庁は、「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)」等を公表し、意見募集を行っている。 これは、2023年4月7日に改訂された「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」(企業会計審議会)を受けて、所要の改正を行うものである。 意見募集期間は2023年5月12日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 内部統制報告書 前年度に開示すべき重要な不備を報告した場合には、内部統制報告書において、付記事項として、当該開示すべき重要な不備に対する是正状況を記載する。 2 訂正内部統制報告書 事後的に内部統制の有効性の評価が訂正される際には、訂正内部統制報告書において、具体的な訂正の経緯や理由等を記載する。 3 内部統制監査報告書 企業が内部統制報告書の内部統制の評価結果において内部統制は有効でない旨を記載している場合には、監査人はその旨を内部統制監査報告書において監査人の意見に含めて記載する。   Ⅲ 施行期日等 2024(令和6)年4月1日から施行する予定である。 改正後の財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令6条、11条の2及び17条の規定並びに第一号様式及び第二号様式は、この府令の施行の日以後に開始する事業年度に係る内部統制報告書に係るものについて適用し、同日前に開始した事業年度に係る内部統制報告書に係るものについては、なお従前の例によるとする予定である。 (了)

#阿部 光成
2023/04/12

《速報解説》 国税庁、「調査課所管法人における申告内容の誤りが多い事例」をランキング形式で紹介~トップは「外国税額の控除等に関する誤り(別表六(二)等)」~

《速報解説》 国税庁、「調査課所管法人における申告内容の誤りが多い事例」を ランキング形式で紹介 ~トップは「外国税額の控除等に関する誤り(別表六(二)等)」~   Profession Journal編集部   令和5年4月11日、国税庁は「調査課所管法人における申告内容の誤りが多い事例」を公表した。 これは調査課所管法人(原則資本金1億円以上の法人)における法人税申告書の申告内容の誤りが多い事例について、令和3事務年度に実地調査以外で把握したものを集計し、誤りが多い順番にその状況を取りまとめたもの。 なお、集計対象法人数は約 350 法人であり、そのうち約6割の法人において、以下①から⑩までのいずれかに関する誤りが確認されているのとのことである。 また、上記①から⑩の誤りについて、具体的な誤りの記載を紹介しており、例えば「④ 受取配当等の益金不算入に関する誤り(別表八(一)・同付表一)」では、 が挙げられ、「⑥ 役員給与等に関する誤り(役員給与等の内訳書)」では、 が示されている。それぞれの誤りの防止に役立つ国税庁HP掲載の「申告書確認表」へのリンクも記載されている。 なお上記のうち②⑦⑨は、調査課所管法人でありながら中小企業税制を適用していたケースが取り上げられている。 (了)

#Profession Journal 編集部
2023/04/11

《速報解説》 「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」等の改訂が確定~従前の「財務報告の信頼性」を非財務情報含む「報告の信頼性」へと拡張~

《速報解説》 「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」等の改訂が確定 ~従前の「財務報告の信頼性」を非財務情報含む「報告の信頼性」へと拡張~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2023(令和5)年4月7日、企業会計審議会は、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」を公表した。 これにより、2022(令和4)年12月15日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。公開草案に対する「コメントの概要及びコメントに対する考え方」(以下「コメント対応」という)も公表されており、93ページに及ぶものである。 これは、内部統制報告制度は、財務報告の信頼性の向上に一定の効果があったと考えられる一方で、経営者が内部統制の評価範囲の検討に当たって財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性を適切に考慮していないのではないかなどの制度の実効性に関する懸念や、国際的な内部統制の枠組み(米国のCOSO(トレッドウェイ委員会支援組織委員会))の改訂などへ対応するものである。 なお、サステナビリティ等の非財務情報の内部統制報告制度における取扱いなどについては、法改正を含む更なる検討が必要な事項であることから、中長期的な課題とされている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 内部統制の基本的枠組み 1 「財務報告の信頼性」から「報告の信頼性」 改訂された米国のCOSOの内部統制の基本的枠組みに関する報告書(COSO報告書)では、内部統制の目的の1つである「財務報告」について、「報告」(非財務報告と内部報告を含む)へと拡張されている。 意見書は、サステナビリティ等の非財務情報に係る開示の進展やCOSO報告書の改訂を踏まえ、内部統制の目的の1つである「財務報告の信頼性」を「報告の信頼性」としている。 「報告の信頼性」とは、組織内及び組織の外部への報告(非財務情報を含む)の信頼性を確保することをいい、それには「財務報告の信頼性」が含まれる。 「財務報告の信頼性」は、財務諸表及び財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性のある情報の信頼性を確保することをいう。 金融商品取引法上の内部統制報告制度は、あくまで「財務報告の信頼性」の確保が目的である。 コメント対応No.52では、金融商品取引法上の内部統制報告制度は、経営者による評価及び報告と監査人による監査を通じて財務報告に係る内部統制についての有効性を確保しようとするものであり、財務報告の信頼性以外の他の目的を達成するための内部統制の整備及び運用を直接的に求めるものではないと記載されている。 2 内部統制の基本的要素 3 経営者による内部統制の無効化 4 内部統制に関係を有する者の役割と責任 5 内部統制とガバナンス及び全組織的なリスク管理 内部統制とガバナンス及び全組織的なリスク管理は一体的に整備及び運用されることの重要性を明らかにしている。 内部統制は、組織の持続的な成長のために必要不可欠なものであり、「ガバナンス」や「全組織的なリスク管理」と一体的に整備及び運用されることが重要である。 これらの体制整備の考え方として、3線モデル等が例示されている。 3線モデルにおいては、第1線を業務部門内での日常的モニタリングを通じたリスク管理、第2線をリスク管理部門などによる部門横断的なリスク管理、そして第3線を内部監査部門による独立的評価として、組織内の権限と責任を明確化しつつ、これらの機能を取締役会又は監査役等による監督・監視と適切に連携させることが重要である。   Ⅲ 財務報告に係る内部統制の評価及び報告 1 経営者による内部統制の評価範囲の決定 なお、「売上高等のおおむね3分の2」や「売上、売掛金及び棚卸資産の3勘定」について、それらを機械的に適用せず、評価範囲の選定に当たって財務報告に対する影響の重要性を適切に勘案することを促すよう、基準及び実施基準における段階的な削除を含む取扱いに関しては、今後の検討事項とされている。 2 ITを利用した内部統制の評価 3 財務報告に係る内部統制の報告   Ⅳ 財務報告に係る内部統制の監査   Ⅴ 内部統制報告書の訂正時の対応 事後的に内部統制の有効性の評価が訂正される際には、訂正の理由が十分開示されることが重要であり、訂正内部統制報告書において、具体的な訂正の経緯や理由等の開示を求めるために、関係法令について所要の整備を行うことが適当である。   Ⅵ 適用時期等 改訂基準及び改訂実施基準は、2024(令和6)年4月1日以後開始する事業年度における財務報告に係る内部統制の評価及び監査から適用する。 (了)

#阿部 光成
2023/04/11

《速報解説》 インボイス制度「2割特例」等、令和5年度改正を受け消費税の申告書様式等改正通達が公表~付表6 税率別消費税額計算表〔小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置を適用する課税期間用〕が新設~

《速報解説》 インボイス制度「2割特例」等、令和5年度改正を受け消費税の申告書様式等改正通達が公表 ~付表6 税率別消費税額計算表〔小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置を適用する課税期間用〕が新設~   Profession Journal編集部   令和5年度税制改正ではインボイス制度導入に係る激変緩和措置として2割特例等、小規模事業者に向けた措置が講じられているが、このほど国税庁は「「消費税の軽減税率制度に関する申告書等の様式の制定について」等の一部改正について(法令解釈通達)」を公表。これら改正事項を受けた消費税の申告書や適格請求書発行事業者の登録申請書の様式を改正する通達を公表した。 令和5年度税制改正の概要は下記の速報解説を参照されたい。 具体的には、消費税の申告書第1表(原則・簡易ともに)において2割特例適用時にマルを付ける「税額控除に係る経過措置の適用(2割特例)」欄が新設されるとともに、「付表6」として「税率別消費税額計算表〔小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置を適用する課税期間用〕」が新設された。 また、登録手続についても一部見直しが行われたことで、令和5年10月1日以降提出分の「適格請求書発行事業者の登録申請書」の表記も見直されている。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#Profession Journal 編集部
2023/04/07

《速報解説》 国税不服審判所「公表裁決事例(令和4年7月~9月)」~注目事例の紹介~

《速報解説》 国税不服審判所 「公表裁決事例(令和4年7月~9月)」 ~注目事例の紹介~   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   国税不服審判所は、2023(令和5)年3月29日、「令和4年7月から9月までの裁決事例の追加等」を公表した。追加で公表された裁決は表のとおり、法人税法関係が2件、国税通則法関係と所得税法関係が各1件で、合わせて4件となっている。最近の公表件数は、4件→4件→5件→4件(今回)と非常に少ない傾向が続いている。 今回の公表裁決4件は、すべて原処分庁の賦課決定処分の全部又は一部を取り消す裁決となっている。 【表:公表裁決事例令和4年7月から9月分の一覧】※本稿で取り上げた裁決 本稿では、公表された裁決事例のうちから、原処分庁による重加算税の賦課決定処分が国税不服審判所によって取り消された1件と、原処分庁が過大な役員報酬であるとして否認した処分を、同じく国税不服審判所が取り消す旨の裁決をした1件を取り上げたい。   1 請求人が法定申告期限までに申告書を提出しなかった事例・・・① (1) 事案の概要 本件は、太陽光発電関連事業等を営む法人である審査請求人(以下「請求人」という)が、法人税等及び消費税等の期限後申告書を提出したところ、原処分庁が、請求人に隠蔽又は仮装及び偽りその他不正の行為があるとして、法人税等及び消費税等に係る重加算税の賦課決定処分をしたのに対し、請求人が、調査手続に賦課決定処分の取消事由となる違法があり、また、隠蔽又は仮装及び偽りその他不正の行為はないとして、その全部の取消しを求めた事案である。 (2) 争点 本稿では、〔争点2〕である「請求人に隠蔽・仮装の事実があったか否か」を中心に裁決の概要を検証したい。 (3) 原処分庁の主張 原処分庁は、請求人代表者について、 などの行為があったことから、請求人の事業における収益及び対価の享受に係る事実(所得金額)を隠蔽し、あるいは故意に脱漏したものであり、結果として請求人の課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実(所得金額)を隠蔽したものと認められることから、請求人には、国税通則法第68条第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったと主張した。 (4) 国税不服審判所の判断 国税不服審判所は、認定した以下の事実に基づいて検討したうえで、請求人が、当初から課税標準等及び税額等を法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき法定申告期限までに申告をしなかったと評価することはできないことから、請求人に、国税通則法第68条第2項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったと認めることはできないとの裁決を示した。   2 取締役に支給した報酬について過大か否かが争われた事例・・・④ (1) 事案の概要 本件は、特例有限会社であり、かつ、同族会社である審査請求人(以下「請求人」という)が、法人税の所得金額の計算上損金の額に算入した取締役に対する役員給与の額について、原処分庁が、当該給与の額には不相当に高額な部分の金額があり、当該金額は損金の額に算入されないなどとして法人税等の更正処分等を行ったのに対し、請求人が当該給与の額に不相当に高額な部分の金額はないとして、原処分の一部取消しを求めた事案である。 不相当に高額な給与であるとされた取締役(本件取締役)は、生産管理全般の責任者という使用人としての業務に従事しており、「役員で労働者扱いの者」として労働保険に加入している。 (2) 争点 本件取締役に支給された役員給与の額に不相当に高額な部分の金額はあるか否か。 (3) 役員給与のうち「不相当に高額な部分」の意義 法人税法第34条第2項に定める「役員に対して支給する給与の額のうち不相当に高額な部分の金額」とは、以下の①又は②のうち、いずれか多い金額をいう(※)。 (※) 金子宏『租税法(第24版)』(弘文堂、2021年)406ページ以下 本件では、請求人・原処分庁ともに、争点は、本件取締役に支給された役員給与の額が形式基準を超えているかどうかであることであり、同人が使用人兼務役員に該当しないことについては、争いがない。 (4) 原処分庁の主張 原処分庁は、本件取締役は法人税法上の使用人兼務役員に該当しないことから、同人に対して支給した給与の額の合計額は全て役員給与となる。よって、形式基準限度額を超える部分の支給額は不相当に高額な役員給与に当たると主張した (5) 国税不服審判所の判断 国税不服審判所は、認定した以下の事実に基づいて検討したうえで、請求人代表取締役は、本件取締役に対する給与のうち取締役部分を月額〇〇〇〇円であると認識していたとしても、それは、本件取締役に対する給与の額の積算根拠にすぎないというべきであり、この他に本件取締役に係る形式基準限度額を〇〇〇〇円と決定した事実を認めるに足る証拠はない。さらに、本件役員給与の支給額(年額)は、請求人の第1回定時社員総会で定められた役員報酬の額の年額5,000万円以内であると認められることから、本件役員給与に形式基準を超える金額があるとは認められないと判断して、本件役員給与の額に、法人税法第34条第2項に規定する不相当に高額な部分の金額は認められないことから、本件賦課決定処分の全部を、取り消すべきであるという裁決を示した。 (了)

#米澤 勝
2023/04/06

プロフェッションジャーナル No.514が公開されました!~今週のお薦め記事~

2023年4月6日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.514を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2023/04/06

monthly TAX views -No.123-「“106万円の壁”より深刻な“住民税非課税の壁”」

monthly TAX views -No.123- 「“106万円の壁”より深刻な“住民税非課税の壁”」   東京財団政策研究所研究主幹 森信 茂樹   政府は、物価対策という名目で、低所得世帯に一律3万円の給付(事業費5,000億円)、子育て世帯には別途子ども1人当たり5万円の給付(事業費1,551億円)を行う。 低所得世帯の判断基準は、これまで同様、「住民税非課税かどうか」となっている。住民税非課税世帯で子どもが2人いる場合には、3+5×2=13万円の給付がもらえるが、住民税を少しでも負担していれば、給付はゼロである。これでは、働いて少しでも住民税を負担している者は報われない。 *  *  * 本連載のNo.119で、住民税非課税という基準が高齢者に有利であることを指摘した。非課税基準は「所得」なので、給与所得者より高水準の公的年金等控除がある年金受給者は、勤労者より高水準の「収入」でも住民税非課税になりやすい。住民税非課税世帯の7割が高齢の年金受給世帯で、必ずしも生活困窮者とは限らない。 住民税を負担しているが困窮している勤労世帯が給付から外れるだけでなく、高齢者は若者と比べて「資産」を保有している割合が圧倒的に高く、住民税非課税基準は公平性に大きな問題を生じさせ、就業調整にもつながっていく。 今日、106万円・130万円の壁(この収入を超えると夫の扶養から外れ社会保険料負担が生じるので就業調整をすること)が大きな社会問題となっている。 岸田総理は3月17日の記者会見で、106万円・130万円の壁について「被用者が新たに106万円の壁を超えても手取りの逆転を生じさせない取り組みの支援などをまず導入し、さらに制度の見直しに取り組む」と表明した。 現在政府部内で検討されている案は、収入増でパート主婦の手取りが社会保険適用前の金額に回復するまでの間、手取り減少分の一部を補填できるよう企業に助成金を出すという内容のようだ。 しかし、そもそもパート主婦は、「第3号被保険者」として保険料を負担せず受益だけをしている。さらに一定収入のある主婦の保険料まで助成金で実質補助することは、個人事業者や非正規雇用者などの「第1号被保険者」から不公平という批判を招きかねない。また将来年金給付が得られるにもかかわらず、その社会保険料負担を補填することにも問題がある。壁を越えて勤労し社会保険制度に加入することには将来大きなメリットがあるわけで、政府は「壁を意識せずに働き、社会保険制度に加入することがベストである」ということをもっと喧伝すべきだ。 一方で深刻なのは「住民税非課税の壁」である。単身の給与所得者の場合は、年収100万円以下が課税最低限である。 非課税世帯には、返済不要の「高校生等奨学給付金」があり、また「高等教育の修学支援新制度」のもとで授業料・入学金の減免、返還する必要のない給付型奨学金なども適用される。 これでは住民税の課税最低限のところで、就業調整が生じる可能性がある。 欧米では、専業主婦などが新たに労働市場に参入する際に生じる世帯の逆転現象を、ポバティ―トラップ(貧困の罠)と捉えて、壁をなくす制度として、「給付付き税額控除」が導入されている。英国、オランダ、米国、スウェーデンなどのユニバーサルクレジットや勤労税額控除で、税と社会保険料負担を一体的に捉えた上で、低所得勤労者に勤労インセンティブを供与するため、低所得者の可処分所得が逓増するよう給付が行われるよう設計されているので「壁」の問題は生じない。 *  *  * マイナンバー制度を活用して、所得と給付とを連動させ、きめ細かい給付が行われるような仕組みをわが国も検討する必要がある。 筆者が構成員を務めているデジタル庁の会議で、このことを指摘してきているが、当局者からは、「制度設計をする所管官庁と議論する必要があるので、3年、5年かかる」という返答である。まずは「霞が関の壁」を排除する必要がある。 (了)

#No. 514(掲載号)
#森信 茂樹
2023/04/06

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例51】「法人代表者の配偶者が経営する法人に対する交際費の損金性」

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例51】 「法人代表者の配偶者が経営する法人に対する交際費の損金性」   拓殖大学商学部教授 税理士 安部 和彦   【Q】 私は、北海道及び東北地方において飲食店業を営む株式会社X(資本金8,000万円)において、総務部長を務めております。飲食店業は大手チェーン店から個人経営の店に至るまで、政府の様々な支援策にもかかわらず、コロナ禍で壊滅的な打撃を受けた業種として知られております。 ところが、幸いわが社はその中でも比較的ダメージが小さかった、黒毛和牛の食べ放題を売りにした焼肉店を展開していたことから、ここ数年も業績は堅調で、むしろ同業他社が撤退した店舗を居抜きで買い取るなどして、店舗数を増加させているところです。これは、わが社の創業者で現在も代表取締役を務めるA(Xの株式の50%超を保有)の力量と先見性の賜物であると、従業員一同感服しているところです。 ところで、Aの経営者としての能力については疑うところはないのですが、人柄というか器量にはいささか問題があることは認めざるを得ません。Aは悪い意味での「昭和の価値観」に染まっており、表に出ない(出せない)ハラスメントの類も少なくなく、私はいさめる立場でありますが、天狗状態のAとその被害を受けている従業員との間に立って右往左往しており、日々非常にストレスが溜まっております。 そんな中、税務調査で新たな問題が判明しました。すなわち、Aはバツイチなのですが、前の夫人に対して毎月多額の養育費を支払っていることを今の夫人Cが快く思っていないことを気に掛けていて、今の夫人Cに対して様々な資金援助を行っているうち、自らのポケットマネーだけでは足りなくなり、会社の金に手を付けたのです。方法としては、Cが代表取締役を務め唯一の出資者である合同会社Yが運営する和食店において年間50回ほど会食した金額につき、Xがその支出した金額を交際費として経理しているというものです。 問題は、この会食はほぼ毎回AとCのみで行われているところで、税務署の調査官は、当該行為は通常の経済人の行為として不自然・不合理であるから、法人税法132条の規定により損金算入ができない旨指摘してきました。Aはこの指摘に激怒し、訴訟も辞さないと息巻いておりますが、当方は無駄な争いには巻き込まれたくないと考えております。税法上はどのように解するのが正当なのでしょうか、教えてください。 【A】 特定の株主や出資者が支配している法人については、その法人の行為について当該株主等の意向がダイレクトに反映されるケースが頻繁に見られます。そのような法人については、専ら当該株主や法人の税負担を軽減するため、必ずしも経済合理性があるとは言えない取引や行為を行うことも可能となります。 そのような行為を防止し、もって税負担の公平を維持するため、そのような行為を否認する規定が法人税法132条の規定ですが、今回のX・Y社の取引は、X社の法人税負担を不当に減少させる行為であると認められる可能性が十分あるものと考えられます。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ (1) コロナ禍の日本経済への影響 2020年初春以来、世界はコロナ禍の影響をモロに受け、わが国も経済社会全般において甚大な被害を受けることとなった。以下の表はわが国における新型コロナウイルス感染者数の推移である。 〈新型コロナウイルス感染者数の推移(国内、2023年3月26日まで)〉 (出典)  NHKホームページより コロナ禍の影響は全業種に及んだと思われるが、その影響度には業種間で濃淡があったようである。厳しい影響を受けた業界の筆頭は飲食店ではないだろうか。例えば、東京商工リサーチの調査によれば、居酒屋運営14社のコロナ前からコロナ禍中の2021年12月末における店舗数の推移は以下の表の通りであり、同期間中に店舗数は20%弱も減少している。 〈居酒屋運営14社の店舗数推移〉 (出典) 2022年2月16日付東京商工リサーチのレポートより   (2) 同族会社の行為・計算の否認規定 上場会社など公開型の会社においては、株主は業務執行やその監視を専門的第三者である常勤の取締役や監査役等に委ね、その者の選任を通じてコントロールするという仕組みが構築されている。閉鎖型の会社においても基本は同様であるが、実際問題として、そこでは株主が取締役となって能動的に経営に参画することを望むことが多く、現実にそうなっているケースが多い。その結果、閉鎖型の会社においては、株主=取締役となり、所有と経営が一致することにより、会社経営は特定の者の独断を止めることが困難な状況となりやすくなる。その弊害につき税務上問題となるのが、閉鎖型の会社で特定の株主に支配されている「同族会社」を利用した租税負担の回避行為である。 法人税法(法法132)のみならず所得税法(所法157)、相続税法(相法64)、地価税法(地価法32)及び地方税法(地法72の43)において、同族会社の行為又は計算により、当該法人、その株主等又はその同族関係者の各税の負担が不当に減少すると認められる場合には、それを否認する権限を税務署長に与える規定が置かれている。ここでいう「同族会社」とは、会社の株主等の3人以下及びその同族関係者がその会社の発行済株式等の50%超を有する場合等をいう(法法2十、法令4)。このような同族会社は、少数の株主や社員によって支配されているため、当該会社又はその関係者の税負担を意図的に減少させるような、経済的合理性を欠く行為等を容易に行うことができることから、それを規制するための規定が同族会社の行為・計算の否認規定である。 当該規定は、文理解釈上、同族会社を対象とするものであるから、非同族会社の行為・計算が経済的合理性を欠いている場合であっても、それを否認することはできないと解される(※1)。 (※1) 金子宏『租税法(第24版)』(弘文堂・2021年)545頁。   (3) 代表者の配偶者が経営する法人に対して支払った交際費の損金性が問われた事例 それでは、本件と同様に、代表者の配偶者が経営する法人に対して支払った交際費の損金性、同族会社の行為計算否認規定の適用の可否が問われた事例(横浜地裁平成22年3月24日判決・税資260号-45(順号11401)、TAINSコード:Z260-11401)について、以下で確認してみたい。 ① 事案の概要 本件は、横浜市を本店所在地とし、不動産の管理等を目的として、平成17年8月16日に設立された原告(有限会社)が、平成17年8月16日から同年12月31日までの事業年度、平成18年1月1日から同年12月31日までの事業年度及び平成19年1月1日から同年12月31日までの事業年度の法人税の所得金額の計算上、原告代表者の配偶者に対し交際費として支出した金額を損金の額に算入して確定申告をしたところ、神奈川税務署長が、本件交際費は、原告代表者がその配偶者に対し個人的に支出したものであり役員給与(役員賞与)に当たるとして損金算入を否認し、平成17年12月期の法人税の更正処分、平成18年12月期の法人税の更正処分及び平成19年12月期の法人税の更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分をしたのに対して、原告が、本件交際費を損金の額に算入しなかったことが違法であり、また、更正通知書の理由付記の程度が不十分であり違法であるとして、本件各更正処分のうち確定申告額を超える部分等の取消しを求めた事案である。 なお、原告の役員は、代表者の1名のみである。また、原告には、代表者が役員であるほかに従業員はおらず、当該代表者が唯一の役員兼従業員である。また、本件関係各社は、いずれも原告の代表者の配偶者が取締役を務め、かつ100%出資する同族会社であり、また、本件関係各社に従業員はおらず、当該配偶者が唯一の役員兼従業員である。 ② 事案の争点 法人(原告)の代表者の配偶者が経営する別法人に対して支出した交際費の金額を法人(原告)の各事業年度の損金の額に算入することができるのか。 ③ 裁判所の判断 なお、本裁判例は控訴されたが棄却され(東京高裁平成22年8月26日判決・税資260号-141(順号11497)(TAINSコード:Z260-11497))、さらに上告されるも不受理(最高裁平成23年1月13日決定・税資261号-2(順号11592)(TAINSコード:Z261-11592))となり確定している。 ④ 本裁判例から学ぶこと 本裁判例は、法人の行う租税回避行為に関し、同族会社が関与する場合に限定してそれを規制する同族会社の行為計算の否認規定(法法132)が適用されるかどうかが問われた事例である。同族会社は、少数の株主のお手盛りにより税負担を減少させるような行為等を行うことが可能であり、税負担の公平を維持するため、経済合理性を欠く行為等について、税務署長によるその否認が認められるわけである(※2)。 (※2) 金子前掲(※1)書84頁。 同族会社の行為計算の否認規定は、一般的租税回避否認規定の一類型であることから、その適用基準の不明確さ、いわゆる「課税要件明確主義」の観点からの「不確定概念」が常に問題となり得る。同族会社の行為計算の否認規定における不確定概念は、具体的には税負担を「不当に減少させる結果」とは何を指すのかということになる。当該規定が課税要件明確主義に反しない旨を判示した裁判例(所得税の事案)としては、東京高裁平成10年6月23日判決・税資232号755頁(TAINSコード:Z232-8188)が「同族会社の行為・計算の否認の結果、株主等に対する課税額等において著しく苛酷になるのであれば別として、そうでなければ、本件のような一定の箇所についての行為・計算の否認も、これをもって直ちに違法と断ずることは困難な面があるといわざるを得ない」としている。 本裁判例の場合のように、株主が1人しかおらず(しかも役員兼従業員もその株主1人)、その会社を完全に支配しているような、個人事業主とほぼ同視できるケースほどではないものの、本件も事実上、代表者がその意のままに会社の経理を操作できる状況にあることから、同族会社の行為計算の否認規定の適用は免れないであろう。 本件について、仮に、夫が経営する会社が、例えばその会社の取引先との関係の円滑化・受注拡大等のために、取引先の担当者を接待する目的でその妻が経営する会社が営む飲食店を利用するケースなど、妻が経営する会社に対して交際費を支出することに経済的合理性が認められる場合には、法人税法の規定に従い、一定金額が損金に算入されることとなる。一方で、夫婦で業務とは関係のない会食を行うのに妻の経営する飲食店を利用するケースなど、所得税法では必要経費に当たらない家事費の支出に該当するときのように、経済的合理性がない場合には、同族会社の行為計算否認の規定の適用があるということになるであろう。   (4) 本件へのあてはめ 特定の株主や出資者が支配している法人については、その法人の行為について当該株主等の意向がダイレクトに反映するケースが頻繁に見られる。そのような法人については、専ら当該株主や法人の税負担を軽減するため、必ずしも経済合理性があるとは言えない取引や行為を行うことも可能となる。 そのような租税回避的な行為を防止し、もって税負担の公平を維持するため、そのような行為を否認する規定が法人税法132条の規定となるわけであるが、今回のX・Y社の取引は、X社の法人税負担を不当に減少させる行為であると認められる可能性が十分あるものと考えられる。その場合、X社からY社への支出は、交際費ではなくAに対する賞与(役員給与)として損金算入できないものと考えられる。 (了)

#No. 514(掲載号)
#安部 和彦
2023/04/06
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