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プラス思考の経済効果 【第31回】「2024年度市民マラソン大会の経済効果」

プラス思考の経済効果 【第31回】 「2024年度市民マラソン大会の経済効果」   関西大学名誉教授・大阪府立大学名誉教授 宮本 勝浩   1 はじめに 2024年3月3日に開催された「東京マラソン2024」の経済効果は、経済効果の情報サイト「経済効果.NET」において、東京都内で約375億7,700万円であったと発表されています。また、筆者の研究室が2020年2月12日に計算した「第9回大阪マラソン(2019年12月1日開催)」の経済効果は約177億円でした。 このように、大都市での「市民マラソン大会」は大きな経済効果をもたらし、地元経済の活性化と地域の知名度の向上に寄与するため、各地域で市民マラソン大会が開催されるようになってきていました。しかし、大都市と比べて人口の少ない地方では、市民マラソン大会を開催していたものの、新型コロナの流行を境にして中止、廃止する都市が発生しています。今回は、「曲がり角にきた市民マラソン大会」の経済効果について分析してみます。 人口の少ない都市や集客力の弱い大会の中には、毎年のように中止や廃止が発生していますので、データの収集が困難になってきています。そこで、本稿では、資料の揃っている日本陸上競技連盟(以下「日本陸連」といいます)が公認している市民マラソン大会の経済効果について分析します。日本陸連公認の市民マラソン大会は全国で約70大会あります。   2 平均的な市民マラソン大会の直接効果 (1) 直接効果 市民マラソン大会の直接効果として、次の4項目を考察します。 (2) ランナーの消費支出額 日本陸連が公認している約70の大会のうち、今年度に中止となった大会が3大会、データが明確でない大会が4大会ありますので、分析可能な大会は63大会になります。そして、63大会のランナーの定員は61万6,420人でしたので、1大会当たりの定員は約9,784人となります。 また、63大会の参加総費用は約79億4,492万円でしたので、1人当たりの参加費用は約1万2,889円になります。 ① 宿泊ランナーの消費支出 ランナーの消費額を宿泊ランナーと日帰りランナーに分けて考えてみます。大阪マラソンを例にとると、宿泊ランナーは約30%、日帰りランナーは約70%でしたので、9,784人のうち約2,935人は宿泊ランナー、約6,849人は日帰りランナーと仮定します。 国土交通省観光庁の「旅行・観光消費動向調査 2023年年間値(確報)」(2024年4月30日)によると、国内宿泊旅行の1人当たり旅行支出は6万3,253円、日帰り旅行は1万9,027円です。宿泊旅行の1人当たり旅行支出からランナーの参加費用1万2,889円を差し引くと、5万364円となります。そして、一般の観光旅行と異なりマラソン大会への参加のため、この5万364円を観光に支出しないと考えて、交通費、宿泊費、食事代だけで、8割程度の金額4万291円で済むと仮定します。 ② 日帰りランナーの消費支出 日帰りのランナーについても、同様に1人当たり旅行支出1万9,027円から参加費用を支払った残額の約8割を必要な消費支出と仮定すると、1人4,910円となります。 ③ ランナーの消費支出の総額 この結果、ランナーの消費支出の総額は約1億5,188万円となります。 (3) 観客・応援者の消費支出 次に、観客・応援者の消費支出を推計します。本稿では過去の経験から、ランナーが9,784人の大会での観客・応援者はランナーの約10倍の約10万人と仮定します。 ① 宿泊する観客・応援者の消費支出 遠方から来て宿泊するランナーには、平均1人の家族、友人などが宿泊で応援に来ると仮定すると、約2,935人が宿泊応援者となります。宿泊する観客・応援者は観光に来ているのではなく、マラソンの応援に来ているので、観光などの消費はほとんどしないと考え、消費支出はランナーと同額の約4万291円と仮定します。その結果、遠方から来て宿泊する観客・応援者の消費支出の総額は約1億1,825万円となります。 ② 日帰りの観客・応援者の消費支出 日帰りの観客・応援者は、徒歩、自転車、車、バス、電車等を用いて大会に来ると考えられます。彼らは日帰りランナーのほぼ6割(約2,946円)の支出をすると仮定しますと、9万7,065人の日帰り観客・応援者の消費支出の総額は約2億8,595万円となります。 ③ 観客・応援者の消費支出の総額 以上の計算より、観客・応援者の消費支出の総額は約4億420万円となります。 (4) 主催者・支援者の消費支出 これまでは少ない経費で大きな経済効果が得られて、地元経済の活性化に繋がっていたので、市民マラソン大会が全国で開催されていました。しかし、最近は財政難で運営が苦しい大会が増えてきています。本稿では、自治体の予算、地元の有力企業、商店街、自治会などの支援を得て、合計約2億円の予算で開催していると想定します。 (5) ボランティアの消費支出 大会を支えるボランティアの数は数百人から数万人まで様々ですが、ランナーが約1万人規模の大会では、1,000人程度の人数が必要となります。ボランティアは交通費、飲食費、雑費など1人当たり約3,500円の出費と仮定しますと、ボランティアの消費支出は総額約350万円となります。 (6) 直接効果の合計 以上の計算より、平均的な市民マラソン大会の直接効果の合計は約7億5,958万円となります。   3 経済効果 次に、日本陸連公認の市民マラソン大会で平均的な大会の経済効果を計算してみましょう。 日本陸連が公認している市民マラソン大会のうち、63大会の平均値をとった1大会当たりの直接効果は約7億5,958万円となりました。総務省内閣府が作成した最新の「全国の産業連関表」(2024年に発表した2020年版の「全国の産業連関表」の修正版)を用いて経済効果を分析すると、経済効果は以下のように約16億4,069万円となります。 〈2024年度の市民マラソン大会の1大会当たりの経済効果〉 2024年度に日本陸連が公認している市民マラソンの67大会(データのある63大会とデータはないが開催予定の4大会)の2024年度の経済効果は、約1,099億2,623万円となりました。   4 まとめ 日本全体での市民マラソン大会数は、数百とも千数百ともいわれていますが、毎年中止や廃止が相次ぎ正確な数値は不明です。株式会社計測工房が2020年3月30日に更新した資料によると、参加者5,000人以上の市民マラソン大会は164大会でした。全国のその他のフルマラソン、ハーフマラソン、10キロマラソンなどを含めるとさらに数は多くなります。 本分析の結論は以下の通りです。 (了)

#No. 600(掲載号)
#宮本 勝浩
2024/12/26

《速報解説》 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の延長~令和7年度税制改正大綱~

《速報解説》 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の延長 ~令和7年度税制改正大綱~   税理士 徳田 敏彦   令和6年12月20日(金)に与党(自由民主党・公明党)より「令和7年年度税制改正大綱」が公表された。 本稿では、令和7年年度税制改正大綱において明らかとなった結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の改正点及び今後の動向等について解説する。   1 制度の概要 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置は、平成27年4月1日から令和7年3月31日までの間に、父母、祖父母等の直系尊属が18歳以上50歳未満の子、孫等へ結婚・子育て資金を信託等により一括して拠出した場合に、受贈者ごと1,000万円(うち、結婚に際して支払う金銭は300万円)まで贈与税が非課税となる制度である。 なお、贈与者が死亡した場合には、死亡日における非課税拠出金額から支出した金額を控除した管理残額を、贈与者から相続等により取得したものとみなされ、相続税の課税価格に算入する。 また、契約期間が終了した場合(例:受贈者が50歳に達したこと、口座残高が0円になったこと、受贈者が死亡したこと)に、管理残額がある場合には、その管理残額が受贈者の贈与税の課税価格に算入される制度である。   2 改正点 適用期限を2年延長し、令和9年3月31日までとする。   3 利用件数 財務省資料によると、令和5年3月末時点の本制度の利用実績は契約件数:7,591件(令和4年3月末:7,363件)、信託財産設定額:約236億円(令和4年3月末:約224億円)である。 9年間で利用件数の1年当たりの平均件数は843件であるが、令和4年から令和5年までの1年間での利用件数の増加は228件に留まっている。   4 今後の動向 令和5年度税制改正大綱の「基本的な考え方」で「令和3年度税制改正で『制度の廃止も含め、改めて検討』とされた後も利用件数は低迷している状況にあり、次の期限到来時には利用件数、利用実態を踏まえ、制度の廃止も含め、改めて検討する」と記載されていた。 そして、今回の令和7年度税制改正大綱の「基本的考え方」では、令和5年度税制改正以後においても利用件数が低迷する状況を鑑み、「子育てを巡る給付と負担のあり方や真に必要な対応策について改めて検討すべきである。他方、現在『こども未来戦略』の集中取組期間(令和8年度まで)の最中にあり、こども・子育て政策を総動員する時期にある。このため、本措置を特に集中取組期間であることを勘案し、適用期限を2年延長する」としている。 上記の通り、令和7年3月31日で廃止されることが予想されていたが、国全体の政策と合わせることを重視し、2年延長となった模様である。   5 これまでの改正の推移 改正の推移を一覧表にすると以下となる。 (出典) 国税庁発表資料を一部加工   6 相続税申告での留意点 税理士業務として相続税申告を受託した場合には、管理残額の相続税の課税価格への加算があるため、過去の本制度の利用を必ず確認する必要があることに留意したい。 納税者自身は贈与税が非課税扱いのため、すべての税目に影響しないと考え、相続税申告の際に税理士へ本制度を利用していることを伝達し忘れることも想定される。 (了)

#徳田 敏彦
2024/12/25

《速報解説》 新リース会計基準に伴うリース取引に係る所要の整備~令和7年度税制改正大綱~

《速報解説》 新リース会計基準に伴うリース取引に係る所要の整備 ~令和7年度税制改正大綱~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2024(令和6)年12月20日、自由民主党と公明党は、「令和7年度税制改正大綱」を決定した。 本稿では税制改正大綱のうち、リース取引に関連する部分について取り上げる。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 リースに関する取引について、次の整備を行う。 なお、下記の「オペレーティング・リース取引」とは、資産の賃貸借のうちリース取引(ファイナンス・リース取引)以外のものをいう。 (了)

#阿部 光成
2024/12/24

《速報解説》 土地の所有権移転登記等に係る登録免許税の特例措置の延長等、登録免許税に係る主な改正事項~令和7年度税制改正大綱~

《速報解説》 土地の所有権移転登記等に係る登録免許税の特例措置の延長等、 登録免許税に係る主な改正事項 ~令和7年度税制改正大綱~   税理士・行政書士・AFP 山端 美德   令和6年12月20日(金)、与党(自由民主党と公明党)による「令和7年度税制改正大綱」が公表された。 登録免許税に係る主な改正事項は、以下のとおりである。   1 所有者不明土地等問題の解決のための登録免許税の特例措置の延長 所有権の登記名義人が死亡した後も相続登記がされていない土地の発生原因の1つとして相続登記の費用の負担が指摘されている。このことから、相続登記を促進することを目的として登録免許税の特例措置が設けられており、特例措置を令和9年3月31日まで2年延長する。 ① 相続(遺贈を含む)により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合には令和9年3月31日までに、その死亡した方をその土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については、登録免許税を課さない。 ② 個人が令和9年3月31日までに、表題部所有者の相続人が土地の所有権の保存登記又は相続による所有権の移転登記を受ける場合において、不動産の価額が100万円以下であるときは、その土地の所有権の保存登記又はその土地の相続による所有権の移転登記については、登録免許税を課さない。   2 リート及び特定目的会社に係る登録免許税の特例措置の延長 不動産証券化市場の発展を促進することを目的として、投資法人、投資信託及び特定目的会社が取得する不動産に係る所有権の移転登記に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を令和9年3月31日まで2年延長する。   3 不動産特定共同事業法上の特例事業者に係る登録免許税の特例措置の延長等 特例事業者等が不動産特定共同事業契約により、一定の建設又は改修を行うために不動産を取得した場合の所有権の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置について、次の措置を講じたうえ、適用期限を令和9年3月31日まで2年延長する。 ① 特例事業者等が不動産の取得後に新築又は特定増築等に着するまでの期間要件を不動産の取得後3年以内(現行は2年以内)とする。 ② 特例事業者等が取得する建替え又は特定増築等をすることが必要な建築物の築年数要件を、新築の日から 15年(現行は10年)を経過したこととする。 (了)

#山端 美德
2024/12/23

《速報解説》 防衛特別法人税の創設及び中小法人等の軽減税率の特例に伴う法人税率の見直し~令和7年度税制改正大綱~

 《速報解説》 防衛特別法人税の創設及び 中小法人等の軽減税率の特例に伴う法人税率の見直し ~令和7年度税制改正大綱~   辻・本郷税理士法人 税理士 安積 健   本稿では、令和6年12月20日(金)に公表された令和7年度税制改正大綱のうち、法人税率に関する改正、具体的には、「中小法人等の軽減税率の特例」及び「防衛力強化に係る財源確保のための税制措置のうち法人税に関する部分」について解説する。   1 中小法人等の軽減税率の特例 (1) 改正前 現在、内国法人である普通法人に係る法人税率は、原則として23.2%である。ただし、普通法人のうち、資本金1億円以下であるものは、各事業年度の所得金額のうち年800万円以下の金額について、19%となっており、さらに、租税特別措置法(以下、「措置法」という)により令和7年3月31日までの間に開始する各事業年度については15%に軽減されている。 措置法による特例税率は、平成21年度の改正において、リーマンショック後の金融不安や景気後退の影響を受けやすい中小企業が安心して意欲的に企業活動を営めるよう当時の法人税法の軽減税率22%を18%まで引き下げる時限措置として導入され、その後平成23年度の改正では、法人税法の基本税率及び軽減税率の引下げに伴い15%まで引き下げられ現在に至っている。 これに対して、平成26年6月の税制調査会では、中小法人課税の見直しの一環として、リーマンショック後の対応として設けられた時限的な上記特例税率はその役割を終えていると指摘されていた。 (2) 改正後 措置法による特例税率は、賃上げや物価高への対応に迫られている中小法人の状況を踏まえ、極めて所得が高い中小法人等についての見直しを行った上で、適用期限が2年延長されることになった。なお、時限的に設けられた措置であること等を踏まえ、次の適用期限の到来時においてその存否が改めて検討されることになっている。 具体的には、次の3点が今回の改正内容である。 上記②及び③の見直しの対象は、改正前の軽減税率の適用者の0.3%、中小法人全体の0.1%と想定されている。 〈通算法人以外〉 (※1) 普通法人のうち各事業年度終了の時の資本金(出資金)の額が1億円以下であるもの又は資本(出資)を有しないもの(ただし、相互会社、大法人による完全支配関係がある法人、投資法人、特定目的会社、受託法人を除く) (※2) 適用除外事業者は15%(17%)の適用なし 〈通算法人〉   2 防衛力強化に係る財源確保のための税制措置のうち法人税に関する部分 (1) 経緯 我が国の防衛力の抜本的な強化を行うに当たり、安定的な財源を確保するため、令和5年度税制改正大綱では、令和9年度に向けて複数年かけて段階的に実施することとし、令和9年度において1兆円強を確保することが明記された。そして、法人税については、法人税額に対し、税率4~4.5%の新たな付加税を課すこと、及び課税標準となる法人税額から500万円を控除するとされた。 (2) 改正内容 令和7年度税制改正により、法人税については、下記の点が措置されることとなった。 改正前後の実効税率は以下の通りである。 (了)

#安積 健
2024/12/23

《速報解説》 生命保険料控除の拡充等の子育て支援に係る税制措置~令和7年度税制改正大綱~

 《速報解説》 生命保険料控除の拡充等の子育て支援に係る税制措置 ~令和7年度税制改正大綱~   税理士 菅野 真美   少子高齢化による日本の生産人口の減少は日本経済の衰退を招きかねない。出生率を増やすためには安心安全に子育てができるための政府の支援が不可欠である。こういった背景をもとに、令和7年度税制改正大綱において盛り込まれた子育て支援に係る3つの税制措置について、本稿で解説する。   1 ⼦育て世帯に対する⽣命保険料控除の拡充 生命保険料控除のうち一般保険料控除額の控除限度額は4万円であるが、改正により、年齢23歳未満の扶養親族を有する場合は、適用限度額を6万円まで増額する予定である。 〈控除額の計算表(改正後)〉 ただし、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除及び個人年金保険料控除の合計適用限度額は12万円で現行のままである。 なお、大綱によると 一時払生命保険については、2万円の上乗せ措置を時限的に講じている間は控除の適用対象から除外しない予定である。   2 ⼦育て世帯等に対する住宅ローン控除の拡充 これは、令和6年限りの措置として 特例対象個人(※)が認定住宅等の新築等をして居住の用に供した場合には、住宅ローン控除の借入限度額の上乗せ等ができるものであったが、令和7年限りの措置として継続する。 (※) 特例対象個人とは、次のいずれかの条件を満たす個人 ① 年齢40歳未満であって配偶者を有する者 ② 年齢40歳以上であって年齢40歳未満の配偶者を有する者 ③ 年齢19歳未満の扶養親族を有する者   3 ⼦育て世帯等に対する住宅リフォーム税制の拡充 これも、令和6年限りの措置として 特例対象個人が持家の子育て対応改修工事をして居住した場合には税額控除が適用できるものであったが、令和7年限りの措置として継続する。   4 適用関係 上記の税制措置の適用時期であるが、生命保険料控除の改正は、令和8年分以後の所得税について適用される予定である。住宅ローン控除の改正は、特例対象個人が、認定住宅等の新築等をして令和7年中に居住の用に供した場合に適用され、住宅リフォーム税制の改正は、特例対象個人が子育て対応改修工事をした家屋に令和7年中に居住の用に供した場合に適用される予定である。 (了)

#菅野 真美
2024/12/23

《速報解説》 [続報・詳報]令和7年度税制改正大綱(与党大綱)~中小企業軽減税率は一部見直し、防衛特別法人税は令和8年4月から、大学生就業調整対策として特定親族特別控除を創設、外国人旅行者向け消費税免税制度はリファンド方式導入へ~

《速報解説》 [続報・詳報]令和7年度税制改正大綱(与党大綱) ~中小企業軽減税率は一部見直し、防衛特別法人税は令和8年4月から、 大学生就業調整対策として特定親族特別控除を創設、 外国人旅行者向け消費税免税制度はリファンド方式導入へ~   Profession Journal編集部   既報のとおり、12月20日(金)、自由民主党・公明党は「令和7年度税制改正大綱」(いわゆる与党大綱)を公表した。今般の大綱公表にあたっては、本年秋以降の政局が大きく影響することになった。これにより例年より遅れての公表に加え、税制改正関連法案の成立に向けた来年の動向にも引き続き注視が必要だろう。 国民民主党を加えた3党協議が行われた年収103万円の壁解消に向けた取組みは、結果として基礎控除・給与所得控除の引上げにより123万円とされたが、基礎控除額の引上げにより他の所得控除に係る要件も各所に見直しが行われており、かつ、目前にせまる令和7年分以後の適用とされているため、実務上は注意が必要だ。 法人税では中小企業の軽減税率など、従前のような単純延長ではなく、政府が推進するEBPM(証拠に基づく政策立案)に基づき、将来の廃止も視野に入れた見直しが織り込まれている。また、「当面の間、課する」としている防衛特別法人税は、基礎控除額年500万円とはされているものの、今後の中小企業も含めた法人税の計算・申告実務への影響は留意が必要だろう。なお、事前の一部報道では見直しを行わないとされていた、新リース会計基準を受けたリース取引に関する税制は、リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例を廃止する等、収益認識会計基準に対応した平成30年度税制改正のように経過措置を含め改正が行われる。 以下、主な改正事項を紹介する。例年のとおり重要な改正事項については年末から年始にかけて個別に速報解説を順次公開していくので、そちらを参照いただきたい。 なお、こちらの[資料リンク集]ページも今後更新を重ねていくので、ログインの上、ブックマークボタンを押すなどして確認できるようにしていただきたい。 さらに1月7日(火)から2月28日(金)の期間、毎年ご好評いただいている弊社主催セミナー「60分でわかる!令和7年度税制改正大綱はこう読む」の録画動画配信が行われるため、ぜひお申込みの上、ご視聴されたい。   〇就業調整対策として基礎控除・給与所得控除の控除額引上げ、特定親族特別控除の創設 「年収の壁」問題として議論された結果、基礎控除については、合計所得金額が2,350万円以下である個人の控除額を10万円引き上げる。この見直しによって基礎控除額は現行の3段階から以下の4段階となる。また、給与所得控除については、55万円の最低保障額が65万円に引き上げられる。 これらの改正は令和7年分以後の所得税(令和8年度分以後の住民税)から適用するとしているが、「給与所得の源泉徴収税額表(月額表、日額表)及び賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表の改正については、令和8年1月1日以後に支払うべき給与等について適用する。」等との記述から、令和7年分は年末調整での対応が必要と考えられるため、今後、国税庁から公表される情報にも留意が必要だ。 次に大学生のアルバイト就業調整について税制が一因となっているとの指摘を受け、特定親族特別控除(仮称)が創設される(令和7年分以後の所得税(令和8年度分以後の住民税)から適用)。具体的には、居住者が生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族等(その居住者の配偶者及び青色事業専従者等を除き合計所得金額が123万円以下であるものに限る)で控除対象扶養親族に該当しないものを有する場合には、その居住者のその年分の総所得金額等から最大63万円(配偶者特別控除のように親族等の合計所得金額により控除額が逓減する仕組み)を控除する。 その他、上記の基礎控除額引上げに伴い、次の措置が講じられる。 なお与党大綱の「基本的考え方」では下記内容が記載されており、税制改正関連法案の審議動向を注視したい。   〇子育て支援目的の生命保険料控除見直しは令和8年から 6年度大綱において、「令和7年度税制改正において結論を得る」としていた子育て支援に関する政策税制のうち、高校生年代の扶養控除及びひとり親控除の控除額見直しについてはさらに「令和8年度以降の税制改正おいて結論を得る」とされたが、生命保険料控除は6年度大綱の記載通り、新生命保険料に係る一般枠(遺族保障)について、23歳未満の扶養親族を有する場合には現行の4万円の適用限度額に対し2万円の上乗せ措置等が講じられる(一般・介護・個人年金保険料控除の合計適用限度額12万円は変更しない)。ただし令和8年分からの適用とされる。 また、6年度改正で先行的に措置され令和6年末までの居住供用が要件とされている、子育て世帯に向けた住宅ローン控除及び住宅リフォーム税制(住宅特定改修特別税額控除)の借入限度額の拡充等は、新たに同内容の措置が、令和7年1月1日から同年12月31日までの間に居住の用に供した場合に限り措置される。 その他所得課税関係では、企業型確定拠出年金及び個人型確定拠出年金(iDeCo)の拠出限度額引上げが行われるほか、法人課税信託に係る所得税の課税の適正化(受益者等の存しない信託である法人課税信託が、受益者等が存することにより法人課税信託に該当しなくなった場合の受益者等への課税措置)が講じられる。 なお暗号資産取引に係る課税については大綱の「検討事項」において、下記記載にとどまった。   〇令和8年に防衛特別法人税(仮称)を創設 防衛力強化に係る財源確保のための税制措置(法人税、所得税及びたばこ税に係る付加税等の税制措置)については、令和5年度税制改正大綱に初めて明記され令和6年度税制改正法では附則第74条《防衛力強化に係る財源確保のための税制措置》として同内容とともに施行時期については「所要の検討を加え、その結果に基づいて適当な時期に必要な法制上の措置を講ずるものとする」とされていたところ、令和7年度改正ではこのうち法人税及びたばこ税に係る制度実施が明記された(所得税については103万円の壁の引上げ等の影響も勘案しながら引き続き検討するとしている)。 防衛力強化に係る財源確保のための税制措置として、各事業年度の所得に対する法人税を課される法人(人格のない社団等及び法人課税信託の引受けを行う個人を含む)は、法人の各課税事業年度の基準法人税額について、新たな付加税「防衛特別法人税(仮称)」が課される。適用開始は令和8年4月1日以後に開始する事業年度からで、適用期限については「当分の間」とされており、具体的な時期は示されていない。 防衛特別法人税の額は、各課税事業年度の課税標準法人税額(課税標準)に4%の税率を乗じて計算した金額とされる。上記のとおり納税義務者は大法人に限定していないが、中小法人に配慮する観点から、課税標準法人税額は、基準法人税額から基礎控除額(年500万円)を控除した金額となる。なお、防衛特別法人税は法人税と同様に中間申告も必要であり(中間申告書の提出は令和9年から)、確定申告後の還付制度も整備される。   〇適用期限を迎える法人税の各減税措置 上記の新税創設により実質的に法人税率の引上げが行われる一方、来年3月で適用期限切れとなる中小企業者等の法人税率の軽減特例(所得800万円以下は法人税率15%、措法42の3の2①)については令和9年3月31日まで2年延長される。ただし一律の引下げは投資や賃上げを促す効果に乏しいとの見方もあり、極めて所得が高い中小企業等に対する見直しが行われ、所得の金額が年10 億円を超える「事業年度」については上記の軽減税率を17%に引き上げることとされ、またグループ通算制度の適用を受けている法人は適用除外とされる。 この軽減税率については大綱取りまとめにあたり「中小法人全体の6割を占める欠損法人(約177万件)に対しては効果が及ばない」との見解も示され、さらに「基本的考え方」においても「リーマン・ショックの際の経済対策として講じられた時限措置」であるとの見解を示す等、次の適用期限を迎える際はさらなる見直しの可能性も考えられよう。 他に適用期限を迎える法人税制としては、中小企業経営強化税制(措法42の12の4)については成長意欲の高い中小企業の設備投資を後押しするため収益力強化設備(B類型)について、売上高100億円超を目指す中小企業に係る拡充措置を講じた上で、コロナ禍で追加されたC類型(デジタル化を通じた非対面・非接触ビジネスの推進等のための設備)を除外する等の見直し等を行い適用期限が令和9年3月31日まで2年延長されるほか、中小企業投資促進税制(措法42の6)及び生産性向上や賃上げに資する中小企業の設備投資に関する固定資産税の特例措置(地法附則15㊹)、については一部見直しを行った上で、中小企業防災・減災投資促進税制(措法44の2)については一部縮減を行った上で、それぞれ適用期限が令和9年3月31日まで2年延長される。 また、地域未来投資促進税制(措法42の11の2)及び地方創生応援税制(いわゆる「企業版ふるさと納税」)(措法42の12の2)についても一部見直しを行った上で、それぞれ適用期限が令和10年3月31日まで3年延長される。一方、5G導入促進税制(措法42の12の6等)及びDX投資促進税制(措法42の12の7等)については適用期限である令和7年3月31日をもって廃止されることが明らかとなった。 なお、令和7年4月1日から任意適用、令和9年4月1日から強制適用が開始される新リース会計基準を受け、法人がオペレーティング・リース取引によりその取引の目的となる資産の賃借を行った場合に支払う費用の損金算入規定、リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例の廃止、リース期間定額法の見直しの他、リース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例の廃止(消費税)が一部経過措置と共に手当てされる。 国際課税では国内でも法制化が進められているグローバル・ミニマム課税(「第2の柱」)について、令和5年から6年にかけ整備された所得合算ルール(IIR)に続き、令和7年度改正では軽課税所得ルール(UTPR)及び国内ミニマム課税(QDMTT)の法制化が行われる。適用開始時期は対象企業の準備期間を確保する観点等からいずれも令和8年4月以後に開始する対象会計年度とされる。また、外国子会社合算税制は上記「第2の柱」の導入により対象企業に追加的な事務負担が生じること等を踏まえ、添付書類の一部除外等、手続きの簡素化等が行われる。   〇事業承継税制は前年に続いて見直し、結婚・子育て資金贈与特例は延長 法人版事業承継税制の特例措置は令和6年度改正において特例承継計画の提出期限が延長されたところだが、適用に当たっての後継者の要件として後継者が贈与日まで続けて3年以上役員に就任していることが求められており(役員就任要件)、この特例措置の適用期限は令和9年12月31日であることから、特例を適用するためには後継者が令和6年12月31日までに役員に就任していなければならず、実務上、困難との指摘があった。このため今回の改正では役員就任要件が見直され、贈与の「直前」において特例認定贈与承継会社の役員等に就任していればよいこととされる(個人版事業承継税制の事業従事要件も同様)。なお法人版事業承継税制については、今回の大綱「基本的考え方」においても「適用期限は今後とも延長しない」と述べられている。 次に子や孫などの結婚や子育て費用として、直系尊属が贈与した資金に関して一定額まで非課税とする結婚・子育て資金一括贈与に係る贈与税の非課税措置(措法70の2の3)については、制度の利用件数が少ないことなどもあり廃止の議論もあったが、「こども未来戦略」の集中取組期間であり政策を総動員する時期であることを理由に、適用期限が令和9年3月31日まで2年延長されるほか、相続税の物納制度における物納許可限度額等について、物納許可限度額の計算の基礎となる延納年数は納期限等における申請者の平均余命の年数を上限とする等の見直しが行われている。 その他、登録免許税関係では、相続登記等の促進のための登録免許税の免除に関する特例措置及びリート及び特定目的会社に係る登録免許税の特例措置がそれぞれ令和9年3月31日まで2年延長されるほか、特例事業者等が不動産特定共同事業契約に基づき不動産を取得した場合の所有権の移転登記等に係る税率の特例措置について、一部見直しが行われた上で同様に令和9年3月31日までの2年延長が示されている。   〇外国人旅行者向け消費税免税制度に「リファンド方式」導入 外国人旅行者に対する消費税の免税制度は、税務署長の許可を受けた輸出物品販売場(免税店)を経営する事業者が、免税購入対象者(非居住者)に対し免税対象物品(免税品)を一定の方法で販売する場合に消費税が免除される制度。ただし近年、免税購入品の国内での横流し等の不正が多発していることから、6年度大綱では「令和7年度税制改正において新たな制度の詳細について結論を得る」としていた。 令和7年度改正では、新たな仕組みとなる「リファンド方式」の導入及び免税販売要件の見直し等が織り込まれている。「リファンド方式」とは、免税店が販売時に外国人旅行者から消費税相当額を預かり、出国時に持ち出しが確認された場合に、旅行者にその消費税相当額を返金する仕組み。リファンド方式では税関と事業者とのシステム連携が必要とされることから、準備期間を考慮し施行については令和8年11月1日とされている。   〇納税環境整備 電子取引データの保存制度は、申告所得税等における電子取引を行った場合に、一定の要件に従ってその電子取引データを送受信・保存しなければならない制度であるが、複製・改ざん行為が容易である等の特性に鑑みて、その電子取引データに係る隠蔽・仮装行為については重加算税を10%加重することとしている。 上記に対する見直しとして、請求書等が、データ連携に適したデジタルデータで送受信される場合に、その保存及び処理を自動化するシステムが流通している現状を踏まえ、こうしたシステムを使用して送受信されたデジタルデータ(電子取引データ)は事業者の事務負担軽減等だけでなく、税務の観点からもその保存及び処理の適正性が確保されたものと認められるため、国税庁長官が定める基準に適合するシステムを使用した上で、❶改ざん防止の確保、❷記帳の適正性確保、❸電子帳簿との相互関連性確保の要件を満たして送受信・保存を行う場合のその電子取引データに関連する隠蔽・仮装行為については、重加算税の10%加重の適用除外とする措置が講じられる(令和9年1月1日以後適用)。 さらに青色申告特別控除の上乗せ措置(55万円→65万円)の要件(①優良な電子帳簿の保存又は②電子申告)に加え、上記❶~❸の要件を満たすシステムを使用した上で、実際にその要件を満たしうる電子取引データを要件に沿って保存している者(一定の電子帳簿を保存している者に限る)についても適用できることとされる。 その他、納税環境整備としては、e-Taxで申請書面等記載事項及び添付書面等記載事項をスキャナによる読取り等により作成する電磁的記録(いわゆる「イメージデータ」)を送信する場合の階調の要件を白色から黒色までの階調が256階調以上(グレースケール)とし、このイメージデータのファイル形式にJPEG形式を加えること(令和10年1月1日から)、所得税の確定申告書の添付書類について、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除の適用を受ける場合に、現行の控除証明書等の添付又は提示に代えて、その記載内容を記載した明細書の添付ができることとする見直し(5年間の証明書保存要件あり)が、令和8年分以後の確定申告書を令和9年1月1日以後に提出する場合から適用される。これらは再来年以降の施行ではあるが、実務に近い改正でもあり、法制度だけでなく会計等システムも順次見直されることから、失念しないよう留意されたい。 (了)

#Profession Journal 編集部
2024/12/23

《速報解説》 令和7年度税制改正大綱が公表される~年収103万円の壁は基礎控除・給与所得控除の引上げで令和7年分から123万円へ~

《速報解説》 令和7年度税制改正大綱が公表される ~年収103万円の壁は基礎控除・給与所得控除の引上げで令和7年分から123万円へ~   Profession Journal編集部   12月20日(金)、自由民主党・公明党は「令和7年度税制改正大綱」(いわゆる与党大綱)を公表した。 議論の焦点となっていた年収103万円の壁は、令和7年分以後の所得税より ことで、123万円へ引き上げられることが明記された。 ※その他、続報・詳報は例年通り、追って本誌速報解説にて解説、メールマガジンにて公開をお知らせしますので、ブラウザページ右からのメルマガ登録をお勧めします。 (了)

#Profession Journal 編集部
2024/12/20

プロフェッションジャーナル No.599が公開されました!~今週のお薦め記事~

2024年12月19日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.599を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2024/12/19

〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第68回】「定期同額給与と宿日直手当等」

〈ポイント解説〉 役員報酬の税務 【第68回】 「定期同額給与と宿日直手当等」   税理士 中尾 隼大   ○●○● 解 説 ●○●○ (1) 定期同額給与と諸手当の支給 役員に対する人件費については、いわゆるお手盛り防止や恣意性の排除の観点から定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与の制度が税務上設けられており、これらに該当しなければ損金算入が認められないのは周知のとおりである。その中でも定期同額給与は代表的な論点であるため、その考え方は実務に深く浸透しているといえる。 それでは、今回の質問にあるような医師である医療法人の役員を対象として、宿直手当や日直手当を支給する場合には、どのように判断すればよいのだろうか。この点について具体的に示された事例として松江地裁令和3年2月8日判決があるため(※1)、以下に概要を紹介する。 (※1) 税務訴訟資料271号順号13521、TAINS:Z271-13521。評釈として、林仲宣・高木良昌「定期同額給与・医療法人の理事長の宿日直手当」税務弘報71巻(2023)12号158頁、小仙健太郎「医療法人の理事に支給した宿日直手当等の『最低月額部分の損金算入の可否』と『定期同額給与該当性』」税務事例56巻(2024)10号70頁等がある。   (2) 役員に対する宿日直手当等について定期同額給与に該当しないとされた事例 本件は、医療法人の役員に対する「基本給部分」ではなく、諸手当についての定期同額給与該当性が争われた事例である。納税者は、土曜日直手当や回数手当については理事自らが宿日直等を行ったことに対する所定の基準に基づいており、月々の変動はほとんどなく、恣意性や利益調整性は全くないことを主張した。 また、国税庁が公表している「役員給与に関するQ&A」にて、役員給与の増額改定が行われた場合、その年度における定期給与の全額を損金不算入とするのではなく、改定による差額部分のみを損金不算入とする解釈を示していることから、本件宿日直手当等のように、あらかじめ定められた支給基準に基づき毎月支給される給与の最低月額部分を損金に算入するとの解釈も可能である等の主張も行っている。 これに対し裁判所は、法人税法34条の趣旨が役員給与の支給の恣意性を排除することにある点に触れた。そのうえで、法人税法施行令69条1項1号に掲げる改定以外の改定で「役員給与に関するQ&A」で国税庁が示すような解釈が可能であるのは、増額改定前の額に改定による増額分を上乗せしていると解すことが可能であるからであると示し、本件宿日直手当等の支給が、毎月一定額を支給したものでも給与改定を行ったものでもなく、本件宿日直手当等は「給与の支給そのもの」であるため経済的利益にも該当しないとしている。   (3) 本件裁判例の意義 冒頭で確認したように、定期同額給与は、役員給与の支給について、納税者の恣意性を排除するための規定である。本件裁判例は、諸手当等の形で多少といえども毎月支給額が変動する支給が定期同額給与に該当し得ることが法人税法34条の文理からは読み取れず、損金算入は認められないということを改めて示したという点に意義があると思われる。 仮に、医療法人の役員が宿直等を行い、それに報いるための支給を考える場合、一定額の手当を最低限として支給したうえで変動手当は別途計算することで、固定手当については定期同額給与に該当する可能性を指摘する意見もある(※2)。 (※2) 林・高木・前掲(※1)159頁。 このような役員に対して宿日直手当等を支給する例を見かけることはほとんどないと思われるが、仮に宿日直手当等見合いの金銭の額を損金算入したいと考える場合、定期同額給与の額を決定する際の判断要素として加味したうえで事前に決定し、定期同額給与に該当するようにするべきであるといえるだろう。   (了)

#No. 599(掲載号)
#中尾 隼大
2024/12/19
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