《速報解説》 ASBJ、条件付取得対価に係る見直しなどを織り込んだ 「企業結合に関する会計基準」等を改正 ~平成31年4月1日以後開始事業年度実施の組織再編から適用~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成31年1月16日、企業会計基準委員会は、「企業結合に関する会計基準」(改正企業会計基準第21号。以下「企業結合会計基準」という)及び「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」(改正企業会計基準適用指針第10号。以下「結合分離適用指針」という)を公表した。 これにより、平成30年8月21日から意見募集していた公開草案が確定することになる。公開草案に対する「主なコメントの概要とその対応」も公表されており、公開草案からの修正が行われている。 改正された企業結合会計基準等は次の事項を取り扱っている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 条件付取得対価に関する改正 1 定義 条件付取得対価の定義を次のように改正し、対価の一部が返還される場合の取扱いを規定する。アンダーラインが改正部分である(企業結合会計基準注解(注2)(注3))。 2 会計処理 条件付取得対価が企業結合契約締結後の将来の業績に依存する場合において、対価の一部が返還されるときには、条件付取得対価の返還が確実となり、その時価が合理的に決定可能となった時点で、返還される対価の金額を取得原価から減額するとともに、のれんを減額する又は負ののれんを追加的に認識する(企業結合会計基準27項(1)、結合分離適用指針47項(1))。 追加的に認識する又は減額するのれん又は負ののれんは、企業結合日時点で認識又は減額されたものと仮定して計算し、追加認識又は減額する事業年度以前に対応する償却額及び減損損失額は損益として処理する(企業結合会計基準注解(注4)、結合分離適用指針47項(1))。 Ⅲ 結合分離適用指針に関する改正 1 事業分離等会計基準の記載内容との整合性 結合当事企業の株主に係る会計処理に関する結合分離適用指針の記載について、事業分離等会計基準の記載内容との整合性を図るため改正する(結合分離適用指針279項から289項)。 2 分割型会社分割が非適格組織再編となり、分割期日が分離元企業の期首である場合の分離元企業における税効果会計の取扱い 分割型会社分割が非適格組織再編となり、分割期日が分離元企業の期首である場合の分離元企業における税効果会計の取扱いについて、平成22年度税制改正において分割型会社分割のみなし事業年度が廃止されていることから、結合分離適用指針の関連する定めを削除する(結合分離適用指針109項及び403項の削除)。 Ⅳ 適用時期等 (了)
《速報解説》 会計士協会、3月決算上場会社の会社法監査報告書日付の分布状況(2016-2018)を公表 ~期末監査の監査環境は依然厳しい状況、改元に伴う10連休への早期対応を促す~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2019年1月16日、日本公認会計士協会は、「「2016年から2018年における3月決算上場会社の会社法監査報告書日付の分布状況について」の公表及び2019 年3月期決算に向けた対応に当たって」を公表した。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 調査・分析の結果及び2019年3月期決算に向けた対応 「2016年から2018年における3月決算上場会社の会社法監査報告書日付の分布状況について」として、調査・分析の結果が示されている。 公表情報を基に分析した上記の資料を見る限りで、2016年から2018年にかけて会社法監査報告書日付等は、従来と比較して大きな変化は生じておらず、依然として期末監査の監査環境は厳しい状況にあると推察されている。 2019年3月決算では、4月27 日から5月6日までが10連休となることから、改めて期末監査スケジュールの見直しを行う等の実務上の対応が必要になる監査業務が多いことが想定される。 このため、各監査業務における状況に応じて、早い段階で被監査会社と密接に協議するなど、2019年3月期の期末監査に向けた対応について記載されている。 (了)
2019年1月17日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.302を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第72回】 「社会通念から読み解く租税法(その3)」 中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦 Ⅲ 社会通念という基準 これまで、興銀事件及び第二次納税義務の事例を素材に、判決において採用される「社会通念」たるものを考えてみた。 興銀事件では、社会通念というものが何を指しているか判然としなかったが、他方で、第二次納税義務の事例では、社会通念をいわば科学的な積上げ計算を行うための根拠として用いていたことが分かる。 このように「社会通念」という概念自体は必ずしも明確なものとはいえないし、その概念の使い方も多義的であろうが、その一方で、社会通念たる道具は、法の適用を社会的に承認させるためのツールであるとみることもできる。 中里実教授は、前述の興銀事件において鑑定意見書を提出した研究者の1人であるが、次のように述懐している。 中里教授は、法人税基本通達(昭和44年5月1日直審(法)25〔例規〕)の前文が、次のように述べている点を考慮して、それを貸倒れの認定に適用し、かかる判断基準として述べたというのである。 すなわち、法人税基本通達前文は次のように示している。 通達の運用は弾力的になされるべきところ、上記のとおり社会通念に反するような処理を厳に慎むよう命令が下されているのである。 ここでは、通達の適用においては、一旦社会通念たるフィルターを通して問題がないかどうかを考える必要性を説いているとみることもできる。 通達は法律ではないから、納税者に対して直接の拘束力を有するものではない。あくまでも法人税基本通達は、国税庁内部における租税法解釈の統一を図るために示達されているものであるが、この通達の適用が社会通念に反しているとすれば問題であるということが示されているものといえよう。 租税法律主義は、私たち国民が、国会という立法機関での議論を通じて制定された法律に対して「自己同意」をするところに着目し、そこに初めて納税義務を認めるという仕組みである。つまり、法律は自己同意のもとで私たち国民を拘束する。 他方、通達の起案者は私たち国民の代表者ではない。したがって、通達に示されたルールは私たち国民や裁判所を拘束するものでは決してない。そこが、法律と通達の異なるところである。 それでは、「社会通念」はどうであろうか。 社会通念は、私たち社会構成員が作り上げたいわば世の中における常識であるといえよう。そうであるとすれば、私たちは、社会通念に対して、ある種の自己同意をしているとみることができるのではなかろうか。社会通念の形成過程に私たち国民が関与しているとみることもあながち無理な理解の仕方とはいえまい。 このように考えると、単純に比較することはできないが、通達に対しては全くの第三者的な立場である私たち国民も、社会通念の形成に対しては何らかの寄与をしているとみることもできなくはないのである。 自己同意という視角から通達と社会通念を比較した場合、通達に比して、より社会通念につき、私たちの自己同意性を認めることができるのである。 そうであるとすれば、租税法律主義の思想の下、通達よりは、よほど社会通念の方が規範性の点で優位であるともいえ、少なくとも、通達が社会通念より上位に立って私たちの社会を縛っているとみることは妥当でなく、むしろ、社会通念の方に優位性を認めるべきであるといえよう。 そして、その私たち社会構成員が作り上げた社会通念たるものに従って裁判所が判断を下すこと、すなわち、社会通念が、法律に縛られる裁判官の判断枠組みに取り込まれること自体はなんら不思議なことではないのである。 本稿において示した事例のほかにも多くの租税事例において、裁判所が社会通念に従った判断を展開してきた。司法制度の中においても、私たちは、裁判官が社会通念に反する判断をしないことを求めるであろう。したがって、裁判官にも社会通念を念頭に置いた判断が求められるのである。 中里実教授は、「租税法の要件においては、法解釈に関しても、事実認定に関しても、かなり広範囲に『社会通念』という概念が用いられてきた」と指摘された上で、次のように述べられる。 結びに代えて 以上のとおり、自己同意性の観点から見れば、社会通念には通達よりも上位の規範性を認めることができるように思われる。そして、ひいては、社会通念に対して、私たち国民や裁判所を拘束する力を見出すこともできるのである。 更にいえば、法律というものが、そもそも社会通念を「法律」という形に一般化したものと整理することもできる。なぜなら、法律が社会構成員の総意によって形成されるのであれば、その法律自体に社会通念が反映されないはずがないからである。 この点は、櫻井敬子教授が、「裁判官は法律の形で一般化された社会通念というか、制度化された社会通念というものを解釈・適用しまして、これを認知する認知しないという最終的な決断をしている」とするとおりである(平成15年4月15日付け司法制度改革推進本部知的財産検討会第7回議事録)。 中里実教授が前述において指摘されるとおり、社会通念とは何も不確定概念ではない。社会通念自体が明確なものではないからといって、それが租税法律主義に反するものはない。また、課税要件の充足を論じるときに無視されてしかるべきものであるはずもない。 再説すると、社会通念は法律ではないものの、私たち社会構成員によって形成された観念であって、社会科学上の規範形成や事実認定に当然に入り込んでくるものであるということを改めて理解する必要があるのである。 租税法の解釈適用においても「社会通念」がしばしば顔を出すのは、それがいわば、常識的な判断を導くための重要な道具であるからにほかならない。 (了)
事例でわかる[事業承継対策] 解決へのヒント 【第1回】 「新しい事業承継税制と今まで進めてきた事業承継対策との関係」 太陽グラントソントン税理士法人 (事業承継対策研究会) パートナー 税理士 日野 有裕 相談内容 私は非上場会社Yの創業者オーナーである代表取締役のAです。現在に至るまで自分の息子Bを後継者と決めて、顧問税理士の助言を受けながら事業承継対策を進めてきました。 スキーム概要としては、私が1株のみの普通株式、Bが無議決権株式99株という株主構成の持株会社Zを設立し、その持株会社に私が持っているY社株式の80%を譲渡するというものです。 ところで、平成30年度税制改正において事業承継税制が改正され、今後10年間は非課税で株式を後継者に贈与・相続することができると聞きました。現在進めている事業承継対策をこのまま進めた方が良いのか、改正された事業承継税制を適用した方が良いのか悩んでいます。 【今まで進めてきた事業承継対策の概要】 ■ □ ■ □ 解 説 □ ■ □ ■ [1] 特例措置の適用要件の判定 まず、特例措置の概要については、以下の記事をご確認ください。 次に、事業会社Yの株式を20%しか所有していないA氏が、そもそも特例措置の対象になるのかどうかについて、Y社株式の贈与を前提として以下の通り判定します(措法70の7の5①、措令40の8の5①一)。 〇A氏が特例措置の贈与者となるための要件(以下のすべてを満たす必要があります。) このように、A氏【個人】がY社の筆頭株主(後継者を除く)でないため、特例措置によりY社株式を後継者であるB氏へ贈与することはできません。 早期に事業承継対策を進め、持株会社を使った対策を行った非上場会社については、A氏のような状況になっているケースが多いように思われます。 [2] 検討 (1) A氏が特例措置の贈与者となるための要件 A氏が特例措置の贈与者となるためには、A氏がY社の議決権の50%超を保有する必要があり、以下の2つの方法が考えられます。ただし、①②ともに、実行時においてA氏に資金負担が発生します。 (2) 特例措置の取消リスク 特例措置(正確には「非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予制度の特例」)は、その納税額が猶予されているだけで、免除されているのではありません。過大にリスクを強調するわけではありませんが、一定の事由が生じた場合は、猶予されていた税額に利子税をあわせて納付しなければなりません。 贈与の場合、猶予された税額を納付しなければならない主な事由は以下の通りです(措法70の7の5③)。詳細については、以下の記事をご参照ください。 上の表における「特例経営贈与承継期間」とは、最初に特例措置の適用を受ける贈与に係る贈与税の申告期限の翌日から次のいずれか早い日までの期間をいいます(措法70の7の5②七)。 (3) 結論 上記(1)(2)から考えると、今回の相談内容の場合、A氏は特例措置の適用を目指すのではなく、今まで進めてきた事業承継対策を進めることの方が、資金負担・リスクの面で有利だと考えます。 現状では、A氏の所有するY社株式の残り20%をどうするか決めれば、Y社株式に係る承継は完了しますので、その対策に注力すべきでしょう。 なお、具体的な対策については、税理士等の専門家と相談の上、実行されることをお勧めします。 (了)
平成30年分 確定申告実務の留意点 【第2回】 「平成30年に災害で被害を受けた場合の確定申告」 公認会計士・税理士 篠藤 敦子 平成30年も、各地で甚大な災害が発生した。災害により被害を受けられた方々に、心よりお見舞いを申し上げる。 確定申告実務の留意点【第2回】は、被災した個人が適用することのできる制度(主に雑損控除)について解説を行う。 なお、個人が被災した場合の税務上の全般的な取扱いについては、下記拙稿をご参照いただきたい。 【1】 はじめに 災害により住宅や家財等に被害を受けた納税者には、所得税法に定めのある雑損控除と災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律(以下、災害減免法という)に定めのある所得税の軽減免除という2つの救済制度が設けられている(所法72①、災免法2)。 被災した納税者は、確定申告においていずれか有利な制度を適用することができる。 【2】 雑損控除と災害減免法による所得税の軽減免除(概要) 雑損控除と災害減免法による所得税の軽減免除の概要をまとめると、以下のとおりである(所法71、72、所令204、205、206、災免法2、災免令1、2)。 (※1) 棚卸資産、事業用の固定資産、山林、生活に通常必要でない資産(別荘、1個又は1組の価額(時価)が30万円を超える貴金属、書画、骨とう及び美術工芸品、レジャー用の車両等)は対象外。 (※2) 保険金、損害賠償金等により補てんされる部分の金額は除く。 (※3) 総所得金額等とは、合計所得金額に純損失・雑損失の繰越控除、居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除及び特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除を適用して計算した金額(上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除、特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除及び先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除の適用がある場合には、適用後の金額)をいう。 (※4) 「り災証明書」を添付又は提示することが望ましいとされている。 どちらの制度を適用するかは納税者の任意であるが、災害減免法による所得税の軽減免除は、損害金額の要件(損害金額が時価の2分の1以上)と所得の要件(合計所得金額1,000万円以下)を満たしていれば形式的に軽減免除額が算定される。要件を満たしている場合には、雑損控除よりも計算が容易である。 一方、雑損控除には繰越控除(雑損失の繰越控除)の制度があることから、損失の金額がその年の所得金額を超えるほど多額である場合には、雑損控除を適用した方が有利になると考えられる。 【3】 雑損控除の損失の金額の計算方法 災害により被害を受けた住宅、家財及び自家用車の損失額の計算は、原則的には、個々の資産ごとに被害に遭ったときの直前の時価又は簿価に基づいて計算することとされている(所基通72-2)。 しかし、住宅の主要構造部に損壊がある場合で、かつ、損害を受けた資産について個々に損失額を計算することが困難な場合には、「被災した住宅、家財等の損失額の計算書」を用いて損失の金額を計算することができる(損失額の合理的な計算方法)。 この計算書では、損失額を「住宅の損失額」、「家財の損失額」、「車両の損失額」の3つに区分して計算する。計算書を利用した損失額の計算方法を、以下に事例で示す。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 【4】 雑損失の繰越控除 【3】の事例について、平成30年分の雑損控除の金額等を計算する(所法71、72、87、所令204)。 (※) 複数の所得控除がある場合には、まず雑損控除を行うこととされている(所法87①)。本事例では、総所得金額<雑損控除の額であるため、総所得金額分の額が控除される。 なお、雑損失の金額を翌年以後に繰り越す場合には、第一表及び第二表に加え、損失申告用の第四表を作成する。また、雑損失を繰越控除するには、雑損失の金額が生じた年分の確定申告書を提出し、かつ、その後において連続して確定申告書を提出していることが要件となる(所法71②)。 * * * 【第3回】(最終回)は、確定申告に係る実務的な処理についてQ&A方式で解説する予定である。 (了)
金融・投資商品の税務Q&A 【Q42】 「国外に金融資産を有する場合の国外財産調書の提出義務」 PwC税理士法人 金融部 パートナー 税理士 箱田 晶子 ●○ 検 討 ○● 1 国外財産調書制度 居住者(非永住者(※)を除く)で、その年の12月31日において、その「価額」の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する場合には、その国外財産の種類、数量及び価額その他必要な事項を記載した調書(以下、「国外財産調書」)を、その年の翌年の3月15日までに、所轄税務署長に提出しなければなりません。 (※) 非永住者とは、居住者のうち日本国籍がなく、かつ、過去10年以内の間に日本国内に住所又は居所を有する期間の合計が5年以下である個人をいいます。 国外財産とは、「国外にある財産」をいい、「国外にあるか」どうかの判定は、財産の種類ごとに、その年の12月31日の現況で行います。 ① 「国外」にある財産とは 財産が「国外」にあるかどうかは、基本的には財産の所在の判定について定める相続税法第10 条の規定によることとされています。ただし、有価証券等が、金融商品取引業者等の営業所等に開設された口座に係る振替口座簿に記載等がされているものである場合等におけるその有価証券等の所在については、その口座が開設された金融商品取引業者等の営業所等の所在によることとされています。 主な財産の判定基準と具体例をまとめると、以下の通りです。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ② 国外財産の「価額」 国外財産調書の「価額」とは、その年の12 月31 日における「時価」又は時価に準ずるものとして「見積価額」によることとされています。 「時価」とは、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいうとされていますが、国税庁がホームページで公表している「国外財産調書の提出制度(FAQ)」によれば、不動産等については専門家による鑑定評価額、上場株式等については金融商品取引所等の公表する12月31日時点の最終価格(12 月31 日における最終価格がない場合には、同日前の最終価格のうち同日に最も近い日の価格等)とされています。また、財産評価基本通達で定める方法により評価した価額としても差し支えないとされています。 国外財産の「見積価額」とは、その年の12月31日における財産の現況に応じ、その財産の取得価額や売買実例価額などを基に合理的な方法により算定した価額をいうとされていますが、国外送金法通達5-8において、例えば次のような方法が認められています。 国外財産の価額が外国通貨で表示される場合には、その年の12 月31 日における外国為替の売買相場(最終の対顧客直物電信買相場(TTB)又はこれに準ずる相場)により邦貨に換算します。 なお、5,000万円の基準は国外財産の価額に基づいて行われるため、例えば国外財産を借入金で取得した場合において、その国外財産の「時価」又は「見積価額」の価額の算定に当たり、借入金を差し引くことはできません。 ③ 提出先 所得税の確定申告をする必要がある者については、その納税地の所轄税務署長に提出します。一方、所得税等の確定申告をする必要がない者も、国外財産調書の提出は必要であり、その場合は住所地の所轄税務署長に提出します。 国外財産調書の提出に当たっては、国外財産調書に記載した財産の価額をその種類ごとに合計した金額を記載した「国外財産調書合計表」を添付する必要があります。 2 罰則等の規定 国外財産調書の提出制度においては、適正な提出を促進するため、過少申告加算税等の加重措置/軽減措置及び罰則規定が設けられています。 ① 過少申告加算税等の加重措置/軽減措置 国外財産調書の提出が提出期限内にない場合又は提出期限内に提出された国外財産調書に記載すべき国外財産の記載がない場合(重要な事項の記載が不十分と認められる場合を含む)に、その国外財産に関する所得税等の申告漏れが生じて修正申告等を行ったときは、その国外財産に関する申告漏れに係る部分の過少申告加算税又は無申告加算税(以下、過少申告加算税等)について、5%加重されます(加重措置)。 一方、国外財産調書を提出期限内に提出した場合には、国外財産調書に記載がある国外財産に関する所得税等又は相続税の申告漏れが生じたときであっても、その国外財産に関する申告漏れに係る部分の過少申告加算税等について、5%軽減されます(軽減措置)。 一般的な過少申告加算税、無申告加算税の税率は以下の通りです(国税庁HP掲載の表を元に筆者一部加工)。 〔 〕書きは、加重される部分(過少申告加算税:期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分、無申告加算税:50万円を超える部分)に対する加算税割合を表す。 なお、年の中途においてその修正申告等の基因となる国外財産を有しないこととなった場合(例えば、その年中に国外財産である株式のすべてを譲渡しており、かつ、当該譲渡に伴い生じた所得について申告漏れがあったこと等)の過少申告加算税の加重措置の適用については、その年分の前年12 月31 日において所有する財産について提出すべき国外財産調書により判断されます。 提出期限後に国外財産調書を提出した場合であっても、その国外財産に関する所得税等又は相続税について、調査があったことにより更正又は決定があるべきことを予知してされたものでないときは、その国外財産調書は提出期限内に提出されたものとみなして、過少申告加算税等の特例を適用することとされています。 したがって、3月15日の提出期限後に国外財産調書を提出した場合であっても、国外財産調書を提出した後に自主的に修正申告書等(国外財産に係る申告漏れを是正するもの)を提出する場合は、国外財産調書不提出にかかる加重措置は適用されないことになります。逆に、国外財産に係る申告漏れを是正する自主的修正申告後に国外財産調書を期限後に提出した場合は加重措置の適用が認められるとされた裁決事例(平成29年9月1日裁決)があります。したがって、過年度分の国外財産調書及び修正申告書等の提出の順序には注意が必要です。 ② 正当な理由のない国外財産調書の不提出等に対する罰則 国外財産調書に偽りの記載をして提出した場合又は国外財産調書を正当な理由がなく提出期限内に提出しなかった場合には、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されることがあります。 3 財産債務調書制度との関係 平成27年度税制改正により、財産債務調書制度が制定され、所得税の確定申告書を提出する義務がある者が、所得の合計額が2,000万円を超え、かつ、その年の12月31日において3億円以上の財産又は1億円以上の国外転出特例対象財産を有する場合に、その明細書を税務当局へ提出することとされています。 国外財産調書の提出が必要な者についても、上記の要件を満たす場合は、あわせて財産債務調書の提出も必要になります(財産債務調書の提出を行う場合であっても、国外財産調書の提出は免除されませんので注意が必要です)。 国外財産調書及び財産債務調書の様式はそれぞれ以下の通りです。 4 本件へのあてはめ 本件については、国内外の証券会社口座において株式(日本株、外国株両方)を保有しているとのことですが、国外財産調書の対象となる国外財産は、国外の証券会社口座において管理されている株式(日本株、外国株問わず)となり、国内の証券会社口座において保有されている株式は対象外となります。その他の国外財産とあわせて、5,000万円超の価額の財産を有する場合は、国外財産調書の提出を要します。 (了)
さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第43回】 「遺産分割協議と第二次納税義務事件」 ~最判平成21年12月10日(民集63巻10号2516頁)~ 弁護士 菊田 雅裕 (了)
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第81回】 「2018年における調査委員会設置状況」 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 本連載では、個別の会計不正に関する調査報告書について、その内容を検討することを主眼としてきたが、本稿では、2017年に引き続き、第三者委員会ドットコムが公開している情報をもとに、各社の適時開示情報を参照しながら、2018年において設置が公表された調査委員会について、調査の対象となった不正・不祥事を分類するとともに、調査委員会の構成、調査報告書の内容などを概観し、その特徴を検討したい。 第三者委員会ドットコムが公開しているデータを集計したところ、2018年において、調査委員会の設置を公表した会社は68社であり、2017年の41社を大きく上回った。68社のうち、本連載【第78回】から【第80回】で取り上げた株式会社スルガ銀行は3つの調査委員会を、株式会社日産自動車及びブロードメディア株式会社も各々2つの調査委員会を設置している。これらの3社については、会社数としてはそれぞれ「1社」とカウントする一方、委員会の構成については委員会ごとに、不正・不祥事の分類はその区分ごとに集計しているため、一部、合計数が合わないことをお断りしておく。 調査委員会設置を公表した68社のうち18社については、本稿執筆時点において、まだ調査報告書(その概要を含む)を公表していない。このうち6社については、調査委員会の設置そのものが12月であり、まだ調査が終わっていないと考えられる。一方、後述するように、品質偽装問題では6社が調査結果を開示しておらず、他にも刑事事件となっている問題については、調査結果を開示しないという選択が行われているようであり、こうした傾向も2018年の特徴の1つに挙げられよう。 【市場別分類】 市場別分類では、東証1部上場会社が38社と約56%を占めた(複数市場に上場している会社は東証1部に含めている)。その他に分類した2社は、名古屋証券取引所と福岡証券取引所に単独上場しているものである(上場会社数は2018年12月31日現在)。 【会計監査人別分類】 会計監査人別の分類では、いわゆる大手4大監査法人の監査を受けていた上場会社が43社、中堅以下の監査法人の監査を受けていた社が25社となり、2017年に比べて中堅以下の監査法人のクライアントの比率が増加している。 なお、中堅以下の監査法人で複数のクライアントが調査委員会を設置したのは、東陽監査法人(4社)、優成監査法人(3社)、太陽監査法人(2社)であった。 【調査委員会の構成による分類】 日本弁護士連合会が2010年に公表した「企業不祥事における第三者委員会ガイドライン」に準拠していると明言している調査委員会及び明言はしないまでもその趣旨に沿って外部の委員を選定していると認められる調査委員会は32社と、過半数を下回る水準であった。 2017年との比較では、調査委員会の構成について公表しない会社が6社(株式会社日産自動車については、2つの委員会ともに未公表であるため、2社としてカウントしている)あったことが目を引く。 【調査委員会を設置することとなった不正・不祥事の分類】 調査対象となった不祥事別にこれを分類すると次表のとおりとなる。なお、分類上、経営者や従業員の不正であっても、決算修正等、公表している決算報告書に影響を及ぼす可能性のあるものについては、「会計不正」としている。 【会計不正の態様】 次いで、「会計不正」に分類された36件について、それぞれの不正の態様を見ておきたい。 「会計不正」と分類できる内容で調査委員会を設置した36社のうち、経営者・従業員による不正行為以外のものは22社であり、その一覧は次のとおりである(赤字は本連載で取り上げた報告書)。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 不正類型としては、架空取引・計上時期の適正性などに関する売上計上をめぐるものが多く、過半数を超える15件になっている。 次に、経営者及び従業員による不正発覚に伴う調査委員会設置会社14社の一覧を掲げる。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 前代表取締役会長であるカルロス・ゴーン氏が逮捕された株式会社日産自動車が設置した調査委員会については、11月19日に、内部調査を行った結果、資金の私的な流出など「重大な不正行為」が認められたことが公表されているが、調査報告書の公表を含め、それ以外のリリースは出されていない。 【品質偽装・検査結果の偽装】 2018年の最も顕著な特徴は、前年4件でしかなかった「品質偽装・検査結果偽装」のカテゴリーで、17件もの調査委員会の設置が公表されたことであった。 品質偽装・検査結果偽装を公表した17社は以下のとおりである。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 注目されるのは、発覚の経緯のほとんどが「社内調査」を契機にしたものであること、委員会の構成で最も多いのが「社内委員会」であること、である。 また、冒頭でも述べたように、調査結果を開示していない会社が6社存在している。 【スルガ銀行による不正融資問題とその余波】 シェアハウス運営会社であった株式会社スマートデイズの破綻に端を発したスルガ銀行の不正融資問題は、その後、九州旅客鉄道株式会社(JR九州)の子会社や株式会社TATERUにおける融資審査書類の改竄問題へと波及してきたが、この両社も、それぞれ11月30日と12月7日に調査結果を公表している。調査報告書を読む限り、スルガ銀行問題で見られたような建物建築代金の水増しなど、融資申込者に被害を与える可能性がある行為は存在しなかったようであるが、不動産融資の拡大により収益を上げてきた金融機関はほかにもあることが報じられており、金融庁による検査も噂されていることから、まだ予断を許さない状況が続いていると言えるかもしれない。 なお、株式会社TATERUが設置した特別調査委員会調査結果報告書については、本連載【第82回】として、寄稿を予定している。 (了)
M&Aに必要な デューデリジェンスの基本と実務 -財務・税務編- 【第17回】 「偶発債務・後発事象の分析(その2)」 公認会計士・公認不正検査士 松澤 公貴 ←(前回) | (次回)→ ▷固定資産等に関連する偶発債務(簿外債務)等 固定資産等に関連する偶発債務(簿外債務)等の検討は、デューデリジェンスにおいては関連する固定資産と一緒に分析すべきものであるが、ここでは、本連載の第4節「固定資産の分析」(【第8回】~【第10回】)で記載しなかったものを中心に概説する。 〈リース債務〉 リース取引とは、特定の物件の所有者たる貸手が、当該物件の借手に対し、合意されたリース期間にわたりこれを使用収益する権利を与え、借手は、合意されたリース料を貸手に支払う取引をいう。 (出典:ASBJホームページ「企業会計基準第13号『リース取引に関する会計基準』」から筆者作成) (注1) 「中小企業の会計に関する指針」においては、所有権移転外ファイナンスリース取引につき賃貸借処理も認められる。 (注2) 法人税法上は、全ての所有権移転外リース取引は売買として取り扱われる。 リース取引の分類と会計処理を整理すると上記のとおりとなるが、M&Aの対象会社となる中小企業の多くは、すべてオフバランス処理(賃貸借処理)されている可能性がある。よって、実態純資産の分析においては、オンバランス処理(売買処理)されているものを除き、全ての内容及び金額を把握することになる。 通常は、リース債務の見合いとしてのリース資産があるので、実態純資産の分析においては大きな影響は生じないが、リース債務の返済期間とリース資産の耐用年数が異なる場合もあるため、影響額が多額に生じる可能性もある。 〈資産除去債務〉 資産除去債務とは、有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるものである。つまり、将来発生すると考えられる資産の撤去や解体にかかる費用を見積り、その見積額を現在の価値に換算した金額をもって資産除去債務を計上することになる。 対象会社である多くの中小企業は、除去が確定債務となった際に費用処理を行うのみで資産除去債務が計上されていないと考えられる。そのため、実態純資産の分析においては、当該金額を見積って計上する必要がある。 〈環境債務〉 対象会社によっては、工場等の環境リスクから生じる債務を考慮しなければならない場合がある。限られたデューデリジェンスの期間では、主に買収後の①環境リスクの有無を確認すること、②環境リスクがある場合は、当該対策費用等を金額として見積ること、に主眼が置かれる。 通常は、環境デューデリジェンスの専門家に調査を依頼することが多いが、主な調査項目は下記のとおりである。 〈付保状況〉 対象会社の重要な資産に対して、損害保険等の加入状況を検討し、当該資産が万が一の災害等に備えて保全されているかを検討する必要がある。資産の損害への対策としては、基本は火災保険契約で対応することになる。また、事業中断の損害に対しては利益保険で対応することになる。 実態純資産の分析において重要なのは、付保している保険契約の内容がどのような災害等をどこまで補償することになっているかである。 〈将来必要となる修繕〉 現在の当該設備の利用によって、次回の修繕や特別修繕が必要となり、その際には費用が発生する可能性が高く、その金額を過去の経験等に基づいて合理的に見積ることができる場合がある。 実態純資産の分析においては、定期点検が法律に基づくものであるかどうか、あるいは、大型設備に係る定期的な修繕に該当するかどうかに関わらず、内容及び影響額を検討する必要がある。 〈保証債務及び保証類似行為等〉 債務保証とは、主たる債務者が債務を履行しない場合において、保証人が当該債務を履行する責任を負うことを契約することによって債権者の債権を担保するものである(日本公認会計士協会「監査・保証実務委員会実務指針第61号 債務保証及び保証類似行為の会計処理及び表示に関する監査上の取扱い」)。 同指針によると、通常、注記や引当金の計上の対象となる債務保証には、通常の債務保証のほか、下記の保証類似行為が含まれる。 対象会社である多くの中小企業は、保証債務及び保証類似行為等が確定債務となった際に費用処理を行うのみで必要な引当金の計上や注記がなされていないと考えられる。 実態純資産の分析においては、必要に応じて法務デューデリジェンスチームと連携し、当該契約の有無、内容の把握、保証債務及び保証類似行為等の履行に伴う損失の金額を見積って計上する必要がある。 (続く)