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プロフェッションジャーナル No.298が公開されました!~今週のお薦め記事~

2018年12月13日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.298を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2018/12/13

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第71回】「社会通念から読み解く租税法(その2)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第71回】 「社会通念から読み解く租税法(その2)」   中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦   Ⅱ 租税法と社会通念(承前) 2 財産分与に係る第二次納税義務 (1) 財産分与と「著しく低い額の対価による譲渡」 離婚に伴う財産分与については、既に過去の最高裁判決によって、財産分与を行った者に対して譲渡所得課税がなされるとされている。 すなわち、最高裁昭和50年5月27日第三小法廷判決(民集29巻5号641頁)は、次のように述べ、財産分与者に対する譲渡所得課税を肯定する。 このように、財産分与をする側の者に対して所得課税が行われると判断されており、財産を取得した側に対する課税はなされないものと理解されているところである。 これに対して、離婚に際し自宅を財産分与された妻が、元夫が国税を滞納していたことに関して「第二次納税義務」の納税告知処分を受けたことから、かかる納税告知処分の取消しを求めた事例がある。次に、東京地裁平成29年6月27日判決(判例集未登載)をみてみよう。 事案の概要 X(原告・控訴人)の夫Pは、土地を譲渡したことで譲渡所得の申告(修正申告)をしたが、滞納したため、平成12年4月に所轄国税局より所有土地の差押えを受けた。 その後、XとPは協議離婚を行い、かかる離婚に伴ってPはXに対して、居宅のあったA土地を財産分与することになった。これに伴いPは、翌年3月にA土地の財産分与(譲渡)に係る所得税の確定申告を行った。A土地を取得したXは、その後土地を分筆の上、平成19年1月にその一部を譲渡し、譲渡代金として、3,900万円を受け取った。 Pの国税の滞納が続いていたところ、所轄国税局は平成24年2月に租税債権約2億5,900万円の徴収のため、Xに対し、国税徴収法39条に基づき、納付税額約1億1,000万円とする第二次納税義務の納税告知処分を行った。   このように、国税徴収法39条は一定の場合における第二次納税義務を定めているが、同条における「著しく低い額の対価による譲渡」であるか否かの判断について、東京地裁は、その制度趣旨に鑑みて次のように説示する。 このように、東京地裁は、著しく低い額と認められるか否かについては、「社会通念」で判断すべきとしている。 そして、離婚に伴う財産分与の場合についても、国税徴収法39条所定の「譲渡」に当たると解されることを前提とした上で、まず財産分与の本旨を以下のように述べる。 そして、財産分与の協議等に従い不動産の譲渡等がなされた場合、それにより財産分与者が「分与義務の消滅」たる経済的利益を享受する点については、上述の最高裁昭和50年5月27日第三小法廷判決を参照している。 そして、財産分与と第二次納税義務の関係性に関し、次のように説示する。 (2) 不相当に過大な財産分与 上記のとおり、東京地裁は、不相当に過大な財産分与については、租税債権が徴収不足となり、納税者間の公平が損なわれるとしているが、それでは、具体的に財産分与として相当な額とはいったいいくらなのであろうか。 この点について、東京地裁は、①清算的財産分与、②扶養的財産分与、③慰謝料的財産分与の合計額を参考に検討しているため、簡潔に確認しておきたい。 ① 清算的財産分与 ② 扶養的財産分与 東京地裁は、①Xが本件離婚時において53歳であり、②本件離婚時に至るまでパートタイムの仕事により月約10万円の収入を得ており、③X名義の預金として388万8,734円を有していたこと、また、④上記1,152万2,735円相当の清算的財産分与を受けることができること、そして、⑤XとPとの間の子2名は、既に本件離婚時に成年に達し、その後も本件不動産上の建物においてPと同居をしていたことを認定した上で、扶養的財産分与としての相当額を次のように算定する。 ③ 慰謝料的財産分与 このような認定から、東京地裁は、民法768条3項の趣旨に反して不相当に過大と評価される財産分与の額を求めている。 すなわち、本件離婚に伴いPがXに対して少なくとも3,000万円を超えて財産分与をすることは民法768条3項の趣旨に反して不相当に過大なものとの評価を免れないとした上で、結論として次のように判断している。 本件東京地裁のいう「社会通念」に従って判断するとのことは、結局のところ、①清算的財産分与、②扶養的財産分与、③慰謝料的財産分与などの分析的手法による積み上げ計算での結果を指しているものと思われる。 このように考えると、社会通念とは、必ずしも非科学的な漠然とした観念として捉えられるものではなく、具体的な計算結果に落とし込んだ判断を展開するための法技術的な「道具」であるとみることもできなくはないといえよう。 (続く)

#No. 298(掲載号)
#酒井 克彦
2018/12/13

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【第4回】「法人税の課税所得計算と損金経理(その4)」

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【第4回】 「法人税の課税所得計算と損金経理(その4)」   国際医療福祉大学大学院准教授 税理士 安部 和彦   (6) 費用収益対応の原則 法人税法における損金性、すなわち当該損金をどの年度において計上するのかという年度帰属の問題を理解するにあたり、避けて通れないのが「費用収益対応の原則」と「権利確定主義」についてである。以下でそれぞれの意義を確認しておきたい。 まず費用収益対応の原則(matching principle)であるが、これは一般に、経済活動の成果をなす収益と、それを得るために費やされた犠牲としての費用を、厳密に対応づけその差額を利益として算定することを通じて、各会計期間の経営成績を適切に測定するという、企業会計における利益計算の基本原則であると解されている(※1)。 (※1) 桜井久勝『財務会計講義(第19版)』(中央経済社・2018年)75頁。 それでは、費用収益対応の原則は法人税法においても妥当するのであろうか(※2)。これについては、法人税法第22条第4項を根拠に、法人所得の計算においても妥当するものと解すべきというのが通説である(※3)。すなわち、以下のように整理できるのである。 (※2) 所得税法においても、継続的事業の所得については妥当すると考えられる。藤谷武史「必要経費の意義と範囲」『日税研論集74号』(平成30年)162頁参照。 (※3) 金子宏『租税法(第二十二版)』(弘文堂・2017年)346頁。 (※4) なお、費用収益対応の原則は損失には及ばないとする学説もあるが(例えば、酒井克彦『プログレッシブ税務会計論Ⅱ』(中央経済社・2016年)57頁)、筆者は当該原則の根拠は公正処理基準にある(金子説及び上記東京高裁昭和48年8月31日判決)と考えることから、損失も射程に入るという立場である。 要するに、特定の収益との対応関係が明らかな費用(原価)はその収益と同一年度に(個別的対応)、そうでないもの(非原価項目)は発生した年度の費用として計上する(期間的対応)というのである。 裁判所はこの点につき、以下の通り判示している(東京高裁昭和48年8月31日判決・行裁例集24巻8=9号846頁)。   (7) 権利確定主義と債務確定主義 ① 権利確定主義 権利確定主義とは、一般に、所得課税における収入の年度帰属の問題に関する考え方を示したものと解されている。これについては大きく分けて、現実の収入の時点を基準とする現金主義(cash method)と現実の収入がなくとも所得が発生した時点を基準とする発生主義(accrual method)の2つの考え方がある。企業会計においては、上記のうち現金主義ではなく広義の発生主義を採用した上で(企業会計原則第二・一A)、収益の計上基準として実現主義を採用している(企業会計原則第二・三B)。 所得税法においては、この点につき「収入すべき金額」とすると規定されており(所法36①)、これは収入すべき権利の確定した金額のことを意味するとして、発生主義の中でも「権利確定主義」を採用したものと解されている(※5)。 (※5) 金子前掲(※3)書293-294頁。 法人税法においては、収益の計上基準について条文の文言上、明示されているわけではない。しかし、法人税法においても基本的にこの考え方が妥当し、所得の実現の時点を基準として所得を計上すべきこととなり、原則として財貨の移転や役務の提供などによって債権(対価を得る権利)が確定したときに収益が発生すると解すべき、すなわち所得税法と同様に権利確定主義によるべきものとされている(※6)。なお、企業会計上の実現主義に対応するのが法人税法上の権利確定主義であると理解すべきであろう。 (※6) 金子前掲(※3)書336-337頁。 裁判所は法人税法における権利確定主義の意義について、以下の通り判示している(最高裁平成5年11月25日判決・民集47巻9号5278頁[大竹貿易事件])。 ② 債務確定主義 次に債務確定主義ないし債務確定基準であるが、これは費用の認識基準ないし年度帰属の基準であり、償却費以外の費用は債務の確定を待って初めて損金に計上できるという、法人税法22条3項2号カッコ内の規定に基づくと考えられる。 裁判所は当該債務確定主義について、以下の通り判示している(大阪高裁平成21年10月16日判決・判タ1319号79頁)。 また、「債務の確定」とは以下の裁判例(山口地裁昭和56年11月5日判決・行集32巻11号1916頁[株式会社ケーエム商事事件])等より、①債務が成立していること、②当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること、③金額を合理的に算定できるものであること、という3要件を満たす必要があると解されている(法基通2-2-12も同旨)。 なお、費用のうち原価(法法22③一)は、売上との直接的・個別的な対応があり、その計上に関し恣意性の介入する余地がないため、債務の確定を要しないと解されている。また、損金算入され得る損失とは、債務の確定ではなく、損失の確定(ないし実現)が要求されるものと解される(※7)。ここから、債務確定主義は費用(販売費・一般管理費のような期間費用)についてのみ妥当するといえる。 (※7) 谷口勢津夫『税法基本講義(第5版)』(弘文堂・2016年)391頁。 (了)

#No. 298(掲載号)
#安部 和彦
2018/12/13

租税争訟レポート 【第40回】「所得税法第204条第1項第6号に規定する「ホステス等」の意義とは(国税不服審判所平成30年1月11日裁決他)」

租税争訟レポート 【第40回】 「所得税法第204条第1項第6号に規定する「ホステス等」の意義とは (国税不服審判所平成30年1月11日裁決他)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   所得税法第204条第1項には、「源泉徴収義務」について、以下のような規定がある。 そして、ホステス等に支払う報酬・料金については、国税庁タックアンサーNo.2807に以下のとおり、詳細な解説がされている。 ホステス等に支払う「報酬・料金」については、支払時に源泉所得税を控除することが義務付けられ、ホステス等は、支払いを受けた「報酬・料金」については、事業所得として確定申告を行うことが、所得税の規定からは予定されていたはずである。 そして、ホステス等に支払う「報酬・料金」については、支払いを行う事業者の消費税額等の計算上、課税仕入れに該当することから、これを仕入税額控除の対象として消費税額等の確定申告を行うものという理解が成り立ってきたものと考える。 ところが、最近公表された裁決事例や判決では、上記タックスアンサー冒頭のただし書きの条項「その内容が給与等に該当する場合には、給与等として源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額を計算します」を適用して、ホステス等に支払う「報酬・料金」を給与所得と認定することにより、消費税額等の計算においても課税仕入れであることを認めず、納税告知処分や消費税額等の賦課決定処分を行った原処分庁の判断を認め、納税者の主張を退けるものが散見される。 本稿では、去る9月27日に公表された裁決事例のうちから、キャバクラを経営する審査請求人がキャストに支払った金銭が給与であると判断された裁決と、同じく、自ら経営するキャバクラのホステスに支払った金銭が、給与であるとして納税告知処分を受けた原告(控訴人、上告人)の訴えを裁判所が棄却した判決を検討することにより、所得税法第204条1項6号に規定する「ホステス等」の意義を考えてみたい。   【事案の概要】 本件は、原処分庁が、審査請求人(以下「請求人」という)のキャスト及びスタッフに支払った金員は給与等に該当し、売上金員の一部を請求人の代表者が費消したことは同人に対する給与等に該当するとして源泉所得税等の納税告知処分等を行ったこと、また、キャスト等に簿外で支払った金員相当額を課税標準額から除外したとして消費税等に係る重加算税の賦課決定処分を行ったこと、さらに、キャスト等に支払った金員は課税仕入れに該当しないとして消費税等に係る更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分を行ったことに対して、請求人が、キャスト等に支払った金員は、報酬料金に該当し、課税仕入れに該当するから消費税額等は生じない、また、売上金員の一部を代表者が費消した事実はないなどとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。 上記のとおり、争点は多岐にわたるが、本稿では、[争点2]のキャスト等に支払った金員が給与等に該当するか否かについて、国税不服審判所の判断を検討したい。   【キャストに支払った金員が給与等に該当するか否か[争点2]】 請求人の経営するキャバクラには、接客業務の対価を月払いで受け取る「月払キャスト」と日払いで受け取る「日払キャスト」が存在していた。請求人は、各キャストに接客業務の対価として支給すべき額を算定し、月払キャストに対しては月末に、日払キャストに対しては日々の営業時間終了後に、それぞれ金員を支給していた。 1 原処分庁の主張 原処分庁は、キャストに対する支給額について次の理由から、請求人との関係において、空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務を提供して、その対価として、金員を支給されていたと認められ、各キャストと請求人との雇用契約又はこれに類する原因に基づき請求人の指揮命令に服して提供した労務の対価、すなわち給与等に該当すると主張した。 (1) 月払キャストについて (2) 日払キャストについて 2 審査請求人の主張 一方、審査請求人は、以下の理由から、キャストに対する支給額は、給与等に該当せず所得税法第27条第1項に規定する事業所得(報酬)に該当すると主張した。 (1) 月払キャストについて (2) 日払キャストについて 日払キャストは、上記(1)の①から⑧までについて月払キャストと同じ状況であり、金員の支払方法が日払いか月払いかの違いのみである。 3 国税不服審判所の判断 国税不服審判所は、まず、法令解釈として、最高裁昭和56年4月24日判決を引用する形で、次のように事業所得と給与所得の所得区分について判断を示した。 その上で審判所は、請求人が経営するキャバクラ店で働くキャストについては、請求人との間で、本件各店舗での接客業務に従事するに当たり、給与体系、勤務時間及び店舗規則などの勤務条件について合意がされていたこと、合意に基づき、代表者又は店長が、出勤状況、接客時間又は勤務時間等を管理していたこと、店舗における顧客サービスの中で、自分の指名客以外の客に対しても店長の指示により接客業務に従事していたことが認められることから、各キャストは、入店から退店までの時間は請求人の管理下にあったと認められ、請求人から空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務の提供をしていたものとみることができると述べた。 また、審判所は、各キャスト支給額は、時給に接客時間又は勤務時間を乗じて計算した基本給の額に、各種手当の額を加算して算定されていること、雇入れ年月日から少なくとも1又は2ヶ月間は一定の時給が保証されていること、各キャストは客に対する売掛金を回収する責任を負っていなかったことからすれば、各キャストが自己の計算と危険において独立して事業を営んでいたものとみることはできないと述べた。 以上の事実認定から、審判所は、各キャストは請求人との関係において、時間的、空間的な拘束を受けて継続的ないし断続的に労務の提供をし、その対価として支給額の支給を受けていたということができることから、各キャストへの支給額は、各キャストと請求人との雇用契約に基づき、請求人の指揮命令に服して提供した労務の対価、すなわち所得税法第28条第1項に規定する給与等に該当すると判断した。   【事案の概要(第1事件についてのみ)】 武蔵野税務署長は原告に対して、原告はいわゆるキャバクラ店を経営し、各店舗に勤務する各ホステス及び各従業員並びに原告がキャバクラ事業の管理を行っていた事務所に勤務する各従業員に対し、給与等を支給していたにもかかわらず、原告が給与等の支払者ではないかのように仮装し、源泉所得税をいずれも各法定納期限までに国に納付しなかったとして、平成14年1月から平成17年4月までの各月分の源泉所得税の各納税告知処分及び重加算税の各賦課決定処分を受けたため、上記各処分の取消しを求める審査請求を国税不服審判所長にしたところ、国税不服審判所長から、上記各処分の一部を取り消し、その他の審査請求を却下ないし棄却する旨の裁決を受けたことについて、原告は、各ホステスらに支払われた金銭に係る源泉徴収義務者ではなく、また、上記裁決には、源泉所得税額の計算の基礎とされた各ホステスらに支払われた金銭の金額の明細の認定判断が示されていない違法があるなどと主張し、上記各処分及び上記裁決の取消しを求める事案である。 《第1事件》の争点は上記のとおり多岐にわたっているが、本稿では、〔1〕各ホステスに支払われた金銭が、給与等(所得税法28条1項、183条1項)に該当するか否かについてのみ、第一審である東京地方裁判所の判断を検討したい。   【ホステスに支払った金銭が給与に該当するか否か】 1 被告(国・処分行政庁)の主張 各キャバクラ店に勤務する各ホステスは、事前に原告と合意した勤務形態に基づき各店舗において管理され、それぞれ所定の就業時間及び就業場所において接客等をしていたものであり、原告又は各店長から空間的、時間的な拘束を受け、継続的に労務又は役務の提供をし、その接客等の労務提供の対価として、所定の時給を基礎に算定される一定の保証がされた現金の支払いを受けていたものであり、給与支給者との関係において、その提供した労務又は役務の対価として現金の支給を受けていたのであるから、原告から各ホステスに支払われていた金銭は、所得税法28条1項に規定する給与等に該当し、同項に規定する給与所得に該当する。 2 原告の主張 各店舗に勤務する各ホステスについて、出勤日や入退店時刻等は、各ホステスと各店長との話合いで決められており、各ホステスへの支給額は、売上バック制度や同伴バック制度等によって加算されており、各ホステスの技能や人気に応じて大きく増減しているのであって、給与といえず、各ホステスが行っていたホステス業は、所得税法27条1項に規定するサービス業その他の事業であり、各ホステスに支払われた金銭は、同法204条1項6号に規定する報酬に該当し、同法28条1項に規定する給与所得ではなく、同法27条1項に規定する事業所得に該当する。 3 裁判所の判断 裁判所は、前掲の裁決における審判所と同様、まず、事業所得について、次のように判示した。 その上で、ホステスに支払われた金銭の性質について、次のような事実認定を行った。 こうした事実認定から、裁判所は、各ホステスは、各店長の指揮命令に服して、空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務を提供し、その対価として、時給に勤務時間を乗じるなどして算出された金額の現金を日払い又は月払いにより支給されていたものというべきであって、各ホステスに支払われた金銭は、所得税法28条1項に規定する給与等に該当し、同項に規定する給与所得に該当すると認められると判断した。 4 控訴審における争点 控訴審では、控訴人が源泉徴収義務を負うか否かが争点となっており、ホステスに支払われた金銭が給与所得に該当するか否かという争点に関しては、原審である東京地方裁判所の判断が確定している。   【解説】 ホステスに支払う報酬に係る源泉所得税が争点となった有名な事件である最高裁判所(第三小法廷)平成22年3月2日判決では、あくまで、ホステスが支払いを受ける金銭は「報酬・料金」であることを前提として、報酬の額から控除する概算控除額(1日につき5,000円)を計算するに際しての「計算期間の日数」が争点となった事件であった。判決でも触れているように、概算控除額を控除した残額に源泉所得税として徴収すべき税率を乗じることは、ホステスが受け取った「報酬・料金」について、当然に事業所得として確定申告を行うことが前提となって訴訟が進められており、本稿で取り上げた裁決・判決とは異なっている。 そこで、この最高裁判決の第1審であるさいたま地方裁判所平成18年5月24日判決から、経営者・店長によるホステスの出勤状況の管理に該当する部分を引用する(一部省略している)。 上記の「原告におけるホステスの報酬の計算方法等」については、集計期間における各ホステスの指名個数に応じた時間当たりの報酬額に勤務した時間数を乗じて計算した額に手当を加算し、税・厚生費として集計期間におけるホステス報酬の12%を乗じた金額を減算すると決められている。 こうした判決文からは、ホステス(キャスト)に支払った金銭を給与所得と認定した上記の裁決・判決と際立った違いは見てとれないところである。上記の裁決・判決が、経営者又は店長による出勤管理に焦点を当てて、空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供を行っていると判断されたこと、最高裁判決では触れられていないが、この事案では、指名客に対する売掛金の回収責任がホステスにあったのかもしれないということが「自己の計算と危険において」という事業所得の意義につながったのかもしれないところであるが、いずれも推測の域を出ない。 むしろ、かなり特別な職業であったはずのホステスが、キャバクラやガールズバーなどが流行したことによって、副業やアルバイト感覚で入店する女性が増え、とても事業所得とは認定できないケースが増えたことや、クレジットカード決済が浸透して、「売掛金の回収」という行為そのものがなくなってきている現状では、「自己の計算と危険において」という昭和56年当時の最高裁判決への当てはめが難しくなっていることが、裁判所・国税不服審判所の判断を超えているのではないだろうか。 所得税法第204条第1項第6号は、そろそろその役目を終え、削除される時期が到来しているのかもしれない。   (了)

#No. 298(掲載号)
#米澤 勝
2018/12/13

金融・投資商品の税務Q&A 【Q41】「上場外国株式の譲渡損についての損益通算の可否」

金融・投資商品の税務Q&A 【Q41】 「上場外国株式の譲渡損についての損益通算の可否」   PwC税理士法人 金融部 パートナー 税理士 箱田 晶子   ●○ 検 討 ○● 1 株式の譲渡から生じた損益に係る損益通算の概要 上場株式等の譲渡から生じる所得については、他の所得と区分し、上場株式等の譲渡による事業所得、譲渡所得及び雑所得(以下、「上場株式等に係る譲渡所得等」)として、申告分離課税(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)が適用されます。上場株式等が証券会社等の特定口座内の源泉徴収選択口座で保管されており譲渡益について証券会社等により源泉徴収がなされる場合を除き、原則として申告が必要となります。 一方、上場株式等の譲渡について譲渡損が生じた場合は、特に申告を行う必要はありません。ただし、①他の上場株式等の譲渡益と損益通算する場合、又は②上場株式等の配当所得等(申告分離課税を選択したもの)と通算する場合は、特定口座内で損益通算が行われる場合を除き、申告を行う必要があります。また、上場株式等の譲渡損失について翌年以降3年間繰り越す場合も申告を行う必要があります。 この場合において、上記の②(上場株式等に係る配当所得等との損益通算)又は譲渡損失の繰越控除に関しては、譲渡が以下を含む一定の場合に限られています。 上記①の「金融商品取引法第2条第9項に規定する金融商品取引業者又は同法第2条第11項に規定する登録金融機関」とは、日本で金融商品取引法上の登録を受けた者をいいますので、外国に所在する証券会社は含まれません。したがって、外国に所在する証券会社に売委託又は当該証券会社に対して譲渡した場合等は、原則として上場株式等の配当所得等との損益通算や譲渡損失の3年間の繰越控除の対象とはなりません(上記⑨⑩の日本の信託財産として保有されている外国株式を譲渡する場合を除く)。 なお、上場株式等の譲渡に係る譲渡損は、非上場株式の譲渡に係る譲渡益との損益通算を行うことはできません。また、他の所得(給与所得や雑所得等)との損益通算もできません。   2 本件へのあてはめ 本件の上場外国株式等の譲渡から生じた譲渡損については、1に記載のとおり、他の上場株式等の譲渡益と損益通算を行うことができます。したがって、他に上場株式等(国内、国外株式を問わず、特定口座に保管されているかどうかも問いません)の譲渡益がある場合は、申告を行うことにより損益を通算することができます。 一方、本件の上場株式等の譲渡は外国の証券会社を通じて行われることから、上場株式等の配当所得等との損益通算や譲渡損失の3年間の繰越控除を行うことはできません。また、それ以外の所得との損益通算もできません。 (了)

#No. 298(掲載号)
#箱田 晶子
2018/12/13

〈桃太郎で理解する〉収益認識に関する会計基準 【第1回】「桃太郎とイヌ・サル・キジは労務サービス契約を結んでいた」

〈桃太郎で理解する〉 収益認識に関する会計基準 【第1回】 「桃太郎とイヌ・サル・キジは労務サービス契約を結んでいた」 公認会計士 石王丸 周夫   ◆この連載のねらい◆ これは単なる新会計基準ではありません。“これ”というのは、2018年3月に公表された「収益認識に関する会計基準」のことです(この連載では以下、収益認識会計基準と呼びます)。 収益認識会計基準は、新しい時代を見据えた、革新性の高い会計基準です。この会計基準には、これまでの日本の会計基準とは明らかに異なる点が1つあります。 それは、「製造業中心思考ではない」という点です。 従来の収益に関する会計ルールは、「出荷基準」という用語に見られるとおり、製造業を前提としていることを感じさせるものでしたが、収益認識会計基準では、「履行義務の充足」という抽象的な表現が中心になっており、製造業を強く感じさせるような表現は見当たりません。 これは、IFRS(国際財務報告基準)のルールをほぼそのまま取り入れたことにもよりますが、そもそもIFRSの収益認識ルールが、モノづくりの枠を超えた多種多様な経済を前提としているということも、背景として見逃すことができません。 そのため、従来の感覚でこの会計基準を読むと、「何を言おうとしているのかよくわからない」と感じてしまうのです。 この連載では、その難解な会計基準のエッセンスを、誰もが知っている『桃太郎』の話を引き合いにして、やさしく解説していきます。イヌ・サル・キジたちが桃太郎からもらった「きびだんご」を、イヌ・サル・キジにとっての「収益」とみなし、イヌ・サル・キジがその収益をどのように認識すればよいかということを考えていきます。 なお、この連載はエッセンスのみを取り上げていることから、収益認識会計基準の内容について割愛した部分が多くあります。それらについては他の解説書をご参照いただくようお願い申し上げます。   1 桃太郎とイヌ・サル・キジの契約 連載最初のテーマは「契約」です。 契約というのは、何も私たちの時代だけに限ったことではありません。それに似たことは、はるか昔からありました。どれくらい昔からかというと、少なくともこれくらい昔でも、契約みたいなものはありました。 むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。 おじいさんは山に芝刈りに、おばあさんは川に洗濯に行きました。 おばあさんが川で洗濯をしていると、大きな桃がドンブラコ、ドンブラコと流れてきました。 皆さん、おわかりでしょうか。あの『桃太郎』です。 このあと、おばあさんが家に持ち帰った桃から桃太郎が生まれ、大きくなった桃太郎は鬼退治に行くのでしたね。 そして、以下が「契約」の登場する場面です。 桃太郎は、おばあさんの作ったきびだんごを持って、鬼ヶ島にむけて出発しました。すると、その途中で、イヌがワンワンとやってきました。 「桃太郎さん、お腰につけたきびだんごを1つくださいな。」 「鬼退治に一緒について来るならあげましょう。」 こうして、きびだんごをもらったイヌは、桃太郎と一緒に歩いていきました。 これがなぜ契約だかわかりますか。 それは、桃太郎とイヌが「約束」を取り交わしているからです。こんな感じにです。 ここでは契約書は作成しておらず、口頭での約束で終わっています。しかし、契約というのは、書面によらずとも、当事者同士が口頭で約束すれば成立します。これは立派な契約です。 そしてこの契約により、イヌは「サービス売上を計上する」ことになります。 ご存じのとおり、桃太郎はこのあと、サルとキジにも出会い、同様の契約を締結します。   2 契約の内容を確かめることが大切 桃太郎とイヌ・サル・キジたちは、契約をしましたが、契約書はありません。鬼退治同行の約束をすると同時にきびだんごをもらえるので、店頭での現金売りと同じ感覚で、契約書は作成しなかったのではないでしょうか。 しかし・・・イヌ・サル・キジとしては、これはちょっとうかつでしたねぇ。 鬼退治に同行するといっても、いったいどんなことをやらされるのか分からないじゃないですか。 「長期化した場合に追加のきびだんごはあるのか」とか、「ケガをした場合の保障はあるのか」とか、「宝物を手に入れた場合の分け前はどうなるのか」とか、気になることはいくらでもあります。 そういう細かいことを確認せずに仕事をしてしまって、本当に大丈夫なんでしょうか。 イヌ・サル・キジが販売したものは、目に見えるモノではありません。目に見えない無形のサービスです。そういう場合は一般的に、当事者間の合意内容を書面に記録し、契約書として残しておくことが多いのです。 目に見えない約束は、あとで揉めごとが起きないとも限りませんので、そうした事態を避けるため、契約書を作成して「見える化」するというわけです。 イヌ・サル・キジは、それをやらなかったのですね。 いずれにしても、「目に見えない取引」を実行する場合は、モノの販売と違って、「サービスの範囲はどこまでか」とか、「予定していた作業量を大幅に超えた場合の追加報酬はあるのか」といったことも確かめておく必要があります。 なぜなら、そうした細かいことが、収益の計上に際して関係してくるからです。 つまり、イヌ・サル・キジたちは、桃太郎との取引で契約書を作りませんでしたが、サービス売上の計上処理を行うにあたっては、取引条件の詳細を知っておくことが不可欠だというわけです。 次回から解説していきますが、収益認識会計基準では、収益認識というのは「契約の内容をよく確かめる」ことからスタートするとなっています。それは上記のような「目に見えない取引」を念頭に置いているからです。 ところで、現代社会においては、この「目に見えない取引」というのが、近年かなり増えてきました。サービス産業やIT産業の営業取引がその代表格ですが、それだけではありません。製造業であっても、技術やノウハウ、ブランドやデザインといった知的財産から派生する収益への関心が年々高まってきています。特に欧米では、社会経済の関心は、モノではなく、目に見えない財産権のほうに完全に移っています。 実は、収益認識会計基準が登場した背景はここにあるのです。 収益認識会計基準というのは、モノへの関心が強かった近代工業社会ではなく、それに代わって到来した新しい社会のために作られた会計基準なのです。 ▷今回のまとめ 収益の認識は、まず、契約内容を確かめることから始めます。 (了)

#No. 298(掲載号)
#石王丸 周夫
2018/12/13

「収益認識に関する会計基準」及び「収益認識に関する会計基準の適用指針」の徹底解説 【第9回】

「収益認識に関する会計基準」及び 「収益認識に関する会計基準の適用指針」の徹底解説 【第9回】   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋   15 顧客により行使されない権利(非行使部分) (1) 顧客により行使されない権利(非行使部分) 顧客から企業に、返金が不要な前払いがなされた場合、将来において企業から財又はサービスを受け取る権利が顧客に付与され、企業は当該財又はサービスを移転する(又は移転するための準備を行う)義務を負うが、顧客は当該権利のすべてを行使しない場合がある。この顧客により行使されない権利を「非行使部分」という(適用指針53)。例えば、商品券等が該当する。 ① 会計処理 将来において財又はサービスを移転する(又は移転するための準備を行う)履行義務については、顧客から支払を受けた時は、支払を受けた金額で契約負債を認識する(適用指針52)。 そして、財又はサービスを移転し、履行義務を充足した時に、契約負債を取り崩し、収益を認識する。 一方、契約負債の非行使部分については、顧客が権利を行使するかどうかの状況を判断し、その状況により以下のとおり収益を認識する(適用指針54)。 (2) 顧客により行使されない権利(非行使部分)(従来との相違点等) ① 従来との相違点 ② 影響がある取引(例示) ③ 適用上の課題 ④ 財務諸表への影響    16 返金が不要な契約における取引開始日における顧客からの支払 (1) 返金が不要な契約における取引開始日における顧客からの支払 顧客が契約において取引開始日又はその前後に、返金が不要な支払が必要となる場合ある。これを返金が不要な契約における取引開始日における顧客からの支払という。 例えば、返金義務のないスポーツクラブ会員契約の入会手数料、電気通信契約の加入手数料、サービス契約のセットアップ手数料、供給契約の当初手数料、不動産賃貸借契約の礼金等がある(適用指針141)。 ① 顧客からの支払が約束した財又はサービスの移転を生じさせるものか、又は将来の財又はサービスの移転に対するものかどうかの判断 返金が不要な契約における取引開始日における顧客からの支払は、その支払が約束した財又はサービスの移転を生じさせるものか、又は将来の財又はサービスの移転に対するものかによって会計処理が異なる。 そのため、契約における取引開始日又はその前後に、顧客から返金が不要な支払を受ける場合、まず、履行義務を識別するために、顧客からの支払が約束した財又はサービスの移転を生じさせるものか、又は将来の財又はサービスの移転に対するものかどうかを判断する(適用指針57)。 なお、返金が不要な契約における「取引開始日」の顧客からの支払は、通常、企業が契約における取引開始日又はその前後において「契約を履行するために行う活動」に関連するが、当該活動は約束した財又はサービスを顧客に移転させるものではない(適用指針142)。つまり、当該活動自体は履行義務ではない。 ② 会計処理 顧客からの支払が約束した財又はサービスの移転を生じさせるものか、又は将来の財又はサービスの移転に対するものかどうかにより、会計処理は以下のとおりとなる(適用指針58、59)。 (2) 返金が不要な契約における取引開始日における顧客からの支払(従来との相違点等) ① 従来との相違点 ② 影響がある取引(例示) ③ 適用上の課題 ④ 財務諸表への影響 17 ライセンスの供与 (1) ライセンスの供与 ライセンスとは、企業の知的財産に対する顧客の権利を定めるものである(指針61)。例えば、ソフトウェア、フランチャイズ、動画、音楽、特許権、商標権、著作権などがある。 ① ライセンスの供与は他の財又はサービスと別個のものであるかの判断 契約にライセンスの供与が含まれる場合、契約に含まれる他の財又はサービスと別個のものである場合、会計処理の単位が異なるため、まず、ライセンスを供与する約束が、顧客との契約における他の財又はサービスを移転する約束と別個のものであるかどうかを判断する。 そして、ライセンスの供与が、契約における他の財又はサービスと別個のものである場合、ライセンス部分とその他の財又サービス部分を別々の履行義務として会計処理する。また、別個でない場合、1つの履行義務として会計処理する。 ② ライセンスを供与する約束が別個のものでない場合の会計処理 上記①の結果、ライセンスを供与する約束が、顧客との契約における他の財又はサービスを移転する約束と別個のものでない場合には、ライセンスを供与する約束と当該他の財又はサービスを移転する約束の両方を一括して単一の履行義務として処理し、【STEP5】に従い収益を認識する(適用指針61)。 ③ ライセンスを供与する約束が別個のものである場合の会計処理(総論) 上記①の結果、ライセンスを供与する約束が、顧客との契約における他の財又はサービスを移転する約束と別個のものである場合には、ライセンスを供与する約束と他の財又はサービスを移転する約束は、別々の履行義務であるため、取引価格をそれぞれに配分し、別々に収益を認識する。 基本的な会計処理は、上記のとおりだが、ライセンスを供与する約束の収益認識については、以下④の特有の論点がある。 ④ ライセンスを供与する約束の会計処理 (ⅰ) アクセスする権利か使用する権利かの判定 ライセンスを供与する約束が、顧客との契約における他の財又はサービスを移転する約束と別個のものであり、ライセンスを供与する約束が独立した履行義務である場合には、ライセンスを顧客に供与する際の企業の約束の性質が、顧客に以下のいずれを提供するものかを判定する(適用指針62)。 具体的には、以下のように判定する。 ライセンスを供与する際の企業の約束の性質は、以下の要件のすべてに該当する場合には、顧客が権利を有している知的財産の形態、機能性又は価値が継続的に変化していて、企業の知的財産にアクセスする権利を提供するものとなる(適用指針63)。いずれかに該当しない場合は、企業の知的財産を使用する権利となる(適用指針64)。 なお、ライセンスを供与する際の企業の約束の性質を判定するにあたっては、以下の要因は考慮しない(適用指針66、148)。 (ⅱ) ライセンスを供与する約束の会計処理 上記の(ⅰ)の判定の結果、アクセスする権利か使用する権利かにより、以下のように会計処理する(適用指針62、147)。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (2) ライセンスの供与(従来との相違点等) ① 従来との相違点 ② 影響がある取引(例示) ③ 適用上の課題 ④ 財務諸表への影響 (了)

#No. 298(掲載号)
#西田 友洋
2018/12/13

M&Aに必要なデューデリジェンスの基本と実務-財務・税務編- 【第15回】「労働債務の分析(その3)」-役員に対する労働債務-

M&Aに必要な デューデリジェンスの基本と実務 -財務・税務編- 【第15回】 「労働債務の分析(その3)」 -役員に対する労働債務-   公認会計士 石田 晃一   ←(前回) | (次回)→   ▷役員に対する報酬等 役員に対して支給される報酬等(いわゆる役員報酬等)としては、以下のようなものが挙げられる。 役員報酬等に関しては、いわゆる「お手盛り防止」のため、会社法上、以下のような規制がなされている(会社法第361条)。   ▷定期的に支給される定額報酬等 毎月、もしくは年俸として金額が確定している報酬に関しては、定款等で報酬の上限のみを定め、各人別の金額の決定は取締役会に一任することも会社法上許容されている。 ただし、最近世間を賑わせた大手製造業の例からすると、極めて強大な権力が一部役員にのみ集中するような場合の株主によるガバナンスの在り方については議論されて然るべきかもしれない。 いずれにせよ、定期的に支給される役員報酬等に関して労働債務として認識されるべきものは、定額報酬のうち、支払期日を経過してなお支払われていない部分があれば、当該金額について未払金として認識するか、もしくは支払期日が到来していない場合であっても、期間の経過等に伴って受給権が発生していると認められる場合には、当該部分について未払費用として労働債務が認識されることになろう。 M&Aに際しては、基準日における上記未払債務の計上有無と、基準日以降、クロージング日における当該未払債務の取扱い等について確認しておく必要があろう。   ▷役員賞与 会社法の施行に伴い、役員賞与は利益処分項目としてではなく、発生主義に基づく費用項目として処理されることとなったが、当該金額について定款に定めがない場合、当該役員賞与の支給については決算日後、株主総会による決議を要することから、決算日現在では支給が確定した債務には当たらず、条件付き債務ということになる。 したがって、この場合には当該決議事項とされる金額又はその見込額につき、原則として役員賞与引当金等として引当計上されることとなる。 M&Aに際しては、基準日における引当計上額の妥当性、基準日以降、クロージング日までの間における役員賞与の支給要否に関する取扱い等について確認しておく必要があろう。   ▷金額の確定していない業績連動型報酬等 役員報酬のうち、期間業績に応じて支給額が決定するもの等、いわゆる業績連動型の役員報酬等については、会社法上、その具体的な算定方法を定款等で定める必要がある。 業績連動型の役員報酬等に関する算定方法としては、例えば、以下のようなケースが考えられる。 (注) ROE:株主資本利益率、ROIC:投下資本利益率 このように定められた算定方法に従って、金額が確定してから1ヶ月以内に支給される等の諸要件を満たす場合、税務上の損金算入が認められることになるが、会計上は金額が確定する以前であっても、発生主義に従って受給権が発生していると認められる場合には、当該金額について未払認識の要否等につき検討する余地があるだろう。 M&Aに際しては、基準日における上記未払債務の認識の要否に加え、基準日以降、クロージング日までの当該業績連動債務の取扱い等について確認しておく必要があろう。   ▷役員退職慰労金 退職する役員に対する退職慰労金の支払は、通常の場合、支給方法や金額の決定方法等に関する内規に基づき行われることが一般的である。近年、上場企業等を中心として、こうした内規の見直しにより、ストックオプションなどの導入に代えて役員退職慰労金の内規を廃止する動きが見られるが、中小企業等における役員退職慰労金の支給実務は依然として多く見られる。 総務省が平成25年に実施した「民間企業における役員退職慰労金制度の実態に関する調査」では、調査対象となった2,997社のうち「役員退職慰労金制度がある」とした企業が全体の45.5%を占めたほか、「制度はあったが廃止した」企業が13.0%に上った。 ◆役員退職慰労金制度の有無 内規等に基づく役員に対する退職慰労金の支給は、議論はあるものの、従業員に対する退職金と同様、勤務実績に応じた報酬対価の後払としての性格等を有するものとされる。したがって、勤務実績に応じて、発生主義によってその期の負担に属する金額を営業費用として認識すべきものとされ、累積した退職慰労金相当額については、役員退職慰労引当金として引当計上されることが一般的な会計処理であろう。 ただし、税法基準等によっている非上場企業の多くはこうした内規を有していながら、役員退職慰労引当金を計上していないのが実情といってもよいだろう。 M&Aに際しては、基準日における引当計上額の妥当性、基準日以降、クロージング日までの間における追加的な引当計上額の発生見込額、M&Aに伴う役員退職慰労金の支給に関する取扱い等について確認しておく必要があろう。 ◎オーナー創業者に対する役員退職慰労金 役員に対する退職慰労金は、例えば以下のような方法で算定されることが多い。 オーナー企業等の場合、会社の創業以来、創業者が代表取締役として継続して就任しているケースや、最終報酬月額が高額な場合等があり、オーナー経営者に対する役員退職慰労金が莫大な金額となる場合がある。 会計上は、内規に定められた計算式に従って計算された金額であって、支給に耐え得るだけの内部留保や現預金等の裏付けがあるのであれば、これを過大なものとして取り扱う余地はなく、株主総会の決議に委ねるほかないが、税務上は不相当に高額な役員退職金については、当該不相当な部分について損金算入が認められない場合がある。このため、M&Aに際してはオーナー経営者に対する退職慰労金について、全額の損金性が認められる範囲内といえるか否か、について検討が必要な場合もあろう。 ただし、税務上、役員退職金の水準に関する明文での規定はなく、業務従事期間や退職事情等について、同種・類似規模の事業法人の支給状況等に照らして判断されることになるため、明確にシロクロの判断が可能というわけではない。功績倍率の目安として、例えば「社長3倍」などということがよくいわれるが、これとて普遍的な基準ではなく、あくまで個別の案件ごと、ケースバイケースでの実態に即した判断、ということになろう。 一方で、別の目安として役員退職金に関する非課税枠としての「退職所得控除」が挙げられることもある。 ◆退職所得控除の計算方法 当該金額までは所得税が課されない、という意味で、上記の「退職所得控除」はある意味、役員に対する退職慰労金の下限を示す、といわれることもある。明確な金額として計算が可能であるとはいえ、金額の大小を論ずるための基準とはいえず、そうした役割を有するものではないであろう。 M&Aに伴い、株主でもあるオーナー経営者から株式を買収すると同時に当該オーナー経営者が対象会社の役員も退任する場合には、実質的には株式の譲渡対価の一部を退職慰労金として支払うといったケースも見受けられることから、役員退職慰労金については、税理士等も交えた慎重な検討が必要な領域であるといえよう。 (了)

#No. 298(掲載号)
#石田 晃一
2018/12/13

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第145回】金融商品会計⑯「デット・エクイティ・スワップ」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第145回】 金融商品会計⑯ 「デット・エクイティ・スワップ」   仰星監査法人 公認会計士 竹本 泰明     〈事例による解説〉   〈会計処理の解説〉 1 会計処理の考え方 貸付金などの金融資産の消滅にあたっては、通常、「金融商品に関する会計基準」(以下、「金融商品会計基準」という)第8項及び第9項の要件を満たす必要があるが、DESの場合、債権(P社にとっての貸付金)と債務(S社にとっての借入金)が同一の債務者(S社)に帰属し当該債権は混同により消滅するため、支配が他に移転したかどうかを検討するまでもなく金融資産の消滅の認識要件を満たすものと考えられる。 したがって、債権者は当該債権の消滅を認識するとともに、消滅した債権の帳簿価額とその対価としての受取額との差額を、当期の損益として処理することとなる(実務対応報告第6号2(1))。 2 債権者側の取得したS社株式の取扱い DESによりP社が取得したS社株式は、貸付金とは異なる資産のため、S社株式の取得は新たな金融資産の取得に該当する。そのため、P社では貸付金の消滅を認識するとともに、S社株式を時価により計上する(実務対応報告第6号2(2)、金融商品会計基準第11項及び第13項)。 P社における貸付金の消滅の認識にあたっては、当該貸付金に貸倒引当金が計上されているため、貸付金の残高から貸倒引当金を控除した金額で、取得したS社株式の時価との差額を算定し、当期の損益として処理することになる。 3 取得したS社株式の時価 S社株式に市場価格がある場合は、「市場価格に基づく価額」がS社株式の時価であり、市場価格がない場合は、「合理的に算定された価額」が時価となる(金融商品会計基準第6項)。 実務対応報告第6号によれば、DESは債務者が財務的に困難な場合に債務者の再建の一手法として行われることが多く、債権者が取得する債務者の発行した株式の時価は、消滅した債権に関する帳簿価額を上回らないと想定される。すなわち、DES実行時点において利益が発生するのは、極めて例外的な状況に限られることとなると整理されている(実務対応報告第6号2(3))。 そのため、DESにより利益が発生した場合には、時価の算定に誤りがないか、再度確かめる必要がある。   (了)

#No. 298(掲載号)
#竹本 泰明
2018/12/13

税務争訟に必要な法曹マインドと裁判の常識 【第1回】「なぜ税理士は税務争訟に違和感を抱くのか」

税務争訟に必要な 法曹マインドと裁判の常識 【第1回】 「なぜ税理士は税務争訟に違和感を抱くのか」   弁護士 下尾 裕   -連載開始にあたって- 税理士等の会計専門家(この連載においては、わかりやすさの観点から敢えて税理士と呼ばせていただく)と税務訴訟の判決内容等について意見交換をさせていただくと、時に税務争訟(課税処分を争うための再調査請求、審査請求又は税務訴訟)に関与する弁護士や訟務検事(税務訴訟において国を代理する法務局等の職員。その多くは検察官又は裁判官の出向者である)の戦い方、さらには判決における裁判官の判断について、「本来主張すべき事項が十分に主張されていない」又は「当該事案以外の実務への影響等が十分に考慮されていない」などのお叱りを受ける場合がある。 また、逆に税務に携わる弁護士と意見交換をしていると、税理士が再調査請求又は審査請求を代理した後に税務訴訟の提起について相談を受ける事案等において、税務訴訟において本来争点とすべき事項が十分に検討されないままに審査請求等の手続が進められているとの不満を耳にすることがある。 もちろん、本当に法曹又は税理士の税務争訟における戦略・理解に問題があるケースもあるのであろうが、そうでない場合に、なぜ、同じ税務に携わる専門家同士でこうしたすれ違いが生じるのかを、時には裁判手続の解説を交えながら、弁護士目線で可能な限りで紐解いてみようというのが、この連載の趣旨である。 最初にお断りしておくと、この連載でお話することは、東京国税局での任期付職員としての勤務を経て、税務に携わっている一弁護士としての筆者の私見である。また、この連載で言及する税理士と法曹との間での税務に対する物の見方の差異はあくまで「傾向」であり、読者の皆様の中には、こうした傾向が当てはまらない方もおられるかもしれない。 それでも、この連載を通じて、税務における法曹の思考の傾向(「法曹マインド」)をご理解いただくことは、読者の皆様が、自らが関与する税務争訟等において弁護士と協働し、訟務検事や裁判官と対峙される際の一助となりうるものと思われることから、1つの読み物として、お目通しをいただけると幸甚である。   1 税理士と法曹のマインドの違い-経済的実質と法律的実質- 税理士と法曹の思考の違いを説明する言葉として、弁護士は「事実」で考え、会計専門家は「仕訳」で考えるなどと言われることがある。この言葉は、両専門家の感覚的差異を捉えるものであるが、この機会にもう少し具体的に検討してみたい。 例えば、以下のような仕訳を例にとって、税理士と法曹のマインドの差異を考えてみたい。読者の皆様はこの仕訳を見て何を感じられるだろうか。 まず、これを税理士の立場から見た場合、もちろん実際には記帳の前提として、クライアントの取引の内容を把握される場合がほとんどであると思われるが、究極においては、仕入及び売上の計上時期やこれらの金額が把握できれば基本的な仕訳処理は可能であり、それ以上の具体的な取引の内容の確認が絶対に必要というわけではないと思われる。 一方、これを法曹が見た場合、この帳簿上の取引を把握するにあたっては、裁判実務における主張のルールに従って、仕訳の背景にある具体的な事実関係、すなわち、①取引の当事者、②取引の日付、さらには③取引の法的性質(「売買契約」であるのか、(請負の要素を持つ)製造物供給契約であるのかなど)を確認しなければ、実態が分からないとの感想を持つと思われる。 このような違いは、税務処理の前提となる仕訳が、財務状況の表示を目的としており、その結果、前提となる取引の事実関係を捨象して記載される(さらに言えば、生の事実がどのようなものであれ、経済的実質からみて同じ経済的効果を生むものは同じように仕訳されうる)のに対し、法曹が法律を適用するにあたってはより具体的な事実関係(ここでの事実の中には生の事実だけでなく、上記のとおり契約の性質といった一定の法的評価を含むものである。この連載においてはこうした具体的事実を「法律的実質」と呼ぶことにする)が必要であることに起因するものであるとの説明が可能である。 また、税理士においては、日常的に仕訳を前提とした会計処理を行う結果として、個々の取引の具体的事実関係よりはその取引が生じる経済的効果、言い換えれば、経済的実質により重点を置いた思考回路になる傾向があるという分析も可能かもしれない。   2 税務は経済的実質のみをベースに処理されるのか では、税務は、先ほど述べた経済的実質のみをベースに処理されるのであろうか。実はここに、冒頭で述べたような“すれ違い”の一因がある。 読者の皆様もご承知のとおり、税務も根本をたどるとそこには租税法律主義(憲法第84条)という大原則が存在し、そこでは「事実」を租税法という法律に当てはめて結論を導くという作業が行われることが前提となっている。言い換えれば、税務は、日常的には事実関係を捨象した「仕訳」の積み重ねの中で処理され、経済的実質重視の思考による運用が行われているにもかかわらず、いざ課税の根拠が問われる段になると「事実」(法律的実質)を重視する法曹マインドが登場することになるのである。 また、租税法の文言においては、民法等の考え方をそのまま持ち込んでいるもの(いわゆる「借用概念」と呼ばれるもの)があり、こうした租税法の文言の適用においては、特に法曹マインドによる思考の比重が高まるように思われる。 その一例として、少し前の裁判例ではあるが、いわゆる「レポ取引」に関する東京地判平成19年4月17日を取り上げてみたい。 この裁判例は、内国法人である信託銀行が米国子会社を通じて米国法人に対して、一定期間後の買戻しを前提に米国国債等を売却した場合において、再売買代金と売買代金の差額(売買差益)が当時の所得税法第161条第6号における「国内において業務を行う者に対する貸付金(これに準ずるものを含む)で当該業務に係るものの利子」に該当するかどうか(上記信託銀行が源泉徴収義務を負うか)が問題となった事案である。 この事案の問題点を端的に理解するため、信託銀行が当初100万円で米国国債等を売却して、一定期間後に110万円で買い戻す約束になっていたと仮定してみたい。 この場合、信託銀行は、買戻時点で米国国債等の価値が110万円以上になっていれば利益が出る一方、仮にその価値が110万円を下回っていたとしても110万円で買い戻さなければならず(いわゆる「マージン・コール条項」)、この場合には信託銀行に損失が生じることになる。逆に、米国法人は、一定期間100万円を提供することにより、必ず10万円の利益を得ることが保証されている。 このレポ取引は、上記のとおり法的には米国国債等の売買及び買戻し(再売買)と整理されているが、取引を全体として見れば、信託銀行が米国国債等を担保に米国法人から利子10万円で100万円を借りたのと経済的には変わりがないことから、課税当局はこうした経済的実質を重視して売買差益を「利子」とみて源泉所得税の対象となると主張したのである。 これに対し、東京地裁は、以下のように述べて上記売買差益は「利子」には該当しない(源泉徴収を要しない)ものと判示し、この結論はそのまま上訴審においても維持されるに至った。 この裁判例では、少し乱暴に整理すれば、課税庁は「レポ取引」の経済的実質を重視した課税を行ったのに対し、法曹(裁判官)は、「利子」という言葉の意味をその出自である民法をベースに解釈した上、どのような契約であったのかという法律的実質から考え、その課税を違法としたとの評価が可能である。 課税庁の職員も多くは税理士と同じマインドを持っているであろうことからすれば、この裁判例は、税理士と法曹のマインドの違いの一端を示すものと言える。 *  *  * 次回においては、税務調査から税務訴訟に至るまでの手続において、本日ご説明したマインドの違いがどのような影響を及ぼすのかを考えてみたい。 (了)

#No. 298(掲載号)
#下尾 裕
2018/12/13
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