AIで 士業は変わるか? 【追補】 「士業は変わり続ける」 -連載を終えて- Profession Journal編集部 税務・会計Web情報誌プロフェッションジャーナルの創刊5周年記念特集として本年2月から連載が開始され、全20回、計21名の方々にご寄稿いただいた『AIで士業は変わるか?』は、先週公開号をもって一旦その役目を終え、最終回の掲載を迎えた。 本連載ではAIを中心としたIT技術の急速な進化によって、会計・税務の世界がどのように変化するのか、あるいはすでに変化しているのか、また、公認会計士、税理士という職業自体が代替され消滅してしまうのか、各回の筆者による見解や本職に対する想いを披露していただいた。 諸般の事情により掲載が適わなかった方もおられたが、結果として上記のとおり21名の方々による原稿を掲載させていただいたなかで、編集部として意識したのは、一定の幅を設けつつも様々な立場の方々にご登場いただきたいというものだった(詳しくは後述)。 もちろん公認会計士又は税理士の有資格者が多いものの、その所属する組織(又は個人)や経歴・立場、職務内容、業務方針(人生設計)等がバラエティに富んだ筆者陣となっているのは、実際に同じ実務の現場で活躍されている会員読者の方々にはご理解いただけるものと思う。本当にこれら職業の働き方というのは幅広いものなのだなと、あらためて感じた次第である。 * * * そもそも本連載を企画するに至ったきっかけは、昨年秋頃から、そして現在においてもなお、多くの経済誌・ビジネス誌、新聞等において、AIによって士業、とりわけ公認会計士、税理士という職業が代替され成立し得なくなる未来が到来することを謳った特集が組まれていたものに対し感じた違和感によるものであった。 職業柄、執筆者を中心とした多くの公認会計士、税理士の方々にお会いする機会に恵まれているが、最新の法制度や時流をキャッチアップし、クライアントのために考え悩む先生方の姿を見るに、ロボットとはいえないまでも人間以外の何らかの機器がすべてを代替し解決するような状況は、想像しがたい。 一方で、AIを含むIT技術の進化は目覚しいどころの速さではなく、本誌創刊の2013年当時と比べてすら、社会経済を一変させるインパクトをもたらしており、すでに実務への導入が始まっているのも事実であり、我々の想像を超えた技術開発をめぐる現況も受け止めなくてはならない。 このような、いわば過渡期の状況を見るに、職業がなくなる、なくならない、といった極端に単純化された答えは、まさに現在、第一線で活躍しておられる実務家の方々にとっては意味を成さないのではないかと考えるようになった。 そして様々な立場の方にご意見を伺えば、その共通するところが、この時代に士業が向かうべき道として浮かび上がってくるのではないかと考えた。 * * * 本連載では、大手の監査法人、税理士法人において会計監査、税務支援、さらには実際にAIをこれら業務に活用する最先端の取組みを行っている公認会計士、税理士の方々から、専門性の高いサービスを提供するためあえて個人もしくは小規模での事務所等にて活躍されている方々、さらにはこれら業界とも関係の深い研究者、会計ソフトベンダー、弁護士、不動産鑑定士、そして本サイトの運営会社プロフェッションネットワークの関連会社である資格の学校TACの代表取締役社長に至るまで、冒頭に述べたとおり、それぞれの考えを率直に書いていただいた。 そこでは、AIに関する最前線の取組みから、会計・税務の支援業務を棚卸ししAIに代替しうるものと代替しえないものを詳細に検証したもの、会計士・税理士の業界全体を見据えて問題提起を行うものまで、会員読者の方々へ今後の仕事への取組みのアドバイスとなるような玉稿が集まった。 そして、これらの中で共通していたのは、公認会計士、税理士という職業の本来の姿を捉えなおすこと、そして、その本来の姿さえ見失わなければ、「技術革新が職業を奪う」といったような情報に惑わされることはない、というものであったと考える。 すべてが手書きであった時代から、自動計算、デジタル化の時代まで、公認会計士、税理士の方々は時代ごとの最新の技術を取り込み、サービスを進化させつつも、その本来の姿を変えることはなかった。 だとすれば、AIという新たな存在に対しても、それらを吸収し進化を続けていくと考えるのが、現実的な回答ということになるのではないだろうか(そういう意味を込めて、本稿のタイトルを「士業は変わり続ける」とさせていただいた)。 * * * ある税理士の方とお会いした際、本連載について紹介したところ、次のような言葉をいただいた。 この方がおっしゃるように、今後、再びこのような問題が提起されるとき、それはAIの次に到来する“何か”なのかもしれない。冒頭に述べたとおり、本連載は一旦その役目を終えたものの、本誌ではこのテーマについて、今後も引き続き検証を行っていくこととしたい。 最後に、一見すると突拍子もない本テーマに関する原稿依頼にもかかわらず、真摯に受け止めていただき、ご自身の見解を余すところなくご紹介いただいた本連載の筆者の方々には、この場を借りて心よりお礼を申し上げたい。 (了)
《速報解説》 国税庁、平成30年分の路線価を公表 ~都市部は依然上昇傾向、地方も訪日客効果で一部上昇の兆し~ Profession Journal編集部 国税庁は7月2日、相続税や贈与税の算定基準となる平成30年分の路線価等を公表した。 平成30年分の全国平均路線価は対前年比0.7%の上昇となり、3年連続の上昇となった。また、路線価が上昇した都道府県数も昨年の13から18へと増加している。 路線価上昇の主な背景としては、訪日外国人客(インバウンド)の増加や都市部の大規模再開発の影響によるものとみられる。 なお、ここ3年の全国平均路線価の対前年比率をみると、下表のように今年が最も高い上昇率となっている。 〇都市部を中心に地価上昇続く 東京都は、企業のオフィス需要及び訪日客のインバウンド需要などを背景に路線価の上昇が続いており、昨年の3.2%を上回る4.0%の上昇率となった。 東京都のベッドタウンを擁する神奈川県(上昇率0.6%)、千葉県(0.7%)、埼玉県(0.7%)も住宅需要等により上昇が続いており、これら首都圏の4都県は5年連続の上昇となっている。 また、大阪府(1.4%)、愛知県(1.5%)といった大都市も依然上昇傾向にあり、大阪府は5年連続、愛知県は6年連続で前年より上回った。 なお、今年も地点別の最高路線価は、東京都中央区銀座5丁目の「鳩居堂」前が4,432万円(1㎡当たり)で33年連続のトップとなり、昨年に続き過去最高価格を更新した。 〇地方でも観光地や繁華街では路線価上昇 観光地や繁華街は訪日客のインバウンド需要により上昇がみられ、都道府県別の上昇率では沖縄県が5.0%と全国トップとなり、各都道府県庁所在地の最高路線価も水戸市を除いて、上昇がみられる。 なお、このように地方においても観光地化の影響で急激な路線価の上昇がみられる地域もあるため、思わぬ税負担が生じないよう留意しておきたい。 〇各国税局が最高路線価を公表 ちなみに、同日付で各国税局がそれぞれ平成30年分の国税局管内各税務署の最高路線価を公表している。 〈各局が公表した最高路線価(別表)のページ〉 (了)
《速報解説》 民泊新法による住宅宿泊事業の所得は原則雑所得に ~宿泊者への提供面積によっては住宅ローン控除の適用要件を充たさなくなるケースも~ Profession Journal編集部 急増する外国人観光客への対応等を目的として、本年6月15日から住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)が施行され、個人が都道府県知事等への届出手続を経ることで、住宅宿泊事業者として自己が居住する住宅を宿泊者へ提供できるようになった。 民泊というと一般的なホテルや旅館に比べ宿泊料がリーズナブルなイメージもあるが、この住宅宿泊事業を行うことで一定の収入も見込まれ、この所得に対する課税の取扱いが気になるところだ。 国税庁が公表している「住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業により生じる所得の課税関係等について(情報)」では、住宅宿泊事業を行うことによる所得税の取扱いを7問のFAQで解説している。 本情報では、まず、不動産の貸付けによる所得は原則として不動産所得に区分されるものの、住宅宿泊事業者には宿泊者の衛生・安全の確保義務や一定の設備要件が定められていること等から、住宅宿泊事業は一般的な不動産の貸付け(賃貸)とは異なるとし、また住宅宿泊事業に利用できる家屋は次のものに限定され宿泊日数も制限されている(年間180日を超えないもの)ことを説明している。 これらを踏まえ、住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業を行うことによる所得は、原則として雑所得に区分されるとし、住宅宿泊仲介業者に支払う仲介手数料や宿泊者用の日用品等購入費、水道光熱費、通信費など、必要経費として差し引くことのできるものの例を紹介している。 ただし、不動産賃貸業者が賃貸契約期間満了後、次の賃貸契約が締結されるまでの間に行う住宅宿泊事業による所得は不動産所得に含めることとして差し支えないとし、また専ら住宅宿泊事業による所得で生計を立てているなど所得税法上の事業として行われていることが明らかな場合は事業所得に該当するとした。 ここで上述の居住要件に基づき、いわゆる自宅を宿泊者に提供するとした場合、必要経費として例示された水道光熱費や通信費など、1つの支出が業務用部分と生活用部分の両方に関わりのある費用については、その取扱いに留意が必要だ。 本情報では、これら家事関連費のうち必要経費として認められる範囲について、住宅宿泊事業における届出書等に記載した事業に利用している部分の床面積の総床面積に占める割合や、実際に宿泊客を宿泊させた日数を基にするなど、合理的な方法により按分して計算する必要があるとし、計算例を示している。 さらに、住宅宿泊事業を行う住宅について住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の適用を受けようとする場合、住宅ローン控除は床面積の2分の1以上に相当する部分を専ら自己の居住の用に供しているなどの要件を満たす必要があるため、本情報ではこの点について、対象となる住宅の総床面積のうち生活用部分に占める割合が2分の1を超えるか否かで判断するとし、具体的な区分の仕方や生活・業務の併用部分の判定が難しい場合の算出方法、計算例などを紹介している。 このように、積極的に住宅宿泊事業に参画した結果、上記面積要件を充たさず、昨年まで受けられていた住宅ローン控除が受けられなくなるといったことのないよう、宿泊者への提供部分の面積についても気をつけておきたい。 本情報によると、自宅を特定の期間(年間合計で1ヶ月未満程度)に限って住宅宿泊事業に供している場合には、その家屋の全体を生活用部分として住宅ローン控除の適用が受けられるとしている。 ちなみに、年末調整済みの給与所得を有する方で、住宅宿泊事業を営むことで生じる所得が 20 万円以下の方については、その他に所得がない場合、確定申告は不要となる。 (了)
《速報解説》 IFRS9号を踏まえた金融商品会計基準の改正検討を前に 会計士協会より信用損失の会計処理に関する研究資料が公表される ~19の論点で日本基準と国際基準を比較、見直しに当たっての課題一覧も~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成30年6月29日、日本公認会計士協会は、「我が国の銀行等金融機関の会計実務を踏まえた信用損失の会計処理に関する研究資料」(業種別委員会研究資料第1号)を公表した。 企業会計基準委員会では、今後、IFRS第9号「金融商品」の内容を踏まえた「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号。以下「金融商品会計基準」という)の改正に着手するか否かを判断することとし、2018年夏を目途に意見募集文書を公表する予定である。 研究資料は、今後、金融商品会計基準の検討を議論する際に、関係者が現状を理解した上で議論に臨めるよう、我が国における会計基準及び実務上の取扱いとIFRS及び米国基準における取扱いの違いが理解できるよう比較調査したものである。 表紙を含めて74ページあるので、以下では、主な内容について解説する。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 信用損失の会計処理 信用損失の会計処理は、我が国の会計基準においては、金融商品会計基準に「貸倒見積高の算定」として定められているが、IFRS及び米国基準のような国際的な会計基準改正の動向を踏まえた見直しは、現時点では行われていない(5項)。 なお、研究資料は、債務保証等に係る信用損失も範囲に含めるため、対象とする論点を「信用損失の会計処理」としている(7項)。 Ⅲ 論点の識別 次のように信用損失の会計処理に関する論点の識別を行っている。 以下では、基本的に、IFRS9号と比較しており、米国基準については割愛している。 なお、付録3として、「会計基準等の見直しに当たっての課題の一覧」が記載されている。 (了)
『税理士が知っておきたい「認知症」と相続・財産管理の実務』 発刊のお知らせ
《速報解説》 会計士協会、「仮想通貨交換業者の財務諸表監査に関する実務指針」を公表 ~ICO含むすべての仮想通貨を対象に~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成30年6月29日、日本公認会計士協会は、「仮想通貨交換業者の財務諸表監査に関する実務指針」(業種別委員会実務指針第61号)を公表した。これにより、平成30年3月23日から意見募集していた公開草案が確定することになる。 これは、平成28年6月3日に資金決済法が改正され、仮想通貨交換業者が事業年度ごとに内閣総理大臣へ提出する財務に関する報告書に対して、公認会計士又は監査法人の監査報告書を添付することが求められたことを受けたものであり、仮想通貨交換業者の財務諸表監査に固有と考えられる留意点について述べている。 「業種別委員会実務指針『仮想通貨交換業者の財務諸表監査に関する実務指針』(公開草案)に対するコメントの概要及び対応について」が公表されており、実務指針の理解に資するものと考えられる。 仮想通貨に関しては次のものが公表されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 適用範囲 実務指針は、仮想通貨交換業者の財務諸表監査に関する実務上の指針を提供するものである(1項)。 次のことに留意する(3項、4項、6項)。 実務指針では、次の付録が記載されている。 Ⅲ 仮想通貨交換業者 1 仮想通貨交換業者の行う取引 仮想通貨交換業者は、資金決済法が求める登録(資金決済法63条の2)を受けた者をいい、資金決済法2条7項に定められる以下の行為のいずれかを業として行う者である(実務指針10項(2)(3))。 実務指針は、《付録1 仮想通貨交換業者の理解に関する事項》において、仮想通貨交換業者の理解に関する事項を記載している。 2 財務諸表監査 仮想通貨交換業者の財務諸表監査においては、通常、仮想通貨の取引記録又は残高に関する監査証拠としてブロックチェーン等の記録を利用する(7項)。 公認会計士又は監査法人による監査の目的は、仮想通貨交換業者の作成する財務諸表の適正性に関する意見を表明することであり、仮想通貨交換業者が保有又は取引する仮想通貨及びその基盤となるブロックチェーン等の記録に関して何ら保証を与えるものではない(9項)。 監査契約の締結、企業及び企業環境の理解と重要な虚偽表示リスクの評価、内部統制の理解などについて記載されている。 3 特別な検討を必要とするリスク 仮想通貨交換業者の財務諸表監査では、実務指針15項に記載されている事業特性等に関連して識別された以下のアサーション・レベルの重要な虚偽表示リスク(16項)は、通常、特別な検討を必要とするリスクであると判断される(23項)。 4 会計処理の検討に関する留意事項 仮想通貨交換業者の事業活動が変化している状況において、新しい会計事象や取引が発生し、適用すべき会計基準等が明確でない場合が想定される。 例えば、自己(自己の関係会社を含む)が発行した資金決済法に規定する仮想通貨に関しては、実務対応報告5項から15項における会計処理の対象外となっている。 監査人は、仮想通貨交換業者の財務諸表利用者が適正な判断を行うために必要と認められる場合には、会計処理の方法及びその他の説明情報が適切か否かについて検討しなければならないことに留意する(26項)。 実務対応報告3項において対象外となる自己(自己の関係会社を含む)の発行した資金決済法に規定する仮想通貨に関しては、次のことに留意する(27項)。 Ⅳ 適用時期等 実務指針は、平成30(2018)年6月29日以後に行われる監査から適用する(28項)。 (了)
《速報解説》 ディスクロージャーWG、 報告書(「資本市場における好循環の実現に向けて」)を公表 ~MD&A等の非財務情報、役員報酬等のガバナンス情報の開示充実を促す~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成30年6月28日、金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」は、「ディスクロージャーワーキング・グループ報告-資本市場における好循環の実現に向けて-」を公表した。 これは、有価証券報告書における開示を念頭に、その他の開示(会社法開示、上場規則、任意開示等)との関係にも配意しつつ、企業情報の開示の包括的な検討を行ったものである。 以下では、主な内容について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 「財務情報」及び「記述情報(非財務情報)」 投資判断に必要と考えられる記述情報が、有価証券報告書において、適切に開示されることが重要であると述べられている。 1 経営戦略・ビジネスモデル 2 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A) 3 リスク情報 英国でみられる開示実務も参考に、経営者視点からみたリスクの重要度の順に、発生可能性や時期・事業に与える影響・リスクへの対応策等を含め、企業固有の事情に応じたより実効的なリスク情報の開示を促していく必要がある。 4 その他 ①人的情報等(ジェンダーを始めとする多様性の確保、労働環境といった従業員に関する情報など)、②重要な契約、③分かりやすい開示が議論されている。 5 「財務情報」及び「記述情報」の充実 自社の経営戦略・財務状況・リスク等に関する議論を促し、我が国企業における経営戦略・ビジネスモデル、MD&A、リスク情報、重要な契約、ガバナンスに関する情報等の記述情報の開示の充実を実現していくことが重要である。 そこで、次のことが述べられている。 Ⅲ 建設的な対話の促進に向けたガバナンス情報の提供 1 役員報酬に係る情報 2 政策保有株式 3 その他のガバナンス情報の充実と提供 Ⅳ 提供情報の信頼性・適時性の確保 1 会計監査に関する情報 2 開示書類の提供の時期 投資家と企業の対話の促進、議決権のより実効的な行使という観点から、各企業において、投資家との対話の状況等を踏まえつつ、有価証券報告書の株主総会前提出への取組みが求められる。 四半期開示については、現時点において見直すことは行わず、今後、四半期決算短信の開示の自由度を高めるなどの取組みを進めるとともに、引き続き、我が国における財務・非財務情報の開示の状況や適時な企業情報の開示の十分性、海外動向などを注視し、必要に応じてそのあり方を検討していくことが考えられる。 3 英文による情報提供 以下の取組みを実施すべきであるとしている。 (了)
-お知らせ- いつもプロフェッションジャーナルをご愛読いただきありがとうございます。 2018年上半期(1月~6月)掲載分の目次をアップしました。 2018年上半期(1月~6月)掲載目次ファイル ※PDFファイル PDFファイルを開いて各記事タイトルをクリックすると、該当の記事ページが開きます。 (※) お使いのブラウザによって開かないものがあります。 パソコンやクラウド等に保存していただくと、PDFファイルから各記事ページへすぐに移動できますので、ご活用下さい(PDFファイル内の文字検索もできます)。 Back Number ページからもご覧いただけます。 ▷半年ごとの目次一覧 2018年 1月~6月(No.251~274)⇒[こちら] ★ 2017年 7月~12月(No.225~250)⇒[こちら] 1月~6月(No.201~224)⇒[こちら] 2016年 1月~6月(No.151~175)⇒[こちら] 7月~12月(No.176~200)⇒[こちら] 2015年 1月~6月(No.100~125)⇒[こちら] 7月~12月(No.125~150)⇒[こちら] 2014年 1月~6月(No.51~75)⇒[こちら] 7月~12月(No.76~100)⇒[こちら] 2013年 1月~6月(No.1~25)⇒[こちら] 7月~12月(No.26~50)⇒[こちら] 2012年 創刊準備1号~5号⇒[こちら]
2018年6月28日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.274を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第48回】 「収益認識基準の制定に伴う通達」 税理士 山本 守之 1 はじめに 収益認識に関する新会計基準に伴う改正法人税基本通達は平成30年5月に公表されました。国税庁では改正通達の考え方を「「収益認識に関する会計基準」への対応について」と題する資料で明らかにしています。 以下では、筆者が把握している新通達の内容に従って解説をしてみます。 2 考え方 新会計基準に対して、法人税基本通達は次のような改正方針によっています。 3 収益の計上の単位の通則 【新会計基準の取扱い】 同一の顧客(その顧客の関連当事者を含む)と同時又はほぼ同時に締結した複数の契約について、一定の要件を満たす場合には、その複数の契約を結合し単一の契約とみなして処理します(結合した契約に複数の履行義務(※)がある場合には、それぞれ履行義務を識別し、取引価格を配分します)。 (※) 履行義務・・・顧客との契約において、次の(ア)又は(イ)のいずれかを顧客に移転する約束をいいます。 (ア) 別個の財又はサービス(あるいは別個の財又はサービスの束) (イ) 一連の別個の財又はサービス(特性が実質的に同じであり、顧客への移転のパターンが同じである複数の財又はサービス) (出所) 国税庁「「収益認識に関する会計基準」への対応について」より一部抜粋。以下、本稿内の図表において特に断りのない場合は同資料からの出所による。 また、契約における取引開始日に、顧客との契約において約束した財又はサービスを評価し、別個の財又はサービスを顧客に移転する約束のそれぞれについて履行義務として識別します。 (出所) 国税庁資料 (※) 国税庁「法人税基本通達等の主要改正項目について」より。以下、本稿内において同様。 上記のように、複数の契約において約束した取引を結合して初めて単一の履行義務となる場合には、その結合した単位を収益計上の単位とすることができることとします。また、履行義務の識別の要件により区分した単位を収益計上の単位とすることができることとします。 なお、請負工事が長期大規模工事に該当し、強制工事進行基準になるかどうかについては、その結合した(区分された)単位で判定します。 複数の契約を結合して収益を認識する場合と1つの契約を複数の履行義務に分けて収益を認識する場合があるので、改正通達もそれに合わせています。 4 資産の販売等に伴い保証を行った場合の収益の計上の単位 【新会計基準の取扱い】 (出所) 国税庁資料 5 ポイント等を付与した場合の収益の計上の単位 【新会計基準の取扱い】 既存の契約に加えて追加の財又はサービスを取得するオプションを顧客に付与する場合、そのオプションが、その契約を締結しなければ顧客が受け取れない重要な権利を顧客に提供するとき(例:通常の値引きの範囲を超える値引き)にのみ、そのオプションから履行義務が生じます。 事 例 商品Aの売上10,000円に対し、自社で利用されるポイント1,000を付与する場合を図解すると、新会計基準では次のようになります(消化率は100%と仮定する)。 商品の販売ポイントに独立販売価格に基づき配分します。 (出所) 国税庁資料 6 資産の販売等に係る収益の額に含めないことができる利息相当部分 【新会計基準の取扱い】 契約の当事者が明示的又は黙示的に合意した支払時期により、財又はサービスの顧客への移転に係る信用供与についての重要な便益が顧客又は企業に提供される場合には、顧客との契約は重要な金融要素を含むものとします。 事 例 A株式会社は顧客Bとの間で商品の販売契約を締結し、契約締結と同時に商品を引き渡しました。顧客Bは契約から2年後に対価2,000千円を支払います(対価の調整として用いる金利は1%)。 これを図解すると次のようになります。 (出所) 国税庁資料 7 資産の引渡しの時の価額等の通則 【新会計基準の取扱い】 履行義務を充足した時又は充足するにつれ、取引価格(※)のうち、その履行義務に配分した額について収益を認識します。 (※) 取引価格・・・財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額(第三者のために回収する額を除く(後述の《参考2》を参照))をいいます。 取引価格を算定する際は、次の①~④の全ての影響を考慮します。 8 変動対価 【新会計基準の取扱い】 顧客と約束した対価に変動対価(※)が含まれる場合、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ることとなる対価の額を見積もります。見積もられた変動対価の額については、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される際に、解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高い部分に限り、取引価格に含めます。 (※) 変動対価・・・顧客と約束した対価のうち変動する可能性のある部分をいいます(例:値引き、リベートなど)。 事 例 販売契約に売上高に対してリベートを15%支払う条件が付いている場合 (出所) 国税庁資料 9 相手方に支払われる対価 【新会計基準の取扱い】 相手方に支払われる対価(キャッシュバック等)は、相手方から受領する別個の財又はサービスと交換に支払われるものである場合を除き、取引価格から減額します。 「財又はサービスの移転に対する収益を認識する日」若しくは「企業が対価を支払う日」のいずれか遅い方が発生した時点で収益を減額します。 事 例 (出所) 国税庁資料 10 棚卸資産の販売等に係る収益の帰属の時期 【新会計基準の取扱い】 一定の期間にわたり充足される履行義務の要件のいずれも満たさない場合は、資産に対する支配を顧客に移転することにより履行義務が充足されるときに収益を認識しますので、割賦基準は認められないこととなります。 代替的取扱いとして、出荷基準等の取扱いも認められます。 (出所) 国税庁資料 11 役務の提供に係る収益の帰属の時期の原則、履行義務が一定の期間にわたり充足されるものに係る収益の額の算定の通則、請負に係る収益の帰属の時期 【新会計基準の取扱い】 一定の期間にわたり充足される履行義務については、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、その進捗度に基づき一定の期間にわたり収益を認識します。 進捗度の見積り方法は次のようになります。 (出所) 国税庁資料 12 知的財産ライセンスの供与に係る収益の帰属の時期、知的財産のライセンスの供与に係る売上高等に基づく使用料に係る収益の帰属の時期、工業所有権等の使用料の帰属の時期 【新会計基準の取扱い】 ライセンス(※)を供与する約束が、独立した履行義務である場合には、ライセンスを顧客に供与する約束が、顧客に次の①又は②のいずれを提供するものかを判定します。 (※) ライセンス・・・企業の知的財産に対する顧客の権利を定めるものをいいます。 (出所) 国税庁資料 売上高又は使用量に基づくロイヤルティについては、次の(イ)(ロ)のいずれか遅い時に認識します。 13 商品引換券等の発行に係る収益の帰属の時期、非行使部分に係る収益の帰属の時期 【新会計基準の取扱い】 財又はサービスを顧客に移転する前に顧客から対価を受け取る場合、顧客から受け取る対価について契約負債を貸借対照表に計上し、履行義務を充足したときにその契約負債の消滅を認識し、収益を認識します。 非行使部分について、企業が将来において権利を得ると見込まれる場合には、その非行使部分の金額について、顧客による権利行使のパターンと比例的に収益を認識します。 事 例 A株式会社は商品券1,000千円分を現金で発行しました。そのうち、100千円について、顧客が権利を行使しないと見込みました。翌年度に450千円分使用されました。この場合の仕訳を図解すると次のようになります。 ※権利行使部分900千円のうち、450千円が使用された(50%)ため、非行使部分の100千円のうち50%の50千円分を収益として認識します。 (出所) 国税庁資料 14 返金不要の顧客からの支払の帰属の時期 【新会計基準の取扱い】 顧客から返金が不要な支払を受ける場合には、その支払が約束した財又はサービスの移転を生じさせるものか、あるいは将来の財又はサービスの移転に対するものかどうかを判断します(スポーツクラブ会員契約の入会手数料など)。 そして、その財又はサービスの移転を生じさせるものでない場合には、将来の財又はサービスの移転を生じさせるものとして、その将来の財又はサービスを提供する時に収益を認識します。 (出所) 国税庁資料 15 返品権付き販売 【新会計基準の取扱い】 事 例 1個200円の商品(原価120円)を100個販売し、その返品予想は2個と見込みます。 返品権付き販売の仕訳を図解すると、次のようになります。 (出所) 国税庁資料 【法人税基本通達の対応】 返品の可能性があっても収益の額を減額しません。返品調整引当金制度の廃止に伴う対応を行います。 新会計基準を適用した場合についても、現行の返品債権特別勘定(※)で認められていたものと同様の取扱いを維持します。 (※) 返品債権特別勘定・・・特殊な特約が結ばれていることにより、過去実績により見積られた返品率により、期末に見込まれる貸倒れを確定債務として損金算入するものをいいます。 * * * 《参考1》 本人と代理人の区分 【新会計基準の取扱い】 「本人に該当するかどうか」を考慮するための指標は、次の3つです。 《小売業における消化仕入》 (出所) 国税庁資料 【法人税基本通達の対応】 法人税は、利益に対して課する税金であるため、総額表示か純額表示かによって課税所得が変わることは、基本的にはありません。 また、販売するのが本人であっても代理人であっても、履行義務の充足のタイミングについては変わらないと考えられますので、対応は行いません。 《参考2》 第三者のために回収する額 【新会計基準の取扱い】 収益の額には、第三者のために回収する額は含まれません。つまり、税込方式は認められないこととなります。 事 例 10,000円の商品を販売した場合の商品販売時の仕訳を図解すると、次のようになります(消費税率は8%)。 (出所) 国税庁資料 【法人税関係個別通達の対応】(※) 引き続き、法人の選択により税抜方式と税込方式のいずれも適用可能とします。 (※) 消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて 3 (了)