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経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第29回:2017年3月改訂】企業結合会計①「合併の会計」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第29回:2017年3月改訂】 企業結合会計① 「合併の会計」   仰星監査法人 公認会計士 許 仁九   〈事例による解説〉   〈X2年3月期の連結修正仕訳〉 ○開始仕訳 ○当期純利益の振替   〈会計処理〉 P社の会計処理 (1) 親会社(P社)持分(80%)に係る会計処理 (2) 非支配株主(A社)持分(20%)に係る会計処理   〈会計処理の解説〉 親会社が子会社を吸収合併する場合、当該取引は「共通支配下の取引」に該当することになります(企業結合に関する会計基準(以下、「基準」)16項)。 1 諸資産 親会社P社が子会社S社から受け入れる諸資産は、合併期日の前日に付された適正な帳簿価額により計上します(「指針」206項(1))。 2 株主資本及びのれんの会計処理 合併期日直前の持分比率に基づき、親会社持分相当額と非支配株主持分相当額に按分し、会計処理を行います。 (1) 親会社持分相当額の会計処理 諸資産の親会社持分相当額960と親会社が合併直前に保有していた子会社株式(抱合せ株式)の適正な帳簿価額800との差額を抱合せ株式消滅差益として、特別利益に計上します(「指針」206項(2)①ア)。 (2) 非支配株主持分相当額の会計処理 諸資産の非支配株主持分相当額240と、取得の対価(非支配株主に交付した親会社株式の時価)300との差額をその他資本剰余金とします(「指針」206項(2)①イ)。 合併により増加する親会社の株主資本の額は、払込資本(資本金又は資本剰余金)とします(「指針」206項(2)イ、79項)。 (了)

#No. 210(掲載号)
#許 仁九
2017/03/16

税理士が知っておきたい[認知症]と相続問題〔Q&A編〕 【第5回】「会社代表者が認知症となった場合の様々な影響」-商取引等-

税理士が知っておきたい [認知症]と相続問題 〔Q&A編〕 【第5回】 「会社代表者が認知症となった場合の様々な影響」 -商取引等-   クレド法律事務所 駒澤大学法科大学院非常勤講師 弁護士 栗田 祐太郎   [設問05] 私の父は若い頃に建設会社を創業し、50年以上にわたって社長として会社(取締役会設置会社)を経営してきました。自社の株式も、父が100%を保有しています。 3人兄弟の長男である私は、大学卒業と同時に父の会社に入社して以来、現在は取締役として会社経営を手伝っています。 ◆  ◆  ◆ その父の様子が、1、2年くらい前から少しおかしいのです。 例えば、新規で受注した工事現場のことで相談を持ちかけても、過去に受注した同様の現場の内容と混同し、事情が飲み込めないのです。 また、先日は、業界団体で長年ご一緒している方から、「最近、お父さんは、懇親会の席で仲間の顔がすぐにわからないことがあったり、周囲との会話もいまいち噛み合わないことがあるようだ」という心配な話も聞きました。 父はもともと大工だったことから職人気質の面があって頑固な性格であり、私たち家族がどんなに勧めても、病院で認知能力に関する検査を受けてくれません。 ◆  ◆  ◆ そのような中で、今度、隣町で建設される大きな工場の案件を数社で共同受注することになりました。 また、今般、当社と商圏を同じくする中堅規模の会社が、後継者がいないために会社の売却を検討中との話が出ております。この会社を買収できればそのシナジー効果は非常に大きなものがあると予想され、ビジネス・チャンスとしても非常に魅力的な案件です。 現在の状況のままでこれらの契約を進めていくことには、どのようなリスクがあるでしょうか。   1 取締役が判断能力を喪失すること=取締役としての資格喪失となる 帝国データバンクが2017年1月に発表したデータ(全国社長分析(2017年))によれば、我が国における社長の平均年齢は59.3歳と過去最高を更新したとのことである。 他方で、中小企業における事業承継の問題は各方面での複雑な調整が必要となるため、なかなか円滑には進んでいない現状にある。 そのため、「会社経営者が認知症となり、判断能力に支障が生じている」といったケースは、今後ますます増加していくものと思われる。 この点、長期的にはいわゆる「事業承継」対策がどの会社においても必要であることは明白であるが、【設問05】ではこのような根本的対策を取る時間的余裕のない状況を念頭に取り上げてみた。 「会社経営と判断能力」という関わりで言えば、まず前提として、成年被後見人や被保佐人は、取締役には就任できない(会社法が定める欠格事由)。 そのため、【設問05】においては、今後、仮に相談者の父の判断能力低下が進み、成年後見人や保佐人が選任されるような状態にまで至った場合には、取締役の地位そのものを喪失する。 この場合、後継の者を新たに取締役・代表取締役に選任する必要が生じることになる。   2 会社代表者の判断能力が低下した場合の問題点 通常、会社においては、代表取締役が会社を代表して意思表示を行うことで契約を締結する。 この際、仮に代表取締役本人において、契約時に判断能力を失っていたという事情があれば、会社名義で締結した契約であっても、事後的に無効とされてしまう可能性があるとの重大なリスクが存在する。 この点、解説編【第3回】では、意思表示をした個人が判断能力を欠いていた場合の効果につき説明をした。 他方で、法人である会社が行った取引における場合には、取引先等の第三者を保護するための各種制度により、代表取締役の判断能力が失われていた状態であったとしても、契約の有効性が認められる場合もある。 しかし、最終的にいずれの結論が出る形となったとしても、このような無用な紛争が生じること自体が、企業活動にとっては大きなマイナスである。 【設問05】で言えば、数社で共同しての工場建設に際し、長期にわたって建設計画の詰めを行い、ようやく発注者との工事請負契約や共同事業者との共同事業契約等を締結し、これに基づき建築を開始した矢先に、工場の発注者から、あるいは共同で工事を受注するとしていた他社から、契約の無効を主張されるリスクがないとも言い切れない。   3 オーナー株主の判断能力が低下した場合の問題点 【設問05】においては、相談者の父は代表取締役というだけでなく、会社のオーナー株主としての地位も同時に有している。このことが、さらに状況を複雑にする。 株主は、株主としての権利(いわゆる株主権)を有し、これには株主総会における議決権をはじめとした様々な権利が含まれる。 株主権を行使する株主自身の判断能力に問題があるとなれば、株主権の行使がすべて事後的に無効とされるという極めて由々しきリスクが発生する。企業活動においては、会社内部のみならず取引先や顧客等といった関係者も多く存在するのであり、これらに与える影響は大きい。 【設問05】における父は、自社株式の100%を有するオーナー株主である以上、有効に議決権行使を行えるものが一人もいないことから、株主総会を開催することはできない。 そのため、理屈上は、定時の株主総会や取締役の選解任はおろか、会社の活動によっては株主総会の決議が必要となるような事項にも対応できないこととなる。 例えば、【設問05】では、同業他社の買収という話も出てきているが、このようなM&Aの過程において代表取締役の判断能力の問題が相手先において問題視されたり、会社買収の手続において必要となる各種の株主総会も開催できないということになる。こうなっては、有効な契約締結そのものが不可能となる。   4 考えられる対応策 では、【設問05】のような状況下とタイミングでも可能な対応方法を考えてみよう。 【ア】 仮に相談者の父の判断能力が相当に低下・減弱してはいるものの、まだかろうじて正常といえるような状態を保っている場合、または特定の曜日や時間帯はほぼ正常な判断をすることができるという場合 においては、 他方で、 【イ】 相談者の父が判断能力をもはや喪失している状態にまで至ってしまっている場合 には、取りうる対応はかなり制限される。 例えば、   5 事業承継対策の必要性 以上のように、会社経営者かつオーナー株主の判断能力が低下してくると、会社経営上多大な支障が生じる。 そのため、中小企業におけるオーナー経営者がある程度以上の年齢に達している場合には、じっくりと時間をかけて準備に時間をかけられる余裕のあるうちから、次代への経営のバトンタッチである「事業承継」に本格的に取り組むことが強く推奨される。 本稿では紙幅の制限があり具体的な説明はできないが、下記の中小企業庁のウェブサイトでは、事業承継にまつわる数々の情報が紹介されている。 一般向けのパンフレットから本格的な検討のためのガイドラインまでが掲載されているので、ご参照いただきたい。 (了)

#No. 210(掲載号)
#栗田 祐太郎
2017/03/16

役員インセンティブ報酬の分析 【第1回】「特定譲渡制限付株式①」-平成28年度税制改正後-

役員インセンティブ報酬の分析 【第1回】 「特定譲渡制限付株式①」 -平成28年度税制改正後-   弁護士・公認会計士 中野 竹司   (※) 役員に対する各種報酬プランの概要については、本誌掲載の下記拙稿を参照されたい。   1 譲渡制限付株式を用いた報酬形態の概要 従来より役員のインセンティブ報酬のツールとして株式報酬の活用が期待されていたが、そのためには、税法上の取扱いを含め、制度導入手続の明確化が必要であった。 そこで、経済産業省が平成27年7月に公表した、「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会」報告書で、我が国において株式報酬を導入する際の手続を整理し、金銭報酬債権を現物出資するなど実務的に簡便な手法を用いる手続を整理した。 さらに平成28年度税制改正において、企業経営者に対する適切なインセンティブ付与促進が企図され、役員株式報酬のうち、いわゆる特定譲渡制限付株式の損金算入要件が明らかになった。続いて平成28年4月には、経済産業省から「「攻めの経営」を促す役員報酬~新たな株式報酬「いわゆる「リストリクテッド・ストック」の導入等の手引き~」が公表され、特定譲渡制限付株式報酬の導入に関する実務的な環境整備がなされた。 このような環境整備を踏まえ、実際に特定譲渡制限付株式報酬の事例が出てくるようになった。 この特定譲渡制限付株式は、役員インセンティブ報酬の中の、リストリクテッド・ストックの一形態と考えられるが、パフォーマンス・シェアとしての性格も有する制度も導入されている。 平成28年度税制改正により、法人税法で定められた特定譲渡制限付株式とは、役員報酬のうち損金算入が可能な事前確定届出給与に該当するものである。 特定譲渡制限付株式の税法上の要件を満たすためには、大まかにいうと次のような事項を充たす必要がある(税務上の取扱いについての詳細は、本稿では触れていない)。 (※) 要件の詳細は法人税法第54条1項、法人税法施行令第111条の2第1項~3項を参照。 なお、特定譲渡制限付株式報酬制度を導入する場合、通常は種類株ではなく、普通株式を用いて付与対象の取締役と会社間で譲渡制限付株式割当契約を締結するとともに、株式の引き出し等が自由にできないことを客観的に担保するため、以下のようなスキームで株式を管理することが多い。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   2 ガバナンス面から見たメリット・デメリット 特定譲渡制限付株式は、株式報酬の一形態であり、付与されても一定の期間、売却を制限されることから、企業価値の持続的な向上を図るインセンティブを与えるとともに、役員等と株主の価値共有を進めることができるというガバナンス面のメリットがあると考えられる。特に、外部から有能な者を役員等に迎え、当該者に一定期間、企業で継続して勤務してもらうことへのインセンティブを与えることに向いている株式報酬の形態といえる。 なお、特定譲渡制限付株式は、一般的にはリストリクテッド・ストックの一形態と考えられるが、役員等から会社への無償譲渡理由に、法人の定めた業績指標等について未達であった場合を定めることにより、パフォーマンス・シェアとしての機能も持たせることが可能な制度設計となっている。 もっとも、事前確定届出給与の要件上、職務執行開始当初にその報酬債権の額(支給額)が確定せず、実際の勤務状況や業績状況に応じて報酬債権の額が決まる場合は、事前確定届出給与には該当しない。このため、海外で広く設計されている目標業績達成時に株式報酬が付与されるタイプのパフォーマンス・シェアは、損金算入要件を満たさない。 したがって、通常議論されるパフォーマンス・シェアと異なり、役員等が業績目標達成をした場合には株式報酬を与えるという「飴としてのインセンティブ」よりも、役員等が業績目標を達成しなかった場合には事前確定した株式報酬がもらえないという「鞭としてのインセンティブ」が働くため、一般的にパフォーマンス・シェアとはインセンティブ構造が異なる。 なお、平成29年度税制改正により、パフォーマンス・シェア型の株式報酬がより導入しやすくなる改正がなされる予定であり、この連載の中で紹介する予定である。 また、特定譲渡制限付株式は、通常、普通株式が利用されることから、株式報酬付与時から付与された役員等は議決権を行使できることとなる。そして、業績目標未達といった理由で会社が無償取得する場合でも、無償取得されるまでは、役員等は議決権行使できることを意味する。 そのため、特定譲渡制限付株式付与時から議決権が発生するため、役員等への付与により、不当な経営者支配の懸念を生じさせないかという観点も制度設計においては必要となろう。   3 企業の導入事例 平成28年度税制改正を踏まえて、特定譲渡制限付株式報酬制度を導入した上場企業の例について、導入企業の適時開示を基に以下分析する。 (1) 制度導入目的 制度導入目的としては、会社の企業価値の継続的な向上を図るインセンティブを与えるとともに、取締役と株主との一層の価値共有を進めることを目的とする企業が多かった(株式会社ジー・スリーホールディングス、株式会社オルトプラス、オプテックスグループ株式会社、株式会社クボタ、株式会社N・フィールド、株式会社ケアネット、東洋炭素株式会社、株式会社サイゼリヤ、三菱地所株式会社など)。 (2) 制度導入対象 特定譲渡制限付株式による役員報酬は、社外取締役又は監査委員会委員を除外した取締役に付与される制度を導入した企業も散見された。 これは、社外取締役等の職務の遂行が、株価の上昇というインセンティブによってより円滑に遂行されるわけではないという判断によって、株式報酬付与の対象から除外されたものと考えられる。 もっとも、社外取締役等に当該企業に残るというインセンティブを与えるメリットが考えられるので、除外しないことが不合理とは言えないとも考えられる。 (3) 制度導入条件 導入企業においては、制度導入に伴い、本制度のための役員報酬支給決議を株主総会で行っているが、その際、従来の報酬決議とは別枠で報酬額を決議する会社が多い。 もっとも、制度導入を決議する際に、以前決議した報酬枠の範囲内で決議する事例も見られた(オプテックスグループ株式会社など)。 (4) 特定譲渡制限解除理由 ① 勤務の継続 最も多く見られた譲渡制限解除理由は、「一定期間勤務を継続すること」である。ただし、一般的に、会社都合による退任等、当該一定期間の途中で勤務が中断した場合でも譲渡制限が解除される場合など、例外を細かく定めている。 勤務の継続期間としては ・2年(市光工業株式会社、日本社宅サービス株式会社、株式会社オルトプラス) ・3年間から5年間までの間で、各取締役について一定の譲渡制限期間を定める(株式会社ネクストジェン) ・30年(西尾レントオール株式会社) など、期間の設定は比較的短いものが多いものの、様々である。 ② 業績目標の達成 業績目標の達成を特定譲渡制限解除理由にしている会社において、業績目標の設定は各社により異なる。 例えば、三菱地所株式会社では、3年間のTotal Shareholder Return(株主総利回り)の目標を達成できた場合は、その達成度合いに応じて譲渡制限が解除され、譲渡制限が解除されなかった場合は、会社に無償で返還(譲渡)される。 また、横河電機株式会社では、2016年9月30日から2018年7月25日を譲渡制限期間とし、2018年3月期決算の実績ROEに応じて解除率を4段階に分け、例えば14%以上であれば解除率100%すなわちすべての株式が譲渡可能となり、8%以下であれば解除率0%すなわちすべての株式が会社に無償で返還(譲渡)されるとし、業績達成度合いに応じて解除率を変化させている。 また、株式会社プラントでは、「大型店舗数」と「営業利益額」の達成度合いを、それぞれ70%、30%の割合でウエイト付けし、譲渡制限解除数を算出している。 (5) 報酬委員会等の活用 平成28年度に譲渡制限付株式報酬制度を導入した会社では、報酬委員会や報酬諮問委員会を活用する例も見られた。 例えば、三菱地所株式会社では、譲渡制限付株式の割り当てに関する具体的内容の一部について報酬委員会で決定されるとしている。また、横河電機株式会社では、業績制限期間及び業績達成条件その他制度運用全般に関する条項は、報酬諮問委員会の審議を経てその意見を尊重したうえで取締役会で決定されるとしている。   4 会社法上の視点 これまで、日本において株式報酬の割合が低い理由として、会社法上無償で株式を発行することや労務出資が認められなかったこと、株式報酬導入のための実務が成熟していなかったことから、会社法における必要な手続が明確でなく、先例もほとんどないという会社法上の問題もあった。 そこで上述したように、「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会」報告書において株式報酬の導入手続やその仕組みを示したこと、及び、平成28年度税制改正によりいわゆるリストリクテッド・ストックのうち、損金算入要件を満たした特定譲渡制限付株式報酬の内容が明らかにされた中、「「攻めの経営」を促す役員報酬~新たな株式報酬「いわゆる「リストリクテッド・ストック」の導入等の手引き~」において、導入についての具体的な手続を詳細に紹介したことを背景に、特定譲渡制限付株式による株式報酬の導入が進んだ。 例えば、監査役会設置会社の場合に、会社法上の手続の流れは以下のようになる。 なお、税法上、特定譲渡制限付株式が事前確定届出給与と認められるためには、職務執行開始日(原則、定時株主総会の日)から1月を経過する日までに、上記②により、取締役個人別の報酬を定める必要がある点に留意が必要である。 また、④については、利益相反取引として取締役会の承認が必要となる場合があることにも留意が必要である。   5 会計上の視点 役員、従業員に対するインセンティブ報酬に関する会計基準としては、企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」、企業会計基準適用指針第11号「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」、実務対応報告第30号「従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い」があるが、特定譲渡制限株式を含めRSの会計処理について具体的に定めた会計基準は、本稿執筆現在のところ、公表されていない。 もっとも、「「リストリクテッド・ストック」の導入等の手引き」では具体的な会計処理の例を示しており、参考になる。そこで示された会計処理を参考にすると、以下のような会計処理がなされると考えられる。 - 事 例 - ① 報酬債権付与及び株式発行時(以下、単位:千円) (借)前払費用等 300,000  (貸)資本金等 300,000 ② 役務提供(1年目) (借)役員報酬 100,000  (貸)前払費用等 100,000 ③ 役務提供(2年目) (借)役員報酬 100,000  (貸)前払費用等 100,000 ④ 役務提供(3年目) (借)役員報酬 100,000  (貸)前払費用等 100,000 なお、①の段階で、特定譲渡制限付株式の付与を自己株式の処分で行った場合は、自己株式の帳簿価額を減額し、自己株式の処分対価と帳簿価額の差額である処分差額を、「自己株式処分差益」又は「自己株式処分差損」として、その他の資本剰余金(負の値になった場合は、その他利益剰余金から減額)とすることとなる。 また、譲渡制限解除条件が充足されずに、株式が会社に無償譲渡された場合には、前払費用を損失処理することになると考えられる。そして、会社が無償で取得した自己株式の取得価額をゼロとし、自己株式の数のみの増加として処理するのではないかと思われる(企業会計基準適用指針第2号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針」14項参照。 (了)

#No. 210(掲載号)
#中野 竹司
2017/03/16

プロフェッションジャーナル No.209が公開されました!~今週のお薦め記事~

2017年3月9日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.209を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2017/03/09

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第51回】「限られた租税行政資源と『税務に関するコーポレートガバナンス』(その3)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第51回】 「限られた租税行政資源と『税務に関するコーポレートガバナンス』(その3)」   中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦     4 事後的行政から事前的行政へ (1) 事前的行政という今後のベクトル これまで税務当局は、税務上のコンプライアンスを担保するため、税務調査を中心として事後的に個々の事例に対応してきたものと思われる。 これらは、いわば「事後的行政」といえるものであるが、個々の税務調査には手間もかかる上、租税行政の人的資源に限りがある中において、悉皆的な調査を行うことは現実問題としても不可能である。 すなわち、税務上のコンプライアンスに関する意識が必ずしも高いとはいえない今日の我が国において、事後的行政の方法にのみ頼ることはもはやできないというべきであり、従来の発想を転換する必要があると思われる。 したがって、今後の租税行政においては、「事後的行政」から「事前的行政」へとベクトルを変化させていくべきと考える。 前回確認した国税庁における「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組」は、税務調査に関連する取組みではあるが、企業のコーポレートガバナンスの充実を確認し、自主的開示に同意した法人に対して税務調査の間隔延長というインセンティブを設けるものであった。 既に述べたとおり、調査間隔の延長は、対象法人の調査に係る事務負担軽減に繋がることはもとより、悪質大口事案に租税行政の人的資源を集中的に配分することができるという意味において、納税者と税務当局のwin-winの関係に基づく取組みであるということができるが、かかる取組みも事前的行政の一つといえよう。 なお、その他の事前的行政としては、例えば、申告に先立ち、ホームページ等で誤りの多い事例をQ&Aの方法よって積極的に開示していくことや、チェックシート等を利用した申告前の自主的な事前チェックを促すことなどを挙げることもできる。 加えて、現在その導入が検討されている、租税回避スキームを開発・販売するプロモーターにそのスキームを事前開示させる等の制度も、この潮流における一つの制度設計であるといえよう。 租税回避スキームの事前開示制度については、米国をはじめとする諸外国では既に導入がなされているものの、我が国では依然として検討段階であるため、ここでは詳細には触れないが、少なくとも、国税庁の「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組」は既に開始している制度である。確かに、同制度も、その対象法人をおおむね資本金40億円超の大企業としており、対象となる法人が全国でも500社程度に満たないことからすれば、中小法人にはさしたる影響もないように見受けられる。さりとて、事後的行政から事前的行政への方向転換の中で、その対象範囲の裾野が今後広がりを見せていく可能性も大いにあるのであるから、こうした制度にも十分な注意を払うべきであろう。 (2) FIN48 さて、少し話は変わるが、米国における「FIN48」という制度について紹介しておきたい。 FIN48とは、FASB(Financial Accounting Standards Board:財務会計基準審議会)解釈指針第48号「法人所得税の不確実性に関する会計処理」をいい、アメリカの会計処理ルールの一つである。 FIN48では、税務調査が行われるとした際に、税務当局から50%超の可能性で正当であると認められる税務ポジションを認識することが求められ、その基準を満たさないものは、それに起因して追徴されるべき税額などのペナルティを前もって計上しなければならないこととしている。 要するに、将来的に税務調査を受けた場合に更正を受けるリスクを評価し、あらかじめ財務諸表に反映させようとするものがFIN48であり、移転価格等の所得配分に関する問題や、前払費用等の損金(益金)算入時期の問題などを検討し、そのリスクを開示することが求められている。 企業はこのリスクを測定するための各種の原始記録を保有しているわけであるが、企業を調査する側のIRS(Internal Revenue Service:米国内国歳入庁)としては、喉から手が出るほどその記録を確認したいであろう。企業自らが、税務上の否認リスクが高いと把握しているのであれば、IRSがそれを確認したいと考えるのは当然といえば当然である。 もっとも、FIN48はあくまでも会計上のルールであるため、IRSがこの原始記録を直接確認することはできない。しかしながら、現在、それに関連した情報をIRSに開示することが求められており、税務当局サイドからすれば、従来よりも、リスクの高い項目に関する情報をより効率的に前倒しして取得できることになっている。 これも事前的行政手法に資する情報と位置付けることができるかもしれない。 (3) 物言う株主 (ア) 法令違反と経営者責任 ここまで、租税法遵守を担保するための我が国の取組みとして、税務に関するコーポレートガバナンスの構築にフォーカスしてきたが、かかるガバナンスの評価が明確になれば、トップマネジメントがそれに従っていたか否かは、株主をはじめとするステークホルダーにとってトップマネジメントの責任を追及する際の材料となり得る。 すなわち、税務コーポレートガバナンスの構築とその徹底が、ステークホルダーにとって関心事項の一つになるのではなかろうか。以下では、租税法違反と経営者責任の問題を検討してみたい。 例えば、食料品メーカーが、生産地や品質内容等を偽装していた際には、食品表示法違反や不正競争防止法違反などに問われることになり、食品への異物混入などがあれば食品衛生法違反を問われる可能性があろう。 また、価格カルテルの場合には独占禁止法、粉飾決算等については会社法・金融商品取引法など、それぞれの法令違反が問われるものと思われる。 具体的に法令違反に該当するか否かは個々の事例によるところであるが、法令違反の有無はさておき、それがマスコミ等で大体的に取り上げられるなどすれば、売上の減少や株価の暴落など、企業価値に大きなダメージを与えることはいうまでもない。こうした不祥事による企業価値の毀損は、一つ一つの具体例を挙げるまでもなく容易に想像がつくところであり、このような事態が生じた場合、株主から経営者責任が追及されるケースが多いものと思われる。 (イ) 税務上の否認と経営者責任 さて、これらと同じ考えに立てば、経営者が租税法に違反した場合にも、株主は経営者責任を追及することができるように思われる。実際にそうした事例がどの程度あるかはひとまず措いておくとしても、例えば、①経営者が多額の脱税等を行っていた場合には、経営者責任が追及されることも十分にあり得よう。 他方で、会社が行っていた処理を、税務当局から単に否認されたにすぎないケースではどうであろうか。例えば、②ある費用の損金算入が否認され加算税や延滞税が賦課された場合に、それを理由として経営者責任を追及することはできるであろうか。 結論から言えば、こうした場合に、上記①と同様にかかる責任を追及することは難しいようにも思われる。 租税法の適用局面においては、対象となる条文等の解釈如何によっては判断結果が異なる場合も想定し得るし、一概にどちらが正しいと言い切れない場面も多い。租税訴訟において、地裁、高裁、最高裁と判断が二転三転するような事例もあることも踏まえれば、租税法の解釈と適用が場合によっては複雑な判断を要し、事案によってその結論が異なる可能性があることがよく分かる。 また、訴訟にならずとも、税理士等の租税専門家や、調査をする側の税務当局の職員でさえも処理を迷ったり、判断を誤ってしまうケースもあることに鑑みれば、税務当局から否認されたことをもって、経営者の責任追及を認めることは、経営者に過重な責任を負わせるものとも言い得るのではなかろうか。 (ウ) 三菱石油株主代表訴訟事件 追徴課税を受けたことについて経営者の責任が問われるか否かが示された事例として、いわゆる三菱石油株主代表訴訟事件東京地裁平成13年7月26日判決(判時1778号138頁)を確認しておきたい。 この事件は、三菱石油株式会社(以下、「三菱石油」という)が、昭和62年12月頃から平成7年9月頃までの間に、Aに対し、業者間転売取引による石油製品の取引価格の上乗せあるいはサイト差取引により総額63億円以上の資金を違法かつ不当に供与し、三菱石油がAに提供した資金を必要経費として違法な所得隠しの税務申告をして平成2年3月期から平成9年3月期までの所得につき重加算税を含め約27億6,000万円を追徴課税されたとして、三菱石油の株主であるXが、取締役であったYらに対し、業者間転売取引を利用した価格上乗せによる損害、サイト差取引に関連して生じた損害及び追徴課税額の損害の合計90億4,000万円余の損害につき、取締役の任務違反による損害賠償として三菱石油に支払うよう求めた株主代表訴訟である。 かかる追徴課税に関する取締役の責任について、東京地裁は次のように判示し、Xの主張を排斥している。 本件は控訴され、控訴審東京高裁平成14年4月25日判決(判時1791号148頁)において、一部原審判断が覆されXの主張が一部認容されてはいるが、追徴課税に関するYの責任については、「当裁判所も、追徴課税に関するYらの責任は認められないものと判断する。その理由は、原判決の・・・とおりであるから、これを引用する。」としており、追徴課税に関しては原審判断を維持している(上告審最高裁平成14年10月24日第一小法廷決定(判例集未登載)にて上告棄却、上告不受理)。 このように、会社の行った処理について税務当局から否認され、加算税が賦課されたからといって、直ちに経営者の責任が追及されるわけではないものと解される。 上記東京地裁判決も「納税額を最低限にとどめるように取締役が留意すべきことは一般論として当然なことではある」としつつも、「税務当局と申告者との間で判断を異にする場合があることは、必ずしも少なくな〔い〕」とし、租税法の解釈と適用の特殊性から経営者責任を追及しない態度に出ているものといえよう。 (あくまでも租税法は機械的に適用すべきものであって、経営者の裁量権の範囲でその適用を行うものではないから、経営判断の原則により整理しているわけではない。) (4) まとめ 以上のとおり、申告に過誤があったとしても、そのことが必ずしも経営者責任に直結するわけではないといえそうであるが、そこに絶対的な線引きがあるわけではなく、場合によっては、経営者責任の追及に発展する場面もあり得ることから、税務上のコーポレートガバナンスの充実による租税法遵守の姿勢と相反するものでは決してない。 上記三菱石油株主代表訴訟事件は、費用処理した金員につき交際費等に当たるとして損金算入が否認された事例であり、交際費等該当性を巡る判断の複雑さなどを踏まえた上での判断であったと整理することもできなくはない。逆に言えば、単なる申告書の提出漏れや、明白な租税法規の適用誤りの場合には、それによる追徴課税を原因として経営者責任が追及される場面もあり得よう。 なお、税務当局から非違事項の指摘を受けた場合に、修正申告の勧奨に応じるか、それともあくまでも不服として異議を申し立てるかという場面でも、経営者責任が争われる可能性があると思われる。 税務当局の処分に不服がある場合、修正申告に応じず再調査の請求又は審査請求を行い、結果次第では課税処分の取消しを求め提訴するといった方法も考えられるところ、「安易に修正申告の勧奨に応じていなければ、加算税の賦課はなされなかった」という株主側からの追及も想定し得る。 この辺りは、税務に関する適切なコーポレートガバナンスが構築され、十分な税務上の判断がなされていたかどうかがその責任判断の決め手となるであろう。 なお、こうした株主から経営者への責任追及とその判断の構造は、クライアントが顧問税理士を訴える場面のそれと類似している点が多いように思われる。 「税理士が的確に指導していれば加算税が賦課されることはなかった」とか、「安易な修正申告を行う必要性はなかった」、若しくはその逆として、「税務当局の指摘を加味して修正申告に応じるべきであった」など、クライアントが顧問税理士に対して責任追及する事例が散見されるところ、こうした専門家責任論と、今回取り上げた経営者責任論は類似点が多いことを最後に指摘しておきたい。 (了)

#No. 209(掲載号)
#酒井 克彦
2017/03/09

「法人税の確定申告書の提出期限の延長の特例」の改正について~改正法案の確認と今後の実務対応~

「法人税の確定申告書の提出期限の延長の特例」の改正について ~改正法案の確認と今後の実務対応~   公認会計士・税理士 石川 理一   既報の通り、平成29年度税制改正で、法人税法第75条の2(確定申告書の提出期限の延長の特例(以下、延長特例という))が改正され、従来の1ヶ月の延長に加え、一定の要件を満たした場合には最大で4ヶ月まで延長が可能となる見込みである。 ただし後述するように、3月決算法人でこの改正を適用できるのは、平成30年3月期からとなるのでご留意いただきたい。 なお、特別の事情があることにより適用される延長特例については現行法から基本的に改正されていないため、本稿においては言及していない。   1 本改正の内容 今回の改正により延長特例を適用するための条件は、以下の通り改正されることになる。 従来、延長特例を適用するための条件が、「会計監査人の監査を受けなければならないこと等の理由により決算が確定しないため、確定申告書を提出期限までに提出することができない常況にあると認められる場合」であったところ、今回の改正では、定款等の定め及び定時株主総会の招集時期にポイントを置いて延長特例の適用条件を定めている。 〈延長特例の適用条件〉 従来、法人税の確定申告書の提出は、延長特例を適用しても事業年度終了後3ヶ月以内には提出する必要があった。確定申告書には確定した決算書を添付する必要があることから(法人税法74条3項)、事業年度終了後3ヶ月以内に決算についての定時総会を招集する必要があった。 これに対して、企業と投資家との対話を充実させるため、決算日から株主総会までの期間を十分に確保することが要請されていた。 今回の改正は、定款等の定めによって定時株主総会が決算日から3ヶ月を超えて招集される場合があることを想定してなされたものである。   2 延長特例の適用関係 改正後の延長特例の申請に関する規定は、以下の通りである。 申請期限が「事業年度終了の日まで」であることは従来通りである。 改正法の施行日は平成29年4月1日とされている(附則1条)。このため、3月決算法人が改正法に基づいて申請書を提出できるのは、冒頭にも記載した通り、平成30年3月期以降ということになる。   3 今後求められる対応 今後、会計監査人設置会社である法人が延長特例を適用する場合、最初に定時株主総会の招集時期を検討する必要がある。 会社法では、株主総会における議決権行使の基準日を決定した場合、当該基準日の3ヶ月以内に株主総会を招集しなければならないとされている(会社法296条1項、124条)。 現状、過去からの慣習及び法人税の確定申告書の提出期限の制約のため、基準日を決算日の翌日以後としている法人はないと考えられる。 企業と投資家との対話の充実という要請に応えるために、決算日後3ヶ月を超えて定時株主総会を招集する場合、まずは定時株主総会を決定し、その日から遡って3ヶ月以内の一定の日を基準日として決定する必要がある。 そして、延長特例を適用するためには、当該基準日を定款の定めとする必要があるため、定款変更手続が必要となる。 定款変更には株主総会の特別決議が必要となる(会社法466条、309条2項11号)。特別決議とは、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上にあたる多数をもって行われる決議である(会社法309条2項本文)。 定款を変更したのち、事業年度終了の日までに、所轄税務署長に、当該定款の定めの写しを添付した申請書をもって延長特例の申請をする必要がある。 なお、改正前の1ヶ月の延長特例が適用されている法人においては、1ヶ月の延長特例については、改正法の施行によりなんらの追加的な手続は生じない(附則21条)。 (了)

#No. 209(掲載号)
#石川 理一
2017/03/09

特定居住用財産の買換え特例[一問一答] 【第5回】「買換資産の取得期間」-買換資産の取得期間・取得の日-

特定居住用財産の買換え特例[一問一答] 【第5回】 「買換資産の取得期間」 -買換資産の取得期間・取得の日-   税理士 大久保 昭佳   Q Xは、昨年6月に居住用財産(所有期間が10年超で居住期間は10年以上)を譲渡し、同年11月に土地のみを取得しました。家屋については本年の8月頃に建築が開始される予定です。 この場合、いつまでに建築業者から建物の引渡しを受ければ、買換資産として「特定の居住用財産の買換えの特例(措法36の2)」の適用を受けることができるでしょうか。 A 譲渡の年の翌年12月31日(本事例の場合、本年12月31日)までに建物の引渡しを受ければ、買換資産として認められます。 ●○●○解説○●○● 買換資産は、譲渡資産の譲渡の日の属する年の前年1月1日から譲渡の日の属する12月31日まで、又は、譲渡の日の翌年中に取得する見込みである場合において取得価額の見積額をもって申告したときは、その譲渡の日の属する年の翌年中に取得しなければなりません。 つまり、譲渡資産の譲渡の前年中、その年中又はその翌年中に取得することが必要です(措法36の2①②)。 したがって、本事例の場合、Xの譲渡は昨年であることから、本年の12月31日までに家屋を取得すれば、その敷地と共に、「買換えの特例」の適用を受けることができます。 なお、買換資産に該当する家屋(いわゆる建売住宅のように家屋と共にその敷地の用に供する土地等の譲渡がある場合の当該土地等を含みます)を買換資産の取得期間内に取得できなかった場合であっても、次に掲げる要件のいずれも満たすときは、当該家屋は買換資産の取得期間内に取得されていたものとして取り扱われます(措通36の2-16(やむを得ない事情により買換資産の取得が遅れた場合))。 上記(1)の家屋の取得の遅れが「災害その他その者の責めに帰せられないやむを得ない事情」によるものかどうかは、個々の事案に即して判断されることとなりますが、例えば、次のようなものが該当することになると考えられます。 (了)

#No. 209(掲載号)
#大久保 昭佳
2017/03/09

金融・投資商品の税務Q&A 【Q35】「海外に所在する不動産を売却した場合の譲渡所得計算」

金融・投資商品の税務Q&A 【Q35】 「海外に所在する不動産を売却した場合の譲渡所得計算」   PwC税理士法人 金融部 パートナー 税理士 箱田 晶子   ●○ 検 討 ○● 1 課税方法 日本の居住者(永住者に限る)は、国内で生じた所得及び国外で生じた所得のいずれについても、日本で課税されます。 したがって、日本の居住者が海外の不動産を売却したことにより得た譲渡益に対しては、国内にある不動産を売却した場合と同様に課税されることとなります。 この場合、外国通貨で行われた不動産の譲渡収入の金額及び不動産を取得した際の取得価額の金額は、原則として、その取引日における対顧客直物電信売相場(TTS)と対顧客直物電信買相場(TTB)の仲値(TTM)により換算されます。 ただし、特例として、不動産を売却して外国通貨を直ちに本邦通貨とした場合には対顧客直物電信買相場(TTB)で、本邦通貨を外国通貨として直ちに海外不動産を取得した場合には対顧客直物電信売相場(TTS)で譲渡所得を計算することができます。   2 具体的な計算例 おたずねの場合、原則として取引日のTTMを使用して土地建物等に係る譲渡所得の金額を計算することとなりますが、円からドルへの交換と不動産の取得は同日であり、また、不動産の売却とドルから円への交換は同日とのことですので、1のただし書き以降に記載の特例を適用し、以下の金額を土地建物等に係る譲渡所得の金額として取り扱うことができます(購入手数料や売却手数料はないものとします)。 本件では、ドル建ベースでは譲渡損失が発生していますが、日本円に引き直すと譲渡益が発生するため、申告が必要となります。   3 外国税額控除の適用 本件の不動産の譲渡について、不動産の所在地国において所得税に相当する税が課される場合、日本の申告上、外国税額控除の適用を受けることが可能です。 外国税額控除を受けるためには、不動産を売却した年分の確定申告の際に一定の書類を添付する必要があります(具体的な計算は【Q24】参照)。   (了)

#No. 209(掲載号)
#箱田 晶子
2017/03/09

被災したクライアント企業への実務支援のポイント〔税務面(所得税)のアドバイス〕 【第3回】「源泉所得税の取扱い②」~災害見舞金等の取扱い~

被災したクライアント企業への 実務支援のポイント 〔税務面(所得税)のアドバイス〕 【第3回】 「源泉所得税の取扱い②」 ~災害見舞金等の取扱い~   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   被災時には、自社の役員や従業員(以下、従業員等という)に対して、災害見舞金を支給したり、生活再建に向けた様々な支援をすることがある。このような場合における源泉所得税の取扱いについて以下に解説する。 なお、各取扱いについては、国税庁のホームページに公表されている「災害に関する法人税、消費税及び源泉所得税の取扱いFAQ」が参考になる。   【1】 災害見舞金の支給 (1) 被災した従業員等へ支給する災害見舞金 心身又は資産に加えられた損害について個人が支払を受ける相当の見舞金に、所得税は課されない(所法9①十七、所令30三)。 企業が被災した従業員等に対して、損害の程度に応じて金額を決める等、一定の基準で支給する災害見舞金は「相当の見舞金」に該当すると考えられる。したがって、損害の程度に応じた一定の基準で支給額を定めている場合で、基準に基づいて支給する常識的な範囲の災害見舞金であれば、給与として源泉徴収する必要はない。 (2) 従業員等の家族が被災したときに支給する災害見舞金 個人が支払を受ける葬祭料、香典又は災害等の見舞金は、その金額が受け取った人の社会的地位、支払者との関係等に照らして社会通念上相当と認められるものであれば所得税は課されない(所基通9-23)。 したがって、従業員等の親族が被災した場合に、企業から従業員等に対して災害見舞金を支給するときには、次の要件を満たしていれば給与として源泉徴収する必要はない。   【2】 生活資金の無利息貸付け 災害や疾病により臨時的に多額の生活資金を要することとなった従業員等に対し、企業が資金を無利息又は低利で貸し付けることがある。この場合、返済に要する期間として合理的と認められる期間内に従業員等が受ける経済的利益(適正な利息と無利息又は低利の利息との差額)には、課税しなくても差し支えないこととされている(所基通36-28(1))。 したがって、被災した従業員等に対して、企業が損害の程度に応じた合理的な返済期間を定め、生活に必要な資金を無利息又は低利で貸し付ける場合には、利息相当額の経済的利益について給与として源泉徴収する必要はない。   【3】 社宅の無償貸与 心身又は資産に加えられた損害について、個人が支払を受ける相当の見舞金に所得税は課されない(所法9①十七、所令30三)。 被災した自宅を修繕し再居住できるようになるまでの期間、又は被災してから新たな住居に入居できるまでの期間、企業が従業員等に対して無償で社宅を貸与することがある。この場合、従業員等が貸与期間に受ける家賃相当額の経済的利益は、企業から受ける「相当の見舞金」に該当すると考えられる。したがって、家賃相当額の経済的利益に対して給与として源泉徴収する必要はない。   【4】 他の交通手段による交通費の支給 給与所得者が、勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行をした場合、その旅行のために支給される金品で、旅行について通常必要と認められるものに所得税は課されない(所法9①四)。 従業員等が、災害により通常の交通手段で通勤することができないため、他の交通機関を利用したときに支給を受ける交通費は、次の要件を満たすものであれば上記の旅費に準じて非課税になると考えられる。したがって、要件を満たす交通費は、給与として源泉徴収する必要はない。 また、交通手段が遮断されたため、ホテルや旅館に宿泊している従業員等に実費で支給する宿泊費用についても、同様の理由から給与として源泉徴収する必要はないと考えられる。 (了)

#No. 209(掲載号)
#篠藤 敦子
2017/03/09

平成29年3月期決算における会計処理の留意事項 【第4回】

平成29年3月期決算における会計処理の留意事項 【第4回】 (最終回)   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋     Ⅷ 公共施設等運営事業における運営権者の会計処理   平成23年に民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成11年法律第117号)(以下、「PFI法」という)が改正され、管理者等(PFI法第2条第3項に規定する公共施設等の管理者である各省各庁の長等をいう)が所有権を有する公共施設等(PFI法第2条第1項に規定する道路、空港、水道等の公共施設、庁舎等の公用施設、教育文化施設等の公益的施設等をいう。以下同じ)について、公共施設等運営権(PFI法第2条第7項に規定する公共施設等運営権をいう)を民間事業者に設定する制度(以下「公共施設等運営権制度」という)が新たに導入された。 この公共施設等運営事業(PFI法第2条第6項に規定する公共施設等運営事業をいう。以下同じ)における運営権者(PFI法第9条第4号に規定する公共施設等運営権を有する者をいう。以下同じ)の会計処理等について、実務上の取扱いを明らかにするために、実務対応報告公開草案第48号「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い(案)(以下、「公開草案48号」という)」が公表されている。 【公共施設等運営権制度のイメージ】 (出所) 実務対応報告公開草案第48号「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い(案)」の公表【参考資料】 公開草案48号では、運営権者と管理者等の間の対価の支払に関する会計処理についてまとめられている。   1 会計処理 公共施設等運営権では、以下の会計処理等の検討が必要である。 (1) 当初の会計処理 (2) 減価償却方法 (3) 重要な見積りの変更の会計処理 (4) 更新投資に関する会計処理 (5) プロフィットシェアリング条項に関する会計処理 (6) 減損 (7) 注記   (1) 当初の会計処理 ① 会計処理 運営権者は、公共施設等運営権を取得した時に、管理者等と運営権者との間で締結された実施契約(PFI法第22条に規定する公共施設等運営権実施契約をいう)において定められた公共施設等運営権の対価(以下、「運営権対価」という)について、合理的に見積られた支出額の総額を無形固定資産として計上する(公開草案48号3)。 実施契約において、運営権対価が固定額ではなく、将来の業績等の指標に連動する形式で定められる場合も、公共施設等運営権を取得した時に合理的に見積られた運営権対価の支出額の総額を無形固定資産として計上する(公開草案48号29、30) また、運営権対価を分割で支払う場合、資産及び負債の計上額は、運営権対価の支出額の総額の現在価値による(公開草案48号4)。割引率及び利息法について、以下の規定がある(公開草案48号5)。 《割引率》 運営権対価の支出額の総額の現在価値の算定にあたっては、運営権者の契約不履行に係るリスク(運営権者の信用リスク)を割引率に反映させる(公開草案48号5)。例えば、以下のような利率を割引率に用いることが考えられる(公開草案48号33)。 実施契約において明示される利率 運営権設定期間における運営権者の追加借入に適用されると合理的に見積られる利率 《利息法》 運営権対価の支出額の総額とその現在価値との差額については、運営権設定期間(PFI 法第17条第3号に規定する公共施設等運営権の存続期間をいう)にわたり利息法により配分する(公開草案48号5)。 (注) なお、公共施設等運営権の取得は、企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」に定めるリース取引に該当しない(公開草案48号7)。 ② 表示 公共施設等運営権は、無形固定資産の区分に、公共施設等運営権などその内容を示す科目をもって表示する(公開草案48号16)。 運営権対価を分割で支払う場合に計上する負債は、貸借対照表日後1年以内に支払の期限が到来するものを流動負債の区分に、貸借対照表日後1年を超えて支払の期限が到来するものを固定負債の区分に、公共施設等運営権に係る負債などその内容を示す科目をもって表示する(公開草案48号18)。 (2) 減価償却方法 無形固定資産に計上した公共施設等運営権は、原則として、運営権設定期間を耐用年数として、定額法、定率法等の一定の減価償却の方法によって、その取得原価を各事業年度に配分する(公開草案48号8)。 なお、実施契約において、一定の条件の下で運営権設定期間を延長することができる条項(延長オプション)が定められる場合、運営権者が当該条項を行使する意思が明らかな場合を除き、延長可能な期間は公共施設等運営権の耐用年数に含めない(公開草案48号9)。 (3) 重要な見積りの変更の会計処理 合理的に見積られた運営権対価の支出額に重要な見積りの変更が生じた場合、当該見積りの変更による差額は、上記(1)①で計上した資産及び負債の額に加減する(公開草案48号6)。そして、減価償却を通じて残存耐用年数にわたって費用配分を行う(公開草案48号37)。 (4) 更新投資に関する会計処理 ① 会計処理 (ⅰ) 更新投資の実施内容の大半が、管理者等が運営権者に課す義務に基づいており、かつ、運営権者が公共施設等運営権を取得した時に、更新投資のうち資本的支出に該当する部分(所有権が管理者等に帰属するものに限る)に関して、運営権設定期間にわたって支出すると見込まれる額の総額及び支出時期を合理的に見積ることができる場合   取得時に、支出すると見込まれる額の総額の現在価値を負債として計上し、同額を資産として計上する(公開草案48号12(1))。 そして、運営権設定期間を耐用年数として、定額法・定率法等の一定の減価償却の方法によって、その取得原価から残存価額を控除した額を各事業年度に配分する(公開草案48号15(1))。 (※) 更新投資の実施内容の大半が、管理者等が運営権者に課す義務に基づく場合の一例としては、実施契約や要求水準書等において、更新投資の実施時期及び実施内容があらかじめ具体的かつ定量的な数値によって示されている場合が考えられる(公開草案48号51)。 また、以下の点に留意する必要がある(公開草案48号13~14)。 負債を計上する場合、現在価値の算定に用いる割引率は、運営権対価の支出額の総額の現在価値の算定に用いたものと同じ利率とする(上記(1)①参照)。 更新投資について支出すると見込まれる額の総額とその現在価値との差額については、運営権設定期間にわたり利息法により配分する。 資産及び負債を計上する場合、運営権設定期間にわたって支出すると見込まれる額及び支出時期に重要な見積りの変更が生じたときは、当該見積りの変更による差額を資産及び負債の額に加減する。 (ⅱ) 上記(ⅰ)以外の場合   上記(ⅰ)以外の場合、更新投資を実施した時に、当該更新投資のうち資本的支出に該当する部分に関する支出額を資産として計上する(公開草案48号12(2))。 当該更新投資を実施した時より、当該更新投資の経済的耐用年数(当該更新投資の物理的耐用年数が公共施設等運営権の残存する運営権設定期間を上回る場合は、当該残存する運営権設定期間)にわたり、定額法、定率法等の一定の減価償却の方法によって、その取得原価から残存価額を控除した額を各事業年度に配分する(公開草案48号15(2))。 ② 表示 更新投資に係る資産は、無形固定資産の区分にその内容を示す科目をもって表示する(公開草案48号17)。 上記①(ⅰ)に基づき計上した更新投資に係る負債は、貸借対照表日後1年以内に支払の期限が到来するものを流動負債の区分に、貸借対照表日後1年を超えて支払の期限が到来するものを固定負債の区分に、その内容を示す科目をもって表示する(公開草案48号19)。 (5) プロフィットシェアリング条項に関する会計処理 実施契約において、運営権対価とは別に、各期の収益があらかじめ定められた基準値を上回ったときに運営権者から管理者等に一定の金銭を支払う条項(「プロフィットシェアリング条項」)が設けられる場合、当該条項に基づき各期に算定された支出額を、当該期に費用として処理する(公開草案48号11)。 (6) 減損 公共施設等運営権は「固定資産の減損に係る会計基準」の対象となる(公開草案48号10)。 減損会計の適用において、減損損失の認識の判定及び測定において行われる資産のグルーピングは、原則として、実施契約に定められた公共施設等運営権の単位で行う(公開草案48号10)。 ただし、管理会計上の区分、投資の意思決定(資産の処分や事業の廃止に関する意思決定を含む)を行う際の単位、継続的な収支の把握がなされている単位及び他の単位から生じるキャッシュ・イン・フローとの相互補完性を考慮し、公共施設等運営事業の対象とする公共施設等ごとに合理的な基準に基づき分割した公共施設等運営権の単位でグルーピングを行うことができる(公開草案48号10)。 (7) 注記 運営権者は、以下の事項を公共施設等運営事業「ごと」に注記する(公開草案48号20)。 ① 運営権者が実施する公共施設等運営事業の概要(公共施設等運営事業の対象とする公共施設等の内容、実施契約に定められた運営権対価の支出方法、運営権設定期間、残存する運営権設定期間、プロフィットシェアリング条項の概要等) ② 公共施設等運営権の減価償却の方法 ③ 更新投資に係る事項 (ⅰ) 主な更新投資の内容及び投資を予定している時期 (ⅱ) 運営権者が採用した更新投資に係る資産及び負債の会計処理の方法 (ⅲ) 更新投資に係る資産の減価償却の方法 (ⅳ) 上記(4)①(ⅱ)に基づき更新投資に係る資産を計上する場合、翌期以降に支出すると見込まれる更新投資のうち、合理的に見積ることが可能なキャッシュ・フローの金額及びその内容   2 適用時期 公開草案48号は、公表日以後適用する(公開草案48号21)。 公共施設等運営権制度は、実際の運用の開始から間もないことを踏まえ、特定の経過的な取扱いを定めずに、公開草案48号を過去の期間のすべてに遡及適用する(公開草案48号59)。 したがって、既に公開草案48号と異なる会計処理を行っている会社の場合、遡及適用により事務処理負担が重くなる。   Ⅸ 短信及び有価証券報告書の改正   平成28年4月18日に金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告が公表された。当該報告を受けて、平成29年2月14日に「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正が公表されている。また、東京証券取引所より、平成29年2月10日に「決算短信・四半期決算短信作成要領等」の改訂、有価証券上場規程の一部改正が公表されている。 (1) 有価証券報告書の改正 決算短信の記載内容とされていた「経営方針」について、決算短信ではなく有価証券報告書において開示するため、有価証券報告書の記載内容に「経営方針」を追加している。 そして、「経営方針」は、第一部企業情報の第2【事業の状況】の3【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】に記載する。表題も【対処すべき課題】から【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】へ改正されている。 当該改正は、平成29年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書から適用する。 (2) 決算短信の改正 以下の改正が行われている。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 当該改正は、平成29年3月31日以後に終了する事業年度に係る決算短信から適用する。   Ⅹ 金融庁の平成27年度有価証券報告書レビューの審査結果   平成28年3月25日に「平成27年度有価証券報告書レビューの重点テーマ審査及び情報等活用審査の実施結果について(以下、「レビュー結果」という)」が公表されている。具体的には、以下のテーマについて公表されている。 1 退職給付 2 セグメント情報 3 その他   レビュー結果の内容は、上場会社のみならず、非上場会社の平成29年3月期決算においても参考となる箇所がある。   1 退職給付 退職給付の開示について、以下のような事例が確認され、また、留意点が挙げられている(レビュー結果3.(1))。なお、以下の内容は、基本的に有価証券報告書で留意する必要がある項目であるが、計算書類においても留意する必要がある項目もある。   2 セグメント情報 セグメントの開示について、以下のような事例が確認され、また、留意点が挙げられている(レビュー結果3.(2))。なお、以下の内容は、有価証券報告書のみで留意する必要がある項目である。   3 その他 その他に以下のような事例が確認され、また、留意点が挙げられている(レビュー結果3.(3))。なお、以下の内容は、有価証券報告書及び計算書類ともに留意する必要がある項目である。 (連載了)

#No. 209(掲載号)
#西田 友洋
2017/03/09
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