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理由付記の不備をめぐる事例研究 【第30回】「有価証券評価損」~有価証券評価損の計上が認められないと判断した理由は?~

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第30回】 「有価証券評価損」 ~有価証券評価損の計上が認められないと判断した理由は?~   千葉商科大学商経学部講師 泉 絢也   今回は、青色申告法人X社に対して行われた「有価証券評価損の損金算入の否認」に係る法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた東京地裁平成元年9月25日判決(行集40巻9号1205頁。以下「本判決」という)を素材とする。   1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記) (注) 素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。   2 本件理由付記から読み取ることができる関係図   3 本判決の判断 本判決は、大要次のとおり、理由付記に不備はないと判断した(この判断は、控訴審である東京高裁平成3年6月26日判決・行集42巻6=7号1033頁でも維持されている)。   4 検討 (1) 関係法令等の確認 内国法人がその有する資産の評価換えをしてその帳簿価額を減額した場合には、その減額した部分の金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されないのが原則であり(法法33①)、例外的に特定の事実が生じた場合にのみ評価損の損金算入が認められる。 本件で問題となったような上場有価証券以外の有価証券については、その有価証券を発行する法人の資産状態が著しく悪化したため、その価額が著しく低下したことなどの要件を満たした場合に評価損の損金算入が認められる(法法33②、法令68①二)。 法人税基本通達は、この場合の「著しく低下した」というためには、①当該有価証券の当該事業年度終了の時における価額がその時の帳簿価額のおおむね50%相当額を下回ることとなり、かつ、②近い将来その価額の回復が見込まれないことという2つの基準をクリアする必要がある旨定めている(法人税基本通達9-1-7、9-1-11)。 また、本件との関係では法人税基本通達9-1-12を確認しておく必要がある。同通達は、増資払込み後において有価証券の評価損を計上する場合には、原則として、その損金算入が認められる「その有価証券を発行する法人の資産状態が著しく悪化したため、その価額が著しく低下したこと」という事実はないものと取り扱い、その増資から相当の期間を経過した後においてあらためて当該事実が生じたと認められる場合にはそのような取扱いは適用しない旨定めている。 この通達の取扱いは、増資払込みをする以上は、当面その業績の回復を期待するものであることを考慮して、事実認定における一種の形式基準ないし目安として、増資払込み直後における株式の評価減を認めないものであると解される。 なお、有価証券の評価損に係る関係法令等については、本連載【第10回】も参照。 (2) 求められる理由付記の程度 本件における帳簿書類の記載内容は必ずしも明らかではないが、X社においては、本件株式につき法人税法施行令68条1項2号ロの規定に定める事実が生じたとして本件評価損の計上をしたことを前提とすると、本件更正処分は、本件評価損計上に関するX社の帳簿書類の記載自体を否認せず、その帳簿書類の記載をそのまま受け入れた上で本件評価損の損金算入を否認するものであり、帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合に該当すると考える。 したがって、理由付記の程度としては、更正通知書記載の更正の理由が、そのような更正をした根拠について帳簿書類の記載以上に信憑力のある資料を摘示するものでないとしても、更正の根拠を更正処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するものである限り、法の要求する更正理由の付記として欠けるところはないことになる(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁等参照)。 (3) 理由付記の十分性 次のとおり、本件理由付記は、法の求める理由付記として十分なものであると考える。 本件理由付記は、①本件株式の発行法人に対する増資が×1年6月30日に行われているという事実及び②評価損計上日(X2年5月20日)は上記増資払込日(×1年6月30日)から11ヶ月しか経過していないという事実を摘示した上で、③増資による新株を引受けて払込みをした後、相当の期間を経過しているとは認められないという評価を記載し、このことから、根拠条文である法人税法33条2項、施行令68条1項2号ロに掲げられている評価損の計上ができる特定の事実に該当するものとは認められないため、有価証券評価損を損金に算入することはできないと判断したことを記載している。 そうであれば、本件理由付記は、法令上の根拠及び法令上の要件に対応する具体的な事実を記載するものであり、これによって課税庁の判断過程が明らかとなるものであるから、更正処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与えるという理由付記の趣旨目的に適うものであると考える。 (4) 更なる議論 ~立証責任の所在が理由付記の議論に与える影響~ 本件訴訟において、X社は、評価損の損金算入要件に係る各事実につき、回復の見込みがあることが評価損の損金算入を認めない障害要件となるので、評価損の損金算入を否定する課税庁が回復の見込みがあることについて主張立証責任を負うと主張した。 これに対して、本判決は、資産の評価損の損金算入は例外的に認められるものであることを理由として、資産の評価損を損金に算入しようとする者(本件ではX社)が、その評価損を損金に算入し得る特定事実の存在、すなわち①有価証券の発行法人の資産状態が著しく悪化したこと及び②有価証券の価額が著しく低下したこと、さらには、③回復の見込みがない状態にあることについて、主張立証責任を負うことになる旨判示した。 納税者が立証責任を負う論点に関する理由付記については、その記載の程度が常に軽減されるか否かは議論のあるところであるが、少なくとも、納税者の主張や立証の程度に応じて、求められる理由付記の記載の程度が変化すると解する余地はあろう。納税者が、その立証責任を負う論点に関して、具体的な主張や立証を行っていない場合には、課税庁としてはこの点に関して、具体的な理由を付記することが困難となる場合が通例であると考えるからである。 *  *  * 次回は、「諸会費として処理しているゴルフクラブ入会金の損金算入の否認」に係る法人税更正処分の理由付記の事例を取り上げる。 (了)

#No. 233(掲載号)
#泉 絢也
2017/08/31

収益認識会計基準(案)を学ぶ 【第2回】「基本となる原則」

収益認識会計基準(案)を学ぶ 【第2回】 「基本となる原則」   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 「収益認識に関する会計基準(案)」(以下「収益認識会計基準(案)」という)は、会計処理を行うに際して、「基本となる原則」を規定している。 今回は、この「基本となる原則」について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 基本となる原則 収益認識会計基準(案)が規定する「基本となる原則」とは、約束した財又はサービスの顧客への移転を、当該財又はサービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額で描写するように、収益の認識を行うことである(13項、106項)。 1 収益認識のための5つのステップ 「基本となる原則」に従って収益を認識するために、後述する5つのステップを適用する(14項、106項)。 履行義務の充足による収益の認識については、次のことに注意する(32項~34項)。 収益認識会計基準(案)のポイントの1つは、この5つのステップを理解することにあると考えられる。 収益認識会計基準(案)の定め(「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」91項から102項に定める重要性等に関する代替的な取扱いを含む)は、顧客との個々の契約を対象として適用するが、複数の特性の類似した契約又は履行義務から構成されるグループ全体を対象として適用することができるケースについて規定している(15項、107項、「[設例11] 返品権付きの販売」の前提条件(2)参照)。 2 設例 「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」は、収益を認識するための5つのステップを理解するために、次の設例を示している。 (出所:「「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」の設例」P41、42) (了)

#No. 233(掲載号)
#阿部 光成
2017/08/31

〔判決からみた〕会計不正事件における当事者の損害賠償責任 【第6回】「コーポレートガバナンスと社外取締役・社外監査役」~まとめに代えて~

〔判決からみた〕 会計不正事件における当事者の損害賠償責任 【第6回】 (最終回) 「コーポレートガバナンスと社外取締役・社外監査役」 ~まとめに代えて~   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝     社外取締役・社外監査役への期待 ここ数年、上場企業のコーポレートガバナンス強化策として最も注目されてきたのは、社外取締役・社外監査役の導入であろう。当初は、親会社などの大株主や取引先などのステークホルダーの中から社外取締役・社外監査役を選任することが多かったが、現在では、より独立性が高く、単なる「社外」にとどまらない、一般株主との利益相反がない「独立役員」の選任が要請されている。 1 コーポレートガバナンス・コード 2015年5月から適用されているコーポレートガバナンス・コードは、「第4章 取締役会の責務」のなかで、独立社外取締役について、2つの原則を掲げている。 本コードは上場企業に適用され、法的拘束力はないものの、「コンプライ・オア・エクスプレイン(Comply or Explain)」の精神のもと、原則を実施するか、さもなければ実施しない理由を説明するかを求めている。 独立社外取締役について、本コードの「背景説明」には、次のような記述がある。 2 独立役員の確保 コーポレートガバナンス・コードの策定を受け、東京証券取引所は上場制度を一部見直し、2015年6月から適用している。従来からあるコーポレートガバナンス報告書に本コードの実施に関する情報開示を義務付け、実施しない場合はその理由の明記が必要となった。 東京証券取引所ホームページには、「独立役員の確保」として、次のような説明がある。 3 期待と現実のギャップ 企業が社外取締役・社外監査役を選任することによって期待されることは、上記のコーポレートガバナンス・コード【原則4-7】に記載されたほかにも、 などが挙げられるが、実際には次のような理由から、機能していないとの批判も絶えない。 金融庁・証券取引所は、こうした批判を受けて、独立役員制度の実効性の向上を目指しているが、まだ道半ばといったところであろうか。 たとえば、去る8月18日に「当社経理部門責任者の不正行為に関するお知らせ」を公表したJASDAQ上場の貴金属アクセサリーの製造販売会社株式会社光彩工芸の取締役構成は、4名の取締役のうち2名が社外取締役、監査等委員である取締役3名はいずれも弁護士(そのうち1名は公認会計士でもある)であり、コーポレートガバナンス・コードや東京証券取引所規則にいう「独立社外取締役」「独立役員」であり、コーポレートガバナンス上は、優等生ともいえる取締役構成であった。 ところが、結果的には、社外取締役主体の取締役会は、経理部門責任者による不正リスクを十分には認識できていなかったようである。また本件は、会計監査人である優成監査法人から無限定適正意見が出されていることから、会計監査人の監査手続きに遺漏がなかったかどうかも問題となろう。 詳細な調査報告が開示されていないなかで断言は難しいものの、制度の導入だけでは実効性が上がらないという、社外取締役の限界をうかがわせた事件であるという印象を持った。   会計監査人の交代 東芝の巨額粉飾決算事件で、一躍注目を集めたのは、長く同じ会計監査人による監査を受けることによる監査法人と被監査会社との間の「癒着構造」であった。 平成26年の会社法改正により、監査役設置会社における会計監査人の選任及び解任に関する議案は、監査役が決定することとされた(会社法第344条第1項)ことから、会計監査人による会計監査の厳格化、監査役との連携の強化、監査役による適正性を欠く会計監査人の解任提案など、会計監査の面からコーポレートガバナンスがより一層強化されることが期待されているが、残念ながら、十分に機能しているとはいえないのが現状である。 その理由は、大手監査法人の寡占化により、「会計監査人の変更の余地が少ないこと」及び「会計監査人のローテーション制度の導入が進まないこと」の2つに起因している。 以下、順を追って現状を確認したい。 1 進む4大監査法人による寡占化 東洋経済ONLINEが2017年4月29日に公開した、「独自集計!「監査法人の売上高」ランキング―東芝問題で注目が集まるプロ集団の業界地図」と題された金融ジャーナリスト伊藤歩氏の記事では、4大監査法人の市場占有率が88%に達していること、準大手を含む上位10事務所の市場占有率が93%であることなどが、直近のデータをもとに明らかにされている。 以下に、上記記事をもとに筆者が作成した上位10事務所の名前と売上高、提携している海外の監査法人をまとめたものを掲げておく。 4大監査法人と言われながら、事件を受けて東芝の会計監査人に就任したPwCあらた監査法人は、3位のあずさ監査法人の4割程度の売上規模であること、5位以下の準大手監査法人に至っては、大手監査法人の10分の1以下の売上規模でしかないことが明らかにされている。 〈監査法人売上高ランキング〉(単位:百万円) 大手監査法人による寡占化の問題点は複数あるが、一番の問題点は、「大規模な上場会社の会計監査人に就任できるのは、大手監査法人に限られる=選択肢がない」ということである。 大規模な上場企業の会計監査にかかる人的リソースの問題、海外に拠点を数有する上場企業であれば、海外の有力監査法人との提携の問題、非監査業務における契約関係の有無などから、選択肢は自ずと限られる。 その結果は、後述する会計監査人のローテーションが制度化できないという論点にも繋がっていく。 2 平成28年における会計監査人の交代実績 実際に、どの程度の上場会社が会計監査人を交代させているのか。平成28年において、会計監査人を交代させた上場会社について、その概要を見ておきたい。 以下の記述と分析は、T&A master 2017年1月30日号(No.676)「平成28年中における会計監査人の交代企業一覧」という記事から、筆者が集計したものをベースにしている。記事によれば、会計監査人が交代した企業数は143社(※)であった。 (※)  当該記事では144社とカウントされているが、異動情報の詳細を確認したところ、1社が重複してカウントされていることが判明したため、本稿では143社として記載した。 東京証券取引所によれば、2016年末における上場会社数は3,539社であり、約4%の上場会社が、この1年間で会計監査人を交代させたことになる。 (1) 交代により就任した監査法人と退任した監査法人のクライアント数 平成28年には、明治監査法人、アーク監査法人、聖橋監査法人が合併したため、合併に伴い会計監査人を異動した企業が22社、それ以外の事由による異動が1社と、計23社が新たに明治アーク監査法人を会計監査人とすることとなった。 一方、退任した監査法人のトップは、金融庁による行政処分を受けた新日本監査法人で、その数は42社であった。 〈就任監査法人上位5法人〉 〈退任監査法人上位5法人〉 (2) 新日本監査法人から異動した先の監査法人とクライアント数 新日本監査法人から会計監査人を交代させた上場会社の受け皿としては、他の大手監査法人が合計で28社、準大手監査法人が6社、その他8社となっている。 〈新日本監査法人から交代〉 (3) 異動理由 会計監査人の異動理由については、約6割の上場会社が「契約任期満了」と開示している。よく指摘されることではあるが、ほとんどの上場会社が監査契約を単年度で締結しているため、監査報告書を受領した後は自動的に「契約任期満了」となっているわけであり、この異動理由が実態を表していないことは言うまでもない。 後述する「会計監査人のローテーション制度」に繋がるような趣旨での交代は3社にとどまっており、同じ会計監査人が長く監査を続けることをリスクであると認識している上場会社が少ないことが数値に表れていると言えそうである。 〈会計監査人の異動理由〉 3 会計監査人のローテーション制度 一定期間継続して会計監査を行った監査法人を強制的に交代させる「会計監査人ローテーション制度」については、オリンパスの損失隠しが判明した時期に、一度導入が検討されたものの、こうした制度を導入している国はないことから「時期尚早」として見送られた経緯があった。 その後、今回の東芝事件を契機に制度導入論が高まりを見せ、金融庁が検討を行うこととなると同時に、EUでは2016年6月から、監査法人の強制ローテーション制度を含む監査法人の強固な独立性を補強するための諸制度が導入されている。 日本における制度導入に向けた動きの現状を見ておきたい。 (1) 会計監査の在り方に関する懇談会による提言 東芝事件を契機として、会計監査の信頼性が問われている現状を踏まえて、「会計監査の信頼性を確保するために必要な取り組みについて、幅広く議論を」行うために、金融庁は、「会計監査の在り方に関する懇談会」を設置、平成28年3月8日にその提言が公表された。 提言の中では、東芝事件を想起させる次のような記述がある。 そのうえで、「監査法人の独立性の確保」という観点から、監査法人のローテーション制度について、メリットとデメリットが併記され、「金融庁において、深度ある調査・分析がなされるべきである」との結論が導き出されている。 なお、懇談会による提言の中で明示された、監査法人のローテーション制度についてのデメリットは以下のとおりである。 (2) 監査法人のローテーション制度に関する第一次調査報告 こうした提言を受けて、金融庁は、平成29年7月20日、「監査法人のローテーション制度に関する調査報告(第一次報告)」を公表し、第一次報告では、過去の不正会計事案において、パートナーローテーション制度では抑止効果を発揮できなかったことが検証され、企業と同一監査法人との監査契約の固定化が顕著であり、企業による自主的な監査法人の交代が進んでいない現状が報告された。 もっとも、これらの検証は、第一報告を待たずとも、本報告書も依拠している、青山学院大学大学院教授町田祥弘氏による「監査規制をめぐる新たな動向と課題-監査事務所の強制的交代の問題を中心として-」(会計・監査ジャーナル2015年12月号)という論考でもすでに明らかになっていたことであり、提言から1年4ヶ月余りを経た時点での、しかも第一次報告というのはいささか遅きに失した感が否めない。 そして、第一次報告の結論としては、次のとおり要旨にまとめられている。 4 社外取締役・社外監査役の役割 会計監査人の交代については、会計監査人の監査方法に疑義があったり、明らかに信頼に値しないと判断できたりする場合はともかく、それ以外のどの上場会社の経営陣、経理部門及び内部統制部門は反対する立場をとるものと思われる。その理由としては、 といったことが挙げられようが、こうした反対意見に正面から反論し、会計監査人の交代の要否を検討させるのも、社外取締役・社外監査役の果たすべき役割であろう。 その理由としては、本項目の冒頭でも述べたように、会計監査人の選任・解任は、監査役により議案が決定されること、社外取締役・監査役には、会計監査を含む幅広い知見のある者が起用されることが期待されていることから、長期間、同一の会計監査人による会計監査を受けていることのデメリットと交代に伴う煩瑣な手続等を比較考量しながら、より会社にふさわしい会計監査人の選任について、経営陣をリードすることが可能ではないかということなどである。   ガバナンス改革の方向性 日本銀行金融機構局金融高度化センターが2017年7月に公表した「金融機関のガバナンス改革:論点整理(以下「論点整理」と略称する)」は、日本独自のガバナンスについての問題提起をした資料として、たいへん示唆に富んだ内容となっている。 表題のとおり、金融機関向けと銘打ってはいるが、内容的には一般の事業会社に共通する部分も多く、また、本稿のテーマ「コーポレートガバナンスと社外取締役・社外監査役」とも密接に関わりを有する内容であるため、論点を紹介したい。 1 日本独自のガバナンスは監査機能に限界がある(論点整理p.18) 論点整理では、日本独自のガバナンスについて、監査機能の限界を指摘し、具体的には、次のような事例を挙げている(下線は原文のまま)。 2 日本独自のガバナンスの特徴・問題点(論点整理p.40) 次いで、論点整理は、日本独自のガバナンスの特徴と問題点について、以下のとおりまとめている。本稿で取り上げている社外取締役・社外監査役の機能が十分に活かされていない現況、その理由が明らかになっていると言えるだろう。 3 正しい「3線」モデルと誤った「3線」モデル 論点整理では「3線」モデルと表現されているが、内部監査用語である3ラインディフェンス又は3つのディフェンスライン(※)と呼ばれるガバナンス体制についても、日本独自のガバナンスについて、論点整理は批判的である。 (※) 「3ライン・ディフェンス」の詳しい解説については、PwCあらた監査法人のホームページにある「3つのディフェンスライン」という記事がわかりやすくまとめられているので、そちらを参照いただきたい。 以下に、論点整理5ページ、6ページに記載されている「3線」モデルを引用する。 図1:日本独自のガバナンス:誤った「3線」モデル(論点整理p.5) 図2:国際標準のガバナンス:正しい「3線」モデル(論点整理p.6) 論点整理が、上記「日本独自のガバナンスの特徴・問題点」で指摘している⑤から⑧の問題点を解決するための仕組みが、「正しい3線モデル」ということになる。これまでの日本独自の監査役制度を真っ向から批判するものではあるが、筆者が確認した範囲では、公益社団法人日本監査役協会などから、表立った反論は出ていないようである。 4 変わる内部監査部門の位置づけ 実務上は、内部監査部門を監査委員会(監査役会)の指揮命令下に置くという動きは、日本銀行による論点整理を待たずに、一部の上場会社が先導する形で、進行している。 端緒となったのは、東芝であった。東芝が2016年3月15日に公表した「改善計画・状況報告書」には、内部監査部の独立性の担保として、以下のように記述されている(p.40)。 その後、上場会社の一部に、これに追従するような動きが見られている。株式会社カプコンの「平成27年3月期有価証券報告書」(34ページ)、ステラケミファ株式会社の「コーポレートガバナンス体制」など、いずれも監査等委員会の指揮下に内部監査部門が置かれた体制図となっている。 日本銀行による「論点整理」はあくまで金融機関のための論考という形をとっているが、徐々に監査等委員会設置会社を中心に、内部監査部門の位置づけが「社長・経営者の直轄型」から「監査等委員会直轄型」への移行が進んでいると言えそうである。 *   *  * 以上、6回にわたって連載してきた「〔判決からみた〕会計不正事件における当事者の損害賠償責任」については、ここでひとまず完了とさせていただくことにする。今後も新しい判決が公表される機会があれば、さらに論考を深めていきたいと考えている次第である。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 (連載了)

#No. 233(掲載号)
#米澤 勝
2017/08/31

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第37回】「連結納税における税効果会計(回収指針対応版)」

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第37回】 「連結納税における税効果会計(回収指針対応版)」   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋   【はじめに】 税効果会計は大きく「個別財務諸表における税効果会計」、「連結財務諸表における税効果会計」、「連結納税における税効果会計」に分けることができる。今回は「連結納税における税効果会計」について解説する。なお、本解説では3月末決算の会社を前提に解説している。 連結納税における税効果会計は、個別財務諸表から連結財務諸表まで、以下の10のステップに分けることができる。 ※各ステップをクリックすると、それぞれのページに移動します。 ◆個別財務諸表◆ ◆連結財務諸表◆ 連結納税における税効果では、法人税は連結納税主体(連結納税制度を適用する各連結納税会社を全体で1つの納税主体とした場合の当該納税主体)で計算し、地方税(住民税・事業税)は連結納税会社ごとに計算するため税効果も法人税部分、住民税部分、事業税部分に分けて検討する必要がある。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 ▷個別財務諸表 ▷連結財務諸表 連結納税における税効果においても、スタートは一時差異等の集計から始まる。詳細は、【第35回】「個別財務諸表における税効果会計(回収指針対応版)」の【STEP1】参照。 繰越欠損金については、注意が必要である。連結納税の繰越欠損金は、以下のように法人税の繰越欠損金、住民税の繰越欠損金、事業税の繰越欠損金に分けて考える必要がある。 連結納税における税効果は、法人税部分の税効果、住民税部分の税効果及び事業税部分の税効果に分けて計算するため、それぞれの法定実効税率を算定する必要がある。 東京都で超過税率適用の場合、以下のとおりとなる。 〈法人税部分〉 〈住民税部分〉 ◎将来減算一時差異及び連結欠損金個別帰属額の場合 ◎控除対象個別帰属税額及び控除対象個別帰属調整額の場合 〈事業税部分〉 また、税率は、以下の時点のものを用いる。 なお、繰延税金資産の回収可能性が法人税と事業税で異なる場合又は住民税と事業税で異なる場合で、かつ、その影響が大きい場合、上記の法定実効税率をそのまま適用することは適当ではないため、法人税と住民税の法定実効税率の分母に使用する事業税率を修正する(実務対応報告第7号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その2)(以下、「実報7号」という)Q5、[参考])。 【STEP1】で集計した一時差異等に【STEP2】で算定した法定実効税率をそれぞれ乗じて、法人税部分、住民税部分、事業税部分に分けて算定する。 連結納税における繰延税金資産(個別財務諸表)の回収可能性の検討は、基本的には【第35回】「個別財務諸表における税効果会計(回収指針対応版)」と同様である。しかし、単体納税における回収可能性の検討とは、以下の点で異なる(実報7号Q3)。 上記のⅠ~Ⅳを踏まえて、連結納税における繰延税金資産(個別財務諸表)の回収可能性の検討は、以下の順に行う。 (1) 企業分類の決定 連結納税における税効果では、法人税部分の繰延税金資産は、連結納税主体(連結全体)で回収可能性を検討し、地方税部分の繰延税金資産は連結納税会社(各社)ごとに回収可能性を検討する。 そのため、各連結納税会社の企業分類のみならず、連結納税主体の企業分類を決定する必要がある。連結納税主体の企業分類の決定方法も各連結納税会社の企業分類の決定方法と同様である。詳細は【第35回】「個別財務諸表における税効果会計(回収指針対応版)」の【STEP4】(1)参照。 また、連結納税における税効果では、法人税部分の将来減算一時差異・繰越欠損金の種類、地方税部分それぞれで用いる企業分類が異なるので留意が必要である。 ① 将来減算一時差異(法人税部分) 将来減算一時差異(法人税部分)は連結納税においては連結所得をベースに解消されるため、将来減算一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性を判断する場合、連結納税主体の企業分類が、連結納税会社の企業分類と同じか上位にあるときは、連結納税主体の例示区分を用いる。ただし、ここでの検討は個別財務諸表であることから、連結納税会社の企業分類が連結納税主体の企業分類の上位にあるときは、まず自己の個別所得見積額をベースに判断するため、当該連結納税会社の企業分類を用いる(実報7号Q3)。 ② 特定連結欠損金個別帰属額(法人税の繰越欠損金) 特定連結欠損金個別帰属額は、連結納税会社の個別所得を限度として、連結所得より繰越控除できる。言い換えると、連結所得の発生が少ない(しない)場合や個別所得の発生が少ない(しない)場合は、繰越控除ができない部分が発生する。したがって、連結納税主体と連結納税会社の例示区分のうち、より下位の例示区分を用いる。 ③ 非特定連結欠損金個別帰属額(法人税の繰越欠損金) 非特定連結欠損金個別帰属額は連結所得と相殺されることで解消するため、連結納税主体の企業分類を用いる。 ④ 地方税部分 連結納税においても地方税は単体納税と同様に単体のみで税額計算するため、連結納税会社の企業分類を用いる。 以上の①から④をまとめると以下のとおりとなる。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (2) 回収可能性の検討 回収可能性の検討は、法人税部分・住民税分・事業税分それぞれ別に行う。 ① 一時差異等のスケジューリング スケジューリングは、個別財務諸表における税効果と同様である。そのため、詳細は、【第35回】「個別財務諸表における税効果会計(回収指針対応版)」の【STEP4】を参照。 ただし、スケジューリングにおいて留意する点が1つある。 連結納税における税効果では、全ての企業分類が「1」又は「5(スケジューリング可能な将来加算一時差異がない場合を想定)」でない限り、必ずスケジューリングを行う必要がある(連結財務諸表でも同様)。 例えば、連結納税会社Aの企業分類が「1」で、他の連結納税会社の企業分類が「3」で、かつ、連結納税主体の企業分類が「3」であったとする。この場合、単体納税であれば、連結納税会社Aはスケジューリングに関係なく繰延税金資産を計上できるが、連結納税の場合、法人税部分の税効果は連結納税会社Aのスケジューリングが他の連結納税会社の一時差異等の解消に影響する。そのため、企業分類「1」である連結納税会社Aにおいてもスケジューリングを行う必要がある。 ② 法人税部分の繰延税金資産の回収可能性の検討 法人税部分の繰延税金資産の回収可能性の検討は「将来減算一時差異」、「特定連結欠損金個別帰属額」、「非特定連結欠損金個別帰属額」それぞれにおいて、以下の順に行う(実報7号Q3)。 (ⅰ) 将来減算一時差異 (ⅱ) 特定連結欠損金個別帰属額 (ⅲ) 非特定連結欠損金個別帰属額 ③ 住民税部分の繰延税金資産の回収可能性の検討 住民税部分の繰延税金資産の回収可能性の検討は「将来減算一時差異」、「連結欠損金個別帰属額」、「控除対象個別帰属調整額・控除対象個別帰属税額」それぞれにおいて、以下の順に行う(実報7号Q3)。 (ⅰ) 将来減算一時差異 (ⅱ) 連結欠損金個別帰属額 (ⅲ) 控除対象個別帰属調整額・控除対象個別帰属税額 ④ 事業税部分の繰延税金資産の回収可能性の検討 事業税部分の繰延税金資産の回収可能性の検討は「将来減算一時差異」、「繰越欠損金」それぞれにおいて、以下の順に行う(実報7号Q3)。 (ⅰ) 将来減算一時差異 (ⅱ) 繰越欠損金 なお、以上の②~④では将来減算一時差異等と将来加算一時差異との相殺について解説していないが、回収可能性の検討においては当然に考慮する(連結財務諸表でも同様)。 (3) 支払可能性の検討 将来加算一時差異は、将来の課税所得(税金)を増加させるものである。したがって、理論上は将来の税金の支払が見込まれる(支払可能性のある)将来加算一時差異に係る繰延税金負債のみを貸借対照表に計上するために、繰延税金負債について支払可能性の検討が必要である。 しかし、会計制度委員会報告第10号「個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針」(以下、「個別指針」という)では、事業休止等により、会社が清算するまでに明らかに将来加算一時差異を上回る損失が発生し、課税所得が発生しないことが合理的に見込まれる場合のみ支払可能性がないと判断することになっている(個別指針24)。そのため、事業休止等の状況でない限り、支払可能性はあるとし、会社が事業を行っている状況では支払可能性を検討せずに、(スケジューリング不能な将来加算一時差異も含む)全ての将来加算一時差異に係る繰延税金負債を貸借対照表に計上する。 【STEP5】では、税効果会計の会計処理について検討する。内容は、【第35回】「個別財務諸表における税効果会計(回収指針対応版)」の【STEP5】と同様である。 (1) 繰延税金資産及び繰延税金負債(純資産の部に直接計上され、課税所得の計算に含まれないその他有価証券評価差額金等に係る税効果を除く)の計上 繰延税金資産及び繰延税金負債(純資産の部に直接計上され、課税所得の計算に含まれないその他有価証券評価差額金等に係るものを除く)の増減額を「法人税等調整額」を相手勘定科目として計上する(個別指針2)。 繰延税金資産及び繰延税金負債(その他有価証券評価差額金に係るものを除く)の会計処理の例は以下のとおりである。 (※1) 当期末の繰延税金資産-前期末の繰延税金資産 (※2) 当期末の繰延税金負債-前期末の繰延税金負債 (2) 直接純資産の部に計上され、課税所得の計算に含まれないものに係る税効果- その他有価証券評価差額金の場合 その他有価証券評価差額金に係る税効果会計の会計処理(時価>取得価額の場合)は以下のとおりである。 (※) (時価-取得価額)× 法定実効税率 (3) 繰延税金資産と繰延税金負債の相殺 流動資産の繰延税金資産と流動負債の繰延税金負債は相殺して表示する。また、投資その他の資産の繰延税金資産と固定負債の繰延税金負債も相殺して表示する(個別指針30)。 財務諸表における税効果に関する注記は【STEP10】参照。 個別計算書類では、「繰延税金資産及び繰延税金負債(重要でないものを除く)の発生の主な原因」の注記が必要である。 《設例1》 A社グループは連結納税制度を当期末から採用した(承認手続の開始及び承認日は当期に属する)。A社グループの会社は以下の2社である(前期末は単体納税である)。 また、B社及び連結納税主体の一時差異等加減算前課税所得の見積り期間は5年とする。 A社及びB社の個別財務諸表における会計処理を検討する。 (1) 法定実効税率は以下のとおりである。なお、A社及びB社とも外形標準課税対象会社である。 (2) 一時差異は以下のとおりである。 (3) 個別財務諸表における前期末及び当期末の繰延税金資産の計上額は以下のとおりである。 ※小数点以下は四捨五入(必要に応じて数値の調整あり) ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (4) 会計処理及び繰延税金資産・法人税等調整額の金額は以下のとおりである。 〈A社〉 〈B社〉 連結納税における税効果の場合の連結財務諸表においても、連結財務諸表固有の一時差異の集計から始まる。詳細は、【第36回】「連結財務諸表における税効果会計(回収指針対応版)」の【STEP1】参照。 連結財務諸表固有の一時差異に係る繰延税金資産及び繰延税金負債も、個別財務諸表と同様に一時差異に法定実効税率を乗じて算定する。 ただし、未実現損益の消去に係る一時差異とそれ以外の一時差異で用いる法定実効税率は異なる。そのため、それぞれで法定実効税率を算定する。 (1) 未実現損益の消去以外の一時差異における法定実効税率 連結財務諸表固有の一時差異(未実現損益の消去に係る一時差異は除く)に適用する法定実効税率は【STEP2】と同様である。 なお、連結財務諸表を作成するにあたって、連結子会社の決算日が連結決算日と異なる場合で、かつ、当該連結子会社が連結決算日に正規の決算に準ずる合理的な手続により決算を行う場合、当該連結子会社の繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率は、「連結決算日」における税率による。 また、連結子会社の正規の決算を基礎として連結決算を行う場合、当該連結子会社の繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率は、「連結子会社の決算日」の税率による(税率指針9)。 (2) 未実現損益の消去に係る一時差異における法定実効税率 未実現損益の消去に係る一時差異に適用する法定実効税率の算定方法も【STEP2】と同様であるが、適用する法定実効税率の時点等が異なる。 未実現損益の消去による一時差異に適用する法定実効税率は、その取引の売却元に適用される法定実効税率が適用される。また、売却元での実際の課税関係は取引時に終了しているため、売却年度に適用された法定実効税率を用いる。そのため、連結決算日までに税率が改正されていても、改正後の法定実効税率は用いない(会計制度委員会報告第6号「連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針」(以下、「連結指針」という)13)。 回収可能性考慮前・繰延税金資産及び繰延税金負債を算定する。【STEP7】で未実現損益の消去に係る一時差異とそれ以外の一時差異で別々に法定実効税率を算定したため、【STEP6】で集計した一時差異に別々の法定実効税率を用いて算定する。 連結貸借対照表に計上できる繰延税金資産を算定する。しかし、未実現損益の消去に係る一時差異については、その検討方法が異なる。 そのため、納税会社ごとに未実現利益に係る一時差異とそれ以外の一時差異に分けて回収可能性を検討する必要がある。 また、連結納税のため、法人税部分と地方税部分にも分けて検討する必要がある。 (1) 未実現利益の消去以外の一時差異等に係る繰延税金資産及び繰延税金負債の検討 未実現利益の消去以外の一時差異に係る繰延税金資産(法人税部分及び地方税部分)について、その全額を貸借対照表に計上できるわけではなく、将来の課税所得(税金)を減少させる部分しか連結貸借対照表に計上できない。そこで、連結貸借対照表に計上できる繰延税金資産を算定するために、未実現利益の消去以外の一時差異に係る繰延税金資産と個別財務諸表上の繰延税金資産を合算し、「繰延税金資産の回収可能性」を検討する(連結指針41)。 具体的には、以下の①~③の検討が必要である。 ① 企業分類の決定 法人税部分の将来減算一時差異及び非特定連結欠損金個別帰属額における連結財務諸表の企業分類の決定は個別財務諸表と異なる。 (ⅰ) 将来減算一時差異(法人税部分) 将来減算一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性を判断する場合、連結所得で回収可能性が決まるため、連結納税主体の企業分類を用いる。 (ⅱ) 特定連結欠損金個別帰属額(法人税部分) 個別財務諸表と同様に連結納税主体と連結納税会社の例示区分のうち、より下位の例示区分を用いる。 (ⅲ) 非特定連結欠損金個別帰属額(法人税部分) 非特定連結欠損金個別帰属額も連結所得と相殺されることで解消するため、連結納税主体の企業分類を用いる。 (ⅳ) 地方税部分 個別財務諸表と同様に連結納税会社の企業分類をそのまま用いる。 以上の(ⅰ)から(ⅳ)をまとめると以下のとおりとなる。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ② 回収可能性の検討 (ⅰ) 一時差異等の解消のスケジューリング 上記【STEP4】の(2)①と同様である。 (ⅱ) 法人税部分の繰延税金資産の回収可能性の検討 連結財務諸表における法人税部分の繰延税金資産の回収可能性の検討は、【STEP4】の(2)②と基本的に同様だが、連結財務諸表では個別所得ではなく、連結所得をベースに回収可能性を検討するため、個別財務諸表における回収可能額が連結所得に基づいた回収可能額を超える場合がある。この場合、当該超過額に相当する繰延税金資産(=当該超過額×法人税の法定実効税率を乗じた金額)を修正する必要がある。 また、将来減算一時差異(法人税部分)は、連結納税主体の企業分類を用いるため、個別財務諸表と企業分類が異なることにより繰延税金資産を修正する場合がある。例えば、連結納税会社の企業分類が「2」で連結納税主体の企業分類が「3」(一時差異等加減算前課税所得の見積り期間は5年としている)の場合、将来減算一時差異(法人税部分)は個別財務諸表ではスケジューリング可能な一時差異等は全額繰延税金資産計上可能だが、連結財務諸表では、連結ベースの一時差異等加減算前課税所得の5年分を限度にしか繰延税金資産を計上できない。そのため修正が必要となる場合がある。 なお、非特定繰越欠損金個別帰属額(法人税部分)及び特定繰越欠損金個別帰属額(法人税部分)の企業分類は、連結財務諸表と個別財務諸表で変わりはない。 (ⅲ) 地方税部分の繰延税金資産の回収可能性の検討 地方税部分は、単体納税のため個別財務諸表で計上した繰延税金資産に連結財務諸表固有の一時差異に係る繰延税金資産を合算して、個別財務諸表と同様に回収可能性を検討する。 ③ 支払可能性の検討 繰延税金負債の支払可能性の検討の詳細については、上記【STEP4】参照。 (2) 未実現損益の消去に係る一時差異における繰延税金資産及び繰延税金負債の検討 未実現損益の消去に係る一時差異の税効果も法人税部分と地方税部分に分けて検討する。 未実現利益の消去の場合、法人税部分は、連結ベースの課税所得を限度に繰延税金資産を計上する。地方税部分は単体納税の場合と同様に単体の課税所得を限度に繰延税金資産を計上する。 一方、未実現損失の消去の場合、未実現損失を計上する前の連結ベースの課税所得を限度に繰延税金負債を計上する。地方税部分は単体納税の場合と同様に未実現損失を計上する前の単体の課税所得を限度に繰延税金負債を計上する(実報7号Q7)。 連結財務諸表における税効果会計の会計処理について検討する。ただし、会計処理自体は上記【STEP5】の(1)及び(2)と同様である。 (1) 繰延税金資産及び繰延税金負債(純資産の部に直接計上され、課税所得の計算に含まれないその他有価証券評価差額金等に係る税効果を除く)の計上又は取り崩し 繰延税金資産及び繰延税金負債(純資産の部に直接計上され、課税所得の計算に含まれないその他有価証券評価差額金等に係るものを除く)の増減額を「法人税等調整額」を相手勘定科目として計上する(個別指針2)。会計処理は【STEP5】と同様である。 (2) 直接純資産の部に計上され、課税所得の計算に含まれないものに係る税効果の計上又は取り崩し- その他有価証券評価差額金の場合 会計処理は【STEP5】と同様である。 (3) 繰延税金資産と繰延税金負債の相殺 同一納税主体ごとに繰延税金資産と流動負債の繰延税金負債を相殺して表示する。(連結指針42)。 そのため、連結納税における法人税は同一の納税主体であるため、親会社及び子会社の法人税に係る繰延税金資産と繰延税金負債を、流動項目と固定項目ごとに、相殺して表示する(実務対応報告第5号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その1)」Q17)。 一方、地方税に係る繰延税金資産と繰延税金負債は、各連結納税会社=納税主体となるため親会社と子会社、子会社間で相殺することはできない。 また、税効果会計においては、以下の注記が必要である(連結財務諸表規則15条の5)。 連結納税親会社の個別財務諸表における法人税に係る繰延税金資産の計上額が、連結財務諸表の繰延税金資産の計上額を大幅に上回る場合で、その上回る金額に重要性がある場合には、連結納税親会社の個別財務諸表に追加情報の注記が必要である(実報7号Q4)。 なお、連結計算書類では上記のような注記は必ずしも求められていない。 《設例2》 A社グループは連結納税制度を当期末から採用した(承認手続の開始及び承認日は当期に属する)。A社グループの会社は以下の2社である(前期末は単体納税である)。 また、B社及び連結納税主体の一時差異等加減算前課税所得の見積り期間は5年とする。 連結財務諸表における会計処理を検討する。 (1) 法定実効税率は以下のとおりである。 (2) 一時差異は以下のとおりである。なお、連結財務諸表固有の一時差異はない。 (3) 個別財務諸表及び連結財務諸表における繰延税金資産の計上額は以下のとおりである。 ※小数点以下は四捨五入(必要に応じて数値の調整あり) ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (4) 連結修正及び繰延税金資産・法人税等調整額の金額は以下のとおりである。 〈A社〉 〈B社〉 *  *  * 以上、10のステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 ▷個別財務諸表 ▷連結財務諸表 (了)

#No. 233(掲載号)
#西田 友洋
2017/08/31

民法(相続関係)等改正「追加試案」のポイント 【第1回】「中間試案パブリックコメント後の検討概要」

民法(相続関係)等改正「追加試案」のポイント 【第1回】 「中間試案パブリックコメント後の検討概要」   弁護士 阪本 敬幸   8月1日付けで「中間試案後に追加された民法(相続関係)等の改正に関する試案(追加試案)」が、パブリックコメントに付された。 本稿では、昨年実施された中間試案に対するパブリックコメント後の法制審議会における検討状況を概説し、次回は追加試案で新たに示された改正内容について紹介したい。   [1] 中間試案の決定及びパブリックコメント概要 民法(相続関係)等の改正については、高齢化社会の進展や家族の在り方に関する国民意識の変化等の社会情勢に鑑み、配偶者の死亡により残された他方配偶者の生活への配慮等の観点から見直しが必要であると考えられ、平成27年2月に法務大臣による諮問がなされた。 これを受け、法制審議会民法(相続関係)部会(以下、「部会」という)が調査審議を重ね、平成28年6月に中間試案が決定され、平成28年7月から9月まで中間試案に関するパブリックコメント手続が取られた。 中間試案及びパブリックコメントの概要は以下の通りである。 〈中間試案及びパブリックコメントの概要〉   [2] 中間試案決定後の状況 1 配偶者の相続分の見直しについて 上記の通り、「② 遺産分割に関する見直し」(ⅰ)配偶者の相続分の見直し(相続分引き上げ)について、パブリックコメントで反対意見が多数を占めた。これを受けた部会では、配偶者の保護の必要性は認められるとして、異なる方策での配偶者保護が検討された(詳しくは次回参照)。 2 可分債権の遺産分割における取り扱いの変更について 「② 遺産分割に関する見直し」(ⅱ)可分債権の遺産分割における取り扱いの変更(遺産分割の対象とする)について、パブリックコメント手続終了後、預貯金債権は相続により当然分割されずに遺産分割の対象に含まれるとする平成28年12月19日最高裁大法廷決定(以下、「本決定」という)が出された。 本決定により、遺産分割が終了するまでの間、預貯金債権の行使には共同相続人全員の同意が必要となったが、遺産分割前に預貯金を払い戻す必要がある場合も考えられるところである(被相続人の債務弁済や、被相続人から扶養を受けていた相続人の生活費支出など)。 このような場合に、「共同相続人全員の同意が得られないことにより預貯金の払い戻しを受けられない」という不都合が生じることを回避するため、家事事件手続法第200条2項の仮分割の仮処分を利用することが考えられるということが、本決定の補足意見において指摘された。 なお、本決定についての詳細は、本誌掲載の下記拙稿を参照されたい。 3 遺産の一部分割の明確化について 「② 遺産分割に関する見直し」(ⅲ)遺産の一部分割の明確化について、パブリックコメントでは、「一部分割の審判の要件を明確化すること」に関して賛成が多数であった。 しかしその後、部会での更なる検討の結果、中間試案における一部分割に関する提案内容について異議があり、中間試案とは異なる観点から見直すべきとの議論があった。 4 相続開始後の共同相続人による財産処分について 中間試案後に本決定が出されたことにより、部会で以下のような議論がなされた。 すなわち、本決定が出されたことにより、共同相続人の1人が、単独で、相続開始後遺産分割前に預貯金債権を処分することはできなくなった。しかし現在も往々にして見られるように、共同相続人の1人が、金融機関に被相続人死亡の事実を伝えないまま、単独で預貯金を引き出し、その結果、取得する遺産の額が増えて不公平が生じることも考えられるところである。 本決定以前は、預貯金債権は当然分割されると考えられており、当然分割により相続人が取得した範囲では、このような預貯金の引き出しも認められていたが、本決定が出された以上、共同相続人による遺産分割前の財産処分について何らかの規制が検討されるべきである。 このため、中間試案においては検討されていなかったが、相続開始後の共同相続人による財産処分についての方策が検討されることとなった。 5 遺留分制度に関する見直しについて 「④ 遺留分制度に関する見直し」について、中間試案では、遺留分権利者が権利行使した場合、原則として金銭債権が発生するとされ、パブリックコメントでもこの点については賛成が多数を占めた。 もっとも、受遺者又は受贈者による金銭交付が困難な場合も生じ得ることから、受遺者又は受贈者が、金銭交付に代わる現物給付を求めることができる制度を検討することとなった。 6 追加試案の作成について 上記のような中間試案決定後の状況を受けて、中間試案の一部(上記[2]1ないし5に記載した点。上記[1]の①③⑤については大きな変更はない)が見直されることとなり、平成29年7月18日、部会が追加試案を取りまとめ、冒頭に述べたとおり、パブリックコメントの手続が取られることとなった。 *  *  * 次回は追加試案で新たに示された改正内容を紹介したい。 (了)

#No. 233(掲載号)
#阪本 敬幸
2017/08/31

家族信託による新しい相続・資産承継対策 【第20回】「家族信託の活用事例〈不動産編①〉(将来認知症になり自宅を売却できない場合に備えて、施設入居時に子へ信託する事例)」

家族信託による 新しい相続・資産承継対策 【第20回】 「家族信託の活用事例〈不動産編①〉 (将来認知症になり自宅を売却できない場合に備えて、施設入居時に子へ信託する事例)」   弁護士 荒木 俊和   今回から「家族信託の活用事例〈不動産編〉」として、不動産を信託財産とする家族信託の活用事例を紹介する。第1回目は、将来認知症になり自宅の土地建物を売却できなくなる場合に備えて、施設入居時に子供へ信託しておく事例を解説する。 - 相談事例 - 私の母は、父に先立たれたあと、ずっと札幌で一人暮らしをしていました。数年前、母名義の実家はそのままにして、高齢者施設に入居して元気に過ごしていますが、年齢だけに認知症が心配です。 実家の方は、私が東京から年に2度ほど様子を見に来ていますが、結構な経済的負担になっています。 母の施設費用も少し足りなくなってきたので、いずれは実家を売却して施設費用にあてたいのですが・・・   1 家族信託活用のポイント (1) 認知症になった場合の不動産売買の可否 これまで解説してきたとおり、認知症になり意思能力を失ったと判断されると、売買を含む法律行為ができなくなる。そのため、自宅不動産を所有したまま認知症になってしまった場合には、売買が不可能となる。 この場合、成年後見開始の審判を申し立て法定後見人に売却してもらう余地はあるが、居住用不動産の売買については家庭裁判所の許可が必要であるなど(民法第859条の3)、手続が煩雑である。 (2) 施設費用の支払い 一方で、老後に必要な資金に関し、十分な見積りを行っている高齢者は多くない。 特に平均寿命の伸長とともに介護が必要な期間も長くなる傾向にあり、満足の行く水準の生活を行おうとすれば、当初考えていたよりも多くの介護施設費用が発生する場合もある。 このような場合に、自宅不動産を売却して資金を作る必要性が顕在化する。 (3) 施設入居時に自宅を放置する理由 高齢者施設への入居にあたり自宅不動産の売却を併せて進めていれば、認知症によって売買できなくなるというリスクを回避できるが、自宅不動産の売却に全く着手していないケースも多く存在する。 その1つの理由として、長年住んできた自宅には大量の荷物があり、その片付けが容易ではないということが挙げられる。しかも、高齢者施設に入居する必要性がある高齢者が自ら対応しなければならない部分が大きく、体力、気力面での衰えがネックになる。 もう1つの理由は、自宅について思い入れがあり、簡単に手放したくないという考えが残っていることにある。自宅不動産は単に財産的な意味での「物」としての意味を持つだけではなく、想いの詰まった「場」としての意味もある。 このため、高齢者施設に移ったとしても、所有者としては「もう少しこのままにしておきたい」と考えることも多く、そうしているうちにいつしか認知症になり、売買ができなくなるケースが散見される。   2 家族信託設定の手順 (1) 相談 家族信託設定の端緒は、所有者本人又は家族が弁護士、司法書士等の専門家に相談を持ち込むことから始まる。本人が相談を持ち込む場合には比較的スムーズに進みやすいが、子などの家族が相談を持ち込む場合には、家族だけがやる気で本人が必ずしも乗り気ではない場合もあり、早い段階で本人の意向を確認する必要がある。 また、家族から持ち込まれた場合で既に本人に認知症の疑いがある場合には、早めに本人と面会して意思能力があることを確認しておくことが望ましい。 なお、相談を受ける段階で家族信託設定の費用について問い合わせを受けることが多いが、財産価値で手数料を設定しているのであれば不動産の固定資産税評価額を把握しておく必要があるため、固定資産税・都市計画税納税通知書を持参してもらうことが簡便であろう。 (2) スキームの検討 自宅不動産を信託する場合には論点もさほど多くないと思われるが、「①受託者を誰にするか」という点、及び、「②帰属権利者を誰にするか」という点については、所有者から家族信託に関する十分な理解を得たうえで決定してもらう必要がある。 ①受託者の選定については、(1)誠実に信託事務を行うことができるか、(2)十分な事務処理能力があるか、(3)健康上の不安がないか、(4)委託者と場所的に近いところにいるか、等の観点から検討する必要がある。また、受託者が信託事務を継続できなくなった場合に、二次受託者を設定しておくかという点についても併せて検討が必要である(【第6回】及び【第18回】を参照)。 また、②帰属権利者の選定は必須ではないが、委託者兼受益者の死亡によって信託が終了するとした場合には、遺産分割協議の要否や遺留分減殺請求の問題を孕むため、予め決定しておくのが望ましいといえる(【第19回】を参照)。 受託者は基本的に無報酬とされるため、信託終了まで信託事務を行ってきた実質的な報酬の意味合いで、受託者を帰属権利者とするケースも多い。また、受託者は基本的に信託財産の管理処分を行う一切の権限を有するものとされるが、実際に売却する際、スムーズに進められるよう受託者に処分権限があることを契約書上明記することが望ましいとされている。 場合によっては、売却にあたって信託監督人の同意等を要するかどうかについても検討を要する。 (3) 契約締結 信託の実行に際しては、委託者と受託者との間で信託契約の締結を行う必要がある。委託者の健康状態にもよるが、移動の便を考えると、委託者の住所地又は委託者が行きやすい場所で調印を実施するケースが多い。 なお、登記の必要書類を合わせると、署名押印をしなければならない書類がかなり多くなるため、委託者の負担を考えて信託契約書における住所は予め印字しておき、署名と押印のみで足りるようにしておくことが望ましい。 また公正証書で作成する場合には、公証人との事前の調整を行うなど、スムーズに進められるよう配慮しておく必要がある。 (4) 登記 不動産を信託する場合には、①委託者から受託者への所有権移転登記、②信託の登記が必要となる。 信託契約の作成者と登記申請を行う者が異なる場合には、信託目録の記載内容を信託契約の内容と一致させるべく、予め調整しておく必要がある。 また、登記に必要な登録免許税の金額等について、予め委託者に伝えておくことも重要である。   3 信託設定後 信託を設定した後、自宅利用をめぐる状況は特に変わらないことが多いと思われるが、売却の必要が生じたときは、受託者において売却手続を進めることになる。 売却しないまま信託の終了原因が生じたときには、受託者において帰属権利者への承継手続を行うこととなる。 (了)

#No. 233(掲載号)
#荒木 俊和
2017/08/31

《速報解説》会計士協会、「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示についての検討」報告書を公表~会社法・金商法における一体的開示のメリット、監査上の論点・留意点を整理~

《速報解説》 会計士協会、「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示についての検討」報告書を公表 ~会社法・金商法における一体的開示のメリット、監査上の論点・留意点を整理~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成29年8月25日、日本公認会計士協会は「開示・監査制度一元化検討プロジェクトチームによる報告「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示についての検討」」を公表した。 日本公認会計士協会は、「開示・監査制度一元化検討プロジェクトチームによる報告「開示・監査制度の在り方に関する提言-会社法と金融商品取引法における開示・監査制度の一元化に向けての考察-」」(平成27年11月4日)を公表しているが、その後の「日本再興戦略2016-第4次産業革命に向けて-」(平成28年6月2日)、「未来投資戦略2017-Society5.0の実現に向けた改革-」(平成29年6月9日)などを受けて検討したものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 本報告は、開示書類全体を検討対象としており、「一元化」とは、会社法と金融商品取引法の両方の制度目的を満たす一組の開示書類とすることを指向するものとしている(4ページ)。 一方、「金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告-建設的な対話の促進に向けて-」などでいう「一体的開示」は、企業が任意にオプションとして選択できる方法という前提に立ち、まずは、会社法の事業報告等と金融商品取引法の有価証券報告書の記載内容の整理・共通化・合理化を図り、効果的、効率的な開示を目指すことである(4ページ)。 本報告では、「事業報告・計算書類(以下「事業報告等」という)と有価証券報告書の一体的開示」(以下「一体的開示」という)について、会社法と金融商品取引法の開示及び監査の一元化の実現に向けて着実に進んでいくための1つの施策となることを期待している(1ページ、4ページ)。 本報告の内容は次のとおりである。   Ⅲ 主な検討結果 事業報告等と有価証券報告書の一体的開示の取組により、会社法の事業報告等と金融商品取引法の有価証券報告書の記載内容が整理・共通化・合理化されれば、作成者及び監査人にとっては開示書類の作成及び監査の負担を軽減でき、株主・投資家にとっては詳細な開示書類を株主総会前に入手できる可能性が高まるなどの利点がある。 一体的開示の方法としては、次の2つの方法が考えられる。 ②の方法で、一組の開示書類として開示することになれば、作成者及び監査人にとっては、開示書類の作成及び監査の負担がより軽減され、株主・投資家にとっては、一度に必要な情報がまとめて入手でき、より利便性が高まるなどの利点がある。 (了)

#No. 232(掲載号)
#阿部 光成
2017/08/25

プロフェッションジャーナル No.232が公開されました!~今週のお薦め記事~

2017年8月24日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.232を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2017/08/24

山本守之の法人税“一刀両断” 【第38回】「法解釈の基礎を考える」

山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第38回】 「法解釈の基礎を考える」   税理士 山本 守之     Ⅰ 国税通則法制定時の考え方 1 国税通則法の考え方 現行の国税通則法は昭和37年4月2日に制定されたものです。この基礎となったものが、税制調査会から昭和36年7月5日に出された同法の制定に関する答申です。 この答申によると、その制度の趣旨を「・・・現行のこれらの法律の規定を総合的にみると、そこには、租税に関する基本的な法律構成に関する規定が欠けているし、また、各税に共通する事柄でありながら、規定の不備不統一ないしは重複等がかなりみられるのであって、そのため、税法についての統一的な理解を困難にしたり、あるいは解釈上の疑義を生じる結果となっているものが相当みられることは否定できないと思われる。」として、そのような例を6つ挙げています。 さらに「・・・従来から内容について問題のあった諸点について、これまで毎年のように行なわれてきた税制改正が各税の課税実体に関する部分に重点がおかれたため、共通的な事項でしかも負担に関係するものでありながらその検討や改正が見送られてきたと思われる事情を考慮して・・・」として、これらについて所要の改正をする必要を強調しています。 筆者にとって興味があるのは、税法と私法の関係やそのあり方にふれているところです。 答申の中では「税法と私法との関係その他税法の解釈・適用に関する基本的なあり方について規定が不充分なため、解釈上疑義を生じているものがある」として「税法においては、私法上許された形式を濫用することにより、租税負担を不当に回避し、又は軽減することは許されるべきではない」としているので、「租税回避行為は課税上これを否認することができる旨の規定を国税通則法に設けるものとする」として要求しています。 そもそも税法解釈に際して、私法との関係は常に多くの問題を抱えているため、当時係争中のものも少なくなかったのです。この問題には対立する2つの意見が存在します。 1つ目は、国税庁、旧大蔵省及び一部の学者の間にみられる意見(A意見)で、「税法には税法の独自性がある。したがって、税法解釈はあくまで課税目的に従って判断すべきであり、課税目的に反する民事法上の考え方は否認してよい」とする考え方です。 2つ目は、法務省の一部及び地裁の判事に多くみられる意見(B意見)で、「公法は私法上の権利義務の立場に立って存在するものであり、税法は民事法上の秩序の上に立って存在するのであるから、税法解釈をその課税目的によって解釈することは許されるべきではない」とする考え方です。 2 A意見として A意見としては、「法人税法の総益金、総損金の意義については、民法の法理に偏することなく、経済上、会計上の見解から合目的に判断解釈すべきものである」とする長野地裁判決昭和27年10月21日(TAINSコード:Z011-0139)があります。 3 B意見として B意見としては、当時大きな話題となった三菱殖産事件、東京高裁判決昭和32年9月30日(TAINSコード:Z025-0526)があります。 これは、株主に対して配付した記念品を旧所得税法9条1項2号の配当所得であるとして課税したことに対して、配当は商法に規定するもの以外にはあり得ない、税法の解釈によって勝手に配当と決めることは許されないとしたものです。 国税通則法小委員会の審議のまとめによると、「税法において私法の形式を借用又は濫用することにより租税負担を不当に回避し又は軽減することは許さるべきではない・・・」としています。この規定の考え方をはっきり表しているものと言えるでしょう。 4 ドイツ租税調整法との関係について 1934年、ヒトラーが租税法を自己の世界観に合わせるために制定したドイツ租税調整法は、その6条において「納税義務は、民法の形式又は形成可能性を濫用することによって回避し、又は軽減することはできない。」、「濫用が存在する場合においては、租税は、経済上の行為・事実及び諸関係に適合する法的形態に即して徴収されるべき額において徴収しなければならない。」と規定しています。 国税通則法とドイツ租税調整法が、全く同じ趣旨の規定をし、又は規定をしようとしていたことに、私たちは注目しなければなりません。 不当な租税回避が民事法の形式を濫用して行われ、これを防止することが目的であるとすれば、具体的な禁止規定を設けるべきであって、税法解釈の基本的なあり方として規定することはどうでしょうか。 当時筆者は、「通達行政が租税法律主義に反するとして問題になっていたが、この通則法が制定されるとすれば、ますます租税解釈に問題が起きることはないだろうか。」と批判していました。租税解釈を通達において強制することはドイツ租税調整法においてすら固く禁じています。通達の法源性についてもわが国ではよく争われますが、ライヒ租税法においてはこれを否定しています。   Ⅱ 行為計算否認規定上の関係 1 通則法制定時の考え方と民間の反応 同族会社等の行為計算否認規定についても、従来(国税通則法制定前)までは、結果的にドイツ租税調整法第6条と同じものでしたが、制定答申における次の部分は、その範囲を拡げる内容になっていました。 なお、この税制調査会の答申によって国税通則法そのものは立法されましたが、上記の実質課税の原則等に関する規定については、「税務職員に自由裁量の余地を与えるものであって、徴税強化につながるものであるとの批判や、ナチスドイツ時代に公布されたドイツ租税調整法をわが国に移入して、国家主義的な徴税理念を樹立することになるとの批判もあった。」こと等によって立法されなかったのです。 筆者は当時(昭和37年)、国税通則法の制定について反対運動に参加していました。 2 2つの大きな判決 行為計算否認に関する最近の2つの大きな判決として、まず、最高裁が平成28年2月29日に課税当局の行った「組織再編成に係る行為計算否認」(法132の2)の更正処分を容認したヤフー事件(国側勝訴)があります。 一方、東京高裁が平成27年3月25日に課税庁の行った「同族会社等の行為計算否認」を取り消し、法人税法132条の更正処分を否認したIBM事件(納税者側勝訴) があります(平成28年2月18日最高裁不受理決定)。 この2つの事件は、包括的否認規定を適用した典型的な事件です。 3 ヤフー事件 ヤフー事件の最高裁判決は、納税者(ヤフー)側の上告の棄却です。 控訴審判決を維持していることからみれば上告不受理という方法も考えられましたが、第一審、控訴審に対して学者や法曹界から批判的な意見が多く、法人税法132条の2の不当な要件の意義及び必要性について最高裁の明示的な判断が求められていたので、上告を受理して判決を下したのです。 (1) 不当性の要件 納税者(ヤフー)は経済的合理性を示していましたが、一審と控訴審では次のように「趣旨的基準」を示していました。 最高裁判決は次のように、立法趣旨からみる「制度濫用基準」によっていました。 このような考え方は、最高裁調査官の解説によるものですが、考え方としては裁判官に示してほしかったです。 (2) 制度濫用基準 最高裁判決は次のように判示しています。 制度濫用を判断するにあたっての判断の観点として、①税負担を減少させることを意図したものであって、②組織再編税制に係る規定の本来の趣旨及び目的から逸脱する態様でその適用を受けるもの又は逃れるものであることをその要素としています。 最高裁判決の意義は、本規定における「不当性の要件」を明らかにしたといえます。 4 IBM事件の判示 IBM事件の控訴審(東京高裁平成27年3月25日)における判示は、次のようなものでした。 5 判示の考え方 国は、納税者(控訴人)の取引は通常の行為とは異なるとしながら、通常の取引のあり方について立証していません。 「独立当事者間の通常の取引と異なる」ことを主張立証しさえすれば、具体的な意味で「経済的合理性を欠く」ことを主張立証する必要がなくなるというのであれば、税務署長は、「純経済人の行為又は計算として不合理、不自然なもの」という不当性を基礎付ける事実の立証負担なしに不当性を認定し得ることになるのです。 しかし、租税回避行為の是正という法人税法132条1項の趣旨等に照らしても、そのような税務署長の立証負担を軽減するような解釈は許されません。また、何が非同族会社であるがゆえになし得ない行為に当たるかを一義的に判断することは困難ですから、「独立当事者間の通常の取引と異なる」という基準は、最高裁昭和53年4月21日判決(TAINSコード:Z101-4179)がいう「客観的」な基準とはいい難いのです。 仮に、わずかでも独立当事者間の通常の取引と異なるところがあれば、取引における取引価格その他の経済条件が具体的に経済的合理性を欠くか否かの検討を要せず、また、その差異がどれほど重要なものであるかを吟味せずとも、同項の適用が可能になるとすれば、同項の適用範囲を過度に拡大することになります。 そのような解釈は、課税庁の立証負担を不当に緩和し、否認されるべきでない行為を適用対象とするもので、租税法律主義に違反するのです。 (了)

#No. 232(掲載号)
#山本 守之
2017/08/24

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第1回】

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第1回】   公認会計士 佐藤 信祐   《序 章》 1 はじめに 平成13年度に組織再編税制が導入され、その後も数々の改正が行われた。特に大きな改正は、平成18年度の会社法対応のための改正、平成22年度のグループ法人税制、平成29年度のスピンオフ税制であったと考えられる。平成29年度のスピンオフ税制は、それ自体は大きな改正ではなかったが、組織再編税制の大幅な見直しもなされていることから、今まで指摘されてきた問題点(※1)の多くが改正されており、組織再編税制も一通り完成したということも言える。 (※1) この点については、本連載を通じて解説していきたい。 税務専門家が法律の専門家であると言われるようになったのは、かなり最近のことであり、かつては、著名な国税OBの意見を参考にしながら実務を行うという慣習があった。これに対し、平成10年度以降の法人税法の改正は、なるべく条文に明確に記載しようとする財務省主税局の意図が感じられ、条文にかなり細かく書かれるようになった。そのため、条文の形式的な解釈が一時的に強調された事実があったように思われ、組織再編税制はその顕著な例として挙げられる。そして、租税法律主義が強く意識されるようになった時期とも重なるため、どのような著名な先生の意見であったとしても、国税局や裁判所が同様の意見を採用するとは言えないようになった時期とも重なっている。 その一方で、ヤフー・IDCF事件(平成28年2月29日最高裁判決TAINSコードZ888-1983、1984)では、制度の濫用論が唱えられ、組織再編税制の制度趣旨を理解しておく必要性が言われるようになった。しかしながら、前述のように、どのような著名な先生の意見であったとしても、国税局や裁判所が同様の意見を採用するとは言えない時代になっているため、どのように制度趣旨を理解するのかが問題となる。その顕著な例として、ヤフー・IDCF事件に対する最高裁判所調査官解説が挙げられる(※2)。なぜなら、その内容が、組織再編税制の立案担当者であり、国税局側で鑑定意見書を書かれた朝長英樹税理士の解説(※3)と異なっていることから、今後、立案担当者の意見ですら、制度趣旨として認められないことがあり得るからである。 (※2) 徳地淳・林史高「判解」ジュリスト1497号80-98頁(平成28年)。 (※3) 朝長英樹「検証・ヤフー・IDCF事件は「租税回避」の捉え方をどう変えたか」T&Amaster634号4-13頁(平成28年)など。 これは、学問の世界では、決して衝撃的なことではない。制度趣旨を語るうえで、必ず一次文献を確認するというのは基本中の基本である。なぜなら、立案担当者であったとしても、国税庁での情報に精通していた者であったとしても、記憶違いが生じることがあり得るからである。ましてや、個別の案件ともなれば、個人的な意見になってしまう余地もあるため、退官後に語られた意見は、組織の意見と異なる可能性があることは言うまでもない。さらに、財務省主税局が立案時には想定していなかったことが、その後の運用で、国税庁が明確な解釈を打ち出すということも珍しいことではない。これは、租税法の世界に限らず、あらゆる法律の分野においてあり得ることである。 そして、制度趣旨を語るうえで留意すべきこととして、①著名な先生であっても、その意見を鵜吞みにしない、②税務専門家同士のディスカッションに頼らない、という点が挙げられる。このうち、①については前述の通りであり、必ず一次文献を確認する必要がある。次に、②税務専門家同士のディスカッションは、租税法の理解を深めるうえで貴重ではあるが、「それなりの答え」が出てしまう危険性があるという問題点が挙げられる。「それなりの答え」が出てしまうことから、仮に間違っていたとしても、それが正しいものと勘違いしてしまうからである。 例えば、100人の税理士のうち100人がその通りと思えるようなものであればともかくとして、「制度趣旨を考えると」と書かれていながら、明らかに間違った見解が示されているものも少なくない。このようなことを避けるためにも、税務専門家同士のディスカッションで「それなりの答え」が出たとしても、必ず一次文献を確認し、本当に正しかったのかどうかを検証する必要がある。 本連載では、このような理由から、なるべく該当する条文ができた頃の財務省主税局又は国税庁から公表された資料に基づいて解説をしていくことを心掛けたい。また、賢明な読者は、本連載を鵜吞みにせず、常に一次文献を確認する必要性にも気づかれたと思う。注釈に入れた文献を確認することで、組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨に対する理解を深めることができると思われる。   2 組織再編税制の読み方 組織再編税制を理解するためには、まずは会社法を理解する必要がある。 例えば、2社以上の法人を被合併法人とする吸収合併における税制適格要件の判定に対して、文書回答事例「三社合併における適格判定について(照会)」が公表されているが、会社法上、2社以上の法人を被合併法人とする吸収合併は、複数の合併が同時に行われたと考えることがその根拠となっている。さらに、会計と税務が分かれつつあるとは言え、企業結合会計、事業分離等会計が組織再編税制に全く影響を与えていないとは言い切れない。 そのため、組織再編税制を深く理解するためには、企業会計と会社法も同時に深く理解する必要がある。 そして、組織再編税制は、条文が極めて精緻に作られているという特徴がある。したがって、まずは条文の形式的な解釈を理解する必要がある。その一方で、「おおむね」「見込まれる」といった不確定概念が多いのも組織再編税制の特徴のひとつである。 このような不確定概念については、組織再編税制が制定された当時の資料を確認することで、その解釈や制度趣旨を理解するだけでなく、その後の実務の状況について、公表されている国税局や税務専門家の見解を確認する必要がある。 このように、制度趣旨を理解することが重要であることは言うまでもないが、制度趣旨への理解を強調し過ぎるあまり、条文の形式的な解釈を軽視することも問題である。なぜなら、「こういうつもりで作った」と財務省主税局が強く主張したとしても、実際の条文がそうなっていないのであれば、それを実務で受け入れることはできないからである。 すなわち、条文の形式的な解釈を理解することと、制度趣旨を理解することは、いずれも重要であり、片方だけが極端に強調されるべきではない。本連載では、そのような立場から、一次文献を確認することで制度趣旨を研究しながらも、必ず条文を確認するという姿勢で臨みたい。 *   *   * 次回以降では、組織再編税制が制定される前に財務省から公表された資料に基づいて、組織再編税制制定の背景を探っていく予定である。 (了)

#No. 232(掲載号)
#佐藤 信祐
2017/08/24
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