経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第108回】 連結会計⑩ 「関連会社の債務超過」 仰星監査法人 公認会計士 田中 良亮 〈事例による解説〉 〈会計処理〉(単位:百万円) 1 ×2年度の仕訳 ×2年3月31日(決算日)の連結仕訳 ×2年度のX社が計上した当期純損失50百万円(当社持分△25百万円)は投資額の範囲内であるため、当社は持分に応じて負担します。 2 ×3年度の仕訳 (1) ×2年4月1日(期首利益剰余金の計上)の連結仕訳 (2) ×2年9月1日(期中)の個別仕訳 (3) ×3年3月31日(決算日)の連結仕訳 ① 当期純損失の取り込み(投資額による負担) ×3年度にX社が当期純損失80百万円を計上したことにより、×2年度からの損失額を累計すると130百万円(当社持分65百万円)となり、投資額50百万円を上回るため、投資額を上限として当期純損失を負担します。 ② 投資額を上回る損失の負担 当社はX社に対して運転資金の貸付を行っており、X社が事業を継続していくうえで重要な資金源泉となっていることが考えられます。X社の債務超過額は、確定債務であることから、連結上は見積要素で計上される引当金勘定ではなく、債権を直接減額することになります。 ③ ×3年度の連結仕訳集計 3 ×4年度の仕訳 (1) ×3年4月1日(期首利益剰余金の計上)の連結仕訳 (2) ×4年3月31日(決算日)の連結仕訳 ① 当期純損失の取り込み(投資額による負担) X社は×4年度において80百万円の当期純損失を計上していますが、当社は×3年度までに投資額全額分を負担しているため、投資額による負担はありません。 ② 投資額を上回る損失の負担 ×3年度と同様に、投資額を上回る損失については、貸付金の減額を行います。ただし、X社は当社とZ社からの出資額100百万円及び貸付金80百万円の合計額180百万円を超える累計損失210百万円を計上しています。当社はX社の銀行借入金について債務保証を行っているため、投資額と貸付金を超える負担額について「持分法適用に伴う負債」を計上する必要があります。 〈会計処理の解説〉 前回(連結会計⑨)で解説した通り、会社法上は株主有限責任の原則の見地から株主は出資額以上の責任を負いません。 しかしながら、今回の事例のように、持分法適用関連会社に対して運転資金等の貸付金がある場合には、X社の債務超過について、持分比率に応じて当社及びZ社が事実上負担することになると考えられるため、貸付金を直接減額することになります。 また、投資額や貸付金額を上回る債務超過が発生し、かつ、X社の外部からの借入金について債務保証等を行っている場合にも、持分比率に応じて当社及びZ社が事実上負担する可能性が極めて高いと考えられるため、連結上は「持分法適用に伴う負債」を認識します。 さらに、Z社に資力がなく、当社のみが債務保証を行った場合には、その状況に応じて 「持分法適用に伴う負債」の積み増しが必要になることも考えられます。 (了) ※3月は圧縮記帳を取り上げます。
改正労働者派遣法への実務対応 《派遣先企業編》 ~派遣社員を受け入れている企業は「いつまでに」「何をすべきか」~ 【第5回】 (最終回) 「研修の実施等」 特定社会保険労務士 岩楯 めぐみ 最終回となる【第5回】は、研修の実施等、その他の対応について検討する。 1 研修の実施 一般的に、人事部門の担当者は労働者派遣法について改正内容も含めて把握していることが多いが、派遣労働者を受け入れている部署の社員は労働者派遣法の内容を知らないことが多い。しかし、実際に派遣労働者に指揮命令を行うのは、受け入れている部署の社員である。 そこで、受け入れている部署の社員にも労働者派遣法の概要を理解してもらうため、改正のタイミングを活用して社内研修を実施することをおすすめしたい。 特に、「派遣先責任者」、「派遣労働者への指揮命令者」及び「派遣労働者の苦情の申出を受ける者」として労働者派遣契約に氏名が記載されている者には、研修を通じて派遣先で実施すべき事項の概要を把握してもらう必要があるだろう。 研修の方法としては、関係者を対象にした集合研修で人事部門から労働者派遣法の概要等を説明する方法が考えられるが、集合研修を行うことが難しい場合は、下記のような厚生労働省が作成した労働者派遣法関連のパンフレットや指針等を共有することによって、各自で勉強してもらうことから始めてもよいだろう。 なお、今回の改正により、派遣先が適切かつ迅速に処理を図る必要がある苦情の内容にセクシュアルハラスメント及びパワーハラスメントが含まれる点が明示され、指針にその具体例が記載されたので、合わせて確認する機会を設けていただくとよい。 2 派遣会社の扱い 派遣事業は、その健全化を図るため、改正前にあった2つの区分のうち特定労働者派遣事業区分が撤廃され、すべて許可制となっている。 このため、特定労働者派遣事業を行っていた場合は、今後新たに資産要件等の許可基準を満たさなければならず、特に中小の派遣元に大きな影響を与える内容となっている。 経過措置により、改正後3年間は許可基準を満たさなくても引き続き派遣事業を継続することができるが、許可基準を満たすことが難しい場合は、経過措置後は派遣事業からの撤退を余儀なくされる。 そこで、派遣先としては、現在取引がある派遣元の派遣事業の種類を確認した上で、(旧)特定労働者派遣事業の派遣元に対して、今回の法改正を受けた今後の対応方針について、確認しておく必要がある。その上で、派遣元から撤退の方針が示された場合は、別の派遣元との取引や、SEの場合等、派遣労働者が従事する業務自体の外注等の検討が必要となる。 派遣事業を今後継続するか否かについてはすぐに結論が出るものではなく、派遣元への確認は早急に行わなければならないものではないが、会社によっては業務に支障を来す場合も考えられるため、早めの対応が望まれる。 3 派遣社員の位置づけ 今回の改正により、「派遣就業は臨時的かつ一時的なものであることを原則とする」ことが法律上明記されたが、この改正を契機に、派遣社員の位置づけを社内で明確にすることをおすすめしたい。 「正社員」「契約社員」「パート社員」「嘱託社員」等、会社により呼称は異なるものの複数の社員区分があると思われるが、それぞれの社員区分について、役割や職務、労働条件等の違いは明確になっているだろうか。 自社において最適な人材配置を行うためには、それぞれの違いを明確化する必要があり、派遣社員もその1つとして位置づけ、戦略的に活用していくことが重要と考える。 今回の改正により、意見聴取の手続きを行うことで、実質的に期限なく同一の事業所で派遣労働者の受け入れが可能となったが、派遣社員を受け入れ続けることが自社にとって最適なのか、この機会に改めて長期的な視点で検討していただきたい。 * * * 以上、5回にわたり派遣先企業が対応すべき事項について検討してきた。 早急に対応すべき事項だけでなく、今後時間をかけて検討すべき事項も含まれているため、早い段階で自社において実施すべき事項の棚卸を行った上で、計画的に対応していただきたい。 (連載了)
2016年株主総会における実務対応のポイント 三井住友信託銀行 証券代行コンサルティング部 担当部長 斎藤 誠 2015年5月に改正会社法が施行され、同年6月にコーポレートガバナンス・コードの適用が開始された。2016年株主総会はこれらの改正対応については2年目となって、さらなるブラッシュアップが望まれることとなる。むしろ改正会社法やコーポレートガバナンス・コード対応は今年が本番といえるであろう。 本稿では、これらを踏まえた2016年株主総会の実務対応について解説する。 なお、文中意見にわたる部分は、筆者の私見であることをあらかじめお断り申し上げる。 1 招集通知について 事業報告および株主総会参考書類を含めた招集通知の作成は、株主総会準備のかなりのウェイトを占めている。個人株主および機関投資家への情報提供のツールとして招集通知の重要性は近年改めて注目されている。 コーポレートガバナンス・コード(以下、コードという)においても、【原則1-2.株主総会における権利行使】を中心に招集通知による情報提供も含めた株主の権利行使についての環境整備に留意すべきこととされており、継続的な対応が必要となっている。コードへの対応に関して今年の招集通知に関する主なポイントは下記のとおりである。 改正会社法も踏まえた招集通知等の具体的な記載事項については以下に解説するが、全国株懇連合会や日本経済団体連合会がひな形を作成しており、それらも参照されたい。 2 事業報告の作成について 改正会社法による事業報告の主な記載事項の変更は以下のとおりである。3月決算会社は経過措置により、概ね今年からの適用となるため注意が必要である。 3 株主総会参考書類の作成について 株主総会参考書類に関しては、主に社外取締役・社外監査役の要件の厳格化等に伴う改正事項がある。主な改正事項については、以下のとおり。 なお、【原則3-1.情報開示の充実】において、経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行う際の、個々の選任・指名についての説明を開示すべきとされている。役員選任議案では社外役員候補者の選任理由の記載が法定されているが(同74条4項2号、同76条4項2号)、今後はいわゆる社内の役員候補者の個々の選任理由についても、選任議案に記載する事例が増加するであろう。 4 その他社外取締役関係 (注1) 独立性は問わないとされる。 (注2) ISS 2016年版 日本向け議決権行使助言基準 (注3) 東証上場会社における社外取締役の選任状況(確報) 2015.7.29 5 おわりに 本年の総会対応について、改正会社法およびコードへの対応を中心に述べてきた。 特にコードへの対応に関しては機関投資家に関心のある事項が多く、対応の程度は各社の株主構成によるところが大きい。また、総会当日においては来場する個人株主への対応がメインとなり、当日の株主質問にいかに説明責任を果たすべく回答していくかがポイントになる。 かように株主総会準備は多様性を増しており、特に本年は機関投資家と個人株主の双方を意識した総会準備が必要となろう。 (了)
税理士ができる 『中小企業の資金調達』支援実務 【第13回】 「金融機関提出書類の作成ポイント(その5 事業計画書)」 ~形式面のポイント~ 公認会計士・中小企業診断士・税理士 西田 恭隆 前回まで、金融機関に提出する書類として、実績に関わる書類、すなわち決算書及び合計残高試算表の説明を行ってきた。今回から、将来予測に関する書類について解説していく。その書類とは、事業計画書及び資金繰り表である。今回はまず、事業計画書の形式面にかかるポイントについて説明し、次回、【第14回】で内容面にかかるポイントを述べる。金融機関が最も重視する資金繰り表は【第15回】で解説する。 事業計画書作成の流れは、【第3回】で説明したけれども、もう一度、事業計画書とは何か、その作成の流れを簡単に説明しておく。 事業計画書とは、会社が今後、どのような事業を行って売上と利益をあげる予定なのかを表す書類である。金融機関に対しては、融資資金の必要性、資金を使う目的、返済可能性を伝える道具となる。事業計画書は大きく2つの部分、事業内容を文章で説明する部分と、それを売上高や利益額などの計数で説明する部分から構成される。計数部分は、まず簡易キャッシュフローの考えを使って、返済に必要な利益と売上を算出する。それを上回る年間売上、年間利益を立てて年次事業計画書とし、季節変動を加味して、月次事業計画書に落とし込んでいく。 事業計画書の構成に従い、まずは文章部分の形式についてポイントを解説する。続いて、計数部分のポイントを述べる。日本政策金融公庫等のホームページで事業計画書のひな形が入手できるので、それを手元に置きながら本稿を読んで頂いた方が、理解しやすいと思う。 形式面のポイント①:文章部分に記載する事項 文章部分の形式は、特にルールが定められているわけではなく、自由である。しかし、記載する内容は概ね決まっており、「会社概要」、「事業内容」、「強みやセールスポイント」、「事業スケジュール」等を記載するのが定番である。 「会社概要」とは、会社の設立から現在に至るまでの沿革、代表者の経歴、人員構成、取引先の状況等である。「事業内容」においては、どういう顧客を標的にしているのか、取り扱う商品・サービスの内容、業務の流れ、資金の流れ等を記述する。「強みやセールスポイント」では、他社が容易に模倣できない、当社独自の強みを記載する。「事業スケジュール」では、今後、いつ、誰が、どこで、何を、どのようにして事業を進めていくのか具体的に記述する。 「強みやセールスポイント」の整理は、社長や会社側では行いづらいことがある。自分自身を客観視するのは難しいからである。そこで税理士の出番となる。質問を行うことにより、整理を支援できる。例えば、「こういう点で他社に負けないという点はありませんか」、「以前に売上が伸びた原因は何だと思いますか」と質問する。回答の中に会社の強みが含まれているので、税理士がそれを引き出し、整理する。 筆者の場合、ヒト、モノ、情報、4P(価格、商品サービス、立地店舗、販売促進)、競合他社比較の切り口を使って社長に質問を行い、強みを整理してもらっている。4P以外にも3Cや5F、7S、PESTなど様々な切り口があるけれども、結局、どの切り口も似たり寄ったりなので、自分に合うものを使って質問すれば良い。 融資申込用の事業計画書として、金融機関から形式を指定された場合は、それに従って文章を記入する。特に形式を指定されなかった場合は、日本政策金融公庫や信用保証協会の事業計画書を参考にして、独自のものを作成する。融資判断に必要な、上記の項目が記載されていれば問題ない。 形式面のポイント②:文章は簡潔明瞭を心がけ、量はほどほどに 上記の事項を文章化するにあたっては、簡潔明瞭を心がけ、難解な専門用語は使わないようにする。使用する場合も注釈や補足を付け、予備知識ゼロの人でも分かるような、易しい文章にする。金融機関担当者は中小企業のあらゆる事業に精通しているわけではない。相手が理解できる言葉を選び、情報共有と、融資交渉が円滑に進むようにすべきである。 簡潔明瞭な文章作成という点においても、税理士は社長を支援できる。社長が作成した文章を読んで、税理士が「難しい」と感じた箇所は、金融機関担当者もそのように感じるはずである。指摘、助言を行い、平易な表現に修正してもらう。 分量は多すぎず、少なすぎずとする。事業計画書の形式が指定されている場合、文章記入欄を隙間なく埋めるのは当然である。空欄が目立つ計画書だと、「事業に対する考えが浅い」、「やる気がない」などとマイナス評価につながりかねないからである。指定の欄に記入しきれない場合は、独自に別紙を添付する。筆者はいつもA4サイズのワード文書を添付している。文章に説得力を持たせるには、ある程度の分量が必要である。 かといって、分量が多すぎるのも問題である。読み手を飽きさせるし、肝心な点が伝わらない恐れがあるからである。分量が多くなる理由の1つに、外部環境分析がある。外部環境分析とは、会社を取り巻く景気動向や業界に関する情報を収集、加工、検討することである。統計データやグラフ、図表を使って「会社事業は上手くいく」と結論付ける方法である。 分量が多くなる割には、外部環境分析を行うメリットは少ない。というのは、分析結果は、他の会社にも当てはまる一般的な事実に過ぎないし、結局、会社にとって都合の良い結論にしかならないからである。金融機関側もこの点を見抜いており、外部環境分析が融資判断の決め手になることはない。であれば、その記述は抑え、事業計画書全体の簡潔明瞭さを優先した方が良い。 仮に記述するとしても、社長が普段持っている業界動向に関する知識を、数行にまとめる程度が無難である。 「多すぎず、少なすぎず」だと曖昧なので、具体的な数量でいうと、筆者の場合、事業計画書はA4サイズのワード文書10枚前後にまとめることが多い。形式が指定されている事業計画書の場合、添付別紙は5枚前後である。 引き続き、計数部分の形式について述べる。 形式面のポイント③:計数部分の表示形式は変動固定分類でも可 事業計画書の表示形式は、損益計算書の形式そのままでも良いし、勘定科目を変動費、固定費に分類した表示形式(CVP分析、直接原価計算方式)でも問題ない。 販売費及び一般管理費の中に、荷造運賃や車両費等、金額が大きい変動費が含まれている場合は、変動費、固定費に分類した方が良い。限界利益(=売上高-変動費)によって、売上と商品販売による利益の動きがつかみやすくなるからである。この形式による事業計画書は、金融機関側も理解しているので、問題なく伝わる。 売上原価以外に大きな変動費が無い場合は、無理に変動固定分類する必要はない。 形式面のポイント④:計数部分はシンプルにざっくりと 事業計画書の勘定科目が詳細であればあるほど見やすいとは限らない。売上項目や経費項目のうち、金額が小さい複数の項目は1つの勘定科目にまとめる、または「その他」という項目に集約する。金額の大きい、重要な勘定科目に焦点を合わせやすくなるからである。 また、金額の表示単位は、千円単位以上とする。というのは、将来の数値を円単位まで細かく見積もることはほぼ不可能、無意味だからである。 形式面のポイント⑤:月次事業計画書には積み上げ計算を明示 【第6回】で述べた通り、年次事業計画書の売上計画は、実現可能な数値になるよう、積み上げ計算を行う。積み上げ計算とは、販売単価×月平均または1日平均販売数量という計算を行い、年間合計する方法である。月次事業計画書レベルにおいても、積み上げ根拠を明示した方が良い。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 きちんと積み上げ計算していることをアピールできれば、各月売上計画の説得力が増す。売上を取引先や商品別等にグループ分けしている場合、グループごとに単価×数量を記載する。 形式面のポイント⑥:計数対象期間は、融資を受けてから1年間 月次事業計画書の対象期間は、借り入れ月以降、1年間が含まれるようにする。例えば、融資実行月が2016年5月予定だとした場合、2017年4月までの月次事業計画書を作成する。それ以降の計数は、金融機関から特に求められない限り、作成する必要はない。というのは、翌1年間の計画すら不確実な状況の中で、それ以降の計画を立てるのは困難だからである。逆に、1年でも長すぎるといわれる場合がある。「借り入れ後、半年間で良い」と金融機関から指示があった場合は、それに従う。 形式面のポイント⑦:予想貸借対照表は不要 事業計画書は売上と利益を予想した、予想損益計算書である。では、予想貸借対照表も提出する必要があるのかというと、基本的に不要である。 貸借対照表は、その時点で会社を清算すると仮定した場合の財産価値にすぎない。金融機関が関心を持つ会社の借金返済能力=当期純利益+減価償却費を読み取ることはできないし、将来の財産価値は今後の売上、利益次第である。担保財産についても、決算書や合計残高試算表に記載されているので、改めて予想貸借対照表を使って示す必要はない。金融機関にとって有益な情報が少ないため、予想貸借対照表は作成不要である。 資金繰り表の作成には、棚卸資産の月次平均残高が必要になる場合がある。その際は、資金繰り表の作成根拠、補足事項として、棚卸資産の予想平均残高のみ記載すれば良い。 * * * 以上、事業計画書の形式に関するポイントを説明した。次回は、金融機関の融資判断という点から、内容に関するポイントを述べる。 (了)
《速報解説》 税制改正法案からみた消費税軽減税率の適用対象 ~有料老人ホームでの飲食料品の提供は軽減税率の対象に~ Profession Journal編集部 平成28年度税制改正に係る税制改正法案(所得税法等の一部を改正する法律案)は2月5日付けで国会へ提出され昨日8日に財務省ホームページ上で公開された。 以下ではまず、消費税軽減税率の適用対象について規定された部分を確認しておきたい。 平成28年度税制改正大綱(付記一)では、当該部分について次のように表記されていた。 今回の法案第5条(消費税法の一部改正)より関連する条項を抜粋すると、以下のとおりである。 まず、改正消費税法第2条第1項において、軽減税率が適用される「軽減対象課税資産の譲渡等」及び「軽減対象課税貨物」が次のように定義されている(税率の規定は改正消費税法第29条)。 そして上記で示された各別表の規定は次の通りである(旧別表第一は別表第二とされた)。 いわゆる「外食」を軽減税率の対象外とする規定に関し、大綱において「一定の飲食設備のある場所等において行う食事の提供」とされていたものが、別表第一の一イでは「テーブル、椅子、カウンターその他の飲食に用いられる設備のある場所において飲食料品を飲食させる役務の提供をいい、当該飲食料品を持帰りのための容器に入れ、又は包装を施して行う譲渡は、含まないものとする。」と具体的な規定内容が見られる。 なお、上記イの外食に該当しない飲食料品の譲渡であっても、別表第一の一ロにあるとおり「課税資産の譲渡等の相手方が指定した場所において行う加熱、調理又は給仕等の役務を伴う飲食料品の提供」については軽減税率の対象外となり、いわゆるケータリングや出張料理などがこれに該当する。ただし、有料老人ホーム等の施設における飲食料品の提供は規定から除かれているため軽減税率の対象となる。 また、おまけ付きのお菓子のような食品と食品以外が一体となっている商品への適用については「食品と食品以外の資産が一の資産を形成し、又は構成しているもののうち政令で定める資産」とのみ規定されており、金額基準や食品の占める割合等は、法案では明確化されていない。 全体を通じ政令委任の部分が大きく、対象の線引きについて確たる判定をするには今後の情報が待たれるところである。 なお、消費税の軽減税率については、昨年12月に公表された次の財務省資料が詳しく、事業者のシステムの改修に関する資料も掲載されていることから、参考にされたい。 (了)
《速報解説》 国税庁、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」に係る 債権放棄が行われた場合の課税関係について [文書回答事例]を公表 公認会計士・税理士 篠藤 敦子 「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」(以下、ガイドラインという)に従って債権放棄が行われた場合の課税関係について、自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン研究会(以下、ガイドライン研究会という)から国税庁に照会が行われ、平成28年1月15日付けで国税庁からの回答が公表された(ホームページ掲載日は平成28年1月22日)。 (1) ガイドライン策定の経緯 大規模な自然災害が発生すると、その影響を受けた個人は、住宅ローンや事業性ローン等の弁済ができなくなることがある。このような状況になると、既往債務を抱えたまま、個人が生活を再建することは困難である。 そこで、法的倒産手続によることなく、債務整理を公正かつ迅速に行い、個人の自助努力による生活や事業の再建を支援し、ひいては被災地の復興・再活性化に資する目的で、債務整理を行う場合の指針となるガイドラインがまとめられた。 ガイドラインは、平成27年12月25日に公表され、平成28年4月1日から適用が開始されることとなっている。 また、ガイドラインに法的拘束力はないが、金融機関等や債務者である個人等により自発的に尊重、遵守されることが期待されている。 なお、ガイドライン及びガイドラインQ&Aは今回の回答事例が掲載されたページに添付書類として示されているが(上記リンク参照)、全国銀行協会ホームページでも公開されている。 (2) ガイドラインの概要 ガイドラインの概要をまとめると、次のとおりである。 ① 対象となり得る債務者(主な要件) ② 対象債権者 対象債権者とは、特定調停手続によりガイドラインに基づく債務整理が成立したとすれば、それにより権利を変更されることが予定されている債権者をいう。 具体的には、対象債務者の債権者である銀行、信用金庫、信用組合、リース会社、クレジット会社、信用保証協会等の金融機関等である。 ③ 登録支援専門家 ガイドラインに基づく債務整理を的確かつ円滑に実施するため、債務者及び債権者のいずれにも利害関係を有しない中立かつ公正な立場の者として、弁護士、公認会計士、税理士及び不動産鑑定士の「登録支援専門家」がガイドラインに基づく手続の支援を行う。 ④ ガイドラインに基づく債務整理手続 ガイドラインに基づく債務整理の手続は、次の手順により実施される。 (3) ガイドラインに従って債権放棄が行われた場合の課税関係 ガイドラインに基づいて作成・確定した調停条項により債権放棄が行われた場合の対象債権者及び対象債務者の課税関係について、ガイドライン研究会からの照会内容と国税庁からの回答をまとめると以下のとおりである。 ① 対象債権者(法人)の課税関係 対象債権者において債権放棄により生じた損失は、法人税基本通達9-6-1(3)であり、その切捨てが同通達(3)ロに該当することから、法人税法上、債権放棄した日の属する事業年度において貸倒れとして損金の額に算入する。 (※) 下線及び赤字は筆者 ② 対象債務者(個人)の課税関係 対象債務者において債務免除を受けたことによる債務免除益は、所得税基本通達44の2-1《「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難」である場合の意義》における「破産法の規定による破産手続開始の申立て又は民事再生法の規定による再生手続開始の申立てをしたならば、破産法の規定による免責許可の決定又は民事再生法の規定による再生計画認可の決定がされると認められるような場合」になされたものであることから、所得税法上、各種所得の金額の計算上、総収入金額に算入されない。 (※) 下線及び赤字は筆者 * * * 近年、毎年のように大規模な自然災害が発生している。今後、ガイドラインの活用により、個人の債務整理が円滑に進められることが期待される。 (了)
《速報解説》 東京国税局より「公社債の譲渡による所得の総収入金額の 収入すべき時期の取扱いについて」 (文書回答事例)が公表 ~H27年中の契約効力発生→H28年中の引渡しの場合は申告不要~ 税理士 仲宗根 宗聡 東京国税局は、平成28年1月21日付(ホームページ掲載は平成28年1月26日)で、事前照会に対する回答文書を公表した。ここでは、その内容について解説する。 【 前 提 】 〈特定公社債等の譲渡損益の課税関係〉 従来、公社債等の譲渡による所得は非課税とされ、譲渡による損失はないものとされていた。 しかし、「金融所得課税の一本化」(平成25年度改正)により、下記のとおり、平成28年1月1日以後、特定公社債等の譲渡については、株式等に係る譲渡所得等の課税対象とされた。 〈金融所得課税の一本化〉 平成28年1月1日以後、特定公社債等の利子・収益分配や売却による所得が申告分離課税の対象とされ、これらの所得間の損益通算、上場株式等の配当所得及び譲渡所得との損益通算、特定公社債等の譲渡損失の繰越控除が可能となった。 (※) 特定公社債等とは、国債、地方債、外国国債、公募公社債、上場公社債等の一定の公社債及び公募公社債投資信託をいう。 〈譲渡所得の収入計上時期〉 株式等に係る譲渡所得等の総収入金額の収入すべき時期は、原則、株式等の引渡しがあった日とする。 ただし、納税者の選択により、株式等の譲渡に関する契約の効力発生日により申告があったときは、これを認めるとされている。 【事前照会の要約】 証券会社を通じ公社債を譲渡すると、契約効力発生日から引渡し日までに通常4営業日を要するため、平成27年中に公社債の譲渡に関する契約効力が発生し、その引渡しが平成28年中となる場合が生じる。 平成27年中の譲渡となれば非課税となり、平成28年中の譲渡となれば課税対象となる。 株式等に係る譲渡所得等の収入計上時期は、「契約の効力発生日により申告があったときは、これを認める」とされているが、平成27年中の譲渡は非課税であるため、何ら申告をすることなく、その譲渡による所得の収入計上時期を契約効力発生日の平成27年中とすることが認められるものと解してよいか。 【回答の要約】 平成27年中の契約効力発生日を収入計上時期とした場合は非課税であるため、所得税の申告義務がないにも関わらず申告義務を課すことは相当でない。 また、申告書の提出は不要としつつ「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」に記載して提出する必要があるとする考えもあるが、計算明細書は、確定申告書を提出するときに、その添付が義務付けられている書類であるため、申告義務がない者に計算明細書のみの提出を求めることも相当でない。 これらのことから、平成27年中に契約効力が発生した場合は、何らの申告をすることなく、その譲渡による所得の総収入金額の収入すべき時期を、契約効力発生日である平成27年とすることが認められるものと解される。 (了)
2016年2月4日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.155を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
monthly TAX views -No.37- 「国会での消費税議論-「益税」「減収額」「簡易課税」」 中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹 甘利大臣問題に隠れがちだが、予算委員会・財政金融委員会で軽減税率についての議論が盛り上がると思われる。背景には、軽減税率に対する国民の見方が変化しており、NHKの世論調査などでも、反対が賛成を上回っているという状況がある。民主党としては、ここで給付付き税額控除の代替案を出して、国民にアピールしたいところであろう。 この問題(軽減税率か給付付き税額控除か)は、新聞が軽減税率の支持をしていたということから、国民的な議論が行われたとは言い難いので、この機会に改めて議論することは、意義があると思っている。 ◆ ◆ ◆ 議論の中でまず出てくるのが、代替財源としての「益税」の問題である。 これについては、インボイス導入により「益税」が少なくなるので、その分を軽減税率導入に伴う減収額1兆円の代替財源の一部にしたいという考え方で、日経新聞1月14日朝刊が報じている。 「益税」については、これまでも様々な場面で議論されてきた。しかしこの議論は感情的な部分も含まれており、必ずしも冷静な議論となっていないところがある。 「益税」とは、一般的に、消費者の負担した消費税が納税されないまま事業者の手元に残ることをいう。代表的には、消費者が免税事業者から税抜き価格100円のものを108円で購入した、という場合である。もっとも事業者の仕入れには消費税を負担しているので、「益税」額は8円ではなく、そこから仕入れにかかる消費税額を差し引いたものである。 問題は、そのようなケースについての「益税」がどの程度発生しているのか、その金額については不明である、ということである。 事業者ごとに価格転嫁の度合いを調べなければならないが、それは不可能である。また、事業者の中には、価格転嫁できなくて、「損税」だという議論も出てくる。 ◆ ◆ ◆ 一方で、確実に「益税」と言えるのは、簡易課税制度における、みなし仕入率と実際の仕入率との相違からくる消費税額である。 これについては、これまで会計検査委員から指摘され、また、税制当局も累次の改正をして、対応してきた。しかし、未だこの「益税」があることは、広く知られている。 簡易課税制度については、平成28年度与党税制改正大綱に、「軽減税率導入3年以内をめどに、・・・軽減税率導入による簡易課税制度への影響・・・を検証し、必要と認められるときは・・・法制上の措置・・・を講ずる」と記されている。 軽減税率の導入により、軽減対象とそれ以外というように取引が複雑になる中で、「簡易」ではなくなる可能性が高く、大幅な見直しが予想される。 ここで取り上げたいのが、免税点制度に伴う「益税」だ。 現行消費税制度のもとでは、免税事業者からの仕入れについても仕入税額控除ができる。これは、免税事業者が取引から排除されないことへ配慮したものである。 インボイスが導入されると、免税事業者はインボイスを発出できないので、彼らからの仕入税額控除ができなくなる。そこで、免税事業者は、取引からの排除を避けるため、課税選択することが予想される。そうなれば、増収が生じる。 これによる増収は、経過措置の切れる2027年に、最大限5,000億円程度と筆者は試算している。 その根拠は次の通りである。 免税事業者は500万者といわれている。免税事業者の平均的売上げを500万円と仮定すると、免税事業者の売上げは25兆円になる。平均的なマージンを20%とすると、免税事業者のマージン(売上から仕入れを引いた粗利)は5兆円で、これが免税事業者の消費税課税ベースといえよう。そこで、これに消費税率10%を乗じると5,000億円となる。 もっともこれは「益税」というより、「インボイス導入に伴う免税事業者取引からの増収額」というべきであろう。 しかし、これを恒久財源とみなすにはあまりにも問題が多い。 そもそも免税事業者からの仕入税額控除ができなくなるのは、2027年からである。また、どの程度の免税事業者が課税選択するのかもはっきりしない。 科学的根拠をもって「安定的な恒久財源」を探す必要がある。 (了)
平成27年分 確定申告実務の留意点 【第4回】 (最終回) 「誤りやすい『国外転出時課税』に関するQ&A」 公認会計士・税理士 篠藤 敦子 シリーズ最終回は、今年から適用となる国外転出時課税制度について、平成27年分の確定申告実務で留意すべき事項をQ&A形式でまとめることとする。なお、この制度の概要については【第2回】を参照されたい。 【Q1】 国外転出時課税の対象者 国外転出時課税の対象者の要件の1つに、「国外転出等(※)の日の前10年以内に国内に住所若しくは居所を有していた期間の合計が5年超であること」がある。対象資産を1億円以上保有等している次の①、②の人は、国外転出時課税の対象となるか。 (※) 国外転出等:国外転出、非居住者に対する贈与、非居住者が相続人や受遺者となる相続の開始 【A】 ①、②とも対象とならない。 【解説】 国外転出時課税の適用には、国籍についての要件はない。したがって、日本国籍の居住者であっても、国外転出等の日の前10年以内に国内に居住していた期間(以下、国内居住期間という)が5年以下である場合には、国外転出時課税の対象とならない。 一方で、外国国籍の人であっても、国外転出等の日の前10年以内の国内居住期間が5年を超える居住者であれば、原則として国外転出時課税の対象となる。ただし、「出入国管理及び難民認定法」別表第一(在留資格)の左欄の在留資格をもって在留していた期間は、国内居住期間から除かれることとなっている(所令170②一)。 ②の居住者は、外国企業の日本支社に勤務しているため「企業内転勤」の在留資格を持っていると考えられる。よって、日本に住んでいる7年は国内居住期間に含まれず、国外転出時課税の対象外となる。 (注) 平成27年6月30日までに下記「出入国管理及び難民認定法」別表第二の左欄の在留資格(永住者、永住者の配偶者、定住者等)で在留している期間がある場合は、その期間も国内居住期間に含まないこととされている(所令附則8②)。 【Q2】 対象資産の内容と価額の計算日 国外転出時課税の対象者の要件の1つに、「国外転出等の時に所有等している対象資産の価額の合計が1億円以上であること」がある。 ① 1億円以上であるかどうかは、いつの価額で判定するのか。 ② 次の(ア)から(ウ)の資産は、金額基準の判定に含まれるか。 (ア) 日本国内に保有する土地 (イ) 外国法人の株式(海外の証券会社の口座で管理) (ウ) 日本国債 【A】 ① 対象資産の価額の合計が1億円以上であるかどうかは、下記の【解説】〈対象資産1億円以上の判定〉に掲げる時の価額で判定する。 ② (ア) 含まれない。 (イ) 含まれる。 (ウ) 含まれる。 【解説】 (①について) 対象資産の価額の合計が1億円以上であるかどうかは、次の表に掲げる時の対象資産の金額に基づいて判定する(所法60の2①②③⑤、60の3①②③⑤)。 〈対象資産1億円以上の判定〉 (A):有価証券等の価額に相当する金額 (B):未決済信用取引等を決済したものとみなして算出した利益の額又は損失の額に相当する金額 (※) 国外転出の前に確定申告書を提出する場合で、国外転出の予定日から起算して3月前の日から国外転出時までの間に取得等した有価証券等と未決済信用取引等がある時には、それらは取得等した時の価額が合計の対象となる。 (②について) 対象資産は、有価証券等と未決済信用取引等であり、それ以外の資産(土地等)は含まれない。 また、国外で所有等しているものであっても対象資産に該当するのであれば、金額基準の判定に含める必要がある。 対象資産の具体例と金額基準の判定に関する注意点は、次のとおりである。 〈対象資産の例〉 (※) 国債や地方債等を平成27年12月31日以前に譲渡した場合の所得は非課税とされている。平成25年度税制改正により、平成28年1月1日以後は課税対象となる(措法37の11)。 【Q3】 課税の対象となる譲渡益 国外転出時に、次の①から③の有価証券を所有していた。国外転出時課税の適用を受ける場合、①から③すべてを譲渡したものとみなして課税されるのか。 ① 上場株式 ② 日本国債 ③ 公社債投資信託(MMF) 【A】 平成27年中に国外転出している場合には、①のみが課税の対象となる。②と③の含み益部分には課税されない。 【解説】 平成27年12月31日以前は、公社債等(公社債や公社債投資信託の受益権等)の譲渡による所得は非課税とされていた(改正前措法37の15①)。したがって、平成27年12月31日以前に国外転出している場合は、公社債等の含み益には課税されない。 【Q2】の〈対象資産の例〉「注意点」に記載したとおり、譲渡による所得が非課税となるものも、国外転出時課税の対象者を決める時の判定対象には含まれるので注意が必要である。 (注) 平成28年1月1日以後は、公社債等の譲渡による所得も課税の対象となる。同日以後に国外転出等をした場合には、公社債等についても譲渡したものとみなして課税される。 【Q4】 対象資産に含み損がある場合 上場株式と未上場株式を所有しており、上場株式には含み損、未上場株式には含み益が生じている。国外転出時課税の適用を受ける場合、次の①から③の取扱いはどのようになるのか。 ① 上場株式の含み損と未上場株式の含み益を通算できるか。 ② 上場株式の含み損と上場株式等の配当所得(申告分離課税を選択)を損益通算できるか。 ③ 上場株式の含み損が未上場株式の含み益よりも多額である場合、上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の特例を適用することはできるか。 【A】 ① 通算できる。 ② 損益通算できない。 ③ 特例を適用することはできない。 【解説】 (①について) 平成27年12月31日以前に国外転出時課税の適用を受ける場合には、上場株式の含み損と未上場株式の含み益を通算することができる(改正前措法37の10)。 なお、平成25年度税制改正により、平成28年1月1日以後は、上場株式等に係る譲渡所得とそれ以外の株式等に係る譲渡所得は区分され、別々の申告分離課税制度となる。よって、平成28年分からは、それぞれの区分内で譲渡損益を通算することはできるが、上場株式等の譲渡損益と未上場株式等の譲渡損益を通算することはできなくなる(措法37の10、37の11)。国外転出時課税の適用を受ける場合にも同様の取扱いとなるため、平成28年分からは、上場株式の含み損と未上場株式の含み益を通算することはできない。 (②について) 申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得と損益通算することができるのは、上場株式等を金融商品取引業者への売委託により売却している等、一定の要件を満たした場合に限られている(措法37の12の2①②)。 国外転出時課税は、譲渡があったものと「みなして」課税する制度であるため、損益通算の前提となる要件を満たしていない。よって、上場株式の含み損と申告分離課税制度を選択した上場株式等の配当所得を損益通算することはできない。 (③について) 上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の特例を適用することができるのは、上場株式等を金融商品取引業者等への売委託により売却している等、一定の要件を満たした場合に限られている(措法37の12の2⑤⑥)。 国外転出時課税は、有価証券等の譲渡があったものと「みなして」課税する制度であるため、当該特例の前提となる要件を満たしていない。よって、特例を適用することはできない。 * * * 上記Q&Aで示した点以外にも、納税猶予の手続きや要件、対象資産の評価方法等について、国税庁HP等を利用し確認していただきたい。 (連載了)