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「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例27(法人税)】 「外国子会社合算税制において適用除外に該当しているにもかかわらず、別表の添付をしなかったため、適用除外が認められなかった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例27(法人税)】   税理士 齋藤 和助   《事例の概要》 平成X2年3月期から平成X6年3月期の法人税につき、香港に所在する依頼者の100%子会社の所得につき、外国子会社合算税制における適用除外に該当しているにもかかわらず、申告書にその旨を記載した別表及びその証拠資料の添付をしなかったため、税務調査により合算課税の対象とされてしまった。これにより、法人税等につき過大納付が発生し、賠償請求を受けた。   《賠償請求の経緯》 平成X1年4月 関与開始。 平成X2年5月 平成X2年3月期の申告書を別表等を添付しないまま香港の100%子会社の所得を外国子会社合算税制における適用除外に該当するものとして提出。以後平成X6年3月期まで同様。 平成X6年8月 税務調査により、当初申告に添付していなかった適用除外基準を満たす旨を記載した別表の提出を求められる。 平成X6年9月 上記別表を提出。 平成X6年1月 上記別表の添付もれを理由に、特定外国子会社等に係る課税対象金額について合算課税を適用した修正申告を慫慂される。 平成X7年1月 平成X2年3月期からX6年3月期の5期分について修正申告書提出。 平成X7年3月 関与先より賠償請求を受ける。   《基礎知識》 ◆内国法人に係る特定外国子会社等の課税対象金額等の益金算入(措法66の6~9) 外国子会社合算税制とは、軽課税国に子会社を設立し、これを利用して税負担の不当な軽減を図ることに対処するため、内国法人に係る外国関係会社(居住者、内国法人及び特殊関係非居住者によってその発行済株式数の50%を超える数の株式等を保有されている等の法人をいう。)で、本店又は主たる事務所の所在する国又は地域におけるその所得に対して課される税負担が、日本の税負担に比して著しく低い(所得に対する税率が20%未満(平成27年度税制改正前は20%以下))とされる外国関係会社の所得のうち、その外国関係会社の発行済株式等の10%以上を直接・間接に保有する内国法人のその保有する持分に対応する部分を、その内国法人の所得に合算して課税するものである。 ◆適用除外(措法66の6③) 外国子会社等が、以下のすべての条件(適用除外基準)を満たす場合には、合算課税の対象とならない。 ただし、確定申告書に適用除外基準を満たす旨を記載した別表(※)を添付し、かつ、適用除外基準を満たすことを明らかにする書類等を保存しなければならない。   《税理士の落とし穴》   《税理士の責任》 依頼者は軽課税国である香港に100%子会社を所有していた。しかし、実体のある会社であり、適用除外基準の要件をすべて満たしていた。しかし、税理士は別表添付を失念したまま申告をし続け、税務調査で指摘を受け、別表の添付もれを理由に適用除外が認められず、合算課税を適用して修正申告をすることになってしまった。 当初申告において、適用除外基準を満たす旨を記載した別表を添付していれば適用除外となり、合算課税を受けずに済んだことから、税理士に責任がある。   《予防策》 [ポイント①] 担当者の変更 本事例のように外国子会社があるような特殊な関与先は、ついつい慣れた担当者に任せがちである。そうすると、本事例のように長年にわたってミスに気づかず、気づいた時には損害額も多額になっていたというケースが多い。 このようなケースの場合には、定期的に担当者を変更することによって、新しい担当者が先入観なく一から確認ができる機会を作ることも必要である。 [ポイント②] チェックリストを活用したダブルチェック体制の構築 申告時のミスは、期中処理と違い、ある程度は申告書自体をチェックすることで防げる。したがって、申告時のチェックリストを作成して、担当者だけでなく、所長税理士又は有資格者等によるダブルチェック体制を構築することが必要である。 (了)

#No. 125(掲載号)
#齋藤 和助
2015/06/25

組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第29回】「裁決例⑨」

組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第29回】 「裁決例⑨」   公認会計士 佐藤 信祐   今回、紹介する事件は、連結納税加入に伴う時価評価において、債務超過となっている子会社株式をマイナス評価したのに対し、零円未満であることはあり得ないとして、零円以上であるとした事件である。   14 平成23年7月7日裁決 (1) 事件の概要 本件は、審査請求人(以下「請求人」という)が、連結納税への加入に伴う連結加入直前事業年度終了の時に有する時価評価資産の評価損益の算定に当たり、債務超過となっている子会社の株式の時価評価額を零円を下回る価額(以下「マイナス価額」という)として、時価評価損益を算定し確定申告をしたところ、原処分庁が、当該時価評価額を零円と認定し時価評価損益を算定するなどして更正処分等をしたため、請求人が、当該子会社の株式の時価評価額はマイナス価額となるなどとして、当該更正処分等の一部取消しを求めた事件である。 なお、本件各株式は、売買実例がなく、公開途上にある株式でもない。また、本件において、売買実例のない本件各株式の発行法人と事業の種類、規模、収益の状況等が類似する他の法人の株式の価額があるとは認められない。 (2) 原処分庁の主張 連結加入直前事業年度における時価評価資産である有価証券の時価評価額は、資産の譲渡が一般的に有償又は無償で行われていることにかんがみれば、譲渡する場合における通常取引されると認められる価額として零円を下回ることはなく、また、会社法第104条《株主の責任》において、株主の責任はその有する株式の引受け価額を限度とする旨規定されていることからしても、本件各株式の発行法人が債務超過となっている場合であっても、1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額は零円である。 (3) 請求人の主張 連結加入直前事業年度における時価評価資産である有価証券の時価評価額の算定において、当該有価証券の発行法人が債務超過となっている場合は、以下の理由から、当該債務超過に相当する金額をマイナス評価するのが、1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額として妥当である。 (4) 国税不服審判所の判断 本件各株式は、上場有価証券等以外の株式であるから、本件各株式を時価評価するに当たっては、法人税基本通達9-1-13に定める方法により評価すべきものと認められるところ、本件各株式は、売買実例のあるもの、公開途上にあるもの、売買実例のない類似法人の株式の価額があるもののいずれにも該当しないものと認められるから、本件事業年度終了の日における「1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」をもって、その時価評価額とするのが相当である。 そして、本件各株式の純資産価額はいずれも零円を下回っているところ、本件各株式の発行法人の1株当たりの純資産価額等が零円を下回る場合の「1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」については、零円以上と認めるのが相当であるから、本件各株式の本件事業年度における時価評価額は零円以上とすべきである。 (5) 評釈 子会社株式の時価評価について、零円未満であるマイナス価額はあり得ないとした事件であり、法令上は、そのように解さざるを得ないと考えられる。 このような問題は、他の税目においても生じるところであり、例えば、相続税法において、保有する非上場会社の時価を零円としたとしても、金融機関に対する連帯保証については、「主たる債務者が弁済不能の状態にあるため、保証債務者がその債務を履行しなければならない場合で、かつ、主たる債務者に求償して返還を受ける見込みがない場合」まで認められず(相基通14-3)、実際に、当該規定の適用を受けるためには、保証債務が確定的なものになっている必要があるため、当該規定の適用を受けるためのハードルは極めて高いというのが実態である。 連結納税加入に伴う時価評価課税についても同様に、本来であれば、非適格組織再編成と同様に、負債性引当金や負ののれんを含めた上での時価評価を導入すべきであったのに対し、資産サイドにしか時価評価を要請しなかったという立法上の問題がある。この点については、制度の簡素化という理由で説明されることが多いが、そのような制度の簡素化についての納税者の要請は存在せず、グループ法人税制については、帳簿価額1,000万円未満の資産については譲渡損益の繰延べの対象から除外されることから(法法61の13①、法令122の14①三)、帳簿価額の存在しない営業権については譲渡損益の繰延べにならず、実務上、100%グループ内の事業譲渡において営業権の譲渡益課税が生じるという問題があり、制度の簡素化が弊害をもたらしているという実態も存在する。今後の制度改正が望まれるところである。 第21回からこの第29回までにおいては、国税不服審判所が公表している裁決例について取り上げた。次回以降においては、TAINS(タインズ)で紹介されている非公開裁決事例をいくつか取り上げる予定である。 (了)

#No. 125(掲載号)
#佐藤 信祐
2015/06/25

こんなときどうする?復興特別所得税の実務Q&A 【第29回】「未払配当金から源泉徴収する所得税及び復興特別所得税の処理」

こんなときどうする? 復興特別所得税の実務Q&A 【第29回】 「未払配当金から源泉徴収する所得税 及び復興特別所得税の処理」   税理士・社会保険労務士 上前 剛   当社(非上場会社)は平成26年5月31日に株主総会を開催し、配当金100万円を支払う旨を決議しました。株主総会から1年経過しましたが、配当金は未払いです。配当金を支払う際には所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければならないことは承知していますが、未払いなので源泉徴収はしていません。 当社で行うべき処理がありましたらご教示ください。   配当金を支払う際には所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければならないが、未払いなので源泉徴収はしなくてもよい。ただし、配当金の支払いが確定した日から1年を経過した日までに配当金の支払いがない場合には、その1年を経過した日において配当金の支払いがあったものとみなして所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければならない(所法181②)。 今回のケースにおいては、配当金の支払いが確定した日である平成26年5月31日から1年を経過した日(翌年の応当日の翌日(所基通181-5))である平成27年6月1日に配当金の支払いがあったものとみなして所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければならない。 当社は非上場会社であるから、未払配当金から20.42%の税率にて所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければならない。 当社は、源泉徴収した所得税及び復興特別所得税204,200円を7月10日までに納付しなければならない。 (了)

#No. 125(掲載号)
#上前 剛
2015/06/25

税務判例を読むための税法の学び方【63】 〔第7章〕判例の探し方(その10)

税務判例を読むための税法の学び方【63】 〔第7章〕判例の探し方 (その10)   立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘   ② 企業や諸団体等から発行されている定期刊行物 前回までは公的(準公的)な判例集・裁判集を紹介してきたが、今回より、企業や諸団体等から発行されているものについて紹介する。 ただし【55】の冒頭に記したように、民間企業のものの紹介は必要最小限度とし、ここでは名称の紹介等にとどめる。また商業雑誌等の場合は、各自治体の公共の図書館にも所蔵されているものが多いため、所蔵先等の紹介は割愛する。 ◆全分野を対象としたもの (1) 『判例時報』『判例評論』 昭和28年以降、判例時報社より出版されており、毎月1日、11日、21日に発行される旬刊である。裁判例以外、論文等も掲載されている。法律論文等では「判時」と略されて表記されることも多い。 また、各月1日に発行された号には『判例評論』という判例評釈集が綴じ込まれている。号数は、判例評論独自の番号が付されている。また、頁数は判例時報と一体になったものと判例評論独自のものの両方が記載されている。   (2) 『判例タイムズ』『判例年報』『〇〇年主要民事判例解説』 昭和23年以降、判例タイムズ社より出版されており、平成24年までは毎月1日、15日と月2回発行されていた。現在は毎月1回発行の月刊となっている。 「判例紹介」として各号20件から30件前後の裁判例を紹介しているが、それ以外に論文等も掲載されている。法律論文等では「判タ」と略されて表記されることも多い。 なお、この判例タイムズの臨時増刊号として、昭和37年度版から平成18年度版まで年1回『判例年報』が発行されていた。判例集(民集・刑集、高民集・高刑集、家月)や判例雑誌(判例タイムズ、判例時報、金融法務事情、金融・商事判例)に掲載された判例を、民事・刑事に大別し、法令別・条文別に判示事項・判決(決定)要旨を収録している。索引として裁判年月日順索引を付している。 また「判例タイムズ」の別冊として毎年9月に『〇〇年主要民事判例解説』というものが発行されていたが、平成23年9月の平成22年版を最後に、以後は発行されていない。   ◆特定の分野を対象としたもの (3) 『労働判例』 昭和42年以降、産労総合研究所から出版されているが、毎月1日、15日と月2回発行されている。 全国の裁判所の裁判(判決・決定)および中央・地方労働委員会の命令のうち、重要と判断された判例と命令を掲載している。裁判例以外、注目される判決や実務上役立つと考えられる判決については、「判例解説」「判例研究」「実務解説」等が掲載されている。法律論文等では「労判」と略されて表記されることも多い。 また労働審判制度の平成18年4月スタートに伴い、平成18年10月15日号以降、毎月15日号で実務に役立つ審判・調停の結果を「労働審判ダイジェスト」として掲載している。 また、労働委員会の命令についても、集団的労使紛争のトラブル防止の観点から事件の概要と命令要旨を「命令ダイジェスト」で掲載している。なおこれらの「ダイジェスト」は要旨のみ掲載している(産労総合研究所ホームページより)。   (4) 『別冊中央労働時報』『労働委員会速報』『中央勞働委員會速報』 昭和22年から昭和29年3月までは、中央勞働學園から『中央勞働委員會速報』として発行されており、1號から272号まで出されていた。 昭和29年4月から昭和43年3月までは、『労働委員会速報』として、中央労働委員会事務局の監修により中労委会館から発行されており、273号から777号まで出されていた。 昭和43年4月からは、現誌名『別冊中央労働時報』として、同じく中央労働委員会事務局の監修により労委協会から発行されている。号数も引き継がれているが、昭和43年4月の1巻1号から同年10月の1巻8号までが、778号から785号となっていたところ、 同年11月の786号からは前誌からの通し番号のみとなっている。 なお、法律論文等では『別冊中央労働時報』は、「中労時」と表記されることも多い。また別冊ではない『中央労働時報』という雑誌(月刊誌)も『別冊中央労働時報』と同様に月刊誌として同じ出版社から発行されているが、こちらは論文や判例評釈等が掲載されている。 不当労働行為事件に係る裁判例や全国の労働委員会から出された命令を掲載している。毎年12月号に年間総索引が付され、事件名(企業名)を五十音順で検索できるようになっている。 これらは名称が2回変更になっている関係から、所蔵先の検索等にあたり分かり難い面があるため、公的判例集と同様に、以下に紹介する。 CiNiiによれば、『中央勞働委員會速報』は28大学の図書館に、『労働委員会速報』は33大学の図書館に、『別冊中央労働時報』は101大学の図書館に所蔵されている(下記リンク参照)。 中央勞働委員會速報 労働委員会速報 別冊中央労働時報 また、国立国会図書館にはすべて所蔵されているようである(下記リンク参照)。 中央勞働委員會速報(国会図書館) 労働委員会速報(国会図書館) 別冊中央労働時報(国会図書館) 厚生労働省図書館には、「別冊中央労働時報」「中央勞働委員會速報」はあるが、「労働委員会速報」は所蔵されていないようである(下記リンク参照)。 中央勞働委員會速報(厚生労働省図書館) 別冊中央労働時報(厚生労働省図書館) 裁判所図書館には、36号以前の分についての所蔵は確認できないが、37号以降の分については、ほとんどすべて所蔵されているようである。前誌ついても「中央労働時報」として登録されているようである。ただし「労働委員会速報」については図書版が444号より、視聴覚資料としては373号より所蔵がある。 裁判所図書館蔵書検索頁の「フリーワード検索」欄に「中央労働時報」「働委員会速報」と入力して検索。 (続く)

#No. 125(掲載号)
#長島 弘
2015/06/25

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第18回】「親会社による子会社の吸収合併~個別財務諸表のみ作成している会社の場合~」

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第18回】 「親会社による子会社の吸収合併 ~個別財務諸表のみ作成している会社の場合~」   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋   【はじめに】 今回は、親会社による子会社の吸収合併について解説する。吸収合併とは、会社が他の会社とする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるものをいう(会社法2条27項)。 そして、親会社による子会社の吸収合併は、「共通支配下の取引」に該当する。「共通支配下の取引」とは、結合当事企業(又は事業)のすべてが、企業結合の前後で同一の株主により最終的に支配され、かつ、その支配が一時的ではない場合の企業結合をいう(企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準(以下、「基準」という)」16)。 また、本解説では、親会社が子会社を吸収合併し、かつ、個別財務諸表「のみ」作成している場合を前提に解説する。なお、孫会社や中間子会社がある場合については、解説していない。 ※各ステップをクリックすると、それぞれのページに移動します。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (次ページ【STEP1】へ進む) (前ページ【はじめに】へ戻る) ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 共通支配下の取引により企業集団内を移転する資産及び負債は、原則として、移転直前に付されていた適正な帳簿価額により計上する(基準41)。つまり、親会社が子会社を吸収合併により引き継ぐ子会社の資産及び負債は、子会社の帳簿価額を引き継ぐことになる。 したがって、子会社は、合併期日の前日に決算を行い、資産、負債及び純資産の適正な帳簿価額を算定する(企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針(以下、「適用指針」という)」205)。 なお、連結財務諸表を作成している場合で、親会社と子会社が吸収合併する場合において、子会社の資産及び負債の帳簿価額を連結上修正しているときは、親会社が作成する個別財務諸表においては、連結財務諸表上の金額である修正後の帳簿価額(のれんを含む)により計上する(基準(注9))。 しかし、親会社が、連結財務諸表を作成しておらず、「連結財務諸表上の帳簿価額」が算定されていない場合であっても、「連結財務諸表上の帳簿価額」を合理的に算定できるときには当該帳簿価額を用いることとし、「連結財務諸表上の帳簿価額」を合理的に算定することが困難と認められるときは、子会社の適正な帳簿価額(個別財務諸表上の帳簿価額)を用いる(適用指針207-2)。 親会社が他の会社の株式を取得して子会社化した直後に合併した場合は、通常、連結財務諸表上の帳簿価額を合理的に算定できる場合に該当する(適用指針207-2)。 (次ページ【STEP2】へ進む) (前ページ【STEP1】へ戻る) ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 非支配株主とは、親会社以外の株主をいう。 非支配株主がいない場合といる場合、言い換えると、100%子会社の場合とそうでない場合で、会計処理が異なるため、ここでは、非支配株主が存在するかどうかを判断する。 非支配株主がいる場合は、【STEP3】を検討する。非支配株主がいない(100%子会社の)場合は、 【STEP4】を検討する。 (次ページ【STEP3】へ進む) (前ページ【STEP2】へ戻る) 非支配株主がいる子会社を吸収合併する場合、言い換えると100%子会社ではない子会社を吸収合併する場合、親会社では以下の順に検討する。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。   (1) 子会社の資産及び負債の引き継ぎ 【STEP1】で算定した子会社の資産及び負債を引き継ぐ(適用指針206(1))。   (2) 株主資本項目以外の純資産項目の引き継ぎ 【STEP1】で算定した子会社の合併期日の前日の評価・換算差額等(親会社が作成する連結財務諸表において投資と資本の消去の対象とされたものを除く)及び新株予約権の適正な帳簿価額を引き継ぐ。評価・換算差額等を連結財務諸表の帳簿価額で引き継ぐ場合、子会社のその他有価証券評価差額金や土地再評価差額金の適正な帳簿価額のうち、支配獲得後に子会社が計上したものを引き継ぐ(適用指針206(2)②)。   (3) 時価の算定 親会社が100%の株式を保有していない子会社を吸収合併するということは、非支配株主から残りの全ての株式を取得することと同じことである。したがって、非支配株主への対価は、時価で算定することになる(基準45)。 なお、市場価格のある親会社株式が取得の対価として、非支配株主に交付される場合には、取得の対価となる財の時価は、原則として、企業結合日における親会社株式の株価を基礎として算定する(基準(注11)、24)。   (4) 株主資本項目の会計処理 親会社は、子会社から受け入れた資産と負債との差額のうち株主資本の額を合併期日直前の持分比率に基づき、親会社持分相当額と非支配株主持分相当額に按分し、それぞれ以下のように会計処理する。 ① 親会社持分相当額の会計処理 上記(1)及び(2)の合計額のうち、親会社持分相当額と親会社が合併直前に保有していた子会社株式(抱合せ株式)の適正な帳簿価額との差額を、「抱合せ株式消滅差益」等の勘定科目で特別損益に計上する(適用指針206(2)①ア)。 この差額は、株主との資本取引ではなく、子会社を通して実現した事業投資の成果であるために、損益として計上する。 ② 非支配株主持分相当額の会計処理 非支配株主へ親会社株式を発行した場合、増加する親会社の株主資本の額は、払込資本として処理する。増加する払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金、その他資本剰余金)については会社計算規則35条1項により会社が任意に決定することができる。 その上で、上記(1)及び(2)の合計額のうち、非支配株主持分相当額と、取得の対価(非支配株主に交付した親会社株式の時価等)の差額を「その他資本剰余金」として計上する(適用指針206(2)①イ)。 この後は、【STEP5】を検討する。 《設例1》 【前提条件】 【会計処理】 1 親会社持分相当額 (※1) 12,000×80%=9,600 (※2) 3,000×80%=2,400 (※3) 8,000×80%=6,400 (※4) A社保有株式の帳簿価額 (※5) その他有価証券評価差額金500×80%=400 (※6) 差額 2 非支配株主持分相当額 (※1) 12,000×20%=2,400 (※2) 3,000×20%=600 (※3) 8,000×20%=1,600 (※4) 発行したA社株式の時価 (※5) その他有価証券評価差額金500×20%=100 (※6) 差額 3 合併後のA社の貸借対照表 (次ページ【STEP4】へ進む) (前ページ【STEP3】へ戻る) 非支配株主がいない子会社を吸収合併する場合、言い換えると100%子会社を吸収合併する場合、親会社では以下の順に検討する。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。   (1) 子会社の資産及び負債の引き継ぎ 【STEP1】で算定した子会社の資産及び負債を引き継ぐ(適用指針206(1))   (2) 株主資本項目以外の純資産項目の引き継ぎ 【STEP1】で算定した子会社の合併期日の前日の評価・換算差額等(親会社が作成する連結財務諸表において投資と資本の消去の対象とされたものを除く)及び新株予約権の適正な帳簿価額を引き継ぐ。評価・換算差額等を連結財務諸表の帳簿価額で引き継ぐ場合、子会社のその他有価証券評価差額金や土地再評価差額金の適正な帳簿価額のうち、支配獲得後に子会社が計上したものを引き継ぐ(適用指針206(2)②)。   (3) 株主資本項目の会計処理 上記(1)及び(2)の合計額と親会社が合併直前に保有していた子会社株式(抱合せ株式)の適正な帳簿価額との差額を、「抱合せ株式消滅差益」等の勘定科目で特別損益に計上する(適用指針206(2)①ア)。 この差額は、株主との資本取引ではなく、子会社を通して実現した事業投資の成果であるために、損益として計上する。 この後は、【STEP5】を検討する。 《設例2》 【前提条件】 【会計処理】 (※1) 子会社の帳簿価額 (※2) A社保有株式の帳簿価額 (※3) 差額 合併後のA社の貸借対照表 (次ページ【STEP5】へ進む) (前ページ【STEP4】へ戻る) 企業結合年度において、共通支配下の取引等に係る重要な取引がある場合には、以下の(1)及び(2)を注記する。なお、個々の共通支配下の取引等については重要性が乏しいが、企業結合年度における複数の共通支配下の取引等全体では重要性がある場合には、当該企業結合全体で注記する(基準52)。 なお、計算書類では、上記のような注記は必ずしも求められていない。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 *   *   * 以上、5つのステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (了)

#No. 125(掲載号)
#西田 友洋
2015/06/25

金融商品会計を学ぶ 【第7回】「金融負債の消滅の認識」

金融商品会計を学ぶ 【第7回】 「金融負債の消滅の認識」   公認会計士 阿部 光成   前回までは、金融資産の消滅の認識について解説してきた。 今回は、金融負債の消滅の認識について解説を行う。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅰ 金融負債の消滅の認識要件 金融負債の消滅の認識は、金融負債の契約上の義務を履行したとき、義務が消滅したとき又は第一次債務者の地位から免責されたときに行われる(「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号。以下「金融商品会計基準」という)10項、60項)。 「金融商品会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第14号。以下「金融商品実務指針」という)では、上記の金融負債の消滅の認識要件について、次のように規定している(金融商品実務指針43項)。   Ⅱ 金融資産及び金融負債の消滅の認識に係る会計処理 金融資産又は金融負債がその消滅の認識要件を充たした場合には、当該金融資産又は金融負債の消滅を認識するとともに、帳簿価額とその対価としての受払額との差額を当期の損益として処理する(金融商品会計基準11項)。 金融資産又は金融負債の一部がその消滅の認識要件を充たした場合には、当該部分の消滅を認識するとともに、消滅部分の帳簿価額とその対価としての受払額との差額を当期の損益として処理する(消滅部分の帳簿価額は、当該金融資産又は金融負債全体の時価に対する消滅部分と残存部分の時価の比率に基づいて按分する。新たな金融資産又は金融負債が発生した場合には、当該金融資産又は金融負債は時価により計上する。金融商品会計基準12項、13項)。   Ⅲ 金融負債の消滅時に原債務者に何らかの権利・義務が存在するケース 1 損益の計上基準 金融負債の消滅時に原債務者に何らかの権利・義務が存在する場合の債務引渡損益は、次のように計算した債務引渡しに伴う対価から引渡原価を差し引いたものである(金融商品実務指針44項)。 引渡金融負債の帳簿価額のうち按分計算により残存部分に配分した金額を当該残存部分の計上価額とし、新たに発生した資産及び負債は引渡時の時価により計上する。 2 債務引渡しに係る二次的責任 債務の第三者引受に際し当該第三者が倒産等に陥ったときに原債務者が負うこととなる二次的な責任である単純保証については、第三者による債務引受時に原債務者は当該二次的責任を新たな金融負債として時価により認識する(金融商品実務指針45項)。 二次的責任の時価を合理的に測定できない場合、当該時価は、当該取引から利益が生じないように計算した金額又はゼロとし、当該二次的責任を保証債務として取り扱うことになる。 なお、二次的責任に係る金融負債の計上価額は、前受保証料に準じて各期の純損益に合理的に配分する。 金融負債消滅後の二次的責任に係る金融負債の時価は、時間の経過、債務金額の減少、信用リスクの変化等に伴って変化するが、当該金融負債は、デリバティブに該当しないため、時価評価せず、二次的責任につき損失を被る可能性が高くなったときに債務保証に準じて引当金を計上する。 (了)

#No. 125(掲載号)
#阿部 光成
2015/06/25

確定拠出年金制度の改正をめぐる今後の展望 【第5回】「今回改正案に盛られたこと②」

確定拠出年金制度の改正をめぐる今後の展望」 【第5回】 「今回改正案に盛られたこと②」   特定非営利活動法人確定拠出年金総合研究所(NPO DC総研) 理事長 秦 穣治   引き続き、今改正に盛り込まれた内容を説明していく。また、それぞれの課題についても簡単に触れる。   5 企業型DCの新拠出限度額&自助努力の選択肢 【企業型DC拠出限度額】 【企業型DCにおける自助努力の選択肢】 企業型DCにおける拠出限度額自体は全く増額になっていない中、制度の選択肢が増えるのは悪いことではないが、逆にDC制度全体を複雑にしている面がある。したがって、既にマッチング拠出を実施している事業主は一応制度の続行を図るとしても、今後自助努力の制度導入を検討している事業主には考慮すべきポイントが残っている。 例えば、以下のような点である。 現行のマッチング拠出制度で問題なのは、「企業拠出+マッチング拠出」の合計額が拠出限度額の範囲内であるのに加えて、マッチング拠出が企業拠出の範囲内という二重のチェックが掛かっていることである。そのため、企業拠出額の小さい加入者について、例えば、若年層や逆に契約社員化したシニア層では、せっかく自助努力しようと思っても拠出できる枠がない、ということがある。 もし、社員構成上このような社員が多い場合には、マッチング拠出でなく個人型との併用を選択する余地がある。ただしその場合には、個人型の手数料がどのくらいで、誰が支払うのか、ということが残された課題となるであろう(事業主によっては企業型の手数料も加入者に転嫁している場合もあるだろうし、逆に個人型の手数料を含めて事業主負担とする事業主もあるかもしれない)。 また、事業主拠出額が一定額の場合には、「企業型+マッチング拠出」か「企業型+個人型」の双方について、事業主拠出限度額を見ながら、どちらがより加入者にメリットがあるかを検討してみるのも良いと思われる。   6 制度間のポータビリティの拡充 【年金資産の持ち運び(ポータビリティ)の拡充】 (※1) DBから企業型・個人型DCには、本人からの申出により、脱退一時金相当額を移換可能 (※2) 中小企業退職金共済に加入している企業が、中小企業でなくなった場合に、資産の移換を認めている (※3) 合併等の場合に限って措置 従来からの懸案であったポータビリティの拡充は、重要な意義を有すると考える。 特に、中小企業退職金共済との出し入れが認められた意味は大きく、中小企業退職金共済が“立派な”企業年金制度であることを認め、かつ、既存制度では移換に制約があったものを解放したことは、中小企業の事業主及び従業員に力強いメッセージになると思われる。 一方で、基本的にあらゆる場合に持ち運びを認めた以上、「必ず持ち運びなさい」というメッセージが込められている。したがって、【第3回】で触れたように、「退職しても一時金受取は原則できませんよ」という意味が裏側にあることも忘れてはならない。 つまり、企業年金制度は名実ともに“年金制度”になるためには避けて通れなかったポータビリティの議論を解決させた、という意味で、この改正は極めて重要な意味を持つものと言える。 なお、形式上、DC→DBを認めたものの、実際上の効果は薄いかもしれない。今の時代、あえてDBの残高を増やそうという奇特な事業主は極めて少ないと思われるからである。   7 その他の措置 これまで触れてきた以外の改正項目には以下のようなものがあるが、 特にDCにとって重要なのは、最後の“運営管理機関の委託に関わる事業主の努力義務”の項目であろう。 DCが金融システム商品である以上、直接の運用主体である加入者のためにも、金融システムの運営を担う運営管理機関の役割は極めて大きいわけである。制度導入時に運営管理機関選定を行うが、選定する事業主にとって、未だに導入していないもののサービス評価をすることはそもそも非常に厳しいのに加えて、どの運営管理機関でも、自社の業績等によっては、必ずしも同様のサービスレベルを将来保証し続けられるわけではない。一方、事業主にとって、導入以降も運営管理手数料の水準を含む諸サービスレベルが同業他社比満足のいくものになっているかをチェックしてくのは容易ではない。 そもそも事業主が運営管理機関を選定する場合、日本の企業では、主取引銀行ないし大株主、又は主受託金融機関から選ばれることが大多数で、純粋にサービスレベルのみで選定されることはまれであろうと思われる。日本の企業年金が事業主あっての制度である以上、主関係金融機関を対象にせざるを得ないことは、一定の合理性があるとは考えられる。 今回の改正の主旨が、加入者向けの運営管理機関の諸サービスに関し、事業主の充分な配慮を要求していることだとすれば、事業主の5年ごとの見直しのために、運営管理機関は日頃から、 自社のサービスレベルの他社比較 選定運用商品の競合マーケットにおける位置づけと正当性の検証 サービスに関わるフィーの相対的なマーケットの位置づけと正当性の検証 を行い、事業主に対する適切なコミュニケーションを図るべきであろう。 法律上は“必要に応じてこれを変更する”となっているが、実務上、運営管理機関変更は、人的・金銭的なコスト負担を事業主に負わせるだけではなく、加入者にとっても、運用資産移換に伴う空白期間の発生により、機会ロスを被ることは確実で、現実にはそう容易ではないことを付け加えておく。  (了)

#No. 125(掲載号)
#秦 穣治
2015/06/25

中小企業事業主のための年金構築のポイント 【第7回】「特別支給の老齢厚生年金(60歳台前半で支給される年金)」

中小企業事業主のための 年金構築のポイント 【第7回】 「特別支給の老齢厚生年金(60歳台前半で支給される年金)」   特定社会保険労務士 古川 裕子   1 特別支給の老齢厚生年金とは 老齢厚生年金は、本来、65歳から老齢基礎年金に上乗せするかたちで支給されるが、一定の受給要件を満たしていれば、60歳から64歳までは特別支給の老齢厚生年金として生年月日に応じて支給される。 年金額(後述)は、原則として、「定額部分」と「報酬比例部分」の2本立てだが、特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢は、改正により段階的に引き上げることになっている。そして、定額部分の引上げはすでに終わっており、現在は報酬比例部分のみが支給されている。 なお、昭和36年4月2日(女性の場合は昭和41年4月2日)以後に生まれた者にはこの報酬比例部分も支給されず、本来の65歳からの支給となる。以下に【第2回】掲載図を再掲する。 (再掲) 〈特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢引上げスケジュ-ル〉 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。   2 特別支給の老齢厚生年金を受給するための要件 〈事例1〉 昭和29年6月6日生まれの男性で、国民年金に10年間加入、厚生年金保険に20年間加入している場合、公的年金の加入期間は30年あるので上記〈要件①〉の受給資格期間25年以上を満たしている。そして、厚生年金保険の加入期間が20年あるため〈要件②〉の「1年以上」を満たしているので、61歳(〈要件③〉支給開始年齢)から下図のとおり、特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分の年金のみ)が受給できる(上記再掲図[G]参照)。 なお、上記〈事例1〉と同じ条件で、女性の場合には、60歳から特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分の年金のみ)が受給できる(上記再掲図[F]参照)。   3 長期加入者と障害者の特例 1のとおり、現在、定額部分は支給されないが、次の①または②の要件に該当したときは、退職している場合に限り、報酬比例部分と合わせて定額部分が支給される。 〈事例2〉 〈事例1〉の男性の場合、上記のとおり61歳から報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金が支給されるが、長期加入者又は一定の障害者で退職している場合は、61歳から定額部分も支給される(下図)。   4 特別支給の老齢厚生年金の受給額 特別支給の老齢厚生年金は、加入期間の長短により決定される「定額部分」と過去の報酬の高低により決定される「報酬比例部分」を合計した額が、生年月日に応じて支給される。 さらに、生計維持関係にある65歳未満の配偶者や18歳未満の子がいるなどの一定の要件を満たした場合には、加給年金が加算される。 [特別支給の老齢厚生年金]=[①報酬比例部分]+[②定額部分]+[③加給年金額]   《おさらいQ&A》   (了)

#No. 125(掲載号)
#古川 裕子
2015/06/25

養子縁組を使った相続対策と法規制・手続のポイント 【第2回】「養子縁組の効果」

養子縁組を使った相続対策と 法規制・手続のポイント 【第2回】 「養子縁組の効果」   弁護士・税理士 米倉 裕樹   [1] はじめに 今回は、普通養子縁組、特別養子縁組を行うことで、いかなる効果が生じるかについて解説する。 両者の効果の違いは、普通養子縁組では、養子と実親との親族関係は消滅せず、縁組後も相互に相続・扶養の権利義務は存続するのに対し、特別養子縁組では、養子と実方(養子からみて、自分の自然血族関係にある親族)の父母及びその血族との親族関係は終了することにある。   [2] 普通養子縁組の効果 1 嫡出子の身分の取得・法定血族関係の発生(民809・727) 養子は縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得し(民809)、養子と養親及びその血族との間においては、血族間と同一の親族関係が生じる(民727)。 ただし、縁組当時に存在した養子の子(いわゆる連れ子)と養親及びその血族との間においては、血族間と同一の親族関係は生じない。 なお、普通養子縁組では、養子と実親との親族関係は消滅せず、縁組後も相互に相続・扶養の権利義務は存続する。 2 養子の親権者(民818) 養子が未成年者であれば、その親権者は養親である。養親が親権者となることによって実親の親権が消滅するかどうかに関し明文は存在しないが、実親の親権は消滅するというのが多数説である。 なお、配偶者のある者が未成年者を養子とする場合には配偶者とともにしなければならないことから(民795本文)、この場合には共同親権となる。 3 養子の氏(民810) 養子は養親の氏を称することとなる。 ただし、婚姻によって氏を改めた者については、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は、養親の氏を称しない(民810ただし書)。 現行民法は夫婦の一方のみが養子となることを認めているため(民796)、例えば婚姻によって夫の氏を称することとなった妻が単独で養親の養子となったとき、養親の氏を称するのではなく、夫の氏(夫婦の氏)を称し続けていくこととなる。 ⇒妻は養子縁組した後も夫の氏(斉藤)を称し続ける。   逆に、この場合の夫が養子となった場合には、本条ただし書の適用はなく養親の氏を称することとなり、夫婦同氏の原則(民750)から妻も養親の氏を称することとなる。 ⇒夫が養子縁組した後、夫婦ともに養親の氏(鈴木)を称する。   4 養子の戸籍(戸籍法18③) 養子は縁組により養親の戸籍に入る。ただし、養親が戸籍の筆頭者及びその配偶者以外の者であるときは、養親について新戸籍が編成され(戸籍法17)、養子はこの戸籍に入る。 5 婚姻障害(民734・735・736) 近親者間の婚姻の禁止、直系姻族間の婚姻の禁止がそれぞれ適用されるだけでなく(民734・735)、離縁による直系血族関係終了後、直系姻族関係終了後においても婚姻は禁止されることとなる(民736)。 つまり、養子縁組によって形成された直系血族間及び直系姻族間での婚姻は、優生学的には禁止する必要がないにもかかわらず、離縁によって終了した後も禁止されることを意味する。 その趣旨は、かつて直系血族関係にあった者の間の婚姻を認めることは親子秩序の権威を損なうこと、直系姻族間でも親子に近い親族的行動様式が存在することから姻族関係終了後であってもこの間の婚姻はかつての関係と矛盾し、ひいては親子秩序の侵害になるとの考えに基づく。 批判も多いが、現行法が採用している立場であり、規定に反した婚姻は取り消しの対象となる(民744①)。   [3] 特別養子縁組の効果 次に、特別養子縁組の効果について解説する。 1 実方との親族関係の終了(民817の9) 養子と実方(養子からみて、自分の自然血族関係にある親族)の父母及びその血族との親族関係は終了する。親族関係の終了により、相続権、扶養の権利義務、面接交渉権その他親族関係の存在を前提として実方の父母及びその血族に生ずるすべての法律効果は発生しなくなる。 ただし、夫婦の一方、例えば夫が妻の嫡出子(特別養子縁組以外の縁組による養子を除く)を特別養子とする場合(連れ子縁組の場合)は、夫のみで縁組をすれば足りるとされているところ(民817の3②ただし書)、このような場合には、夫は養親として妻は実親として夫婦が共同して養子の監護養育に当たることが特別養子縁組の趣旨に合致することから、養子と実方の母(上記例での妻)及びその血族との間の親族関係は終了しない(民817の9ただし書)。 2 離縁の制限(民817の10) 縁組成立後の離縁は、養親の虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由が存在し、かつ実父母に相当の監護能力がある場合に限り、養子、実父母または検察官の請求により家庭裁判所が離縁させることができ、それ以外の場合には離縁できない(いずれの場合も養親からの離縁申立ては認められていない)。 他方、普通養子縁組の離縁については、縁組当事者の協議によって離縁を行うことができるが、協議がまとまらない場合には最終的に裁判による離縁となる(養親からの離縁の申立ては認められている)。 3 養子縁組の一般の効果 特別養子縁組は、養子縁組の特別類型であり、縁組であることには変わりない以上、民法上養子縁組に関する規定は明文で排除されているものや特別養子縁組の規定の趣旨から当然にその適用が排除されるものを除き、特別養子縁組にも適用される。 そのため、養子は縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得し(民809)、養子と養親及びその血族との間においては血族間におけるのと同一の親族関係が生じ(民727)、養親の氏を称し(民810。ただし、婚姻によって氏を改めた者については、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は養親の氏を称しない(民810ただし書))、養親の親権に服する(民818)。婚姻障害(民734・735・736)についても同様である。 4 戸籍の処理 戸籍の処理に関しては、できるだけ実子と同様の記載がなされる。 すなわち、特別養子が養親と戸籍を異にしている場合には、特別養子縁組の届出によって、まず特別養子について養親の氏で従前の本籍地に新戸籍を編成した上、直ちにその新戸籍から特別養子を養親の戸籍に入籍させる(戸籍法20の3①・18③・30③)。 この場合、できるだけ実子と同様の記載をするという配慮から、「特別養子縁組」、「実父母」、「養子」等の字句は使用せず、特別養子の身分事項欄に「〇年〇月〇日民法817条の2による裁判確定」と間接的に記載されることとなる。 これに対し、特別養子が既に養親の戸籍に在籍している場合には(普通養子を特別養子とするような場合)、特別養子縁組の届出によってその戸籍の末尾に特別養子を記載した上、従前特別養子が記載されていた戸籍の一部を削除する(戸籍法20の3・14③・戸籍法施行規則40③)。 (了)

#No. 125(掲載号)
#米倉 裕樹
2015/06/25

現代金融用語の基礎知識 【第19回】「デビットカード」

現代金融用語の基礎知識 【第19回】 「デビットカード」   事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹   1 デビットカードとは デビットカードとは、それを使って買い物をすると、金融機関の預貯金口座から即座に代金が引き落とされるカードである。キャッシュカードとクレジットカードの中間といった感じのデビットカードだが、まだクレジットカードほど利用されてはいない。   2 クレジットカードとの違い クレジットカードで買い物をすると、後日まとめて代金が請求される。それまでの間、クレジットカード会社から代金分のお金を借りていることになる。そのため、預貯金口座残高とは関係なく、予め設定された限度額の範囲内で利用することができる。 それに対して、デビットカードの場合は、買い物時に預貯金口座から即座に代金が引き落とされ、利用は預貯金口座残高の範囲内に限られる。支払方法も、一括払いのみである。 デビットカードの「デビット(debit)」は「借方」、クレジットカードの「クレジット(credit)」は「貸方」の意味であり、両者は、「利用者への信用の供与の有無」という点で相対立するものなのである。クレジットカードと異なり、デビットカードには利用者への信用の供与がない。そのため、発行に当たっての事前審査は必要とされない。 〈デビットカードとクレジットカードの違い〉   3 デビットカードを持っているか? 「クレジットカードを持っているか?」という問いには、多くの方が「持っている」と答えるかと思うが、「デビットカードを持っているか?」という問いに「持っている」と答える方は少数ではないだろうか。しかし、デビットカードは持っていないと思っている方も、おそらく持っているはずである。 実は、ほとんどの方が持っているはずのキャッシュカードがデビットカードなのである。   4 Jデビットとブランドデビット 利用したことがある方は多くないかもしれないが、実はキャッシュカードで買い物をすることができる。すなわち、キャッシュカード自体がデビットカードであり、これは「Jデビット」と言われるものである。一見すると、便利そうな仕組みなのだが、利用が国内に限られることや、利用可能時間が限られることなどにより、クレジットカードほど利用が進んでいない。 しかし、VISAやJCBのブランドのデビットカードが発行されるようになったことから、状況が変わりそうである。それらのデビットカードは、Jデビットと異なり、世界中で利用するこができ、利用可能時間も限られていない。 デビットカード普及の障害が取り除かれたため、近いうちに日本でもデビットカードがクレジットカードと同様に一般的なものとなるかもしれない。 〈日本のデビットカード〉 (出所) 「日本経済新聞」平成27年3月30日   (了)

#No. 125(掲載号)
#鈴木 広樹
2015/06/25
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