《編集部レポート》 日本公認会計士協会東京会、メディア懇談会を開催 ~会計教育や中小企業支援等の取組みを説明 Profession Journal 編集部 日本公認会計士協会東京会は平成27年1月23日(金)、明治記念館において同会の新年賀詞交歓会開催後、報道陣とのメディア懇談会を開催した。 会の冒頭、柳澤義一会長より、2月上旬から一部交通施設内で展開される公認会計士のPR看板について、坂本龍馬が手紙に記した「これより天下のことを知る時は、会計もっとも大事なり。」という言葉を用い、“龍馬と会計”という意外な組み合わせで会計の大切さを伝えたいとの趣旨説明が行われた。 続いて峯岸芳幸業務部担当副会長より、東京会と東京弁護士会中小企業法律支援センターとの中小企業支援に関する活動状況について説明があった。 報道陣より公認会計士が法律業務に関する取組みを行うことについて質問があったが、中小企業は弁護士との接点が少ないため、会計事務所として日常から企業支援を行っている公認会計士がそのつながりとなる役割を果たしたい旨、説明があった。 前原一彦広報部担当副会長からは、東京弁護士会との共催企画である会計教育・法教育イベント「スプリングスクール2015~会計と裁判を体験しよう~」における「ハロー!会計」の取組みについて、さらに東京会の紹介とこの取組みに関するテレビ番組企画(TOKYO MXテレビ放映)についての説明があった。 なお、上記のイベント「ハロー!会計」は中学1~2年生を対象とし、ビジネスゲームを通じて会計の基本的な考え方を学んだり、株式会社の仕組みや監査の必要性について学ぶことができるもので、3月15日(日)、公認会計士会館地下1階ホールにて開催される(東京会のホームページより参加申込みが可能)。 (了)
最新!《助成金》情報 【第9回】 「雇用関連助成金の活用(その9) 《建設労働者確保育成助成金(前編)》」 特定社会保険労務士 五十嵐 芳樹 建設労働者確保育成助成金の目的 この助成金は、建設労働者の雇用改善や技能向上を行う中小建設事業主を助成することで、中小建設企業における若年労働者の確保育成と技能伝承を図りながら建設労働者の雇用を安定させることが目的であり、次の12種類のコースがある。 建設労働者確保育成助成金の対象となる 中小建設事業主・中小建設事業主団体 【対象となる中小建設事業主】 この助成金の対象となる中小建設事業主とは、資本金3億円以下または常用労働者数300人以下で建設労働者を雇用して建設業を行う事業主をいう。また、コースごとに対象となる事業主や事業所が異なるため、事前に確認する必要がある。 【対象となる中小建設事業主団体】 この助成金の対象となる中小建設事業主団体とは、構成員の3分の2以上が中小建設事業主である建設事業主団体をいう。 1 対象事業主 この助成金は、認定訓練を実施する事業主を助成することで、建設労働者の技能を向上させ雇用の安定を図ることを目的とする。 対象となるのは、経費助成では中小建設事業主又は中小建設事業主団体となり、賃金助成では中小建設事業主となる。 2 実施する訓練の要件 この助成金の対象となる訓練とは、職業能力開発促進法により都道府県知事から認定を受けた広域団体認定訓練助成金又は認定訓練助成事業費補助金の交付を受けている認定職業訓練を行うことであり、賃金助成を受けるにはさらに有給で認定職業訓練を受講させることである。 3 支給額 受講した建設労働者1人につき訓練の種類に応じて下表の単価に受講月数、コース数又は単位数に乗じた額が支給される。 【経費助成】 【賃金助成】 認定訓練を受講した建設労働者1人1日当たり5,000円 4 手続の流れ 5 活用のポイント 建設事業の中でも特に中小企業では、若年者を中心とした人材確保に大きな支障が生じているが、充実した職業訓練制度を整えることにより建設業の初心者にとっては応募に対する心配が低減する効果が期待でき、また、技能士資格や管理監督者などの訓練があれば資格取得や能力向上できることが魅力的にもなるため、人材確保に苦労している中小建設事業主にとってこの助成金はかなり有効である。 1 対象事業主 この助成金は、雇用する建設労働者に対して技能向上のための技能実習を有給で実施する中小建設事業主を助成することで、建設労働者の技能向上と中小建設事業全体の技術レベルを向上させて雇用の安定を図ることを目的としており、対象となるのは経費助成では中小建設事業主又は中小建設事業主団体となり、賃金助成では中小建設事業主となる。 2 実施する訓練の要件 雇用する建設労働者に、登録教習機関などで技能向上のための一定の技能実習を実施することであり、賃金助成を受けるにはさらに有給で技能実習を受けさせる必要がある。 3 支給額 [Ⅲ] 技能実習コース(経費助成) 登録教習機関などで実施された技能実習に要した経費の9割が支給される。指定教育訓練実施者に委託した場合は経費の8割が支給される。ただし、1つの技能実習について1人当たり20万円を上限とする。なお、被災3県(岩手県、宮城県、福島県)については経費の10割が支給される。 [Ⅳ] 技能実習コース(賃金助成) 有給で技能実習を受講した建設労働者1人1日当たり8,000円が支給される。ただし、1つの技能実習につきに20日分以上を上限とする。 4 手続の流れ 5 活用のポイント 専門の教育機関などによる技能教育は、実践的で職務上の技術や能力の向上、労働災害の防止にも有効であり、社員の能力技能の向上に伴い雇用する中小建設事業全体の技術レベルの向上も期待できる。また、多種ある建設作業に応じた法定の特別教育や技能訓練などを受講できれば担当させられる作業の種類も拡大するため、中小建設事業主にとってこの助成金の活用はかなり有効である。 1 目的 この助成金は、評価・処遇改善、研修体系制度、健康づくり制度などの雇用管理を改善する制度を導入・適用する中小建設事業主を助成することで、労働者の確保育成と雇用の安定を図ることを目的とする。 対象となるのは中小建設事業主となるが、計画期間の6ヶ月前の日から支給申請日までに解雇(勧奨退職含む)していないか、特定受給資格者を6%以上(3人以下を除く)発生させていないことが必要となる。 2 雇用管理制度の要件 (1) 評価・処遇制度 次のすべてに該当する制度。 (2) 研修体系制度 次のすべてに該当する制度。 (3) 健康づくり制度 次のすべてに該当する制度。 3 支給額 4 手続の流れ * * * [Ⅵ]~[Ⅻ]は次週(2015/2/5)公開の【第10回】で紹介する。 (了)
〔2015年からできる!〕 企業が行うマイナンバー制度への実務対応 【第4回】 (最終回) 「対応を進めるにあたっての留意点(まとめ)」 仰星監査法人 公認会計士 岡田 健司 前回は、マイナンバー制度への実務対応の全体像並びにその進め方について、大きく2つの段階に分けて対応する点を解説した。 このシリーズ最終回となる本稿では、前回までの解説内容を踏まえたうえで、個々のフェーズにおいて、実際にどのようなポイントや留意事項があるのかという点について解説したい。 1 実務対応の全体像とその進め方の概要 前回解説したとおり、実務対応の進め方の手順としては、概ね次のような手順を経る。 また、第2段階の個々の業務における業務の見直しとしては、具体的に大別すると、 をいう。 それでは、これら個々のフェーズにおける論点の洗い出しを行い、実際に対応を行うにあたってのポイントや留意点について解説する。 2 第1段階(特定作業)のポイントと留意点 留意点としては、いかに漏れなく正確に特定するか、である。 関連する法令等の原文からあたっていくことも一案ではあるが、効率的に進めるためにも前回紹介した資料等を参考にして、漏れなく正確に把握することに取り組まれたい。 また、進めるにあたっては、第2回で解説した重要な“3つの考え方”のうち、「個人番号の“目的外入手”の排除」と「個人番号の“目的外提供・目的外出力”の排除」を念頭に進めたい。 そのためのポイントであるが、 などが挙げられる。 特に、人事給与システムあるいは会計システムについて自社製作しているような場合には、法定調書等の把握が漏れやすく、この漏れが次の第2段階における作業効率に影響があることから、留意したい。 また、第2段階の業務の見直しを踏まえると、当該法定調書等について、個人番号の入手相手が誰か、本人確認の対象者であるかどうか、当該法定調書等の2次提供(※1)の有無、提出先、提出時期・提出頻度(※2)、保管期間、システム出力か否かなどを併せて把握できるような形式でとりまとめを行っておくとよい。 (※1) 例えば、源泉徴収票は本来的な作成目的である、年末調整目的、市町村報告目的、確定申告目的など以外に、従業員が個人的に住宅ローンの審査目的で金融機関等に提出することも想定される。前者を本来的な提供「1次提供」とし、後者を「2次提供」と称している。なお、ここで「本来的」としたのは、行政事務の遂行目的、あるいは、個人番号関係事務の遂行目的でという意味である。2次提供の有無を把握しなければならないのは、この場合には個人番号の提供は認められないことから、マスキング処理や個人番号をそもそも出力しないようなシステム処理を施す必要があるためである。 (※2) 提出時期や提出頻度の把握は、例えば、上場会社が内部統制報告制度への対応にあたって統制頻度を考慮するのにも役立つものと思われる。 参考として、以下にこれらの把握に資するような様式のサンプル例を示しておく。なお、実務の参考に提供するものであり、サンプルで示した様式が実務対応にあたって必要な情報のすべてを網羅したものではない点を付言しておく。 【特定作業に使用するサンプル様式】 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 上記のサンプル様式では、仮に「業務カテゴリ」として区分したが、企業内におけるどの業務に関する帳票かも特定しておくことで、第2段階の業務見直しにおいて、どの業務に影響があるのかの把握につながる。また、提出先を把握しておくことで、当該帳票の入手や提出にあたっての留意点や、本人確認資料(身元確認資料)(※3)の具体的な内容等を照会しやすくなると思われる。 (※3) 原則的には、本人確認は個人番号カードあるいは個人番号の通知カードと運転免許証等の組み合わせによることとされているが、これらによることができない場合には、基本的には提出先の行政機関等(個人番号利用事務実施者)が適当と認める方法によることとされている。 3 第2段階(業務の見直し)のポイントと留意点 (1) 業務フローや業務組織の見直しにあたって 見直しにあたってポイントとなる考えは、 及び である。 実務的には、業務フローは前回(第3回)で掲載したとおり、個人番号が記載される法定調書等(※4)に関連する業務について、番号法施行前後のフローチャートを対比する形で比較すると、業務の見直しが必要な点を特定でき、対応が図りやすくなると思われる。これらの可視化は、内部統制報告制度への対応が必要となる上場会社では特に必要であると考えられる。 (※4) 繰り返しとなるが、これが一般的には「特定個人情報」と呼称される。 業務フローや組織全体の見直しに際し、業務としてこれまで一般の事業会社になかったものが「(番号確認を含む)本人確認」である。 そこで、論点としては、いかに「本人確認」という業務を企業内の関係する部署において定着・浸透させるか、という点が挙げられる。 本人確認とは、名称のとおり、提示を受けた個人番号が確かにその本人のものであることを証明するために、個人番号とその本人とを結びつける作業である。 その原則的な方法には、既述のとおり、個人番号カードによる方法と、個人番号の通知カードと運転免許証等の組み合わせによる方法とがあり、下図がこれらを概念的に示したものである。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 つまり、個人番号の提示を受けるその本人からこれらの書類の提示を受け、個人番号が確かにその本人のものであることを確かめる一連の作業が本人確認である。本人から個人番号の提示を受ける場合、その都度本人確認が必要となる点については原則論として理解しておきたい。 本人確認の方法については以下の内閣官房ホームページにおいて示されているものの、当該資料は民間の事業会社だけでなく、行政機関等が本人確認を行う場合も念頭に置いて作成されていることから、資料としては網羅的ではあるが非常にわかりくにいものとなっている。 代理人を通じた方法も含め本人確認の詳細については別の機会において詳しく解説することとしたい。本誌読者におかれては、上記に紹介した2つの方法のいずれかを原則的な方法とすれば制度導入当初は特段の問題は生じないと考えられることから、これらの方法を原則的な方法とするよう業務の整備を進めていただければよいと考える。 また、ガイドラインを踏まえた業務組織の構築という点については、ガイドラインの例示を引用すれば、 特定個人情報の取扱い事務に従事する事務取扱担当者を明確にすること 情報漏えい等の事案が発生した場合等において従業員から責任者等への報告連絡体制を構築すること 特定個人情報を複数の部署で取り扱う場合において各部署の任務分担及び責任を明確化すること 特定個人情報等の取扱いに関する留意事項等について従業員に定期的に研修等を行うこと などが挙げられている。 つまりは、特定個人情報は極めて重大な個人情報であることから、取扱部署を限定するとともに、情報漏えい等が起こらないように相互のチェック体制・特定個人情報等の管理体制を充実させよ、ということである。 (2) 規程や社内マニュアル等の改訂 上記の業務フローや業務組織の見直しに伴い、就業規則(※5)、職務分掌規程(※6)、組織規程等の改訂、並びに特定個人情報取扱規程等の策定が必要になると考えられる。 (※5) 特定個人情報等についての秘密保持に関する事項、入社時に関係する個人番号を提示することなどを就業規則に織り込むことが考えられる。 (※6) 上記(1)の業務組織の構築、相互のチェック体制・特定個人情報等の管理体制の充実の要請を受け見直しすることになると思われる(組織規程についても同様)。 また、新たに業務として追加になる本人確認については、番号法が要求する一定の水準で適切に本人確認を行うためにも社内マニュアル等の策定が必要になると考えられる。総務人事にかかる業務マニュアルやシステム利用マニュアル等を社内で策定している場合も同様に改訂のための見直しが必要になると考えられる。 本人確認を行うための社内マニュアルについては、本人確認は概ねどの企業においても同じ方法を採ると思われることから、先例に倣うという方法も考えられること、今後も関係する行政機関等(個人番号利用事務実施者)から通知等という形で必要な情報提供を受けられるものと考えられる。実務的に悩ましいのは、企業の事業や組織形態に応じて新たに策定が求められる特定個人情報取扱規程等の策定である。 ガイドラインによれば、「取扱規程等」とは、特定個人情報が関係する個々の事務において事務の流れを整理し、特定個人情報等の具体的な取扱いを定めるもの、と規定されているが、文言どおり解して個々の事務ごとに規定するとなれば、膨大な量の規程となるばかりか、制定後個々の事務の見直しごとに改訂が必要という状況となる。 そこで、特定個人情報等の全般的な取扱いを定める規程として取扱規程を定め、個々の事務に関する規定については既存の規程やマニュアル等を改訂のうえ参照するように取扱規程において定めることが実務的であると考えられる。 この点も踏まえて、ガイドラインのQ&Aにおいては、新たに特定個人情報の保護に係る取扱規程等を作成するのではなく、既存の個人情報の保護に係る取扱規定等を見直し、特定個人情報の取扱いを追記する形でもよいとされている(Q13-1参照)。 (3) 関係する情報システム等のバージョンアップやシステム改修 標準的・汎用的な情報システムあるいはソフトウェア等を利用している場合には、基本的にはベンダーからの番号法に対応したバージョンアップ版の提供を待つことにはなるが、対応方針及び対応スケジュールについてベンダーに早めに確認しておくべきことは、これまで繰り返し述べてきたとおりである。 また、人事給与関係システムを自社で内製製作している場合、あるいは外注して製作している場合には大幅なシステム改修が必要となるため、早急にシステム改修に向けた取組みが必要である。 対応スケジュールについてであるが、実際に個人番号を利用しての行政事務は最短で2016年1月(※7)からである。 (※7) 2016年1月に新入社員が入社し被保険者資格取得届等を提出する場合、2016年1月に社員が退社し退職所得に係る源泉徴収票や健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届を提出する場合などである。 従業員数の多い企業において最も実務的に影響の大きいものの1つに年末調整があり、個人番号を利用しての年末調整は2017年1月末期限であることから、システム改修の対応は最長で2017年1月末までであり、その間は手作業で対応も可能とする主張も聞くところである。 しかし、2016年度の上期には標準報酬月額算定基礎届を、賞与支払時には健康保険・厚生年金保険被保険者賞与支払届を提出しなければならない。取扱規程等や社内マニュアルは、利用するシステム等が番号法対応となり運用したことを前提にその内容を改めるのが効率的であり、実務的である。 やはり、システム改修の期限は2015年度中とすべきである。テスト運用期間も考慮に入れると、できるだけその期限を早く設定することが望まれる。 なお、システム改修のポイントや詳細な解説については別の機会に譲るが、前提としては本連載でたびたび登場した、重要な“3つの考え方”を踏まえることが重要である。これらの考えを常に考慮に入れて臨めば、システム設計において重大なミスは発生しないものと考える。 なお、システム改修にあたって織りこむべき機能を例示すれば、 個人番号利用事務等に関係しない場面での個人番号の非表示機能・マスキング機能 個人番号あるいは特定個人情報へのアクセス制限 不正アクセス検知機能 個人番号あるいは特定個人情報へのアクセスログ記録 個人番号あるいは特定個人情報の出力ログ記録 個人番号削除・廃棄予定者リストアップ機能 特定個人情報等廃棄期限表示機能 電子媒体での特定個人情報等の持ち出し制限機能 などが挙げられる。 情報保護の観点から必要になると考えられる機能を筆者において例示したが、これらの機能追加も見据えて、業務の見直しに応じたシステム改修に取り組んでいく必要がある。 (連載了)
現代金融用語の基礎知識 【第14回】 「不適当合併等」 事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹 1 「裏口」で始まる言葉とは? 「裏口」で始まる言葉といえば、多くの人は「裏口入学」を思い浮かべるのではないだろうか。しかし、筆者の場合は、証券会社に勤務していたこともあり、「裏口上場」を思い浮かべる。 裏口入学とは、学校関係者に金銭を支払うことにより入学試験の点数を改竄して、学校への入学を果たすことである。株式市場に上場するに当たっても、入学試験ではないが、証券取引所による上場審査がある。それでは、裏口上場とは、証券取引所関係者に金銭を支払うことにより上場審査を通過させてもらい、上場を果たすことなのだろうか。 裏口入学も裏口上場も、ともに正規でない方法により入学や上場を果たすことであるが、方法は異なる。裏口上場の方は、証券取引所関係者に金銭を支払うのではなく、上場企業を利用することにより上場を果たすのである。 例えば、非上場企業が上場企業に吸収合併してもらうといった方法をとる。そうすることにより、非上場企業の非上場株式が、証券取引所による上場審査を受けることなく、上場株式となるのである。 【図表】 裏口上場の方法 2 裏口上場を防ぐには 大学全入時代などといわれ、一昔前ほど受験競争が厳しくなくなったため、裏口入学の需要は減少傾向にあるのかもしれない(有名校等への裏口入学の需要は依然としてあるのかもしれないが)。それに対して、裏口上場の需要は、上場を目指す企業の数が最近また増えてきているため、増加傾向にあるのではないだろうか。 しかし、裏口上場が放置されたら、どうなるだろうか。上場を目指す全ての企業が、証券取引所による厳しい上場審査を避けて、裏口上場を選択することになるだろう。そうなれば、上場企業の質を担保できなくなる。株式市場に流通する株式はどれも不良品ばかりということになり、それらを購入しようとする投資家はいなくなり、株式市場は成立しなくなってしまうだろう。 そこで、証券取引所は、裏口上場を防ぐため、上場企業が「不適当合併等」を行った場合、あらためて上場審査に準じた審査を行い、その審査に通過しなければ、上場廃止にするという措置をとっている。不適当合併等とは、上場企業が実質的な存続企業とはいえないM&Aで、例えば、自社よりも規模の大きな非上場企業を吸収合併したような場合である。そうした場合、形式的には上場企業が存続企業でも、実質的には非上場企業の方が存続企業であると考えられるのである。 最近の事例では、上場企業の株式会社FXプライムbyGMOが非上場企業のGMOクリックホールディングス株式会社と平成27年4月1日に行う株式交換が不適当合併等に当たると判断されている。 3 非上場企業とのM&Aは要注意 ということは、不適当合併等に当たると判断されなければ、裏口上場は可能なのである。証券取引所による措置は、全ての裏口上場を防いでいるわけではない。例えば、ある非上場企業が、裏口上場を意図して、自社よりも規模の大きな上場企業に吸収合併される場合などは、特に問題とされないのである。 だからといって、ここで小規模な非上場企業の裏口上場を勧めているわけではない。上場企業が非上場企業とM&Aを行う場合、注意してほしいのだ。証券取引所による措置は、裏口上場の意図を問うわけではない(もとより、「裏口上場します」と宣言して裏口上場する企業などない)。あくまで上場企業の実質的存続性の有無が判断される。 裏口上場を意図してではなく、あくまで経営上の必要から行った非上場企業とのM&Aが、不適当合併等に当たると判断されてしまうことがあるのである。不適当合併等に当たると判断されると、あらためて上場審査に準じた審査を受けなければならなくなり、もしもその審査に通過しなければ、上場廃止になってしまう。非上場企業とのM&Aには、そうしたリスクが含まれていることを留意しなければならない。 なお、拙著『検証・裏口上場-不適当合併等の事例分析』は、不適当合併等に当たると判断された多くの事例を検証しており、証券取引所の考え方がわかるため、上場企業が非上場企業とのM&Aを検討する際に参考になると思われる。 (了)
プロフェッションネットワーク主催セミナー 「税理士 笹岡 宏保氏による【1日で理解する】セミナーシリーズ」 【実務で留意しておきたい】 みなし贈与の実務論点 ~裁決事例を判断材料として~ 株式会社プロフェッションネットワーク主催の笹岡宏保氏セミナー「【実務で留意しておきたい】みなし贈与の実務論点~裁決事例を判断材料として~」の開催が、2月2日(月)と近づいてまいりました。 お申込受付は、本日29日(木)の17時までとなりますので、ご注意ください。 ※受付は終了しました。 セミナー内容の詳細やお申込方法など、くわしくは下記からご覧ください。
《速報解説》 平成27年4月1日以後開始の税務調査より再調査手続が見直しへ ~実地調査以外の調査は「新たに得られた情報に照らし非違がある」事実なくとも 質問検査等が可能に(平成27年度税制改正大綱)~ 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 1 はじめに 衆議院議員選挙の影響もあって決定が遅れていた、与党による平成27年度税制改正大綱が昨年12月30日に公表され、1月14日閣議決定された。 本稿では、平成23年度税制改正の目玉であった「税務調査手続(国税通則法第74条の2から第74条の13)」の一部に関し今回の大綱で示された改正点について、これまでの通達・事務運営指針の規定と比較検討しながら、概要をまとめておきたい。 2 平成27年度税制改正における調査手続の見直し 調査手続についての見直しは以下の2点である。 (1) 再調査について 調査終了後の再調査の要件である「新たに得られた情報に照らし非違があると認められる」という規定について、前回調査の範囲を「実地の調査」に限ることとしたものである。 (2) 複数の税務代理人がある場合の調査の事前通知について 複数の税務代理人がある場合の事前通知については、これまで特段の規定がなかったところ、納税者が「代表となる税務代理人」を定めることにより、代表となる税務代理人に事前通知を行えば、他の税務代理人への通知は不要であることを定めたものである。 3 これまでの調査手続規定と改正による変更点 (1) 再調査に関する規定の推移 再調査に関しては、通則法第74条の11第6項に規定が置かれ、「当該職員は、新たに得られた情報に照らし非違があると認めるとき」には、質問検査等を行うことができるとされている。 その後公表された国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達5-6において、「前回の調査」には、異議決定又は申請等の審査のために行う調査は含まれないこと、移転価格調査を行った後に移転価格調査以外の部分の調査を行うときは、移転価格調査外の部分の調査は再調査には当たらないことが、定められている。 本年の税制改正大綱により明確化が図られたのは、再調査の前提となる前回調査の範囲を「実地の調査」に限ることとした点にある。 つまり前回調査が、実地の調査以外の調査、例えば、行政指導や机上調査であった場合には、再調査の要件である「新たに得られた情報に照らし非違がある」という事実がなくとも、質問検査等が可能であるということとなる。 (2) 事前通知に関する規定の推移 税務調査の事前通知に関しては、通則法第74条の9の規定により、「あらかじめ、納税義務者(税務代理人を含む。)に対し、通知する」と定められていたところ、昨年3月の改正により、同条に第5項が加わり、納税義務者の同意がある場合には、納税義務者への通知は、税務代理人に対してすれば足りることとされ、当該改正に伴って、税務代理権限証書の様式が改定され、「調査の通知に関する同意」欄が設けられた。 本年の税制改正大綱では、複数の税務代理人がある場合の取扱いを明確化したものであり、現時点では、通則法第74条の9第5項の文言が修正されるのか、第6項が付加されるのかは不明だが、税務代理権限証書の様式が再度改定されるか、新たに、代表税務代理人を選任する届出書が定められることになろう。 4 適用時期と実務への影響 再調査に関する改正は、再調査の前提となる前回調査が平成27年4月1日以後に開始され、その前回調査後に行う再調査について適用することとされ、事前調査に関する改正は、平成27年7月1日以後に行う事前通知について適用することとされている。 再調査ができる場合を、「新たに得られた情報に照らし非違があると認められるとき」と制限した通則法の規定は、除斥期間が満了するまでは何度でも再調査される可能性があった改正前と比較すれば、納税義務者の予見可能性を高めることに寄与したものであると思料するものである。 しかし、「前回の調査」に該当しない調査の範囲がなし崩し的に拡大されるようであれば、規定が骨抜きになってしまう懸念が生じることになる。こうした懸念は、通則法改正後に、行政指導文書の発出が増加している現状を鑑みれば、根拠に乏しい懸念とも言えないのではないだろうか。 (了)
《速報解説》 地方への本社機能移転・拡充を図る「地方拠点強化税制」が創設 ~オフィス減税と雇用促進税制の2本立て(平成27年度税制改正大綱)~ 税理士法人オランジェ 代表社員 税理士 小幡 修大 地方創生のためには、地方で生まれ、地方で育ち、地方で働きたい若者のための働く場が不可欠である。 「平成27年度税制改正大綱」(2015年1月14日閣議決定)では、本社機能(※)の地方への移転や地方の本社機能の拡充、雇用の創出に取り組む企業を支援するために、本社等の建物に係る特別償却制度等が創設されるとともに、雇用促進税制の特例が時限立法として設けられることが明らかとなった(大綱57頁)。 (※) 本社機能とは、経営意思決定、経営資源管理(総務、経理、人事)、各種業務統括(研究開発、国際事業等)などの事業所をいう。工場及び当該地域を管轄する営業所棟は含まない。 (1) 地方拠点建物等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度(オフィス減税)の創設 ① 制度概要 (※1) 承認は、地域再生法の改正法の施行の日(平成27年8月10日:追記)から平成30年3月31日までに受ける必要がある。 (※2) その地方拠点強化実施計画(仮称)がその法人の同法の特定施設(仮称)の同法の特定地域(仮称)から同法の大都市等(仮称)以外の地域への移転に関するものである場合に適用される。 ② 平成29年3月31日までに取得等した場合の特別控除の上乗せ 地域再生法の改正法の施行の日(平成27年8月10日:追記)から平成29年3月31日までの間に地方拠点強化実施計画について承認を受けた法人が取得等をしたものについては、特別償却との選択の上、税額控除額がその取得価額の4%(その地方拠点強化実施計画がその法人の特定施設の特定地域から大都市等以外の地域への移転に関するものである場合には、7%)とされる。 ③ 地方税への適用 法人住民税及び法人事業税について、特別償却は適用される。税額控除については中小企業者等に係る法人住民税に適用される。 【参考図】 オフィス減税のイメージ (※) 経済産業省ホームページ (2) 雇用促進税制の拡充 ① 制度概要 (※1) 承認は地域再生法の改正法の施行の日(平成27年8月10日:追記)から平成30年3月31日までに受ける必要がある。 (※2) 法人全体の増加雇用者数が上限とされる。 (※3) この控除を受ける場合には、現行の雇用促進税制の適用の基礎となる増加雇用者数から、この措置の適用の基礎となる増加雇用者数を控除する必要がある。 ② 特定施設の特定地域から大都市等以外の地域への移転に関するものである場合の特例 上記適用対象年度のうちその適用を受ける事業年度以後の各事業年度(その特定施設である事業所における雇用者数又は法人全体の雇用者数が減少した事業年度以後の事業年度を除く)において、適用対象年度のうちその事業年度以前の各事業年度のその特定施設である事業所における増加雇用者数の合計数に30万円を乗じた金額の税額控除ができる措置が講じられる。 ただし、この措置は、事業主都合による離職者がある場合及び風俗営業等を行っている場合には適用されない。 ③ 税額控除の上限 上記①及び②による税額控除は、当期の法人税額の30%から現行の雇用促進税制による税額控除と上記(1)の税額控除制度による税額控除との合計額を控除した残額が上限とされている。 ④ 地方税への適用 中小企業者等に係る法人住民税について同様に適用される。 【参考図】 雇用促進税制(特例措置)のイメージ (※) 経済産業省ホームページ (了)
《速報解説》 JICPAより「職業倫理に関する解釈指針」の改正(公開草案)が公表 ~英文財務諸表への移行に関する助言・指導等、 IFRS適用を想定した内容も~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成27年1月19日付で、日本公認会計士協会は、「「職業倫理に関する解釈指針」の改正について」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 「職業倫理に関する解釈指針」は、日本公認会計士協会の会員のために、職業倫理に資する適切な事案等を解釈指針として取りまとめたものである。 解釈指針には、一般事業会社が公認会計士等に業務を依頼するに際して、参考となる記載内容も見られるので、本稿で取り上げることとする。 意見募集期間は、平成27年2月19日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な改正内容 以下では、主な改正内容を取り上げるが、項目によっては、従来から記載されているものもある。 1 英文財務諸表への移行に関する助言・指導 Q23では、「英文財務諸表への移行に関する助言・指導」について記載されている。 ここでは、被監査会社等が日本基準で作成する財務諸表の英文財務諸表への移行(以下「英文財務諸表への移行作業」という)に関する助言・指導に当たっては、次の点に留意する必要があるとしている。 いずれの場合にも、会計事務所等においては、監査の独立性が確保されるよう、業務内容について、明確な品質管理方針及び手続を定め、これを適切に実施することが必要であるとしている。 2 「大会社等」である監査業務の依頼人への就職 Q4-2では、「大会社等」に適用される規制の内容として、「「大会社等」である監査業務の依頼人への就職」について記載されている。 監査業務の主要な担当社員等であった場合には、自らが当該監査業務の主要な担当社員等でなくなった後に、「大会社等」が1年以上を対象とした監査済みの財務諸表を発行するまでは、当該大会社等である監査業務の依頼人の役員等に就いてはならないとされている。 これについて、公認会計士法等の法令においては、業務執行社員は翌会計期間の終了の日まで監査関与先への就職が制限されているが、独立性指針において就職が制限される期間は法令で定める期間とは異なることに留意が必要であると述べている。 例えば、監査役として、公認会計士に就任を依頼する場合には、上記の記載に注意が必要と考えられる。 3 社員等の就職制限 Q30-1では、「監査業務の主要な担当社員等が、監査法人を退職後に、関与していた監査業務の依頼人(大会社等)の役員等に就任することは可能でしょうか。」との質問に対して、次のように記載されている。 4 セカンド・オピニオン Q9では、セカンド・オピニオンを取り上げている。 倫理規則20条及び注解17のセカンド・オピニオンは、特定の取引等における会計、監査、報告又はその他の基準もしくは原則の適用について、依頼人の要請に基づいて、現任会員以外の会員が意見の表明を行うことであるとしている。 セカンド・オピニオンの表明においては、現任会員が入手した事実と同一の事実に基づかないで意見を表明してしまうことなどにより、正当な注意の原則の遵守を阻害する要因を生じさせる可能性がある点に十分に留意する必要があるとし、倫理規則20条注解17では、セーフガードとして以下を挙げているとしている。 (了)
《速報解説》 ふるさと納税、控除限度額を2倍に引き上げ「ワンストップ納税制度」を創設 ~都道府県等への要請により確定申告が不要に(平成27年度税制改正大綱)~ 税理士 仲宗根 宗聡 1 はじめに 「平成27年度税制改正大綱」(平成27年1月14日閣議決定)において、ふるさと納税を促進し、地方創生を推進するため、個人住民税の特例控除額の控除限度額の上限を引き上げとともに、ふるさと納税を簡素な手続きで行える「ふるさと納税ワンストップ特例制度」の創設が明記された(大綱p28)。以下ではその内容についてまとめることとする。 (※) 2015/1/23 編集部追記 上記下線部について、本稿公開時点では「控除限度額」としていましたが、正しくは「特例控除額の控除限度額」です(以下同様)。 2 ふるさと納税とは 都道府県又は市区町村に対して寄附をした場合、その寄附金合計額から2,000円を控除した額が控除限度額まで、個人住民税の計算上、税額控除される。 3 控除限度額の引上げ 平成28年度分以後の個人住民税については、特例控除額の控除限度額が個人住民税所得割額の2割(現行1割)に引き上げられる。 4 「ふるさと納税ワンストップ特例制度」の創設 現行では、個人住民税の寄附金税額控除の適用を受けるためには、確定申告が必要である。 しかし、手続きの簡素化のため、確定申告が不要な給与所得者等が寄附を行った場合、次のとおり寄附先の都道府県又は市区町村が、寄附者に代わって税額控除の手続きを行うことができるようになる。 5 地方団体への良識ある対応を要請 なお、ふるさと納税が活況を呈している現況に対し、大綱では以下のような表記がある(大綱p28)。 (了) ↓お薦め連載記事↓
《速報解説》 「会社法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」が公布 ~改正会社法は「平成27年5月1日」施行で確定~ Profession Journal編集部 監査等委員会設置会社や多重代表訴訟制度の導入、社外取締役の準義務化などが織り込まれた改正会社法の施行期日は政令委任となっており、法務省ホームページではすでに「平成27年5月1日から施行することを予定しています。」との記載がみられたが、本日(平成27年1月23日)の官報号外第14号において「会社法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」が公布され、「平成27年5月1日」であることが確定した。また官報同号では「会社更生法施行令の一部を改正する政令」が公布されている。 なお、改正会社法に係る法務省令はパブリックコメントに付されていたが、昨年12月25日をもって募集は終了している(法務省令案の概要については以下を参照)。 (了)