女性会計士の奮闘記 【第29話】 「そのアドバイス、踏み込みすぎていませんか?」 公認会計士・税理士 小長谷 敦子 * * * ◆ワンポントアドバイス◆ 工場内の数字については、製造の担当者や生産コンサルタント等に任せましょう。 その結果として出て来た数字をまとめて、経営実態を『見える化』し、予定数字の設定や予実対比に注力しましょう。 会計以外の分野に踏み込むのは、大きなリスクを伴います。 (了)
《速報解説》 国税庁「美術品等についての減価償却資産の判定に関するFAQ」を公表 ~過去取得分の減価償却は適用初年度のみ適用可能に Profession Journal編集部 既報のとおり、国税庁は、法人税基本通達7-1-1(書画、骨とう等)に定める減価しない美術品等の範囲について、取得価額20万円以上から100万円以上へと引き上げる見直しを行ったわけだが、この改正に関して、このたび同庁はHPに「美術品等についての減価償却資産の判定に関するFAQ」を公表した。 改正通達では、経過措置により過去に取得した美術品等について、再判定を行った結果、減価償却資産に該当するものは減価償却が可能としているが、そのチャンスは平成27年1月1日以後最初に開始する事業年度だけとする取扱いを明らかにしている。 ●減価償却資産に該当することとなる美術品等の範囲を再確認 改正通達は、平成27年1月1日以降に取得した美術品等に適用されることとなるわけだが、その美術品等の範囲は次のとおり。 さて、改正通達では、経過措置を設けており、それより昨年以前に取得した上表の条件(1)に合致する美術品等についても償却が可能となる。 経過措置により資産区分を減価償却資産へ変更する美術品等については、過去に遡って資産区分の変更を行うものではないため、平成27年1月1日以後最初に開始する事業年度(「適用初年度」)から減価償却を行うことになる点を明らかにしている。 ●減価償却方法の有利不利の検討が必要 また、減価償却を行う場合の償却方法だが、下表のとおり、それぞれの美術品について、①その美術品等を実際に取得した日に応じた償却方法か、②取得日を適用初年度開始の日とみなすこととして定額法又は200%定率法を選択できる。 また、中小企業者等については租税特別措置法67条の5(中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例)を適用できる(経過的取扱い)。 (2015/5/28追記) 2015年5月27日付け国税庁ホームページにて下記の情報が公表されましたのでご注意ください。 「美術品等についての減価償却資産の判定に関するFAQの修正」 また、上記の償却パターンに加えて、経過措置を適用せず、従来どおり償却を行わないという選択肢もあるため、それぞれを適用した場合の有利・不利の判断を行うことが求められる。 ●経過措置の適用は適用初年度のみ可能に 上記のように、法人にあっては減価償却が任意であるため、平成27事業年度では経過措置によらず償却を行わない選択もあるわけだが、「平成28事業年度に償却を開始する」という計画も考えられる。 この点についてFAQでは、本改正が適用初年度に減価償却資産に該当するかの再判定を行い、減価償却資産に該当する美術品等については、その適用初年度以後の事業年度に限って減価償却を行うことができるとの改正の趣旨を説明している。 そのため、「適用初年度において減価償却資産の再判定を行わなかった美術品等については、従前の取扱いのとおり、減価償却を行うことはできない」ことを明示している。 「対象資産の減価償却はいつでも可能」と考えると、償却のチャンスを逃がすこととなるため、関与先には周知徹底を図りたい。 (了)
《速報解説》 東証より「コーポレートガバナンス・コード」確定版が公表 (適用は6月1日から) ~「有価証券上場規程の一部改正」 「コーポレート・ガバナンスに関する報告書記載要領」等も明らかに 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成27年5月13日、東京証券取引所は、「コーポレートガバナンス・コードの策定に伴う有価証券上場規程等の一部改正について」として、次のものを公表している。 「『コーポレートガバナンス・コードの策定に伴う上場制度の整備について』に寄せられたパブリック・コメントの結果について」(以下「コメント対応」という)も公表されている。 「コーポレートガバナンス・コード」については、有価証券上場規程の別添として定められている。 「コーポレートガバナンス・コード」は、「コーポレートガバナンス・コード原案」(平成27年3月5日公表)を受けたものであり、「コーポレートガバナンス・コード原案」の内容から、変更はないとのことである。 「コーポレート・ガバナンスに関する報告書記載要領」も公表されているので、実際の記載に際しては注意が必要である。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 1 コーポレートガバナンス・コード関係の整備 「コーポレート・ガバナンスに関する報告書記載要領」の「Ⅰ コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方及び資本構成、企業属性その他の基本情報」の「1.基本的な考え方」の「(1)コードの各原則を実施しない理由」及び「(2)コードの各原則に基づく開示」では、記載内容に変更が生じた場合は、変更が生じた後最初に到来する定時株主総会の日以後に一括して修正することが可能であることについて述べられている。 また、同作成要領の「(2)コードの各原則に基づく開示」では、 と述べられている。 コメント対応では、上場会社が、コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しておらず、かつ、その理由の説明を行っていない場合には、実効性確保手段の対象となることが述べられている。 また、コーポレート・ガバナンス報告書の記載内容については、適時開示と同様に有価証券上場規程412条が適用されるとし、明らかな虚偽の内容を含む悪質な開示などは、当該規程の違反となることが述べられている。 (有価証券上場規程445条の3) (「コーポレート・ガバナンスに関する報告書記載要領」) 2 独立役員の独立性に関する情報開示の見直し (有価証券上場規程施行規則211条4項6号等) Ⅲ 適用時期等 コーポレートガバナンス・コード及び改正後の有価証券上場規程等は、平成27年6月1日から適用される。 (了) ↓お薦め連載記事↓
2015年5月14日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.119が 公開されました。 プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布中! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。
酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第29回】 「「海洋掘削装置」は所得税法上の「船舶」に当たるか?(その2)」 ~同一税法内部における同一用語の解釈~ 中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦 4 解説 (1) 概念解釈の道筋 まずは下図をご覧いただきたい。 《判定図》 概念の解釈の通例に従えば、まず、対象となっている概念の定義があるか(図中①)、定義はなくとも文脈等から意味を把握することができるか(図中②)。それが可能であれば、それによることになるのは当然であるが、そうでない場合には、まず、固有概念であるか(図中③)、次に固有概念ではないとした場合に、借用概念であるか否か(図中④)を検討することとなる。 そこで、所得税法161条3号の「船舶」についてみるに、同法には明確な定義がない(図中①)が、この規定の前後の文脈や沿革等から「船舶」の意義を明らかにすることができるであろうか(図中②)。 所得税法161条3号は、居住者又は内国法人に対する船舶の貸付けによる対価を国内にある不動産の貸付けによる対価と並べて国内源泉所得と規定しているのであるが、そもそも、この規定の沿革をみれば、同号にいう「船舶」の意義を明らかにできるかもしれない。 そこで、その沿革を確認すれば、昭和37年法律第44号による改正前の旧所得税法1条2項1号の規定の下において、次のような理由により改正されたものであると解される。 しかしながら、このような規定の文言や規定の沿革・経緯からは、所得税法161条3号の「船舶」の意義を直ちに明らかにすることはできそうにない。 (2) 固有概念該当性 すると、次に、固有概念であるかどうか(図中の③)について考える必要があろう。 所得税法は、同法161条3号のほか、同法2条1項19号、同法15条《納税地》5号、同法26条1項、同法58条《固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例》1項4号及び同法225条《支払調書及び支払通知書》1項9号において「船舶」という用語を用いているが、これを定義する規定は置いていない。 これらの規定を見ると、所得税法において「船舶」という用語は、不動産所得の定義、減価償却資産の定義、国内源泉所得の範囲について用いられていることが分かる。 「減価償却資産」について、前回に示した所得税法2条1項19号を受けて所得税法施行令6条《減価償却資産の範囲》4号は、所得税法2条1項19号に規定する政令で定める資産の一つとして「船舶」を掲げている。そして、所得税法施行令129条《減価償却資産の耐用年数、償却率等》の規定による委任に基づき定められた耐用年数省令1条《一般の減価償却資産の耐用年数》1項1号は、所得税法施行令6条4号に掲げる資産の耐用年数は耐用年数省令別表第1《機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表》に定めるところによる旨を規定している。ところで、耐用年数省令別表第1は、「船舶」を「船舶法(明治32年法律第46号)第4条から第19条までの適用を受ける鋼船」、「船舶法第4条から第19条までの適用を受ける木船」、「船舶法第4条から第19条までの適用を受ける軽合金船(他の項に掲げるものを除く。)」、「船舶法第4条から第19条までの適用を受ける強化プラスチック船」、「船舶法第4条から第19条までの適用を受ける水中翼船及びホバークラフト」及び「その他のもの」に大別して、その耐用年数を定めている。 その運用に関して、耐用年数通達2-4-4《サルベージ船等の作業船、かき船等》は、 と通達している。 ところで、船舶法20条は、「第4条乃至前条ノ規定ハ総トン数20トン未満ノ船舶及ヒ端舟其他櫓櫂ノミヲ以テ運転シ又ハ主トシテ櫓櫂ヲ以テ運転スル舟ニハ之ヲ適用セス」と規定している。このことから、同法4条から19条までの適用を受ける船舶とは、「総トン数20トン未満の船舶及び端舟その他ろかいのみで運転し、又は主としてろかいで運転する舟」以外の船であることが分かる。 しかしながら、耐用年数省令別表第1の種類欄の「船舶」には、「その他のもの」という項目があるところ、ここにいう「その他のもの」には、「しゅんせつ船及び砂利採取船」、「発電船及びとう載漁船」、「ひき船」といった「鋼船」や、「とう載漁船」、「しゅんせつ船及び砂利採取船、「動力漁船及びひき船」、「薬品そう船」といった「木船」のほか、「その他のもの」が列挙されている。 この構造又は用途としての「その他のもの」たる船舶のうちの細目としての「その他のもの」が何を指しているのかが判然としないことから、耐用年数省令別表第1の種類欄の「船舶」からは減価償却資産としての「船舶」が何を指しているのか、すなわち、「船舶」の範囲について解明することはできそうにない。明らかなのは、船舶法4条から19条までの適用を受ける船舶のみを指しているわけではないという点のみである。 すなわち、ここからは、①総トン数20トン未満の船舶、②端船、③ろかいのみで運転する舟、④主としてろかいで運転する舟も、減価償却資産としての「船舶」に含まれる余地があるということが分かる。 他方、所得税法26条1項は、 と定めている。 所得税法26条に規定する不動産所得における「船舶」については、課税実務の取扱いにおいては、次のように通達されており、総トン数20トン以上のもののみを指すとしている。 しかしながら、上記でみたとおり、減価償却資産としての「船舶」の規定においては、このような などという縛りはなく、小型船舶あるいはろかい船も、減価償却費の計算上は、「船舶」として扱われる可能性があると思われる。 仮に上記通達の解釈が妥当であるとすると、所得税法上の「船舶」には、多様な意味内容のものが含まれているということになりそうである。 本件において、東京地裁は、所得税法の規定における「船舶」の意義を条文の文言から明らかにすることができるものとはいい難いとする。所得税法26条1項と耐用年数省令別表第1を見る限りにおいては、判決の説示は妥当であるように思われる。 上記所得税基本通達の理解の仕方が正しいとすると、所得税法26条1項における、「船舶」という用語は固有概念として捉えており、他の法律からの借用概念としては捉えていないといえそうである。しかし、これはあくまで同法26条1項にいう「船舶」が固有概念であるということにとどまり、本件の争点たる同法161条3項の「船舶」については更なる検討が必要であろう。 (続く)
平成27年度税制改正における 「受取配当等の益金不算入制度」の見直しについて 【前編】 辻・本郷税理士法人 税理士 安積 健 1 改正前の制度の概要 内国法人が受ける配当金については、二重課税排除のため、原則として、益金の額に算入されない。しかし、株式を保有する目的は一律ではなく、利殖が目的と考えられる場合には、配当金の50%相当額は課税の対象となる。これに対し、企業支配を目的とする場合には、原則通り、課税の対象とはされない。 利殖目的か、企業支配目的かは、株式に対する持株比率により判断することになっており、改正前は25%以上保有する場合が企業支配目的とされていた。ただし、借入金等の負債利子がある場合には、負債がない場合と比べて課税の公平を保つため、配当金から一定の計算式で得られた負債利子を控除した上で、益金不算入額を計算する。 2 改正の内容 平成27年度税制改正では、実効税率の引下げに伴う、代替財源の確保のための一環として本制度が見直され、持株比率基準の見直し、継続保有要件の見直し、非支配目的株式等の創設、負債利子控除制度の見直し、証券投資信託の収益の分配金に対する課税の見直しなどの諸点が改正された。 (1) 持株比率基準の見直し 改正前は、上記1で見た通り、持株比率25%以上保有する場合(関係法人株式等)を支配目的と考え、負債利子は考慮するものの、配当金の全額を益金不算入の対象とした。ただし、配当金を受け取る法人と、これを支払う法人との間に完全支配関係が成立している場合(完全子法人株式等)には、負債利子は考慮しないことになっている。 これに対して、改正後は、支配目的の基準が「25%以上」から、「3分の1超(33%超)」へと変更された。また、名称も「関係法人株式等」から「関連法人株式等」へと改正された。改正後の関連法人株式等の定義は次の通りである。 「関連法人株式等」とは、内国法人が他の内国法人(公益法人等及び人格のない社団等を除く)の発行済株式又は出資(当該他の内国法人が有する自己の株式等を除く)の総数又は総額の3分の1を超える数又は金額の株式等を有する場合として政令で定める場合における当該他の内国法人の株式等(完全子法人株式等を除く)をいう。 (2) 継続保有要件の見直し 上記(1)で述べた関係法人株式等から関連法人株式等への改正については、持株比率だけでなく、継続保有要件についても見直しがされている点に留意が必要である。 具体的には、上記(1)に掲げた関連法人株式等の定義で「政令で定める場合」として、政令に詳細が規定されている。改正前は、配当の支払いに係る効力発生日以前6月以上継続して25%以上の株式を保有することが必要であった。 これに対して、改正後は、配当の計算期間の初日から末日まで継続して3分の1超の株式を保有することが必要となる。この場合の計算期間とは、原則として、前回配当の基準日の翌日から今回配当の基準日までの期間となる。ただし、前回配当の基準日の翌日が、今回配当の基準日から起算して6月前の日以前の日である場合には、その6月前の日の翌日から今回配当の基準日までの期間が計算期間となり、この期間継続保有していればよい。 例えば、年1回の決算配当を行っている法人であれば、その法人の株式の3分の1超を、今回配当の基準日以前6月の期間継続保有していれば関連法人株式等に係る配当となる。これに対して、四半期ごとに配当を行っている法人であれば、前回配当の基準日の翌日から今回配当の基準日までの期間継続保有していれば関連法人株式等に係る配当となる。 このように改正前は配当の効力発生日をもとに判定していたところ、改正後は配当の基準日をもとに判定することになった点、また、改正前は6月の継続保有期間が求められたのに対し、改正後は計算期間の初日から末日までの継続保有が求められ、その期間は必ずしも6月とは限らない点に留意が必要である。 (3) 非支配目的株式等の創設 改正前は、支配目的以外で保有する株式、すなわち、完全子法人株式等及び関係法人株式等のいずれにも該当しない株式等については、配当金の50%相当額が課税の対象とされた。 改正後は、支配目的以外で保有する株式に対する課税を強化するため、これが2区分に細分化された。すなわち、「非支配目的株式等」と「その他の株式等」の2区分である。ここで非支配目的株式等とは、次の通りである。 「非支配目的株式等」とは、内国法人が他の内国法人(公益法人等及び人格のない社団等を除く)の発行済株式又は出資(当該他の内国法人が有する自己の株式等を除く)の総数又は総額の100分の5以下に相当する数又は金額の株式等を有する場合として政令で定める場合における当該他の内国法人の株式等(完全子法人株式等を除く)をいう。 この場合の5%の持株割合の判定をどのようにするかは「政令で定める場合」として政令に規定されている。具体的には、配当の支払いに係る基準日時点で行うとされていることに留意が必要である。 なお、基準日において有する株式のうちに、いわゆる短期保有株式等がある場合には、その短期保有株式等を有していないものとして判定を行う。 そして、非支配目的株式等に係る配当については、益金不算入割合が50%から20%に縮減された。 (4) 負債利子控除制度の見直し① 受取配当等の益金不算入額は、負債利子があるときは、配当金から株式等に係る負債利子を計算し、これを控除した上で算定する。自己資金で株式を取得した場合と、借入金で株式を取得した場合とで課税の公平を保つためにこのような計算になっている。ただし、完全子法人株式等に係る配当については、負債利子は考慮せず、益金不算入額を計算する。 平成27年度税制改正では、上記(1)及び(2)に記載の通り、支配目的の基準が「25%以上」から「3分の1超」へ改正されるとともに、支配目的以外で保有する株式等に係る配当についても「非支配目的株式等」と「それ以外」に細分され、後者については益金不算入割合が「50%」と改正前と同様であるが、前者については「20%」とされた。 これらの改正はいずれも課税対象を拡大するものであり、企業によっては、その影響が大きいことも想定されるところである。 そこで、平成27年度税制改正では、上記改正内容の緩和策として、負債利子控除制度が見直された。 すなわち、改正前は完全子法人株式等に係る配当を除き、すべて負債利子を考慮することとされていたが、改正後は、非支配目的株式等とその他の株式等に係る配当については負債利子を考慮せず益金不算入額を計算することになった。 その結果、負債利子を考慮するのは、関連法人株式等に係る配当のみとなる。 上記(1)から(4)の改正内容をまとめると下記の表の通りになる。 (了)
「特定の事業用資産の買換え特例(9号買換え)」 平成27年度改正のポイント 【第2回】 「改正前後の適用関係(経過措置)と 1~10号の適用期限・要件を整理する」 税理士 内山 隆一 ▷はじめに 平成27年度税制改正で延長・見直しが行われた特定事業用資産の買換え特例(措置法37条、65条の7)における9号買換えついて、前回は改正後の要件を確認したが、今回は改正前後の取扱い(経過措置)について整理するとともに、1号から10号までの本制度全体の適用要件・適用期限についてまとめた。特に個人(措置法37条)の適用期限については誤りやすいので留意しておきたい。 1 買換資産の範囲の見直し(改正措置法附則67、82) 下表のとおり、個人・法人とも譲渡資産の譲渡及び買換資産の取得がともに平成27年1月1日以後であった場合のみ、改正後の法律が適用される。 2 圧縮率の引下げ(改正措置法附則67、82) 下表のとおり、個人・法人とも譲渡資産の譲渡及び買換資産の取得がともに地域再生法の改正法施行日(平成27年8月10日 平成27年5月13日現在未施行)以後であった場合のみ適用される。 (追記) 地域再生法の改正法の施行日は、平成27年8月10日。 3 各特例の適用期限及び適用要件の整理 今回の改正により9号買換えの適用期限が平成29年3月31日まで延長されたため、この特例制度全体(法人・個人)の適用期限は以下のとおりとなった。 また、1号から10号までの譲渡資産・買換資産の要件をまとめると以下のとおりである。 【適用要件・適用期限(一覧)】 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (連載了)
欠損金の繰越控除制度に関する 平成27年度税制改正事項 【第2回】 「経営再建中の法人及び新設法人における特例」 公認会計士・税理士 新名 貴則 前回は「控除限度額と繰越期間の見直し」について、中小法人等の該当・非該当による影響も含め解説したが、今回は経営再建中の法人及び新設法人に対して設けられた特例制度について解説する。 1 経営再建中の法人における特例 経営再建中の法人において、通常の法人と同様に欠損金の繰越控除限度額を設定すると、納税が再建の負担となってしまう可能性がある。 そこで、次のような事実が発生した法人については、特例措置が設けられた。 上記のような事実が発生した法人については、一定期間内の事業年度(※)においては控除限度額を控除前所得の全額とされたのである。 (※) 手続開始の決定等の日から、計画認可の決定等の日以後7年を経過する日までの期間内の日の属する各事業年度。 (*) 金融商品取引所への再上場等があった場合、再上場の日等以後に終了する事業年度は対象外 これについては、平成23年12月の税制改正によって繰越控除限度額が控除前所得の80%相当額とされた際にも、同様の経過措置が設けられていた。しかし、この経過措置は平成27年度改正による上記の特例措置に統合され、廃止された。 【事例】 ◆決算期・・・3月末決算 ◆更生手続の開始決定・・・平成27年5月1日 ◆更生計画の認可決定・・・平成28年8月1日 ◆中小法人等・・・該当しない この事例では、更生計画の認可決定があったのは「平成28年8月1日」であるから、この日以後7年を経過する日といえば、「平成35年7月31日」を指すことになる。 したがって、特例措置の対象となる期間は、 となる。 つまり、平成28年3月期から平成36年3月期までの各事業年度においては、控除限度額が控除前所得の全額となる。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 2 新設法人における特例 設立後間もない法人においても、通常の法人と同様に欠損金の繰越控除限度額を設定すると、納税が法人の成長の負担となってしまう可能性がある。 そこで、設立直後の法人についても、一定期間内の事業年度(※)においては、控除限度額を控除前所得の全額とする特例措置が設けられた。 (※) 法人の設立(合併法人にあっては合併法人又は被合併法人のうちその設立が最も早いものの設立等)の日から、同日以後7年を経過する日までの期間内の日の属する各事業年度。 (*) 金融商品取引所への上場等があった場合、上場の日等以後に終了する事業年度は対象外 (*) 資本金等が5億円以上である大法人の100%子法人、及び100%グループ内の複数の大法人に発行済株式等のすべてを保有されている法人は対象外 【事例】 ◆決算期・・・3月末決算 ◆法人の設立・・・平成27年6月1日 ◆中小法人等・・・該当しない この事例では、法人が設立されたのは「平成27年6月1日」であるから、この日以後7年を経過する日といえば、「平成34年5月31日」を指すことになる。 したがって、特例措置の対象となる期間は、 となる。 つまり、平成28年3月期から平成35年3月期までの各事業年度においては、控除限度額が控除前所得の全額となる。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (連載了)
土地評価をめぐるグレーゾーン 《10大論点》 【第10回】 (最終回) 「通達に規定のない土地の減額手法の根拠」 税理士法人チェスター 税理士 風岡 範哉 1 今回のテーマ 財産評価基本通達には、不整形地や無道路地、がけ地、高圧線下地など様々な土地の評価減額要素について定められている。 しかし、当該通達に定めのあるもの以外にも評価減額要素が存在する。 本連載最終回となる今回は、その取扱いの根拠を確認しておきたい。 2 利用価値が著しく低下している宅地の評価減 利用価値が著しく低下している土地は、利用価値が低下していると認められる部分の面積に対応する価額の10%を控除した価額によって評価して差し支えないとされている。 例えば、①道路より高い位置にある宅地又は低い位置にある宅地で、その付近にある宅地に比し著しく高低差のあるもの、②地盤に甚だしい凹凸のある宅地、③震動の甚だしい宅地及び④騒音、日照阻害、臭気、忌み等によりその取引金額に影響を受けると認められるものが該当する。 この根拠は、下記の国税庁タックスアンサーである。 利用価値が著しく低下していると認められる減額要因として、高低差のある土地(平成18年5月8日裁決〔裁事71・533〕、平成19年4月23日裁決〔TAINS・F0-3-146〕)、新幹線の高架線に隣接していて騒音が著しい土地(平成13年6月15日裁決〔TAINS・F0-3-212〕)や、元墓地や周囲が墓地に囲まれているような忌み地(平成18年5月8日裁決〔裁事71・533〕)、目の前に歩道橋があるような土地(平成17年8月23日裁決〔TAINS・F0-3-124〕)が挙げられる。 一方、周囲に下水処理場や家畜施設があるなど、その影響が広範囲の地域にわたり、その減額要因が路線価に既に織り込み済みである場合には、利用価値が著しく低下している10%評価減の対象とならない(大阪地裁平成4年9月22日判決〔税資192・490〕、平成2年10月19日裁決〔裁事40・217〕)。 同様に著しい騒音や高低差であっても、路線価に既に織り込み済みである場合には、利用価値が著しく低下している10%評価減の対象とならない。 3 庭内神しの敷地の非課税 庭内神しとは、一般に、屋敷内にある神の社や祠等といったご神体を祀り日常礼拝の用に供しているものをいい、ご神体とは不動尊、地蔵尊、道祖神、庚申塔、稲荷等で特定の者又は地域住民等の信仰の対象とされているものをいう。 その庭内神しの敷地や附属設備については、①「庭内神し」の設備とその敷地、附属設備との位置関係やその設備の敷地への定着性その他それらの現況等といった外形や、②その設備及びその附属設備等の建立の経緯・目的、③現在の礼拝の態様等も踏まえた上でのその設備及び附属設備等の機能の面から、その設備と社会通念上一体の物として日常礼拝の対象とされているといってよい程度に密接不可分の関係にある相当範囲のものである場合には、その敷地及び附属設備は、その設備と一体の物として相続税の非課税財産として取り扱われている。 この根拠は、下記の国税庁情報による。 なお、従来より、墓所、霊びょう及び祭具並びにこれらに準ずるものの財産の価額は、相続税の課税価格に算入しないものとされてきたが、その敷地は非課税規定の適用対象とはならないとされていた。 東京地裁平成24年6月21日判決〔TAINS・Z888-1664〕において、庭内神しとその敷地が社会通念上一体の物として日常礼拝の対象とされているといえる程度に密接不可分の関係にある場合には非課税財産に該当すると判断されたのを受け、上記のような取扱いに改正された。 4 土壌汚染地の評価減 平成14年の不動産鑑定評価基準の改正において、不動産鑑定士が鑑定評価を行う場合は、土壌汚染の状況を考慮すべきこととされた。 そこで、相続税等の評価においても土壌汚染がみられる土地については、汚染がないものとした場合の評価額から浄化・改善費用に相当する金額を控除して評価することとされている。 この根拠は、国税庁評価企画官情報「土壌汚染地の評価等の考え方について(情報)」(平成16年7月5日)である。 「浄化・改善費用」とは、土壌汚染対策として、土壌汚染の除去、遮水工封じ込め等の措置を実施するための費用をいう。汚染がないものとした場合の評価額が地価公示価格レベルの80%相当額(相続税評価額)となることから、控除すべき浄化・改善費用についても見積額の80%相当額を浄化・改善費用とするのが相当とされている。 5 埋蔵文化財のある土地の評価減 埋蔵文化財包蔵地において、宅地開発にかかる土木工事等を行う場合には、文化財保護法に基づく届出を工事施工者が行い、工事に着手する前に市区町村により発掘調査が行われる。 市区町村による調査の結果、遺跡が発見された場合、発掘調査が行われることとなり、文化財保護法93条規定の発掘調査に係る調査費用は、原則、土地の所有者負担となる。 このような埋蔵文化財包蔵地という固有の事情は、土壌汚染地の評価の考え方に類似することから、国税庁評価企画官情報「土壌汚染地の評価等の考え方について(情報)」(平成16年7月5日 )に準じて、評価額から発掘調査費用を控除する方法が認められている(平成20年9月25日裁決〔裁事76・307〕)。 ただし、埋蔵文化財包蔵地としての評価減は、実際に発掘調査費用が必要となる場合に控除できることから、その地域が周知の埋蔵文化財がある地域であっても、調査の結果、評価対象地に埋蔵文化財が存在しなければ、発掘調査費用の控除はできないこととなる。 平成20年9月25日裁決(裁事76・307)においては、埋蔵文化財包蔵地として発掘調査費用の控除を行うためには、以下の要件を満たす必要があるとされている。 6 産業廃棄物が存する土地の評価減 産業廃棄物が埋設されている土地は、地中に物が埋まっていることにより利用制限が生じることやこの利用制限をなくすには一定の除去措置が必要である点において、土壌汚染地と状況が類似していると考えられることから、土壌汚染地の評価方法に準じて評価することとされている。 この根拠は、国税庁の「資産税審理研修資料」〔TAINS・評価事例708059〕である。 ただし、評価対象地に一般廃棄物が埋め立てられているとしても、一般廃棄物が埋められていないのと同様の通常の価額を維持している場合においては、これを斟酌しないで評価するものとされている(平成19年5月23日裁決〔TAINS・F0-3-210〕、平成23年4月12裁決〔TAINS・F0-3-283〕)。 7 マンション用地の評価 分譲マンションの敷地において、そのマンションが多数の者により共有されている場合には、その敷地全体を評価した価額にその所有者の持分割合を乗じて評価することとされている(平成22年10月13日裁決〔TAINS・F0-3-252〕参照)。 ただし、そのマンション敷地のうちに公衆化されている道路、公園等の施設の用に供されている宅地が多数含まれていて、建物の専有面積に対する共有部分に応ずる敷地面積が広大となるため、通常の評価方法に従って評価することが著しく不適当であると認められる場合には、その公衆化している道路等の施設の用に供されている宅地部分の面積を除いて評価して差し支えないとされている。 この根拠は、国税庁の「資産税審理研修資料」〔TAINS・評価事例708037〕である。 マンション敷地(1万1345.91㎡)のうち、公衆化している建築基準法42条《道路の定義》1項5号に規定する道路998.41㎡及び公衆化している公園563.22㎡については評価対象地積から外すものとされた事例として平成22年10月13日裁決〔TAINS・F0-3-252〕がある。 ―連載終了に当たって― 本連載では土地評価の中から特に重要と思われる10の論点を引き出し、土地を評価するうえで、複数の評価方法が存在することを指摘し、実務において判断に迷うそのグレーゾーンを解決するための手がかりをまとめてきた。 このようなグレーゾーンは、判例・裁決の評価理論を応用することで答えが導き出せる場合がほとんどである。 例えば、市街地山林の評価における事例では、グレーゾーンがあることにより、その山林を1,000万円とも12万円とも評価することができた(第5回参照)。どちらが適正な評価額であろうか。裁決事例が示す通り、「その山林を仮に宅地として開発した場合に客観的な交換価値はいくらであろうか」という点からおのずと答えが見えてくる。 また、納税者が、私道の評価が3割なのは不合理であると単に主張しても、3割を合理的とする先例がある限りそれを覆すことは難しい(第7回参照)。したがって、当該私道が公道に準じる状況にあるため3割は不当であるとか、私道の奥行が著しく長いため評価減が必要であるといったように、何か違う理論構築をしていかなければならない。 相続税・贈与税における土地の評価は、時価を超えるのではなくまた時価未満でもなく、まさに適正な評価を行わなければならない。その適正な評価を行うために欠かせない情報が過去の判例・裁決事例である。 今回の連載を評価実務に役立てていただけたら幸いである。 (連載了)
組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第26回】 「裁決例⑥」 公認会計士 佐藤 信祐 今回、紹介する事件は、合併に際して被合併法人の株主に交付されたいわゆる合併交付金が、被合併法人の利益の配当であるかの判定に当たり、合併契約書等にその旨の記載がない場合には、合併交付金が支払われた経緯、支払いを受けた株主の認識等を総合的に検討して判断するのが相当であるとした事件である。 組織再編税制が導入された後、最初に税制適格要件について争われた事件であることから、知っておくべき裁決例であると考えられる。 11 平成15年12月5日裁決 (1) 事件の概要 平成13年6月1日、審査請求人(以下、「請求人」という)は、H株式会社を被合併法人とする吸収合併を行ったが、その際に、本件被合併法人の株主に対して、配当の代わり金として、合併交付金を支払った。しかしながら、合併契約書においては、「合併期日前日の最終の本件被合併法人の株主名簿に記載された株主に対して、その所有する本件被合併法人の株式1株につき2,500円の合併交付金(以下「本件合併交付金」という)を合併期日後3ヶ月以内に支払う。」と記載されているものの、その具体的内容が配当の代わり金である旨の記載がなかった。 審査請求人は、平成13年税制改正前の法人税法に基づき、配当等の所得税徴収高計算書(納付書)に、支払確定日及び支払日を平成13年6月1日、支払うべき金額を13,750,000円(うち非課税適用分625,000円)と記載して、本件合併に係る利益の配当の額とみなす金額11,000,000円(以下「別件みなし配当の金額」という)に対する源泉所得税の額及び本件最終期配当金に対する源泉所得税の額の合計額2,625,000円を、平成13年7月10日に納付した。 しかしながら、平成13年税制改正により、適格合併を行った場合にはみなし配当が発生しないことから、請求人は、平成14年3月20日に、原処分庁に対し、源泉所得税の誤納額還付請求書を提出した。さらに、配当の代わり金として交付した金銭に対する源泉所得税の額210,000円は、平成13年11月6日に納付した。 これに対し、原処分庁は、本件合併を適格合併に該当しない合併と認定し、平成14年1月28日付で、請求人に対し、みなし配当の金額を138,641,448円と算出し、本件みなし配当の金額に対する源泉徴収に係る所得税の一部について、源泉徴収を行わず、納付もしていないとして、平成13年6月分の納付すべき源泉所得税の額を24,157,897円とする納税告知処分及び不納付加算税の額を2,415,000円とする賦課決定処分を行った。 そのため、請求人は、本件合併を適格合併に該当する合併と認定し、納税告知処分等を取り消すべきであると主張した。 (2) 原処分庁の主張 配当見合いが、税法上の配当である旨の規定は何ら存在せず、歴史的に旧個別通達や税法学において、合併交付金が配当に代わる金銭である場合は、その旨を合併契約書、合併案内状等で確実に明記していた場合に、これを税法上の配当であると認めていた経緯があり、合併の実務においても、それは慣習となっている。したがって、商法の実務として存在する配当見合いの金銭が税務上の配当というためには、その旨及び金額を合併契約書、合併案内状等で明らかにし、それを確実に実施していない限り、法人税法第2条第12号の8のかっこ書に規定する利益の配当にはならない。 本件合併交付金を経済的実質の観点から、既往の配当実績と比較して合理的かつ税務上妥当なものであるか否かについて検討したところ、本件被合併法人の設立第2期の当期利益のうち配当金の支払いに向けられる比率(以下「配当性向」という)は0.8%であるにもかかわらず、最終期における本件最終期配当金の配当性向は35.7%であり、本件合併交付金を含めたところの配当性向は50.0%である。こうしたことから、本件合併交付金は、既往の配当実績と比較しても合理性を有せず、税務上も妥当な配当であるとはいえない。 (3) 請求人の主張 本件合併交付金について、合併実務の知識不足から最終期の利益の配当に相当する旨を、本件合併契約書において明示していないが、明示がある場合に限り、利益の配当として認めるとする税法上の要件はないことから、その実質で判断すべきである。 最終期は、本件合併により2ヶ月間であるが、ゴールデンウィークを含む事業期間であり、前年実績からみても相当な利益の計上が可能と予測され、これに対する株主の配当期待に応える必要から、設立第2期の配当である1株当たり2,500円、総額1,100,000円と同額を、本件合併交付金として本件合併契約書第9条に明文化したものである。 配当性向が高騰することを制限したり、配当性向によって利益の配当を制限する法文は税法及び商法に存在しないところ、商法は利益の配当について、当期利益又は当期損失を含む貸借対照表上の純資産額より所定の金額を控除をした残額を限度とする旨を定めており、わが国の企業の配当の法務と実務はこの商法の規定によっているのである。したがって、最終期の利益の配当相当額が商法の規定する配当可能限度額の範囲内で決せられている限り、配当性向の高低を問われるものではなく、本件合併交付金と本件最終期配当金を合算した配当性向をもって、経済的実質の観点から本件合併交付金を利益の配当相当額ではないと判断することは誤りである。 (4) 国税不服審判所の判断 合併交付金のうちに、被合併法人の利益の配当相当額がある場合には、合併契約書、合併承認に係る株主総会議事録、同出席案内等においてその旨を明示又は記載されるのが通常であるが、合併契約書等において明示等がない場合には、合併交付金が支払われる経緯、合併交付金を受けた株主の認識等を総合的に検討し、実質的に、合併交付金のうちに利益の配当相当額があるかどうかを判断するのが相当である。 1株当たり2,500円の本件合併交付金を、当該比率の差を調整するための交付金と考えるには、余りに少額で妥当性がなく、本件合併の比率を調整するための交付金であったとは認められない。 本件合併交付金は、その支払時に利益の配当として所得税を源泉徴収しており、また、株主に対し本件合併交付金が配当金である旨を通知していることが認められ、これらの行為は、本件合併交付金が、最終期の利益の配当相当額であることの裏付けと見ることができる。 また、原処分庁は、配当性向をもって検証すると既往の配当実績と比較して本件合併交付金は合理性を有していないので、税務上も妥当な配当であるとはいえない旨主張する。しかしながら、当該検証は一般的には妥当性を有するが、本件の場合、既往の配当実績といっても、設立第2期の配当1回のみで、設立第2期は売上高から見て実質初年度で、通常年度と異なる上、本件最終期配当金も、特別な事情が認められることから、設立第2期と最終期の配当性向をもって検証する原処分庁の主張は採用できない。 (5) 評釈 このように、本裁決においては、合併交付金が利益の配当であるか否かについては、合併契約書に記載されている文言ではなく、合併交付金の支払いの経緯、支払いを受けた株主の認識等を総合的に検討し、実質的に利益の配当相当額であるかどうかを判断するものとしたうえで、請求人の主張を認めた。 合併契約書の形式的な文言ではなく、実質的な内容を踏まえて判断したという意味で、重要な裁決例であると考えられる。しかしながら、この裁決例を見た上で、「合併契約書において合併交付金が配当金の代わりに支払うものであることを記載する必要がない」と考えた読者は少ないであろう。むしろ、「合併契約書において合併交付金が配当金の代わりに支払うものであることを記載する必要があり、かつ、実質的にも配当の代わりに支払われるものであることを明確にしておく必要がある」と考えた読者の方が多いのではなかろうか。 とりわけ、税務調査の現場においては、書面による事実関係で否認できる場合には、安易に否認をしてしまう事案も想定されるところであり、税務調査で無用の争いになるのを避けるためには、本来であれば、合併契約書に明記しておくべきであろう。 ところで、平成18年から会社法が施行され、本件のような合併交付金の支払いについては、合併等対価の柔軟化の一環として取り扱われることになったが、基本的な法人税法上の取扱いについては変わっていない。そのため、合併契約書に記載していたとしても、例年に比べて多額であることから、配当見合いの金銭とは認められないという争いが生じる可能性も考える必要がある。これに対し、配当については、同一事業年度内において何度でも行うことができるようになったことから、被合併法人において、合併の前日までに配当を行えば、合併の対価として交付された金銭ではないことから、何ら争いが生じないことになる。 私見ではあるが、例年に比べて多額のものであったとしても、配当見合いの金銭と認められると考えられるものの、このような対策を検討するというのもひとつの選択肢であると考えられる。 (了)