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《速報解説》 「交際費課税制度の見直し」に係る改正後の法令掲載~5,000円基準の継続が明らかに~

《速報解説》 「交際費課税制度の見直し」に係る改正後の法令掲載 ~5,000円基準の継続が明らかに~   Profession Journal編集部   平成26年度税制改正においては既報のとおり、法人による消費拡大を図るため、交際費等の損金算入の特例(租税特別措置法第61条の4)について適用法人が大法人(資本金1億円超)まで拡充され、その適用期限が2年延長(平成28年3月31日まで)されることとなった。 【参考図】  ※経済産業省ホームページより 上図等の公表資料において掲載はされていたが、3月31日に公布された関係政省令により、1人当たり5,000円以下の飲食費については交際費から除かれる措置(いわゆる5,000円基準:措令37の5①)の継続など、詳細が明らかとなった。 以下では、本改正後の関係法令「法律・政令・省令」を抜粋掲載した(下線部が改正箇所)。 今後改正が予定される租税特別措置法関係通達等でより詳しい取扱いが判明するが、現時点での規定ぶりを確認しておきたい。 ※本改正前の取扱いについては下記の連載を参照。 ※上記法律部分の新旧対照表はこちら。 (了)

#No. 63(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2014/04/03

Profession Journal No.63が公開されました!

2014年4月3日(木)AM10:30、Profession Journal  No.63 が公開されました。 Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開してまいります。 Web情報誌 Profession Journalは、プロフェッションネットワークのプレミアム会員専用の閲覧サービスです。 Profession Journalについての詳細はこちら。 バックナンバー一覧はこちら。

#Profession Journal 編集部
2014/04/03

monthly TAX views -No.15-「包括的否認規定の議論を開始する時期が来ている」

monthly TAX views -No.15- 「包括的否認規定の議論を開始する時期が来ている」   中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹   G20の意向を受け、OECDにおいて、米国企業を中心とする国際的租税回避への対応に向けた検討が開始された。 2013年7月に『BEPS(税源浸食と利益移転)行動計画』が公表され、現在、各国の税制当局や経済界で議論が進んでいる。 租税回避というのは、脱税でもない、節税でもない、法には反しないが、通常用いられないような法形式を選択し、税負担を減少させたり排除する行為をいう。わが国でも、経済の複雑化・多様化に伴って増加しつつある。 ◆  ◆  ◆ わが国では、法律に明文の租税回避否認規定がない場合に、どこまでの否認が許されるかということが、かねてから学界などで議論されてきた。最高裁判所の判例や学界の通説は、「租税法上の明文の規定がない限り、租税回避の否認はできない」というのが今日の立場である。 その一方で、「租税の減免規定の場合には、その立法趣旨を勘案しながら限定解釈することによって、結果として、租税回避否認と同様の効果をもたらすことは可能」ということについても、大方のコンセンサスがある。 最高裁は外国税額控除余裕枠りそな銀行事件の判決(平成17年12月19日)で、 として、立法趣旨から外れた取引は権利の濫用として否認されうることを示した。 しかしこのような手法は、何が法の趣旨目的か、それから外れた場合とは何かなどはっきりしない場合が多く、法的安定性から問題が指摘されている。 ◆  ◆  ◆ 一方、米国では、「(租税回避以外の)意図した経済目的がなく、減免規定を充足させることにより、もっぱら税負担の減少を図る」租税回避を否認する際の考え方として、1935年のグレゴリー事件で判示された「事業目的原理」や「経済実質原理」などが確立されてきたが、2011年に歳入法典(IRC§7701(o))で包括的な否認規定が立法化された。 また英国でも2013年に、包括的濫用対抗規定(General Anti Abuse Rule)が導入された。 これにより、G7国で包括的な租税回避規定を導入していない国は、わが国だけとなった。 コモンローの国と制定法主義の国とでは、根本的な成り立ちが異なるが、米国や英国における動向や制度設計は、わが国への多くの示唆を含んでいる。 租税回避問題は、伝統的な「納税者」と「税務当局」という図式ではなく、「租税法弁護士・プロモーター」対「税務当局」の知恵比べという状況に変わりつつある。 放置すると、納税道義の問題や税収の問題が生じるだけでなく、正常な取引を行う大部分の企業活動にも不利な状況を生じさせる。 OECDでBEPSが議論されるこの機会に、国内でも包括的否認規定について議論を深めることが、納税者の予見可能性を確保するという観点からも必要ではないか。 (了)

#No. 63(掲載号)
#森信 茂樹
2014/04/03

まだある!消費税率引上げをめぐる実務のギモン 【第7回】「経過措置の適用に係る相手方への通知義務について」

まだある!消費税率引上げをめぐる実務のギモン 【第7回】 「経過措置の適用に係る相手方への通知義務について」   アースタックス税理士法人 税理士 島添  浩 (監修) 税理士 吉田 知至(執筆)   第7回である今回は、経過措置の適用に係る相手方への通知について、以下の具体的な事例を交えて解説することとする。 改正消費税法附則では、次のとおり経過措置の適用を受ける一定の取引について、相手方に書面により通知することを義務付けている。 したがって、工事の請負等、資産の貸付け、工事進行基準についての経過措置の適用を 受ける事業者は、書面通知を失念しないよう留意されたい。 【解 説】 「平成26年4月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いについて(法令解釈通達)」22では、通知義務について次のように述べている。 消費税法第30条第9項に規定する「請求書等」とは、課税資産の譲渡等を行う事業者に対して交付する請求書、納品書その他これらに類する書類で一定の事項が記載されているものをいい、同条第7項に規定する仕入税額控除の適用要件として保存が義務付けられている「課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等」の請求書等を指す。 請求書等を発行しない取引については、同項の記載事項から、下記の事項を記載した書面により通知をすることが考えられる。 【解 説】 「工事の請負等の税率等に関する経過措置」の適用を受ける場合の書面による通知は、法律上「・・・書面により通知するものとする。」と規定されていることから、事業者への義務を課したものであるが、実務上は適正に通知がなされないことも想定される。 しかし、この書面による通知は、その有無が経過措置の効力に影響を及ぼすものではないと解され、経過措置を任意に選択適用することは認められていない。 貴社の場合、工事の請負契約が指定日(平成25年9月30日)以前に締結されており、施行日(平成26年4月1日)以後に課税資産の譲渡等が行われていることから経過措置が適用されるため、書面による通知を受けていないことをもって新税率により処理することはできない。 なお、当該工事に経過措置が適用されることを甲社に確認するとともに、通知義務の 観点から書面を交付するよう甲社に求めることが望ましいと考えられる。 (了)

#No. 63(掲載号)
#島添 浩、吉田 知至
2014/04/03

[個別対応方式及び一括比例配分方式の有利選択を中心とした]95%ルール改正後の消費税・仕入税額控除の実務 【第3回】「個別対応方式と用途区分②」

[個別対応方式及び一括比例配分方式の有利選択を中心とした] 95%ルール改正後の 消費税・仕入税額控除の実務 【第3回】 「個別対応方式と用途区分②」   国際医療福祉大学大学院准教授 税理士 安部 和彦   前回より個別対応方式の解説を行っているが、第3回である今回は、個別対応方式を選択した場合の用途区分の問題のうち、交際費・寄付金の取扱い、及び不動産関連費用の取扱いについて解説する。   4 交際費・寄付金の取扱い (1) 交際費の取扱い 仕入税額控除に関し個別対応方式を選択した場合、用途区分の問題が生じるが、法人税の場合と同様に、消費税についても交際費の取扱いは多少注意を要する。 以下で交際費の用途区分に関し留意すべき事項を挙げてみる。 ① 取引先に贈呈する中元・歳暮の購入費用 取引先が課税資産の譲渡等の相手である場合には、当該費用の用途区分は課税売上にのみ要する課税仕入れ等に分類すべきとなる。同様に、例えば、医療法人が人間ドック(自由診療で課税売上)を実施している場合、その人間ドックに従業員を送ってもらうため企業の人事部に贈る中元・歳暮の購入費用も、課税売上にのみ要する課税仕入れ等に分類すべきとなるだろう。 ② 取引先を旅行に招待する場合に要する費用 例えば、家電の卸業者が年に一回小売業者の店主等を招待して旅行を行うことがあるが、その際に要した費用は法人税法上一般に交際費に該当する(措通61の4(1)-15(4))。この場合も、取引先が課税資産の譲渡等の相手である場合には、当該費用の用途区分は課税売上にのみ要する課税仕入れ等に分類すべきとなる。 ③ 取引先に商品券を贈呈する場合に要する費用 取引先への中元や歳暮に商品ではなく商品券やビール券を贈呈することもあるだろう。この場合、商品券やビール券は物品切手等に該当するため、当該支出は非課税仕入れとなる(消法6①、別表第1四ハ、消基通6-4-4)。 ④ 得意先等に試供品として無償で提供する新商品の購入費用 販売促進目的で、得意先等に試供品として無償で新商品を提供することもよく見られるところである。この場合、その提供先は課税資産の譲渡の相手方とは限らず、当該費用の用途区分の判定が簡単ではないところである。 しかし、試供品を無償で提供するのは将来当該商品を購入する顧客を開拓するための活動であり、その費用は将来の当該商品の売上と結び付けられるべきであると考えられる。したがって、得意先等に試供品として無償で提供する新商品の購入費用は、新商品の売上が課税売上である限り、その用途区分は課税資産の譲渡等にのみ要するものに分類されることになる(消基通11-2-14)。 ⑤ 取締役数名による社内交際費 社長や取締役数名で、社長就任祝い等の名目で料亭などにおいて(飲酒を伴う)会食をすることがあるが、当該飲食費は法人税法上交際費(社内交際費)に該当するものと考えられる。 一方、このような費用の消費税法上の用途区分であるが、当該飲食費と法人の売上との明確な対応関係が見いだせないため、その用途区分は原則として課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものに該当するものと考えられる。 ⑥ 建設現場の現場監督との交際費 ゼネコンが受注した商業ビル建設現場の現場監督を慰労するため、ゼネコンの社員が現場監督を招いて行った飲食の接待も、法人税法上交際費に該当するものと考えられる。 一方、上記⑤と異なり、当該現場監督との飲食費用は課税売上である商業ビル建設と結び付けられるものであることから、その用途区分は原則として課税資産の譲渡等にのみ要するものに該当するものと考えられる(消基通11-2-12、平成24年3月国税庁消費税室「―平成23年6月の消費税法の一部改正関係―「95%ルール」の適用要件の見直しを踏まえた仕入控除税額の計算方法等に関するQ&A〔Ⅱ〕【具体的事例編】問1-2参照)。 (2) 寄付金の取扱い 仕入税額控除に関し個別対応方式を選択した場合、用途区分の問題が生じるが、法人税の場合と同様に、消費税についても寄付金の取扱いは多少注意を要する。金銭による寄付や贈与は課税仕入れとはならないが、金銭以外の物品を寄付した場合には取扱いが異なる。 そこで、以下で寄付金の用途区分に関し留意すべき事項を挙げて検討してみる。 ① 高齢者ホームに寄付したピアノの購入費 消費税が課される物品を購入し、それを寄付する場合、当該課税物品の購入は課税仕入れに該当する。印刷業を営む事業者が近隣の高齢者ホームに寄付したピアノの購入費であるが、当該課税仕入れに対応する売上が存在しないため、その用途区分は原則として課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものに該当するものと考えられる(消基通11-2-17)。 ② 寄付対象の私道に係る造成費 あるメーカーが取得した工場用地がいわゆる旗竿地(下図参照)であったことから、事業活動の便宜のため、公道へと通ずる部分の土地を私道として造成し、その後それを所在する市などの地方公共団体に寄付するケースが時々見受けられる。 【私道を造成し寄付した場合】 この場合、法人税法の取扱いは、寄付する私道の帳簿価額を工場用地の帳簿価額に振り替えることで、寄付による損失を発生させないようにしている(法基通7-3-11の5)。 一方消費税の取扱いであるが、寄付という行為に着目して、対応する売上がないものとしてその用途区分を課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものに分類すべきと考えがちである。しかし、当該寄付は工場への通行の便宜を図るために行う行為であり、工場での生産活動(課税売上)と直接対応するものと考えられることから、用途区分に関しては、課税資産の譲渡等にのみ要するものに該当するものと考えられる。 ③ 近隣の神社に寄付した日本酒の一斗樽 近隣の神社で行われる夏祭りの際、法人が現金ではなく日本酒の一斗樽を奉納することがあるが、その仕入れ(課税仕入れ)に係る用途区分はどうなるのか。 この場合は、当該奉納(寄付)に対応する売上が存在しないため、その用途区分は原則として課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものに該当するものと考えられる(消基通11-2-17)。   5 不動産関係費用 (1)  店舗兼用賃貸住宅の取得費 商店街で長らく小売業を営んでいた者が、店舗を閉じて引退し、その店舗を取り壊して跡地に1階を貸店舗、2階・3階を単身者向け賃貸部屋とする店舗兼用賃貸住宅を建設するという事例が日本全国で見られるところである。この場合、仕入税額控除について個別対応方式を採用したとき、当該店舗兼用賃貸住宅の取得費(建設費)の用途区分はどうなるのであろうか。以下の図で見ていこう。 【店舗兼用賃貸住宅の取得費(その1)】 この場合、1階の貸店舗から生じる売上(賃料収入)が課税売上となり、2階・3階の賃貸住宅から生じる売上(賃料収入)が非課税売上となる。そのため、当該店舗兼用賃貸住宅の取得費(建設費)の用途区分は、特に何もしなければ、課税売上及び非課税売上の共通対応分に分類されることとなる。 ただし、課税売上及び非課税売上の共通対応分に係る課税仕入れは、合理的な基準により課税売上のみに要するもの及び非課税売上のみに要するものに区分することが可能であれば、その合理的な基準による区分に基づき個別対応方式を適用することも認められている(消基通11-2-19)。 そのため、本件については、例えば建物の床面積割合により課税仕入れである建設費を課税売上のみに要するもの及び非課税売上のみに要するものに区分することも合理的と考えられる。これは、例えば建設初年度で店舗部分にテナントが入居せず、賃貸住宅部分にのみ入居者があった場合、課税仕入れ全体を共通対応分に分類してしまうと、課税売上割合がゼロとなってしまい、仕入控除税額もゼロとなってしまう不合理を回避するために採ることができる手段である。 すなわち、建設初年度の売上の偏りにより本来控除できるはずの仕入税額がゼロとなる不合理な事態を、課税売上となる1階部分の賃貸に対応する課税仕入れについては仕入税額控除の対象とするため、平年度の売上割合とほぼ同等と考えられる床面積割合を採用し是正しようという試みであると捉えられよう。 これを示したのが以下の図である。 【店舗兼用賃貸住宅の取得費(その2)】 (2) 用途未確定の賃貸マンションの取得費 都市部の駅に程近い土地に賃貸マンションを建設する場合、当該賃貸マンションは居住用のみならず事務所用としての需要があるケースがみられる。そのため、建設時には賃貸住宅用・事務所用いずれの用途にも使用できるような内装工事を行い、実際の需要を見て柔軟に対応する事業者もみられるところである。 この場合、マンションの建設工事が完了し、その引渡しがあった時点ではその用途が賃貸住宅用(非課税売上)・事務所用(課税売上)のいずれであるのか確定していないケースもあるだろう。このときの個別対応方式における用途区分であるが、引渡しを受けた時点で用途が確定しておらず、かつ期末においても未確定の場合には、建物の建設費に係る税額は賃貸住宅用のみに要するものではなく、また、事務所用のみに要するものでもないため、双方に共通して要するものに分類されることとなる。 建物の引渡しの時点では未確定であったが、その後課税期間の末日までに用途が確定した場合には、その確定した用途区分により個別対応方式の適用が可能となる(消基通11-2-20)。したがって、仮に課税期間の末日における賃貸住宅・事務所の区分が以下の図のようであるときは、それに基づき仕入税額控除の計算を行うことになるだろう(消基通11-2-19)。 【賃貸住宅・事務所用併用マンションの用途区分】 なお、引渡し時点では用途未確定で、その後入居者募集活動(住宅用又は事務所用いずれでも可)を行った結果、課税期間末日までに居住用としての入居者があったものの一部空室であったため、引き続き募集活動を行っている場合の用途区分はどうであろうか。この場合、課税期間末日におけるマンションの用途は未だ確定しておらず、非課税売上のみならず課税売上をも生じる可能性が残っている。 したがって、マンション全体の用途区分が未確定であるとして、その建設費は課税売上と非課税売上の双方に共通して要するものに分類すべきということになるものと考えられる。 *   *   * 次回は、個別対応方式・一括比例配分方式の有利選択について解説を行う。 (了)

#No. 63(掲載号)
#安部 和彦
2014/04/03

居住用財産の譲渡所得3,000万円特別控除[一問一答] 【第25問】「建物の一部を間貸ししている場合」-店舗兼住宅等-

居住用財産の譲渡所得 3,000万円特別控除 [一問一答] 【第25問】 「建物の一部を間貸ししている場合」 -店舗兼住宅等-   税理士 大久保 昭佳   Q Xは2階建ての家屋のうち、1階部分を自己の居住の用に供し、2階部分を他人に間貸ししています。 このほど、その家屋をその敷地と共に売却しました。 この場合、「3,000万円特別控除」の特例の適用範囲はどのようになるのでしょうか? A Xの居住用部分に対応する譲渡所得のみ、「3,000万円特別控除」の特例の適用を受けることができる。 〈解説〉 間貸ししている部分は、居住の用以外の用に供されていることから、その貸間に係る家屋部分とそれに対応する土地部分は、「特例」の適用を受けることはできない(措通31の3-7(店舗兼住宅等の居住用部分の判定))。 (了)

#No. 63(掲載号)
#大久保 昭佳
2014/04/03

税務判例を読むための税法の学び方【32】 〔第5章〕法令用語(その18)

税務判例を読むための税法の学び方【32】 〔第5章〕法令用語 (その18)   立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘   10 期限や期日を示す表現 (① 「以前」と「前」、「以後」と「後」) 【第27回参照】 (② 「期限」「期日」「期間」、③ 期間計算に関する国税通則法の定めと民法、④ 「・・・から・・・まで」)【第28回参照】 (⑤ 時をもって定める期限、⑥ 期限の特例と各種消費税の届出書、⑦ 国税通則法第10条第2項の期限の特例に関するその他注意点)【第29回参照】 (⑧ 期間計算が過去にさかのぼる場合、⑨ 「経過する日」と「経過した日」)【第30回参照】 (⑩ 「経過する日」と「満了する日」と法律上の年齢(前半部分)【前回参照】 ⑩ 「経過する日」と「満了する日」と法律上の年齢 (承前)この年齢の判定は、税法・税実務の点でも、当然影響がある。 例えば、国税庁発行の「年末調整のしかた(平成25年版)」には以下のように、年齢に関しては12月31日の現況によることが示されている。 そして、特定扶養親族については以下のようにある。 すなわち平成3年1月1日生まれの者は、平成26年1月1日ではなく平成25年12月31日において法律上年齢が23歳に達しているために「年齢19歳以上23歳未満」に該当しないのである。 また同様に、平成7年1月1日生まれの者は平成26年1月1日ではなく平成25年12月31日において19歳になっているために、「年齢19歳以上23歳未満」に該当することになる。 控除対象扶養親族として、「扶養親族のうち、年齢16 歳以上の人(平成10年1月1日以前に生まれた人)をいいます。」とあるが、これも同様、平成10年1月1日生まれの人は、平成26年1月1日ではなく25年12月31日において16歳に達しているために、「年齢16 歳以上の人」に該当することになる。 なお、この点を所得税法で確認しよう。 所得税法第2条第1項(定義規定)においては、単に「年齢16歳以上の者」としかなく、この点だけでは日と時刻いずれを単位とするか判断しかねる。しかしこの「12月31日」の意味は、暦年の最後の時の現況を意味するはずであるから、文脈上時刻を単位とすると考えるべきであろう。 だが、いずれにしても1月1日生まれの者は、この瞬間には年齢が加算されていることになるから、上記の「年末調整のしかた」記載のとおりになる。 最後に、「年齢のとなえ方に関する法律(昭和24年5月24日法律第96号)」というものを紹介しておこう(条文が1条しかない(特に「第1条」と明記していないが)が、独立した法律である)。 これを見てもやはり、あの厚生労働省の解説(前回参照)は疑問である。「高齢者の医療の確保に関する法律」の中に排除規定がない以上、問題があろう。 なお、ついでに記すが、総務省の法令データベースで所得税法を検索すれば、冒頭に「所得税法(昭和40年3月31日法律第33号)」とある。またこの年齢のとなえ方に関する法律も「年齢のとなえ方に関する法律(昭和24年5月24日法律第96号)」とある。しかし、年齢計算に関する法律の冒頭には「明治35年法律第50号(年齢計算ニ関スル法律)」とある。 これは「所得税法」や「年齢のとなえ方に関する法律」は法令の題名が法令の一部として付けられているが、年齢計算に関する法律は、法律の題名が付けられていない。この法案の件名が「年齢計算ニ関スル法律ノ件」となっていたところから、この件名を題名のように用いているだけであるため、法律の名称は「明治35年法律第50号」でしかないことから、このような標記となっている。 このように古い法律には、法律の題名が付されていないものも多い。 ⑪ 暦法的計算法 第28回に、期間の計算方法は、原則暦法的計算法による旨書いたが、この暦法的計算法をもう少し説明しよう。 この暦法的というのは「暦に従って計算する」ということであり、それはすなわち、1月を30日として日に換算して計算するのではなく、現行の太陽暦に従って計算することをいう。 この根拠法令である民法143条を改めて見てみよう。 これを表にまとめると、以下のようになるであろう。 ⑫ 期間計算の用語のまとめ ここで、これまで見た期間計算の用語について、まとめて振り返ってみる。 (了)

#No. 63(掲載号)
#長島 弘
2014/04/03

設備投資減税を正しく活用して強い企業をつくる~設備投資における管理会計のポイント~ 【第7回】「「設備投資の経済性計算」の代表的手法②」―正味現在価値法・投資利益率法―

設備投資減税を正しく活用して強い企業をつくる ~設備投資における管理会計のポイント~ 【第7回】 「「設備投資の経済性計算」の代表的手法②」 ―正味現在価値法・投資利益率法―   公認会計士・税理士 若松 弘之   前回は、「設備投資の経済性計算」の代表的な4つの手法である、 上記のうち、①②についての解説を行った。 今回は引き続き、③④についての解説を行っていく。 ③ 正味現在価値法 内部利益率法が目標利益率という「比率」をものさしとする方法であるのに対して、正味現在価値法は設備投資によって、どの程度の超過キャッシュ・フロー(正味現在価値)が発生するかという「金額」そのものをものさしとする方法である。 設備投資には一定程度の不確実性やリスクが伴うが、正味現在価値法では、超過キャッシュ・フローそのものを踏まえたうえで、「この設備投資額に対して、この程度の超過キャッシュ・フローではリスクを取りすぎである」などの判断がしやすい方法ともいえる。 ただし、正味現在価値には、「資本コスト」や「割引率」の算出という技術的なハードルも存在する。 「資本コスト」とは分かりやすくいうと、その企業の信用状態や株式市場での株価評価などを反映した、企業独自の資本調達コスト(率)である。 例えば、A社は財政状態が良く金融機関からの信用も厚いため、借入利率3%で100万円を調達できたのに対して、B社は信用が薄いため、借入利率が10%でしか資金調達できなかったとしよう。 投資期間1年、設備の売却価値ゼロとして話を単純化すると、A社は1年後に103万円の収入があれば、利息の3万円を支払って正味キャッシュ・フローはゼロとなる。 一方、B社においては110万円の収入があってはじめて、利息10万円を差し引いた正味キャッシュ・フローがゼロになる。 したがって、外部からの資金調達を前提にすると、A社にとっては現在の100万円と1年後の103万円は同じ価値であり、現在価値への割引率(資本コスト)は3%となる。 同様にB社における割引率は10%となる。たとえ、外部借入れではなく、手許の自己資金による設備投資であっても、その分の資金が設備として長期間拘束される以上、「キャッシュの時間的価値」である資本コストは考慮しなければならない。 なお実務においては、銀行借入れなどの「間接金融」に係るコストだけではなく、株式発行による資本調達などの「直接金融」に係るコストも考慮しなければならない。 直接金融コストの算定には、企業業績と自社株価変動の相関係数を算定するなどの統計的手法が必要となる。したがって、客観的な取引価格としての市場株価が得られない非上場企業については多くの仮定を設けるなど、算定が難しい面がある。 本稿では、適切な資本コストがおおよそ把握できたとものと仮定して話を進めたい。 では、資本コスト(割引率)を5%と想定した場合、前回検討した設備投資案AとBの設例を用いて、正味現在価値を比較してみよう。 上記のとおり、資本コスト(割引率)が5%の場合、B案の正味現在価値601万円が、A案の正味現在価値520万円を上回ることになり、経営者はB案を選択することが合理的といえる。 留意すべき点はこの選択結果が、設備投資案A案を選択すべきとした①回収期間法と②内部利益率法(前回参照)とは反対になることである。 ④ 投資利益率法 ①から③の手法がキャッシュの回収や現在価値を対象にした方法であるのに対して、投資利益率法は、「会計上の利益」を設備投資効果の指標と捉える方法である。 したがって、この方法では設備投資によって既存の損益計算書がどのように増減するかを試算する必要がある。 上記の場合、設備投資によって年間900万円の営業利益が増加することになるため、投資利益率は、900万円÷3,000万円(設備投資額)=30%(年)となる。 投資利益率の算定において、税引後利益や設備の帳簿価額の期中平均残高を使用して算出する手法もあるが、上記のように、支払利息計上前の営業利益を設備投資総額で除する方法が簡便的であるため、中小企業等でも広く利用されている。 なお、今回の税制改正の目玉である「生産性向上設備投資促進税制」においても『生産性の向上に係る要件は、投資計画における投資利益率が15%以上(中小企業者等にあっては、5%以上)』との記述があり、この「投資利益率」としては、簡便的な会計上の投資利益率が用いられる可能性も高いと考えられる。 ただし、投資利益率法は、あくまで会計上の「利益」をベースにしているため、「キャッシュ」がどの程度回収されているか、その採算性や正味現在価値などを考慮していないという問題がある。また、減価償却による節税及び自己金融効果を考慮していないことにも留意しておくべきである。   〈各手法の長所と短所〉 前回と今回で解説してきた4つの手法の長所と短所を整理すると、次のとおりである。 ちなみに減損会計や企業価値評価、株価算定実務などで用いられているDCF法(Discounted Cash Flow法)とほぼ同じ考え方を採用しているのが「正味現在価値法」である。 したがって、設備投資額が多額にのぼったり、設備投資の頻度が多かったりする上場企業などにおいては、一般的に正味現在価値法の採用が望ましいと考える。 一方、そこまでの厳密性を求めない程度でのものさしが必要な非上場企業や中小企業では、それ以外の手法を状況や重要性に応じて使い分けしてもいいのではないだろうか。 いずれにせよ、現状、設備投資に関して何らの客観的なものさしを使っていない企業では、いずれの手法であっても導入する価値がある。 なぜなら、設備投資がうまくいかなかった場合ほど、「なぜ、こんな設備投資にゴーサインを出したのか。誰が、いつ、どのような材料を踏まえて意思決定したのか」という点が後々問題になることが多いからである。 適時適切な検討を行ってもなお設備投資の失敗は起こりうるが、その場合でも、検討過程のどの部分の見積りに問題があったのかを省みることができれば、1つの経験値となり、別の設備投資機会においては見積りの精度向上につながるであろう。  *   *   * 次回では、「設備投資の経済性計算」では判断が難しい場合について解説を行う。 (了)

#No. 63(掲載号)
#若松 弘之
2014/04/03

企業担当者のための「不正リスク対応基準」の理解と対策 【第3回】「不正リスクに対応するための内部統制とリスクマネジメント」

企業担当者のための 「不正リスク対応基準」の理解と対策 【第3回】 (最終回) 「不正リスクに対応するための内部統制と リスクマネジメント」   公認会計士 金子 彰良   前回、不正リスクを識別するための不正リスク要因の重要性について触れたが、最終回である【第3回】では、企業における不正リスク対応基準の付録1「不正リスク要因の例示」を受けた対応について解説する。   《付録1「不正リスク要因の例示」の性質と企業の不正リスク対応》 不正リスク対応基準を監査人の問題、また、監査を受ける立場として質問対応などに影響は限定されるという見方ではなく、企業として様々な不正のタイプに対応しうる内部統制と不正リスクマネジメントを構築する契機と捉えることができる。 そのために、不正リスク要因の検討から不正リスクの識別にいたる、いわゆる「不正が発生するしくみ」を理解しておくことが、企業にとって今後どのように不正に対応していくべきかを考える手がかりになると考えられる。   ところで基準において、付録1「不正リスク要因の例示」にあげられている項目は、チェックリスト的に使用されることを意図していない。そこに挙げられている例示は典型的なものであって、網羅的なものではない。すなわち、自社にとって他に不正リスク要因が存在すれば検討しなければならないということである。そして、不正リスク対応基準の中では、基準というものの性質上、具体的な動機・プレッシャーに関する不正リスク要因を洗い出す手法までは明示されていない。 そこで本稿では、付録1「不正リスク要因の例示」をヒントにしながら、既存の企業内で作成していると思われる内部統制の資料を活用して、不正リスクに対応する方法をまとめた。 もっとも、不正リスクに関する企業内における対応組織、不正リスクのマネジメントプロセスは企業によって異なる。したがって、実情に応じて、自社の内部統制の運用または不正リスクのマネジメントプロセスへ組み込んでいただきたい。   《動機・プレッシャーの検討》 最初に、不正リスク要因のうち「動機・プレッシャー」について検討する。付録1の動機・プレッシャーに関する典型的な状況をまとめると次のようになる。 上記は日本企業における過去の不正事案を分析した結果まとめられた典型的な不正リスク要因である。これらから分かることは、業績が悪化した場合にそれを隠すインセンティブが働いて不正な財務報告につながっているということである。外部及び内部からの期待と実際の業績のバランスが崩れた時に、売上を偽装したり、会計数値を操作したり、損失を隠蔽したりすることによって、崩れたバランスを取り戻そうとする。   企業は、付録1の例示をヒントにしつつも、他に自社に不正リスク要因が存在するかどうか、どのように検討すればよいだろうか。 対応策としては、既存のリスクマネジメントのしくみの中で識別・評価・対応されているビジネスリスクを利用することが考えられる。株主・投資家にとって投資判断に影響を及ぼすようなビジネスリスクは有価証券報告書の中でも事業等のリスクとして開示されている。 これらで管理されているリスク事象を起点にして、次の事項を検討しておくことが重要である。 上記は、ビジネスリスクを起点としたので、既存のリスクマネジメントのしくみを利用することが考えられるが、リスク情報の共有を含めたそのようなしくみが未成熟な場合には、別途ビジネスリスクを洗い出すことになる。その際には、業界環境を中心とした外部環境の分析としていわゆる「Five-Force分析」、またマクロの外部環境の分析としていわゆる「PEST分析」と呼ばれる視点をベースにビジネスリスクを考えるとよい。   動機・プレッシャーに関連する不正リスク要因は、ビジネスリスクを起点として企業内部の組織・プロセスへの影響と、最終的に偽装・操作・隠蔽される財務報告項目を検討する。この検討をできるだけ網羅的に行うためのツールとして、「組織・ビジネスモデル」を作成するのもよい。この組織・ビジネスモデルは、企業の外部環境と内部環境を大きく概括的にとらえて、事業環境全体を俯瞰することができるようにモデルとして表現したものである。 下の図表は、アパレル事業を営む企業を例に組織・ビジネスモデルを作成した例である。 【図表】組織・ビジネスモデル(アパレル事業)の例 (画像をクリックすると別ウィンドウでPDFが開きます) この組織・ビジネスモデルでは、不正リスクの検討をしやすいように、外部環境要素を経済的なつながりの観点から5つにカテゴリー分けしている。 また、内部環境要素をマネジメントの階層を意識して3つにカテゴリー分けしている。 この組織・ビジネスモデルを使用すると、不正リスク要因を目に見える形で押さえながら検討することができる。このことをイメージするために、サンプル図表のアパレル事業の組織・ビジネスモデルを使って不正リスク要因の検討例を以下に示す。 上記のような検討を組織・ビジネスモデルを使うことによって、関係者の間で理解・共有しやすくなるだけでなく、不正リスク要因の検討の漏れを防ぐ効果も期待できる。   《機会の検討》 次に、不正リスク要因のうち「機会」についての検討である。「動機・プレッシャー」が存在しても、不正を行う機会がなければ、実施することはできない。この「機会」は、企業の内部統制のしくみと密接な関連がある。内部統制は経営者が事業目的を達成するために構築するものであり、つまり、どの程度の機会を与えるかは、経営者の意思の表れでもある。 内部統制の推進・評価担当者としては、既存の内部統制のしくみについて、不正リスクの観点から再点検するのが良い。 以下では、付録1の「機会」に例示された項目について、関連する内部統制のしくみと合わせて企業としての対応方法を整理してみる。   ① 内部統制の評価範囲に関連した対応 一つは、内部統制評価報告制度における評価対象範囲の点検である。付録1では、企業の属する産業や事業特性に起因して不正な財務報告に関わる機会として、次のような要因を具体的に例示している。 ここに挙げられている例示が自社にも存在し、他の不正リスク要因と合わせて検討したときに、不正リスクに該当すると判断した場合には、評価対象範囲にも含めているか確認をする。また、含めている場合にもその評価作業が形骸化していないかを検討する。 評価対象範囲への影響としては、多くの場合、次の2つが想定される。 ② リスク・コントロールマトリクスのレビュー もう一つは、業務プロセスに係る内部統制の文書化で作成しているリスク・コントロールマトリクスの点検がある。不正リスク要因としての「機会」は、企業内部の構成員に与えられた「権限」を意味するが、これに関連して付録1では、不正な財務報告に関わる機会として次のような要因を例示としてあげている。 企業内の各構成員にどの程度の機会(権限)を与えるかは、経営者の企業経営の思想と関係してくる。言い換えれば、企業全体の目的と業務の有効性・効率性を含めたチェック機能としての内部統制のバランスのとり方に関係してくる。 開示すべき重要な不備の事案における原因分析でも、特定の者に過度に権限が集中していたためチェック機能が働かなかったり、決裁権限をすり抜ける形で不正を実行する例が見受けられた。 また、情報システムのユーザアカウントに付与する権限設定も不正と強い関連を持つ。ユーザアカウントの申請と承認に関する手続や適切なアクセス権の申請と承認に関する手続、定期的なレビュー手続などに不備がある場合、情報システムを使用した不正の機会を与えることになる。 これについては、既存の内部統制の評価資料として作成しているリスク・コントロールマトリクスやITに係る全般統制のチェックリストの再点検を実施する。特に「動機・プレッシャー」の不正リスク要因で検討した結果、偽装・操作・隠蔽される可能性がある財務報告項目に対して注意する。当該財務報告項目の計上に至るプロセスで、不正リスクが認識されているか、その不正リスクに対する統制が存在し、かつ有効に機能しているかを点検しなければならない。 前述した動機・プレッシャーで取り上げたアパレル事業の検討例では、売上高を偽装することで売上高目標を達成したり、在庫高を操作して粗利益目標を達成する可能性があった。この場合、売上と在庫の計上プロセスに関するリスク・コントロールマトリクスを再点検する(なければ追加して作成する)。 例えば、店舗からの売上報告とは別に小売事業責任者が本社で売上伝票を計上しているかもしれない。もしくは、店舗から受領した実地棚卸報告のデータを改竄して本社で在庫操作するかもしれない。これらのリスクに対応するコントロールがなければ、あらためて業務プロセスに組み込むことになる。 内部統制は一度構築をしたら終わりではなく、それを維持管理していくことが必要である。維持管理するというのは、同じ状態を保つ(何もしない)ということではなく、外部・内部の環境変化に応じてリスクを見直し、継続的に改善をしていくことを意味する。今回の不正リスク対応基準の導入にあたって、もう一度不正の観点で自社のリスク・コントロールを点検して欲しい。   最後に、不正リスク要因のうち「姿勢・正当化」について検討する。付録1の姿勢・正当化に関する典型的な状況をまとめると次のようになる。 企業側が主体的に対応をとれるのは(1)である。不正のトライアングルによれば、動機・プレッシャーがあり、機会が与えられたとしても、不正は発生しない。それは、この姿勢・正当化の要素が欠けているからである。 動機・プレッシャーは、個人が作り出す場合もあるが、外部環境や内部環境の変化という企業・個人のコントロールできないものから生まれる。また、機会は内部統制の構築によってある程度コントロールすることができるが、完全になくすことはできない。それでも、不正が発生しなかったとすれば、それは、姿勢・正当化の要素が欠けていたことによって、踏みとどまったことになる。 このように姿勢・正当化は人の心の働きに関わるものであることを考えると、不正を防止するためには、組織における倫理規程やコンプライアンスの遵守と、不正を決して許さない企業風土の醸成が重要になってくることがわかる。   したがって、企業として姿勢・正当化の不正リスク要因を検討する一つの具体的な方法は、全社的な内部統制のチェックリストを不正リスク対応の観点から点検することである。 ① 統制環境 例えば、統制環境の要素である、経営層の経営姿勢や、監査役または監査役会による監督機能、倫理・行動規準などの運用状況について確認をすることが考えられる。経営者にとっては自己を律する強い意思が求められるが、実際に起きている不正な財務報告の事案の中には、経営者による内部統制の無視が原因となっている場合も少なくない。動機・プレッシャーと機会の2つの不正リスク要因の検討で該当する事象が存在し、その上で経営者が自ら正しい財務報告の作成と開示をするための努力を怠っている、または妨害するような行動をとっている場合は、不正リスクは高いと考えられる ② 情報と伝達 また、情報と伝達の要素では、内部通報制度の構築と活性化の観点からの確認をすることが考えられる。実際の事案では、不正リスクに対応する内部統制を無効化された場合にいかに対応するかも大事になる。経営理念や企業倫理の伝達・実践や業務遂行上の職務分離、従業員相互の内部牽制機能の発揮だけで不正を防止できないときに、内部通報制度を利用した早期の不正発見に依存することになる。 ③ モニタリング さらに、モニタリングの要素では、内部監査活動の点検をすることが考えられる。上記の不正防止プログラムの整備・運用状況を評価したり、不正リスクを識別した場合に、それに対応する内部監査手続を作成したりすることが考えられる。内部監査機能による独立した立場からの監査によって、企業の不正リスク管理体制の適切な整備と的確な運用に関する合理的な保証が提供されることになる。 *   *   * 以上、3回に分けて「不正リスク対応基準」の理解と対策について解説してきた。不正リスク対応基準の設定を契機に、企業では組織内の不正を阻止する風土の醸成と不正リスクの観点からリスク・コントロールの再評価が求められている。 本連載を参考に、企業内で内部統制を推進または評価する担当者の方が主体的に不正リスク対応の活動を進めてもらえれば幸いである。 (連載了)

#No. 63(掲載号)
#金子 彰良
2014/04/03

過年度遡及会計基準の気になる実務Q&A 【第9回】「注記に関する表示方法の変更」

過年度遡及会計基準の気になる実務Q&A 【第9回】 「注記に関する表示方法の変更」   公認会計士 阿部 光成   《解 説》 「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(企業会計基準第24号。以下「過年度遡及会計基準」という)及び「比較情報の取扱いに関する研究報告(中間報告)」(会計制度委員会研究報告第14号。以下「研究報告」という)に基づいて解説を行う。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅰ 表示方法の定義 過年度遡及会計基準において、「表示方法」とは、財務諸表の作成にあたって採用した表示の方法(注記による開示も含む)をいい、財務諸表の科目分類、科目配列及び報告様式が含まれると規定されている(過年度遡及会計基準4項(2))。   Ⅱ 注記に関する表示 1 論点 例えば、当事業年度の損益計算書関係の注記において、前事業年度まで「その他の販売費及び一般管理費」として表示していた費目について、重要性が高まったことから独立科目として別掲することが考えられる。 財務諸表本表ではなく、注記事項について、「その他」に集約していた費目を、独立科目として別掲する場合に、「表示方法の変更」として取り扱うのかどうかの論点があると考えられる。 2 考え方 過年度遡及会計基準における「表示方法」の定義には、「注記による開示も含む」と規定されていることから、研究報告Q9のAでは、注記による開示について変更する場合も表示方法の変更に該当するものと考えられるとし、原則として、前期の注記の組替えを行い表示方法の変更に関する注記を行うことになると述べている(過年度遡及会計基準14項、16項)。 ただし、注記事項に関する表示方法の変更については、前期の注記の組替えを行うことになるとしても、「表示方法の変更に関する注記」において詳細に説明するほどには重要性が乏しいと判断されることもあると考えられる。 このため、研究報告Q9のA(1)では確認的に「なお書き」を記載し、「表示方法の変更に関する注記」では、注記すべき事項に重要性が乏しい場合には、注記を省略することができるとされていることについて述べている(財務諸表等規則8条の3の4第3項)。 3 税効果会計に関する注記の例 注記事項について表示方法の変更に該当するケースとしては、例えば、「税効果会計に関する注記」(財務諸表等規則8条の12)が考えられる。 繰延税金資産及び繰延税金負債の発生の主な原因別の内訳の開示に際し重要性が高まったことから独立の項目として別掲したり、法定実効税率と税効果会計適用後の法人税等の負担率との間に差異があるときは当該差異の原因となった主な項目別の内訳を開示することになるが、その際に、重要性が高まったことから独立の項目として別掲するようなケースが考えられる。 このように、注記事項について表示方法の変更に該当するケースがあるので、注意が必要である。 【注記に関する表示方法の変更の開示例】 (了)

#No. 63(掲載号)
#阿部 光成
2014/04/03
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