「税理士損害賠償請求」
頻出事例に見る
原因・予防策のポイント
【事例14(法人税)】
税理士 齋藤 和助
《事例の概要》
平成X5年3月期及び平成X6年3月期の法人税につき、親会社乙社の減資により100%子会社である依頼者(甲社)が特定中小企業者に該当することとなった。
これにより、甲社は「中小企業者等が機械等を取得した場合の法人税額の特別控除」(以下、単に「特別控除」という)の適用が受けられたにもかかわらず、税理士がこれを適用しなかった。
このため、法人税等が過大納付となり、過大納付税額350万円つき賠償請求を受けた。
《賠償請求の経緯》
- 税理士はグループ全体の顧問税理士であった。
- 乙社は平成X4年9月に資本金を1億円に減資した。
- 甲社は乙社の100%子会社であり、資本金3,000万円、従業員30人であった。
- 甲社は特別控除の適用がある機械装置を平成X5年3月に2,000万円、平成X6年3月に3,000万円、それぞれ取得していた。
《基礎知識》
◆中小企業者等が機械等を取得した場合の法人税額の特別控除(措法42の6⑦)
特定中小企業者が、指定期間内に新品の特定機械装置等を取得等して事業供用した場合において、特別償却の適用を受けないときは、取得価額の7%(法人税額の20%を限度)を法人税額から控除できる。
◆「中小企業者等」の意義(措令27の4⑩)
資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下の法人のうち次の①②に掲げる法人以外の法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人とする。
① その発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上が同一の大規模法人(資本金の額若しくは出資金の額が1億円を超える法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除く)の所有に属している法人
② その発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上が大規模法人の所有に属している法人
◆「特定中小企業者」の意義(措令27の6⑨)
中小企業者等のうち、資本金の額又は出資金の額が3,000万円以下の法人をいう。
《税理士の落とし穴》
親会社の減資による子会社への影響を事前に検討しなかった。
《税理士の責任》
甲社の資本金はもともと3,000万円であったところ、平成X4年9月に親会社乙社が減資をしたことにより、同日以後は特別控除の適用を受けることができる特定中小企業者に該当することとなった。
しかし、税理士はこれを失念したまま法人税の申告をし、甲社の社長に指摘されてはじめてその事実に気づいた。
税理士は親会社乙社にも関与しており、乙社の減資について知り得る立場にあった。
乙社が減資をした段階で甲社の特別控除の適用要件を確認していれば適用は受けられたことから、税理士に責任がある。
《予防策》
[ポイント①]
資本金の増減には注意する
中小企業者の判定には、本事例のように甲社だけでなく、その親法人の資本金が関係してくるケースもあるので注意が必要である。
本事例は親法人、子法人とも同じ税理士が関与していたが、グループ会社内では別の税理士が関与しているケースもあることから、少なくとも申告時には親法人の資本金を確認するようにしたい。
なお、中小企業者等で資本金3,000万円超の法人には特別控除の適用はない(特別償却のみ適用可能である)ので併せて注意したい。
[ポイント②]
チェックリストを活用したダブルチェック体制の構築
したがって、申告時のチェックリストを作成して、担当者だけでなく、所長税理士又は有資格者等によるダブルチェック体制を構築することが必要である。
〔凡例〕
措法・・・租税特別措置法
措令・・・租税特別措置法施行令
(例)措法42の6⑦・・・租税特別措置法第42条の6第7項
(了)
「「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント」は、毎月第4週の掲載となります。























