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減損会計を学ぶ 【第9回】「共用資産の減損の兆候・のれんの減損の兆候」

筆者:阿部 光成

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減損会計を学ぶ

【第9回】

「共用資産の減損の兆候・のれんの減損の兆候」

 

公認会計士 阿部 光成

 

「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」(以下「減損会計意見書」という)、「固定資産の減損に係る会計基準」(以下「減損会計基準」という)及び「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(以下「減損適用指針」という)では、共用資産及びのれんも減損会計の対象となっている。

今回は、共用資産及びのれんについて、減損の兆候を識別する際の留意点を解説する。
文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。

 

Ⅰ 共用資産の減損の兆候

1 共用資産

減損会計基準では、複数の資産又は資産グループの将来キャッシュ・フローの生成に寄与する資産のうち、のれん以外のものを共用資産と定義している(減損会計基準注解(注1)5)。

共用資産は、通常、単独でキャッシュ・イン・フローを生じさせることはないが、他の資産または資産グループの将来キャッシュ・フローの生成に寄与する資産である。

共用資産には、次のようなものがある(監査法人トーマツ編『Q&A減損会計適用指針における会計実務』(清文社、2004年4月)34ページ)
共用資産 全社的な資産 本社建物、全社的な試験研究施設、全社的な福利厚生施設 複数部門の共用資産 複数部門に関連する福利厚生施設、共同倉庫、開発・動力・修繕等を行う設備

2 共用資産のグルーピング

共用資産のグルーピングには、次の2つの方法がある。

 共用資産と、その共用資産が将来キャッシュ・フローの生成に寄与している資産又は資産グループを含む、より大きな単位でグルーピングを行う方法

 共用資産の帳簿価額を各資産又は資産グループに配分して、配分後の各資産又は資産グループについて減損損失の認識と測定を行う方法

減損会計基準では、上記の方法を原則としている(減損会計意見書四、2(7))。
イメージで表すと次のようになる。

【図表1】 より大きな単位でグルーピングを行う方法

上記の「共用資産の帳簿価額を各資産又は資産グループに配分する方法」では、各資産又は資産グループに、共用資産の帳簿価額を合理的な基準で配分することになる。

イメージで表すと次のようになる。

【図表2】 共用資産の帳簿価額を各資産又は資産グループに配分する方法

(出所:図表1及び図表2については、監査法人トーマツ編『Q&A減損会計適用指針における会計実務』(清文社、2004年4月)36ページ(一部、筆者が修正))

3 共用資産に関する減損の兆候

共用資産に関して、より大きな単位でグルーピングを行う場合には、減損の兆候の把握、減損損失を認識するかどうかの判定及び減損損失の測定は、まず、共用資産を含まない資産又は資産グループごとに行い、その後、共用資産を含む、より大きな単位で行うことになる(減損会計意見書四、2(7)③)。

減損会計基準は、以下のいずれかに該当する場合には、共用資産に減損の兆候があることとなり、共用資産を含む、より大きな単位で減損損失を認識するかどうかの判定を行うと規定している(減損会計基準注解(注7)、減損適用指針16項、92 項)。

 共用資産を含む、より大きな単位について、減損適用指針12項から15項における事象がある場合

 共用資産そのものについて、減損適用指針13項又は15項における事象がある場合

共用資産は、単独の資産である場合のほか、複数の資産である場合もある。

複数の資産の場合、共用資産全体について減損適用指針13項又は15項における事象がある場合のほか、共用資産全体の帳簿価額のうち、その帳簿価額が大きな割合を占める資産について、減損適用指針13項又は15項における事象がある場合には、減損の兆候に含まれる。

共用資産の帳簿価額を各資産又は資産グループに配分する方法を採用した場合には、共用資産に減損の兆候があるかどうかにかかわらず、その帳簿価額を各資産又は資産グループに配分することとなり(減損会計意見書四、2.(7)②ただし書)、当該配分された各資産又は資産グループに減損適用指針12項から15項における事象がある場合、減損の兆候があることとなる(減損適用指針16項)。

福利厚生施設について減損損失を計上した事例としては、次のものがある。

東京瓦斯(株)(平成25年3月31日)

 軽井沢用地については、福利厚生施設の閉鎖の決定があり、地価の下落に伴い帳簿価額に対し著しく時価が下落しているため、帳簿価額を回収可能価額まで減額した。
 (出所:金融庁のEDINET)

 

Ⅱ のれんの減損の兆候

1 のれんのグルーピング

のれんのグルーピングには、次の2つの方法がある(減損会計意見書四、2.(8)②)。

 のれんが帰属する事業に関連する複数の資産グループにのれんを加えた、より大きな単位で行う方法

 のれんの帳簿価額を関連する資産グループに合理的な基準で配分する方法

のれんは、それ自体では独立したキャッシュ・フローを生まないことから、上記の方法が原則とされている(減損会計意見書四、2.(8)②)。

2 減損の兆候

のれんを含む、より大きな単位について、減損適用指針12項から15項における事象がある場合は、のれんに減損の兆候があることとなり、より大きな単位で減損損失を認識するかどうかの判定を行う(減損会計基準注解(注7)、減損適用指針17項、95項)。

のれんの帳簿価額を各資産グループに配分する方法を採用した場合には、のれんに減損の兆候があるかどうかにかかわらず、その帳簿価額を各資産グループに配分することとなり(減損会計意見書四、2.(8)②ただし書)、当該配分された各資産グループに減損適用指針12項から15項における事象がある場合、減損の兆候があることとなる。

のれんについて減損損失を計上した事例としては、次のものがある。

アサヒグループホールディングス(株)(平成24年12月31日)

 アサヒグループは、原則として工場等事業所ごとに区分し、キャッシュ・フローの相互補完性を考慮しながらグルーピングを決定しております。飲料事業において計上したのれんの一部につきましては、事業計画を見直した結果、当初想定した収益が見込めなくなったことから、回収可能価額と帳簿価額との差額を減額し、当該減少額を減損損失として特別損失に計上しております。
 なお、回収可能価額は使用価値により測定しており、将来キャッシュ・フローを7.3%で割り引いて算定しております。
 (出所:金融庁のEDINET)

(了)

「減損会計を学ぶ」は、隔週で掲載されます。

連載目次

「減損会計を学ぶ」(全24回)

【参考記事】
「税効果会計を学ぶ」(全24回)

【参考記事】
「金融商品会計を学ぶ」(全29回)

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筆者紹介

  • 阿部 光成

    (あべ・みつまさ)

    公認会計士
    中央大学商学部卒業。阿部公認会計士事務所。

    現在、豊富な知識・情報力を活かし、コンサルティング業のほか各種実務セミナー講師を務める。
    企業会計基準委員会会社法対応専門委員会専門委員、日本公認会計士協会連結範囲専門委員会専門委員長、比較情報検討専門委員会専門委員長を歴任。

    主な著書に、『新会計基準の実務』(編著、中央経済社)、『企業会計における時価決定の実務』(共著、清文社)、『新しい事業報告・計算書類―経団連ひな型を参考に―〔全訂版〕』(編著、商事法務)がある。

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