ストーリーで学ぶ
IFRS入門
【第16話】
(最終回)
「連結財務諸表(IFRS第10号)、おさえるポイントは3つ!」」
仰星監査法人
公認会計士 関根 智美
連載の目次はこちら
● ○ プロローグ ○ ●
ようやく仕事がひと段落ついた桜井は、大きく伸びをして、肩を回す。窓の外を見ると、空はまだ明るい。日が長くなってきた証拠だ。
桜井は、とある中規模の上場メーカーの経理部に勤めている。5月も下旬に差しかかり、まだまだ忙しいものの、年度決算という繁忙期のピークが過ぎた経理部内の雰囲気も落ち着いてきた。
「お疲れさん。」と、桜井の隣に座っているイカツイ男性が声をかけてきた。2年先輩の藤原だ。藤原とは年末からしばらく険悪な関係が続いていたのだが、先月ようやく和解し、以前のように気軽な話をする仲に戻っている。
「今日は久しぶりに早く上がれそうです。先輩も順調そうですね。」
「ああ。この決算が終わったら、またIFRSプロジェクトが待っているけどな。」
藤原は溜息をついた。桜井の会社では、数年以内にIFRSを導入することが決まっており、藤原はそのプロジェクトチームの一員なのだ。桜井はメンバーには含まれていないものの、去年の夏から藤原にIFRSを教わっていた。
「僕が先輩からIFRSを教わり始めて、そろそろ1年になるんですね・・・」
桜井は感慨深げに言った。初めは教わる一方だった桜井も、最近では藤原に頼らず、自分から進んで本を開くようになっている。
「そう言えばそうだな。ちゃんと自主勉続けているか?」と、藤原が訊いた。
「もちろんですよ。今は忙しいから、専ら電車の中だけですけど。」
「へぇ。なかなか頑張っているじゃないか。」
「今朝は、IFRS第10号の連結財務諸表の章を勉強したんですよ。」
藤原の言葉に嬉しくなり、桜井は得意げに言った。今回の決算で初めて本格的に連結業務に携われたこともあり、桜井はIFRSの連結についても興味を覚えたからだ。
「そう言えば、連結について教えていなかったな。すっかり忘れていた。」
頬をポリポリ掻きながら、藤原が言った。IFRS導入決定後すぐに検討した論点であったこともあり、藤原の中では既に桜井に教えたつもりになっていたのだ。
「え、忘れてたんですか!?」
言い訳をするのも格好が悪いと思った藤原は、桜井にこう言った。
「俺も切りがいいところだから、今から簡単に説明してやるよ。今朝の復習になるだろ?」
「まぁ、しょうがないですね。それで手を打ちましょう。」
桜井の生意気な返事に口元を緩めた藤原は、桜井の頭を軽く小突いた。
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