公開日: 2016/06/23 (掲載号:No.174)
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ストーリーで学ぶIFRS入門 【第4話】「概念フレームワークを学ぶ(後編)」

筆者: 関根 智美

ストーリーで学ぶ
IFRS入門

【第4話】

「概念フレームワークを学ぶ(後編)」

仰星監査法人
公認会計士 関根 智美

 

(以下で説明する概念フレームワークは、2010年9月に公表されたものに準じています。)

● ○ プロローグ ○ ●

6月23日木曜日、午前7時30分。桜井と藤原の早朝IFRS勉強会も、今日で3回目だ。

「入社3年目、経理部のホープ桜井弘樹は、頼りがいのある藤原先輩の下、今日も概念フレームワークの勉強に勤しんでいるのであった。」
桜井は、椅子ごと回転させて隣の藤原に向き直った。

「先輩、缶コーヒーをマイク代わりに変なナレーションをつけるの、止めてください。」

「悪い、悪い。」

「それよりもIFRS導入のプロジェクトの方は、順調なんですか?」
そもそも桜井がIFRSの勉強をすることになったのは、会社がこれからIFRSを導入するか検討を始めたためである。IFRS任意適用会社は順調に増加傾向ではあるが、桜井の勤めるような中堅の上場会社はまだ相対的に少ない。

「んー、まあ予定通り、ってところだな。」
藤原にしては歯切れの悪い返事が返ってきたので、桜井は意外に感じた。

「あれ?藤原君に桜井君じゃない。早いのね。」
そこに、同じ経理部の橋本が近くのカフェのタンブラーを片手にオフィスに入ってきた。

「おはようございます。橋本さんこそ、今日は早いですね。」
橋本は派遣社員を除くと経理部唯一の女性社員で、主に税金関係を担当している。まだ子供が小さいことから時短勤務で働いているため、早朝出社は珍しい。

「今日はダンナが有休取ったから、子供の保育園の送りを任せてきちゃったの。ほら、6月ってまだ忙しいじゃない?朝だったら邪魔されずに自分の仕事できるでしょ?」
そう言いながら、橋本はテキパキと荷物を置き、パソコンを立ち上げる。

「僕たちは、IFRSの勉強会なんですよ。藤原先輩から教わっているんです。」

「えー、藤原なんかに教えてもらって・・・大丈夫?」

「藤原なんか、って失礼ですよ。俺だって後輩指導くらいできます。」

「そっかぁ、藤原君ももうそんなになっちゃったのね~」
橋本は椅子の背もたれに寄りかかりながら、向かいの藤原を感慨深げに見上げる。桜井は、橋本が藤原よりも前に入社しているのは知っていたが、具体的に何年に入社したかは知らなかった。逆算すると年齢が分かるため、橋本の入社年は無言の箝口令が経理部内で敷かれているからだ。

「そんなに、って、どんなになってるんですか、俺は。」

「やだ、褒めてるのよ、これでも。大丈夫。ジャマはしないから、2人とも気にせず続けて。」
そう言うと、橋本はバッグからイヤホンを取り出し、仕事に没頭し始めた。

「じゃあ、俺たちも始めるか。」
毒気を抜かれた藤原は「コホン」と咳払いをして桜井に話しかけた。桜井も素直に頷く。

 

● ○ 概念フレームワークの範囲 ○ ●

前回の続き)

 財務諸表を構成する要素の定義、認識及び測定

【概念フレームワークの範囲】

▷ 財務報告の目的

▷ 有用な財務情報の質的特性

▷ 財務諸表を構成する要素の定義、認識及び測定

▷ 資本及び資本維持の概念

「上の図を覚えているか?」

「はい。前回から勉強している概念フレームワークで取り扱っている範囲のリストですよね。」

「そうだ。今日は3つ目の項目、『財務諸表を構成する要素の定義、認識及び測定』について勉強していく。今日が概念フレームワークでは一番のメインになるから、しっかり理解しろよ。」

それを聞いて、桜井は少し緊張した面持ちで頷いた。だが、ふと疑問に思い、質問した。
「どうして、ここが肝になるんですか?」

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【第4話】

「概念フレームワークを学ぶ(後編)」

仰星監査法人
公認会計士 関根 智美

 

(以下で説明する概念フレームワークは、2010年9月に公表されたものに準じています。)

● ○ プロローグ ○ ●

6月23日木曜日、午前7時30分。桜井と藤原の早朝IFRS勉強会も、今日で3回目だ。

「入社3年目、経理部のホープ桜井弘樹は、頼りがいのある藤原先輩の下、今日も概念フレームワークの勉強に勤しんでいるのであった。」
桜井は、椅子ごと回転させて隣の藤原に向き直った。

「先輩、缶コーヒーをマイク代わりに変なナレーションをつけるの、止めてください。」

「悪い、悪い。」

「それよりもIFRS導入のプロジェクトの方は、順調なんですか?」
そもそも桜井がIFRSの勉強をすることになったのは、会社がこれからIFRSを導入するか検討を始めたためである。IFRS任意適用会社は順調に増加傾向ではあるが、桜井の勤めるような中堅の上場会社はまだ相対的に少ない。

「んー、まあ予定通り、ってところだな。」
藤原にしては歯切れの悪い返事が返ってきたので、桜井は意外に感じた。

「あれ?藤原君に桜井君じゃない。早いのね。」
そこに、同じ経理部の橋本が近くのカフェのタンブラーを片手にオフィスに入ってきた。

「おはようございます。橋本さんこそ、今日は早いですね。」
橋本は派遣社員を除くと経理部唯一の女性社員で、主に税金関係を担当している。まだ子供が小さいことから時短勤務で働いているため、早朝出社は珍しい。

「今日はダンナが有休取ったから、子供の保育園の送りを任せてきちゃったの。ほら、6月ってまだ忙しいじゃない?朝だったら邪魔されずに自分の仕事できるでしょ?」
そう言いながら、橋本はテキパキと荷物を置き、パソコンを立ち上げる。

「僕たちは、IFRSの勉強会なんですよ。藤原先輩から教わっているんです。」

「えー、藤原なんかに教えてもらって・・・大丈夫?」

「藤原なんか、って失礼ですよ。俺だって後輩指導くらいできます。」

「そっかぁ、藤原君ももうそんなになっちゃったのね~」
橋本は椅子の背もたれに寄りかかりながら、向かいの藤原を感慨深げに見上げる。桜井は、橋本が藤原よりも前に入社しているのは知っていたが、具体的に何年に入社したかは知らなかった。逆算すると年齢が分かるため、橋本の入社年は無言の箝口令が経理部内で敷かれているからだ。

「そんなに、って、どんなになってるんですか、俺は。」

「やだ、褒めてるのよ、これでも。大丈夫。ジャマはしないから、2人とも気にせず続けて。」
そう言うと、橋本はバッグからイヤホンを取り出し、仕事に没頭し始めた。

「じゃあ、俺たちも始めるか。」
毒気を抜かれた藤原は「コホン」と咳払いをして桜井に話しかけた。桜井も素直に頷く。

 

● ○ 概念フレームワークの範囲 ○ ●

前回の続き)

 財務諸表を構成する要素の定義、認識及び測定

【概念フレームワークの範囲】

▷ 財務報告の目的

▷ 有用な財務情報の質的特性

▷ 財務諸表を構成する要素の定義、認識及び測定

▷ 資本及び資本維持の概念

「上の図を覚えているか?」

「はい。前回から勉強している概念フレームワークで取り扱っている範囲のリストですよね。」

「そうだ。今日は3つ目の項目、『財務諸表を構成する要素の定義、認識及び測定』について勉強していく。今日が概念フレームワークでは一番のメインになるから、しっかり理解しろよ。」

それを聞いて、桜井は少し緊張した面持ちで頷いた。だが、ふと疑問に思い、質問した。
「どうして、ここが肝になるんですか?」

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連載目次

筆者紹介

関根 智美

(せきね・ともみ)

公認会計士

神戸大学経営学部卒業
2005年公認会計士2次試験合格
2006年より大手監査法人勤務後、語学留学及び専業主婦を経て、
2015年仰星監査法人に入所。法定監査を中心に様々な業種の会計監査業務に従事する。
2017年10月退所。

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