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[無料公開中]ストーリーで学ぶIFRS入門 【第2話】「IFRSの特徴は大きく3つ」

筆者:関根 智美

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ストーリーで学ぶ
IFRS入門

【第2話】

「IFRSの特徴は大きく3つ」

仰星監査法人
公認会計士 関根 智美

 

● ○ プロローグ ○ ●

 ゼロから始めるIFRS勉強会

中堅上場会社の経理部に勤める桜井は、入社3年目。ようやく経理部の業務にも慣れてきた頃である。最近、会社がIFRS導入を検討し始めたため、2年先輩の藤原の下で桜井もIFRSを勉強することになった。

今日は6月の第2木曜日だ。藤原と約束したIFRS勉強会の日である。

「おはよう。さっそくIFRSの本を買ったのか?」
今朝も7時半にオフィスに入り、静かな時間を満喫している桜井に藤原が声をかけた。
桜井が本から目を離し、いつものように背後を見上げると、藤原が心なしか嬉しそうな顔をしている。

「おはようございます。とりあえず本屋に並んであった入門書を買ってみたんです。」
桜井は手に持った本のタイトルが藤原にも見えるように、少し掲げてみせた。

「いいんじゃないか?背伸びして難しい本を読んでも頭に入るどころか、下手すりゃ睡眠導入剤になるからな。」

「そうなんです。分厚いIFRSの本も立ち読みしたんですけど、歯が立たないってまさにこのことを言うんだなって実感しましたよ。」
藤原は、ため息をつく桜井の隣にドスンと腰を下ろし、大きく伸びをした。

「焦るな、若者。初めから上手くできる奴はいないんだから。まずは基礎をしっかり固めておくことが大事だぞ。幸い時間はまだある。」

「若者って、先輩とは2才しか違わないじゃないですか。」

「まぁ、細かいことは気にするな。さ、勉強しようぜ」
藤原は桜井のツッコミを軽くいなすと、コピーの裏紙とペンを取り出してせっせと何かを書き始めた。藤原の鷹揚さには慣れているので、桜井は気を取り直してノートとペンを準備することにした。

 

 重要なキーワードの英語表記も押さえよう

「ああ。そうだ。言い忘れていた。」
藤原は、紙から顔を上げて、桜井を見た。

「はい、何でしょう?」
桜井は何となく嫌な予感がした。

「これからIFRSを勉強するにあたって、重要な言葉については英単語も併せて教えていくからな。」

「えっー!?どうしてですか?ちゃんと日本語に訳されているのに、英語なんて必要ないじゃないですかぁ。」

「お前さ、英語苦手だろ?」

図星を指されて、桜井は一瞬口ごもる。学生時代は英語が不得意だったわけではない。受験英語は数学のように理屈で解けたため、英単語さえ押さえておけば何とかなった。でも、会話やニュースのように実際に生きている英語となるとそうはいかない。読むにしても聴くにしても全く理解できず、脳みそがフリーズしてしまうのだ。

「でもな、IFRSはもともと英語で書かれているだろ?会計処理を考えるときに、IFRSの本来の意味を原文に戻って確認することも今後は出てくるだろうし、これからは海外の子会社とも頻繁にやり取りするようになる。」

「はい。その通りですね・・・」
正直あまり遭遇したくないシチュエーションだな、と桜井は思った。

「何もIFRSのすべてを英語で理解しろ、と言ってるんじゃないんだ。大切なキーワードを押さえておけば、日本語訳からは伝わらないニュアンスを感じ取ることができるし、子会社の経理担当者とやり取りする際、どういったことについて問い合わせてきたのか、大まかに分かるだろう?」

「ええ、まぁ、確かに先輩のおっしゃる通りですが。」

「それに少しずつ英語にも慣れることができる。一石三鳥じゃないか。」
桜井だって、藤原の言ってることは理屈では分かるのだが、どうしても気分が落ち込んでしまうのは止められない。「でも、これも仕事だろ」と、自分に言い聞かせる。

そんな桜井の心境が手に取るように分かる藤原は苦笑しつつも後輩を励ます。

「まずは単語だけだ。焦らず行こうぜ。」

「はぁ。頑張ります・・・」
桜井は歯切れの悪い返事をした。今のところはこの返事で十分だろう、と藤原は思った。桜井の英語アレルギーの第一段階をクリアできたことは間違いない。

 

● ○  IFRSsの構成要素は4つ ○ ●

「よし。それでは勉強開始だ。」
藤原は「コホン」と咳払いを一つすると、桜井に先ほどコピー用紙の裏紙に書いた図を見せる。

「まずは、IFRSには何が含まれるのか、というところからスタートしよう。」

「確か、IFRSIASという2つの基準とIFRICSICの2つの解釈指針の4つですよね。」

「そうだ。アルファベットばかりで混乱してしまうから、一度整理してみるか。
IFRSは国際財務報告基準(International Financial Reporting Standard) といい、国際会計基準審議会(International Accounting Standards Board)という団体が設定した基準のことを指す。この国際会計基準審議会は頭文字を取ってIASBと呼ばれているんだ。」

「IASBって、会計雑誌とかでよく見かけますよね。そのIASBという団体が、日本での会計基準の策定団体である企業会計基準委員会(ASBJ)に相当するんですか?」

「そうだ。そして、IASBの前身団体である国際会計基準委員会(IASC)が設定した基準を国際会計基準(International Accounting Standard)、つまりIASという。」

「では、先にIASCがIASという基準を策定していて、IASCがIASBに名称変更された後に作られた基準が、IFRSということですか?IASの方がIFRSより前に作られているんですね。」
藤原は頷いて説明を続けた。

「解釈指針についても基準と同じだ。IFRS解釈指針委員会という団体が公表した解釈指針をIFRICといい、IFRSに対応した解釈指針だ。そして、IFRS解釈指針委員会の前身団体である解釈指針委員会が公表した解釈指針がSIC、つまりIASに対応した解釈指針というわけだ。
これらの4つの構成要素をまとめてIFRSsと書くこともある。会計基準のIFRSと区別をつけるためだな。図で描くとこんな感じだ。」

「なるほど。分かりやすいですね。」

 

● ○  IFRSの特徴は主に3つ ○ ●

藤原はさらに余白に3つの言葉を書き加え、説明を続けた。

「次に、IFRSの特徴は大きく分けると3つある。原則主義資産負債アプローチ豊富な注記だ。」

 

 原則主義

【IFRSsの主な特徴】

▷ 原則主義

▷ 資産負債アプローチ

▷ 豊富な注記

「1つ目の原則主義というのは、原理原則を明確にして、例外を基本的に認めない方針で会計基準を設定するというものだ。そのため、原則主義の下では、数値基準や詳細な定めは極力設けられない。」

「では、日本基準は原則主義ではないんですね。日本基準では、例外処理が規定されてたり、〇%だったらこう処理する、みたいな数値基準はよく見かけますよね。実際とても助かりますけど。」

「自分で考えなくていいからな。」藤原はニヤリと笑うと、話を続けた。

「日本基準は細則主義と言われている。細則主義とは、原則主義とは反対に、詳細かつ具体的な規定を設ける方法だ。」

「原則主義と細則主義ですか。初めて聞きました。原則主義のIFRSを適用すると、何が変わるんですか?」

「IFRS適用下では、今までのように数値基準に従って機械的に会計処理が決まる、ということが無くなるな。基準に示された原理原則に基づいて、どの会計方針を採用すれば経済的実態を適切に表すかという観点から、自分たちで実質的に判断していく必要があるんだ。もちろん、その判断の根拠を説明する責任も発生してくる。一方で、自らの判断で会計方針を策定することで、取引の実態をより適切に反映できるというメリットもあるんだ。」

「へぇ。IFRSを適用することは、大変なことばかりじゃないんですね。」

 

 資産負債アプローチ

【IFRSsの主な特徴】

▷ 原則主義

▷ 資産負債アプローチ

▷ 豊富な注記

桜井は2つ目に書かれた項目に目を移して、難しそうな顔をした。

「この資産負債アプローチという言葉は、聞いたことがあります。簿記の勉強の時に出てきたんですけど、いまいちピンとこなくて・・・」

「『利益=収益-費用』って、始めに簿記で習うからな。仕方ないさ。」
藤原は少し元気を失った桜井に苦笑しつつ、説明を続けた。

「2つ目のIFRSの大きな特徴が、BS重視の資産負債アプローチだ。
資産負債アプローチでは、会社の業績である利益は資本取引以外の期首と期末の資本の変動額と考える。そして、資本は資産から負債を差し引いたものと定義されるんだ。ちなみに、この利益のことを包括利益と言うのは知ってるな。

つまり、大まかに言うと、
『包括利益=資本(資産-負債)の変動額』
という式で表すことができる。」

「資産負債アプローチは、BS側の変動分を利益と捉える、ということですね。」

「そうだ。この式からも見て取れるように、資産と負債が決まって初めて資本や利益が算定される。だから、資産と負債の定義や測定が重要になってくるというわけだ。ちなみに、IFRSでは、資産や負債は『概念フレームワーク』で定義づけされている。」

「IFRSでは、業績指標として包括利益を重視しているから、包括利益を算定する基になる資産と負債が重要になるんですね。何となく分かりかけてきました。
ところで、さっき先輩が言ってた『概念フレームワーク』って何ですか?」

「お、いいところに反応したな。『概念フレームワーク』は、簡単に言うと、財務諸表の作成及び表示の基礎にある前提や概念を体系化したものなんだ。すごく重要なものだから、来週と再来週にかけてじっくり教える予定だ。楽しみにしておいてくれ。」

「ふうん。そんなに大事なものなんですね。では、来週楽しみにしておきます?」

「おいおい、疑問形で終わるなって・・・」

 

 豊富な注記

【IFRSsの主な特徴】

▷ 原則主義

▷ 資産負債アプローチ

▷ 豊富な注記

藤原はひと呼吸おくと、3つ目の言葉に視線を移した。

「最後の特徴が、注記が豊富であることだ。IFRSでは、財務諸表の本体に反映しないものの、投資家等が企業を理解する上で必要な情報は注記情報として開示すべき情報を定めているんだ。中でも、金融商品のリスク情報に関する注記や資産・負債の公正価値に関する注記は日本基準より充実している。また、注記する事項はIAS第1号「財務諸表の表示」や、各IFRS基準に開示すべき情報として定められている。」

桜井がポカンとした表情をしているところを見ると、漠然としすぎた説明だったようだ。藤原は気を取り直して、もっと具体的な例を示すことにした。

「といっても、言葉だけじゃ抽象的すぎるよな。百聞は一見に如かず、だ。」
そう言うと、藤原はPCの電源を入れ、パスワードを入力し始めた。間もなく、業界トップの会社のホームページにアクセスするとIRライブラリから過去の有価証券報告書を次々と開き始める。

「これがIFRS適用前のものだ。そして、こっちがIFRS適用後の有報・・・」
藤原は目次のページから、『第5 経理の状況』の連結財務諸表等のページ数と財務諸表のページ数をメモすると、引き算で連結財務諸表等に割り当てられているページ数を計算し、年度ごとに並べていく。

「この3年分が日本基準で作成したときのページ数だ。だいたい50ページ前後で推移しているだろ?そしてこれがIFRS適用初年度、70ページだ。翌年になると少しページ数は減るが、それでも日本基準の時と比較しても多い。ページ数こそ差があれ、他のIFRS適用会社でも同じような推移をしている。」

「えぇ!注記内容で20ページも増えるんですか・・・。具体的な数字を聞くとちょっとゾッとしますね。」
口元を引きつらせた桜井を見て、藤原も苦笑いした。その数字を調べた時の自分も同じ顔をしていたに違いない。注記のページ数がそんなにショックだったのか、桜井は急に寡黙になってしまった。見かねた藤原は桜井の背中をポンと叩いて励ます。

「そんなに落ち込むなよ。経理部10人で割れば1人2ページだ。ほら、何とかなる気になってきただろう?」
桜井はしばらく沈黙した後、眉をひそめて藤原を見た。

「先輩、10人って・・・派遣の方も含まれていますよ?」
数秒の間をおいて、オフィスに藤原の笑い声が響く。

「そうそう、その調子だ。お前はその冷静なツッコミが持ち味なんだから。」
桜井は褒められたのか、貶されたのか判断つかない表情をしていたが、やがて頬を緩めた。

「まぁ、細かいことは気にするな。さて、仕事だ、仕事。」

気がつくとすでに8時半を回り、オフィスに人が増え始めていた。藤原はIFRSの特徴をメモ書きした紙を桜井に渡すと、さっそく仕事に取り掛かる。

桜井は藤原の意外と几帳面な字を見ながら、少し前向きな自分がいることに気がついた。ポジティブって感染するんだな、としみじみ思う。

「そうですね。なんとかなる気になってきました。」
藤原は目を細めて桜井を横目で見た。

「さて、今日も一日頑張りますか。」
桜井もPCの電源をオンにした。

【IFRSsの構成要素と主な特徴】

 ◆ ◇ IFRSsの構成要素 ◇ ◆ 

 ◆ ◇ IFRSsの主な特徴 ◇ ◆ 

▷ 原則主義

▷ 資産負債アプローチ

▷ 豊富な注記

 

(注)
・この記事はフィクションであり、実在する人物・地名・団体とは一切関係ありません。
・各記事は公開日現在に公表されている基準等に基づいていますので、閲覧の際はご留意ください。
・この記事は基礎的な事項を中心に扱っており、IFRSの全てを網羅するものではありません。詳細につきましては、それぞれの専門家にご相談ください。
・文中、意見に関する部分は私見であり、執筆者の属する組織の公式な見解ではありません。

(了)

この連載の公開日程は、下記の連載目次をご覧ください。

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筆者紹介

  • 関根 智美

    (せきね・ともみ)

    公認会計士

    神戸大学経営学部卒業
    2005年公認会計士2次試験合格
    2006年より大手監査法人勤務後、語学留学及び専業主婦を経て、
    2015年仰星監査法人に入所。法定監査を中心に様々な業種の会計監査業務に従事する。
    2017年10月退所。

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