〈IT会計士が教える〉
『情報システム』導入のヒント (!)
【第3回】
「仕様に漏れのないプロトタイプ型開発。
それでもERP導入が失敗するワケ」
公認会計士 小田 恭彦
-連載の目的-
この連載は、「日本IT会計士連盟」に所属する者が有志により、企業がさまざまな形態の『情報システム』を導入する際に遭遇し抱え込んでしまう“ありがちな疑問・問題”について取り上げ、その解決の糸口を示すことで、企業がスムーズにそのシステムを導入・運営できるよう手助けすることを目的とする。
はじめに
会計システムをはじめ販売、購買など企業の業務を取り扱うシステムを一般的に「基幹システム」と呼ぶ。この基幹システムの開発は、「オーダーメイドによる開発」から「パッケージシステムをベースにした開発」が主流になりつつある。
今回はパッケージシステムをベースとした導入をより効率的かつ効果的に進めるための手法である「プロトタイプ型」についてまとめてみたい。
▼基幹システム開発の主流は「オーダーメイド」から「パッケージ」へ▼
“ERP”という言葉の説明はいまさら不要かもしれないが、改めて簡単に解説しておく。
ERPとは“Enterprise Resource Planning”の略であり、企業が保有しているヒト・モノ・カネなど経営資源を統合的に管理し、業務の効率化や全体最適化を目指すという概念であり、一般的にはそれを実現するために導入する統合型パッケージ型の基幹システムを指す。
1990年代から2000年代にかけてのERPの台頭やクライアント・サーバー型システムの普及を境に、企業の基幹システムは大きく変化した。それ以前はいわゆる「オフコン時代」と呼ばれる汎用機によるオーダーメイド型の開発が中心であったが、それ以降はERPを中心としたパッケージシステムによる既製品の導入が主流となった。
〈基幹系システムの変遷〉
- 1990年代~2000年代以前
インフラ:汎用機が中心
開発方式:オーダーメイド
- 1990年代~2000年代以降
インフラ:クライアント・サーバー型が中心(現在はクラウド型が普及)
開発方式:パッケージシステム
▼期待ギャップが起こりやすい開発手法▼
オフコン時代のオーダーメイド開発は、いわゆる「ウォーターホール型」の開発が主流であった。ウォーターホール型とは、「要件定義」「概要設計」「詳細設計」「プログラミング」「テスト」といった開発手順をその時系列通りに行い、前工程の成果物の品質を確保し前工程への手戻りを最小限にする開発手法である。逆に言えば、手戻りが発生した場合のリスクが大きい開発手法でもある。
ウォーターホール型の開発のポイントは上流工程の精度であり、それは「最も上流工程の要件定義の精度」に依存すると言っても過言ではない。
つまり、このシステム開発においては、「最初が肝心」ということである。
ただしこの「最初」が、以下の理由により、非常に難しい作業となる。
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