〈IT会計士が教える〉
『情報システム』導入のヒント (!)
【第8回】
「基幹システム導入は『経営のトップ』を巻き込め」
公認会計士 五島 伸二
-連載の目的-
この連載は、「日本IT会計士連盟」に所属する者が有志により、企業がさまざまな形態の『情報システム』を導入する際に遭遇し抱え込んでしまう“ありがちな疑問・問題”について取り上げ、その解決の糸口を示すことで、企業がスムーズにそのシステムを導入・運営できるよう手助けすることを目的とする。
はじめに
基幹システム導入に関わるベンダー選定の最終プレゼンの場。
出席した社長、役員、選定プロジェクトのメンバーに対し、パワーポイントを使って懸命に自社の優位性を訴えるベンダーの担当者。
プロジェクトメンバーは熱心に説明を聞いているが、社長や役員は退屈そうに配付された資料をパラパラめくっている。
ベンダーのプレゼンが終わり質疑応答の時間となっても、質問するのはプロジェクトメンバーばかりで、社長、役員からは特に質問は出ない・・・
ベンダー選定のプレゼンの場において、よく目にする光景である。
ではなぜ、社長、役員といったトップは、経営に大きな影響を及ぼす自社の基幹システム導入に関わるプレゼンに、関心を示さないのであろうか。
▼なぜ経営トップはシステム導入に関心がないのか?▼
その理由は、簡単である。
ベンダー選定のプレゼンの場で論じられていることが、経営トップの“関心を引く内容”ではないからである。
そもそも「基幹システム」とは、販売業務、購買業務、在庫管理業務、経理業務など、企業の基幹業務を支える業務システムの集合である。
したがって、基幹システムの新規導入や更新ということになると、基幹業務で抱えている課題をなんとか新システムで解決しようと、業務上の要件を中心に検討する傾向がある。
例えば、経費集計を楽にしたいとか、在庫移動を自動処理したいとか・・・
そして、そういう議論の結果を反映したRFP(Request For Proposal:提案依頼書)が作成され、そのRFPに基づいてベンダーは提案書を作成し、最終選考まで残ったベンダーは提案書に沿って業務上の課題を中心にプレゼンを行う。
これでは、いくらベンダーが一生懸命プレゼンをしても、経営トップにとってはピンと来ないということになる。
基幹システムの導入は、多くの企業において、金額基準からも質的基準からも、取締役会決裁あるいは社長・役員決裁となることが多い。このためプレゼンの場にトップがいることは、形式的には当然である。
しかし、せっかくそのような重要な場が設けられているのに、経営トップに関心のある実質的な議論がされないというのはおかしな話である。
▼本来は「経営レベルの議論」が必要▼
基幹システムはあくまで業務システムであり、基幹システムの導入によって業務上の課題解決を検討することは、重要ではある。ただし、基幹システムは経営判断に必要な多くの情報(データ)を抽出する元になるシステムであり、また、基幹システムに自社の独自のビジネスプロセスを組み込むことにより、競争優位を保つ企業は実際に多い。
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