公開日: 2015/10/15 (掲載号:No.140)
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[子会社不祥事を未然に防ぐ]グループ企業における内部統制システムの再構築とリスクアプローチ 【第1回】「子会社不祥事が親会社・親会社役員にもたらすインパクト」~場合によっては親会社の屋台骨をゆらがしかねない子会社の不祥事~

筆者: 遠藤 元一

[子会社不祥事を未然に防ぐ]
グループ企業における内部統制システムの再構築とリスクアプローチ

【第1回】

「子会社不祥事が親会社・親会社役員にもたらすインパクト」
~場合によっては親会社の屋台骨をゆらがしかねない子会社の不祥事~

 

弁護士 遠藤 元一

 

1 後を絶たない会計不祥事

本年9月、東芝は、2度の有価証券報告書等の提出の延期を経て「不適切な会計処理」(不正会計・粉飾)を行っていたとして過年度決算訂正等を行った。

2011年に資本市場の信頼性を損なうような大規模な会計不祥事・経営者不正が起きたことを契機に、監査基準の改定および監査基準の特別基準として「監査における不正リスク対応基準」が導入され、会社法でも企業統治のための制度改正が行われる等、多方面で公正な資本市場の維持のための努力が続けられている最中、企業統治の優等生としてトップランナーと考えられていた東芝が長期にわたり粉飾を行っていたことが市場関係者に衝撃を与えたことは想像に難くない。

もっとも、東京商工リサーチの調査によると、会計不祥事により過年度決算に影響がでた、あるいは今後、影響がでる可能性があることを開示した上場企業は2012年度(2012年4月1日~2013年3月31日)が26件、2013年度が38件、2014年度が42社となっている。

つまり、上記の事例ほどの大掛かりなものではなくても、上場企業において会計不祥事が間断なく発生している。これらの中には、資本市場の信頼性を担保する目的で適正な企業情報を開示するために会計・監査に関する制度・基準が厳格化され、四半期報告の義務化や会計情報の見積的な要素の増加に伴い、会計基準の選択や見積・評価の誤謬等が原因となって生じた事例も多いが、意図的・故意による粉飾事案も少なくない。

 

2 会計不祥事が及ぼす企業危機

粉飾決算は、一般に公正妥当と認められる会計基準に反する手続により利益を計上する会計行為である。不正・違法な会計操作の積み重ねは、雪だるま式に飛躍的に大きくなり、財務諸表に対し、定量的ではなく、定性的な影響を及ぼし、当初は、アリの一穴と思われていたものであっても、堤防が崩れ、企業の存亡を左右する大災害を及ぼす。

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[子会社不祥事を未然に防ぐ]
グループ企業における内部統制システムの再構築とリスクアプローチ

【第1回】

「子会社不祥事が親会社・親会社役員にもたらすインパクト」
~場合によっては親会社の屋台骨をゆらがしかねない子会社の不祥事~

 

弁護士 遠藤 元一

 

1 後を絶たない会計不祥事

本年9月、東芝は、2度の有価証券報告書等の提出の延期を経て「不適切な会計処理」(不正会計・粉飾)を行っていたとして過年度決算訂正等を行った。

2011年に資本市場の信頼性を損なうような大規模な会計不祥事・経営者不正が起きたことを契機に、監査基準の改定および監査基準の特別基準として「監査における不正リスク対応基準」が導入され、会社法でも企業統治のための制度改正が行われる等、多方面で公正な資本市場の維持のための努力が続けられている最中、企業統治の優等生としてトップランナーと考えられていた東芝が長期にわたり粉飾を行っていたことが市場関係者に衝撃を与えたことは想像に難くない。

もっとも、東京商工リサーチの調査によると、会計不祥事により過年度決算に影響がでた、あるいは今後、影響がでる可能性があることを開示した上場企業は2012年度(2012年4月1日~2013年3月31日)が26件、2013年度が38件、2014年度が42社となっている。

つまり、上記の事例ほどの大掛かりなものではなくても、上場企業において会計不祥事が間断なく発生している。これらの中には、資本市場の信頼性を担保する目的で適正な企業情報を開示するために会計・監査に関する制度・基準が厳格化され、四半期報告の義務化や会計情報の見積的な要素の増加に伴い、会計基準の選択や見積・評価の誤謬等が原因となって生じた事例も多いが、意図的・故意による粉飾事案も少なくない。

 

2 会計不祥事が及ぼす企業危機

粉飾決算は、一般に公正妥当と認められる会計基準に反する手続により利益を計上する会計行為である。不正・違法な会計操作の積み重ねは、雪だるま式に飛躍的に大きくなり、財務諸表に対し、定量的ではなく、定性的な影響を及ぼし、当初は、アリの一穴と思われていたものであっても、堤防が崩れ、企業の存亡を左右する大災害を及ぼす。

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連載目次

「[子会社不祥事を未然に防ぐ]グループ企業における内部統制システムの再構築とリスクアプローチ」(全12回)

  • 【第1回】
    子会社の不祥事が親会社・親会社役員にもたらすインパクト
    ~場合によっては親会社の屋台骨をゆらがしかねない子会社の不祥事~
    (遠藤元一)
  • 【第2回】
    周辺エリアで生じやすい不祥事
    ~子会社で不祥事が生じやすいのには、様々な要因がある~
    (松澤公貴)
  • 【第3回】
    子会社管理についての判例・裁判例と平成26年改正会社法の影響
    ~グループ企業経営が会社法の本体に格上げされたことで親会社の責任はどのように変わるのか?~
    (遠藤元一)
  • 【第4回】
    グループ企業管理に関わる基本的方針(その1)
    ~親会社は全社的な統制とグループ会社の自主・独立性をどのように調和させるのか?~
    (遠藤元一)
  • 【第5回】
    グループ企業管理に関わる基本的方針(その2)
    ~リスクベースドアプローチの重要性~
    (遠藤元一)
  • 【第6回】
    グループ企業管理に関わる基本的方針(その3)
    ~早期不正対処の重要性~
    (松澤公貴)
  • 【第7回】
    グループ企業への具体的な関与(その1)
    ~法令遵守に係る基本的・具体的アプローチ~
    (遠藤元一)
  • 【第8回】
    グループ企業への具体的な関与(その2)
    ~リスク管理に係る基本的・具体的アプローチ~
    (遠藤元一)
  • 【第9回】
    グループ企業への具体的な関与(その3)
    ~監査機能の課題と重要性①~
    (松藤 斉)
  • 【第10回】
    グループ企業への具体的な関与(その4)
    ~監査機能の課題と重要性②~
    (松藤 斉)
  • 【第11回】
    グループ企業への具体的な関与(その5)
    ~グループ内部通報が親会社を救う~
    (遠藤元一)
  • 【第12回】
    海外子会社の内部統制システムとコンプライアンス強化
    ~親会社視点での国内子会社との相違点・留意点等~
    (遠藤元一)

筆者紹介

遠藤 元一

(えんどう・もとかず)

弁護士
東京霞ヶ関法律事務所 パートナー弁護士(第二東京弁護士会)
立教大学法科大学院講師

東京大学法学部卒。

指定住宅紛争処理機関紛争処理委員、社団法人グローバルビジネスロー研究会理事を務める。
日本私法学会、日本内部統制研究学会、著作権法学会等所属。

主な取扱分野は、倒産法、危機管理対応、コーポレート・ガバナンス関連、監査・会計と法律との業際問題、国内訴訟事件、企業法務全般、講演活動等。

【主な著作】
・『循環取引の実務対応』(民事法研究会、2012)
・『倒産と担保・保証』(共著・商事法務、2014)
・『会計不正 平時における監査役の対応』(共著・LABO、2015)
・「『監査における不正リスク対応基準』が取締役に及ぼし得る影響(上)(下)」旬刊商事法務2023、2024号(2014)

関連書籍

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