租税争訟レポート 【第24回】「馬券の払戻金の所得区分と外れ馬券の必要経費該当性(東京地方裁判所判決)〈前編〉」
平成27年3月10日、最高裁判所は、競馬の払戻金に係る所得(以下「競馬所得」という)について、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは、文理に照らし、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当である」として、所得区分を雑所得、外れ馬券の購入代金を必要経費に含めるという、国税庁による「所得税基本通達」を否定する内容の判決を言い渡した。
~税務争訟における判断の分水嶺~課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から 【第4回】「教育機関等に派遣した講師等に対して支払った金員が給与所得に当たるとされた事例(源泉所得税)」
納税者(以下「甲」)は、教育機関又は一般家庭から講義等又は家庭教師の業務を受託し、一方で、当該業務に関して講師や家庭教師(本件講師等)と契約して、本件講師等に講義等の業務を行わせていた。
甲は、本件講師等に支払った金員(本件各金員)について、給与所得に該当しないものとして源泉徴収をせず、また、消費税については仕入税額控除の対象として申告をしていた。これに対して税務署長は、本件金員は給与所得に該当するから源泉徴収が必要であり、また、仕入税額控除の対象とならないとして、源泉所得税納付告知処分等を行った。本件は、これらの処分の取消しを求めて争いとなったものである。
貸倒損失における税務上の取扱い 【第46回】「貸倒損失の法律論③」
前回においては、法的に債権が消滅した場合における貸倒損失の計上について解説を行った。これだけでなく、貸倒損失を計上することができる場面としては、法的には残っているものの実質的に回収不能である場合も含まれる。
しかしながら、実務上、これに該当することができるか否かの判断がかなり難しく、平成23年度税制改正により、金融機関や中小法人等を除き、貸倒引当金を設定することが認められなくなったことを考えると、極めて重要な論点であると考えられる。
本稿においては、どのような場合に実質的に回収不能であるとして貸倒損失を計上することができるかという点について解説を行うこととする。
『繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)』への対応ポイント 【第1回】「公開草案の読み方」
平成27年5月26日、企業会計基準委員会は、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)」(企業会計基準適用指針公開草案第54号。以下「公開草案」という)を公表し、意見募集を行っている(意見募集期間は、平成27年7月27日まで)。
公開草案は、現行の「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(日本公認会計士協会。以下「監査委員会報告第66号」という)を、基本的に引き継ぐものであるが、新たに規定された部分については、実務に大きく影響するものと考えられる。
会計上の『重要性』判断基準を身につける~目指そう!決算効率化~ 【第6回】「「重要性の基準値」はなぜ税引前利益の5%なのか」
指標として税引前利益を選択することが基本とされるのは、次のような理由からです。
それは、重要性という概念がそもそも誰を意識して設定されるのかということと関係しています。重要性というのは、財務諸表の利用者を意識して設定される概念です。財務諸表の利用者の意思決定に影響を与えるかどうかというのが、重要性判断のポイントなのです。
経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第86回】金融商品会計⑧「貸倒見積高の算定の際の債権の区分」
Q 当社は卸売業を営んでおり、多くの得意先に対して掛売りをしています。期末に保有する売掛金に対して貸倒引当金の計上をする際に、債権を3つの区分に分類するといわれていますが、その区分について教えてください。
山本守之の法人税“一刀両断” 【第12回】「貸倒損失について」
法人税基本通達9-6-2については、解説書等に損金経理を要すると書かれていますが、これは誤りです。確かに、昭和55年の通達改正前までは「損金経理した場合はこれを認める」とされていたのを「損金経理することができる」と改めたのです。
消費税の軽減税率を検証する 【第2回】「税率構造に関する過去の答申」
平成19年の答申(上記⑦)は、平成18年9月に任期満了で小泉首相が退任した後に公表されたものである。小泉首相は、「私の任期中は消費税を上げない」(※1)と公約していた。その小泉政権が終了して1年が経過し、財政再建のための消費税率引上げの議論が緊迫した現実性を増す中で、答申は、複数税率制度の検討にあたっては、ヨーロッパ諸国の教訓に学ぶべきことを指摘したのである。
宅地等に係る固定資産税の軽減措置と特定空家等の適用除外について 【第2回】「特定空家等に係る住宅用地の特例の適用除外」
【第1回】において言及したように、平成27年度の税制改正により、「空家等対策の推進に関する特別措置法」に定める特定空家等について、市町村長から取り壊しや修繕等をするよう勧告が行われたときは、その空家等に係る土地に係る固定資産税及び都市計画税については住宅用地の特例措置の対象から除外されることになった(地方税法第349条3の2)。
特定空家等については、「空家等対策の推進に関する特別措置法」の第2条においてその詳細が定められている。
具体的には次のとおりである。