基準年度の見直しによる「実質的に債権とみられない金額」の簡便法の取扱いについて~平成27年4月1日以後に開始する最初の事業年度における貸倒引当金計算上の留意点~
平成27年度税制改正では、中小企業等の貸倒引当金の特例について、一括評価金銭債権の帳簿価額から控除される「実質的に債権とみられない金額」の基準年度の実績による場合の簡便法に関し、次の見直しが行われた。
① 簡便法によることができる法人が平成27年4月1日に存する法人とされた。
② 基準年度が平成27年4月1日から平成29年3月31日までの期間内に開始した各事業年度とされた(改正前の基準年度は「平成10年4月1日から平成12年3月31日までの期間内に開始した各事業年度」)。
貸倒損失における税務上の取扱い 【第43回】「法人税基本通達改正の歴史⑫」
平成15年度に「法人税基本通達等の一部改正について(平成15年2月28日課法2-7)」が公表され、合理的な再建計画等の定めるところにより、現物出資型のデット・エクイティ・スワップ(適格現物出資に該当するものを除く)を行うことにより株式を取得した場合には、その取得した株式の取得価額は、当該取得の時における価額となることが明らかにされた(法基通2-3-14)。
当時は、組織再編税制が導入された後であったことから、現物出資型のデット・エクイティ・スワップについては、現物出資として整理され、適格現物出資に該当するのであれば簿価で移転され、非適格現物出資に該当するのであれば時価で移転されることになる。デット・エクイティ・スワップについては、そもそも事業の移転や従業者の移転を伴うものではないことから事業継続要件、従業者引継要件を満たすことができず、100%グループ内の現物出資に該当しない限り、非適格現物出資として処理されることになる。
平成27年度税制改正における「受取配当等の益金不算入制度」の見直しについて 【前編】
平成27年度税制改正では、実効税率の引下げに伴う、代替財源の確保のための一環として本制度が見直され、持株比率基準の見直し、継続保有要件の見直し、非支配目的株式等の創設、負債利子控除制度の見直し、証券投資信託の収益の分配金に対する課税の見直しなどの諸点が改正された。
「特定の事業用資産の買換え特例(9号買換え)」平成27年度改正のポイント 【第2回】「改正前後の適用関係(経過措置)と1~10号の適用期限・要件を整理する」
平成27年度税制改正で延長・見直しが行われた特定事業用資産の買換え特例(措置法37条、65条の7)における9号買換えついて、前回は改正後の要件を確認したが、今回は改正前後の取扱い(経過措置)について整理するとともに、1号から10号までの本制度全体の適用要件・適用期限についてまとめた。特に個人(措置法37条)の適用期限については誤りやすいので留意しておきたい。
欠損金の繰越控除制度に関する平成27年度税制改正事項 【第2回】「経営再建中の法人及び新設法人における特例」
経営再建中の法人において、通常の法人と同様に欠損金の繰越控除限度額を設定すると、納税が再建の負担となってしまう可能性がある。
そこで、次のような事実が発生した法人については、特例措置が設けられた。
▷更生手続開始の決定があった
▷再生手続開始の決定があった など
組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第26回】「裁決例⑥」
今回、紹介する事件は、合併に際して被合併法人の株主に交付されたいわゆる合併交付金が、被合併法人の利益の配当であるかの判定に当たり、合併契約書等にその旨の記載がない場合には、合併交付金が支払われた経緯、支払いを受けた株主の認識等を総合的に検討して判断するのが相当であるとした事件である。
組織再編税制が導入された後、最初に税制適格要件について争われた事件であることから、知っておくべき裁決例であると考えられる。
貸倒損失における税務上の取扱い 【第42回】「法人税基本通達改正の歴史⑪」
平成12年度には、「法人税基本通達の一部改正について(平成12年6月28日、課法2-7)」が公表され、貸倒引当金についての通達が改正されている。主なものは、貸倒損失として計上した金銭債権を個別評価金銭債権に対する貸倒引当金として処理することができるという点(法基通11-2-1の2、なお、平成14年2月15日課法2-1により法基通11-2-2に番号を変更)と、未収利息に対する個別評価金銭債権に対する貸倒引当金について定められたという点(法基通11-2-6の3、なお、平成14年2月15日課法2-1により法基通11-2-8に番号を変更)である。このうち、前者については、貸倒損失と貸倒引当金との関連性を示すものであるため、本稿において解説を行う。
「特定の事業用資産の買換え特例(9号買換え)」平成27年度改正のポイント 【第1回】「延長・見直し後の要件をおさえる」
平成27年度税制改正により、租税特別措置法第37条第1項第九号《特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例》及び同法第65条の7条第1項第九号《特定の資産の買換えの場合の課税の特例》における長期所有の土地等から国内にある土地、建物、機械装置等への買換え(いわゆる「9号買換え」)について、下記の事項の見直しを行った上、適用期限を平成29年3月31日まで2年3月延長することとされた。
欠損金の繰越控除制度に関する平成27年度税制改正事項 【第1回】「控除限度額と繰越期間の見直し」
青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除制度、青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越控除制度における控除限度額について、平成27年度税制改正により、次のように段階的に引き下げられることとなった。
組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第25回】「裁決例⑤」
今回、紹介する事件は、飲食業を営む前賃借人からその各店舗を転借する際に支払った対価は営業権の対価ではなく、繰延資産の対価であるとした事件である。
本事件のように、営業権(現行法上の資産調整勘定)に大雑把に入れるのではなく、厳密に各資産に配分する必要があるという意味で、実務において参考になり得る事件であると考えられる。なお、類似の事件として、昭和63年6月21日裁決(店舗を開設するに当たり、前の賃借人に支払った本件金員は、繰延資産たる「資産を賃借するために支出する費用」に該当するものであり、その償却期間は、店舗が設置されている建造物の耐用年数を基に見積もるべきであるとした事例)が存在する。
