「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例111(消費税)】 「個別対応方式が有利であったにもかかわらず、前期に一括比例配分方式を選択したため、2年間の継続適用要件により、不利な一括比例配分方式での申告となってしまった事例」
令和Y年3月期の消費税につき、土地を売却したことから、課税売上割合が下がり、またテナントビルを取得したことから、個別対応方式が有利であったが、令和X年3月期に一括比例配分方式を選択したため、2年間の継続適用要件により、不利な一括比例配分方式での申告となってしまった。これにより、不利な一括比例配分方式と有利な個別対応方式との差額につき損害が発生し、賠償請求を受けたものである。
固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第18回】「塩田跡地を造成してゴルフ場用地とした土地について鑑定評価額をもって登録価格としたことは違法か否かが争われた事例」
今回は、当初塩田であった土地を造成してゴルフ場にした案件にかかる固定資産税評価額について、評価基準ではなく鑑定評価に基づいて登録価格を算定したことから争われた事案を検討する。
収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第81回】
〈Q5〉売主であるA社(3月決算)は、X1年3月末に、買主であるB社に、B社が購入したA社の商品を出荷した(配送業者に引き渡した)。その後、A社は、X1年4月1日にB社に商品が到着したことを配送業者のウェブサイト上の追跡サービスを利用して確認した。この場合、A社は、その販売に係る収益をその商品を出荷した日の属する事業年度(X1年3月期)の収益に計上することが認められるか。
また、A社は、その販売に係る収益を出荷日ではなくウェブサイトの確認によって把握した商品のB社への到着日(着荷日)の属する事業年度(X2年3月期)の収益に計上することも認められるか。
《速報解説》国税庁、『移転価格事務運営要領』(事務運営指針)の一部改正を公表~改正案に対する意見への回答として実務の参考となる“国税庁の考え方”も明らかに~
国税庁は、6月10日、「移転価格事務運営要領」(事務運営指針)の一部改正を公表した。
本改正は、本年3月4日から4月12日までの同改正案に対する意見募集を経たものであるが、実際には、改正案の文言は修正されることなくそのまま公表されている。それゆえ、改正の骨子は、本年3月17日の速報解説記事を参照されたい。
日本の企業税制 【第104回】「「新しい資本主義」実現に向けた“人への投資”」
岸田政権の掲げる「新しい資本主義」のコンセプトについて、今回の「実行計画」では、市場だけでは解決できない外部性の大きい社会的課題を障害物ではなくエネルギー源と捉え、官民連携によって解決を進め、包摂的で新たな成長を図ることと説明されている。
この実現に向けて、①人への投資、②科学技術・イノベーションへの投資、③スタートアップへの投資、④GX及びDXへの投資の4本柱に投資を重点化するとし、これらの政策を実行するため、事業の性質に応じて基金等を活用して予算単年度主義の弊害を是正するとともに、税制改正においてその将来にわたる効果を見据えた動的思考を活用することとし、財政措置や税制改正が施策の中心に据えられていることが注目される。
谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第3回】「国税通則法2条」-納税者の意義・範囲と源泉徴収の法律関係-
国税通則法2条は、「国税通則法の各条の規定の平易化と解釈の明確化を図るため、同法中において特別の意義をもって用いられる基本的な用語を定義したもの」(志場喜徳郎=荒井勇=山下元利=茂串俊共編『国税通則法精解〔令和4年改訂・17版〕』(大蔵財務協会・2022年)136頁)であるが、今回は、同条5号における納税者の定義を取り上げて検討することにする。
〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第39回】「現物による役員退職給与支給と消費税の関係」
当社は、現在M&Aの対象会社となっています。退任予定の現社長は当社が所有する不動産に居住しているため、役員退職給与として、当該不動産を現物支給にて取得することを希望しています。
この場合、通常の不動産の譲渡と同じく、当社にとって消費税の課税対象となりますか。
基礎から身につく組織再編税制 【第41回】「適格現物出資があった場合の繰越欠損金の取扱い」
今回は、適格現物出資があった場合の繰越欠損金の取扱いについて解説します。
適格合併があった場合には、原則として被合併法人の未処理欠損金額は合併法人に引き継がれますが、適格現物出資があった場合には、現物出資法人の未処理欠損金額は被現物出資法人に引き継がれません。
相続税の実務問答 【第72回】「相続開始直前に銀行借入れにより不動産を取得していた場合の当該不動産の評価」
父は、食料品販売の会社を経営していましたが、高齢になり、後継者もいないことから、その会社の株式の全てを同業者に売り渡し、その譲渡代金3,200万円に銀行からの借入金2,800万円を加えて、賃貸目的の新築マンションの1室を6,000万円で購入しました。そのマンションは、購入後、第三者に賃貸していましたが、購入から1年後に父が急死してしまいました。私は、このマンションを相続し、引き続き賃貸の用に供していきたいと考えています。
ところで、このマンションを評価通達の定めに従って評価すると、その評価額は建物及びその敷地の持分を併せて2,400万円になります。最近、相続開始前に借入金で不動産を購入した場合には、評価通達に定める評価方法で評価した価額ではなく、相続開始時の不動産鑑定評価額などを基にした評価額で相続税の計算をすべきであるとの最高裁判決が出されたと聞きました。
父の相続財産であるこのマンションについては、評価通達に定める方法により評価した価額を基に相続税の計算をすることは、認められないのでしょうか。