monthly TAX views -No.154-「繰り返される金利・成長率論争」
高市総理は、衆議院予算委員会での答弁で、単年度プライマリーバランス(PB)黒字化目標の見直しを明言し、目標の確認サイクルを複数年度に変える旨発言した。
背景には「名目成長率(g)が国債金利(r)を上回る状況を維持できれば、債務残高の対GDP比は自然に安定する」という考え方がある。事実、高市総理は記者会見で、「名目成長率が金利より高ければ(g >r)財政は自然に安定するので破綻はしない」と発言している。これはリフレ派の主張でもある。
問題は、「そのような前提が現実に続くのか」という点である。
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例81】「外国為替の売買相場が著しく変動した場合の外国為替換算差損の損金性」
さて、今般、その際に行った外貨建社債の円換算により生じた損失の損金計上につき、現在受けている国税局の税務調査で問題となっております。すなわち、当該外貨建社債については、外国為替の売買相場が著しく変動したため、わが社は期末換算差損につき損金算入を行ったのですが、調査官は、当該外貨建社債については、デリバティブ取引により繰延ヘッジ処理がされており、為替変動のリスクがヘッジされていることから、損金算入は認められないと主張しております。損失が生じているのに損金算入されないという主張は理解できないのですが、税法上どう考えるのが妥当なのでしょうか、教えてください。
《税務必敗法》 【第7回】「振替伝票を削除した」
X会計事務所は、顧問先であるA社の記帳代行を行っている。ある日、所轄税務署の税務調査が入った。所轄税務署は、会計帳簿について電子データでの提示を希望したため、担当税理士はA社の同意をとったうえで会計ソフトのバックアップデータを提出した。なお、A社の帳簿は「優良な電子帳簿」には該当していない。
後日、調査官から連絡があった。内容は「振替伝票の一部が削除されているが、その理由を教えてほしい」ということであった。
X会計事務所内で調査したところ、入力担当職員が、仕訳を訂正する際、誤った仕訳が入力された振替伝票を削除し、新しい振替伝票に正しい仕訳を入力していたことが発覚した。
金融・投資商品の税務Q&A 【Q100】「不動産セキュリティトークンからの配当金」
私(居住者たる個人)は、不動産に投資するセキュリティトークン(デジタル証券)を保有しています。償還期限までの間に年に2回の配当が支払われることが予定されていますが、この配当は確定申告が必要でしょうか。
なお、この不動産セキュリティトークンは、税務上、特定受益証券発行信託に係る受益権に該当し、証券会社の一般口座で保管しています。
租税争訟レポート 【第82回】「重加算税「取締役及び従業員による不正と重加算税賦課決定処分」(第1審:仙台地方裁判所令和5年12月25日判決、控訴審:仙台高等裁判所令和6年6月4日判決)」
原告は、昭和27年10月27日、電気工事、照明工事、機械設備工事、プラント工事、土木工事、建築工事等の設計、施工及び保守、管理等を目的として設立された資本金1億円の株式会社である。
原告は、土木工事業を営む訴外株式会社A(以下「A社」という)に対する土木工事の外注費について、平成24年9月期から平成29年9月期までの事業年度(本件各事業年度)の法人税、復興特別法人税及び地方法人税の計算上、これを損金の額に算入するとともに、平成24年9月課税期間から平成29年9月課税期間(本件各課税期間)までの消費税及び地方消費税の計算上、仕入税額控除を適用して申告した。
これに対し、仙台北税務署長は、申告されたAに対する外注費の一部は、原告の従業員であった甲、乙、丙及び丁、並びにA社の代表取締役である戊らが行った工事代金の水増し請求によるものであり(以下、この水増し請求に係る甲らの行為を「本件不正行為」という)、当該外注費のうち水増し金額分(本件外注費水増し分)は、役務の提供を受けた対価であるとは認められないから、これを損金に算入することも、仕入税額控除を適用することもできず、法人税の計算上、本件不正行為により生じた損失は、本件各事業年度の損金に算入され、当該損失に対応する損害賠償請求権は、当該損失が生じた事業年度の益金に算入されることになるなどとして、下記の処分(本件各更正処分等)を行った。
本件は、原告が、本件各更正処分等を不服としてその全部の取消しを求める事案である。
〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第59回】「租税条約における「一方の締約国の居住者」該当性と恒久的施設帰属所得の算定」
租税条約にいう「一方の締約国の居住者」とはどのような者をいうのでしょうか。
〈Q&A〉印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第101回】「営利法人の本業以外の行為に関連して作成された受取書」
当社は法人組織の飲食店です。今回、不採算店舗を閉鎖するに際してその店舗敷地を売却する予定です。金額も多額なため、譲渡代金は銀行振込みにより入金してもらおうと思いますが、入金確認後、当社からは下記の領収書を発行します。
この場合、印紙税の取扱いはどうなりますか。
《速報解説》 令和8年の平均貸付割合が年0.8%に改定される~4年ぶりの引上げで延滞税、利子税、還付加算金等の割合が変更~
令和7年11月28日、「租税特別措置法第93条第2項の規定に基づき、令和8年の同項に規定する平均貸付割合を告示する件」(財務省告示第305号)が官報本誌第1598号に掲載され、公布された。
これにより、令和8年(令和8年1月1日から令和8年12月31日まで)の平均貸付割合は年0.8%とされ、令和7年の年0.4%から0.4ポイント引き上げられることとなった。
谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第54回】「定年延長と退職所得課税」-10年退職金事件・最判昭和58年12月6日訟月30巻6号1065頁の今日的意義と「雇用継続税制」-
近時、退職所得課税の見直しが盛んに議論されるようになってきた。政府税制調査会では比較的早くから退職所得課税について「支給形態の多様化」、「雇用の流動化」、「課税の中立性」を主たる課題として検討がされてきたところである(油井雅志「退職金制度等における課税上の諸問題について―定年延長等における打切支給の取扱いを中心に―」税務大学校論叢110号(2023年)79頁、125頁以下参照。税制調査会「我が国税制の現状と課題―令和時代の構造変化と税制のあり方―」(令和5年6月)96頁も参照)。
今回の原稿執筆中にも、「退職金課税の改正見送り」という見出しで「政府・与党は退職金課税の改正を2026年度は実施しない方針だ。政府で本格的な議論に上がって以降、見送りは3年連続となる。」旨が報じられた(日本経済新聞2025年11月15日朝刊5面)。
そのような議論状況の下、「近年における少子・高齢化の進展や公的年金等の支給開始年齢の段階的な引上げ等に伴い、高齢者雇用に関する就業機会の確保が求められることになり、企業において定年延長等の雇用制度の変更による労働環境の整備がなされている」(油井・前掲論文140頁)昨今、「定年延長等に伴い、退職手当を定年延長前の旧定年で支給する、いわゆる打切支給の退職金が支給されるケースも増えていると想定される」(同100-101頁)ところ、今回は、かつていわゆる短期定年制の下での打切支給退職金の退職所得該当性が争われた10年退職金事件に関する最判昭和58年12月6日訟月30巻6号1065頁(以下「本判決」という)の判断内容を検討し、その今日的意義に関連して若干の立法論的提言を述べることにする。
〈令和7年分〉おさえておきたい年末調整のポイント 【第4回】「通勤手当の非課税限度額の引上げ」~令和7年4月1日以後に支払われるべき通勤手当に適用~
令和7年11月19日に所得税法施行令の一部を改正する政令が公布され、自動車等の交通用具を使用している給与所得者に支給する通勤手当の非課税限度額が引き上げられた(所令20の2二)。本改正は、令和7年11月20日に施行され、令和7年4月1日以後に支払われるべき通勤手当について適用される(令和7年改正令附則)。
改正前の非課税限度額を適用して源泉徴収が行われている役員及び従業員について、改正後の非課税限度額を適用することにより過納となる税額が生じる場合には、令和7年分の年末調整において精算することになる。
