小説 『法人課税第三部門にて。』 【第7話】「優良法人の税務調査(その1)」
「田村上席、ちょっと・・・」
渕崎統括官が田村上席を呼ぶ。
田村上席は、自分の机で、納税者から預かった請求書をチェックしている。
「はい、すぐに行きます」
田村上席は、途中まで見ていた請求書の束を机に置いて、渕崎統括官の席に向かった。
〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載18〕 海外子会社から受け取る役員退職金の取扱い
当社の代表取締役甲は、当社の100%海外子会社A社(A国)の社長も兼任していましたが、平成25年3月31日をもって、A社社長を退職することとなりました。
退職に際し、甲にはA社から500万円の役員退職金が支給され、A国の源泉所得税を差し引いた後の残額が甲の日本の銀行口座に送金されました。
海外子会社であるA社から受け取ったこの役員退職金について、日本における甲の所得税の課税関係はどうなるのでしょうか?
なお、甲は、3年5ヶ月間A社社長として勤めましたが、A国には常駐せず、月に1週間程度のA国への出張で仕事を行っていました。
monthly TAX views -No.4-「消費税率引上げと価格表示」
消費税率が上がる2014年4月、2015年10月に向けて、政府は、消費税の円滑で適正な転嫁を確保するため、転嫁拒否の行為を禁じたり、価格表示について、これまでとは異なる特別な措置を講じるための法整備を行う。
大規模小売業者のような優越的地位にあるものが、商品納入業者に対して買いたたきを行ったり、消費税の転嫁を拒否するような行為を禁じることについては、異論はない。
しかし、価格表示に関する規制については、すでに大手小売関係者が発言しているように、違和感を感じる部分がある。
海外で依頼した通訳等の対価の源泉所得税・消費税の取扱い
当社は、中国視察の際に、現地で甲氏に通訳を含めたコーディネートを依頼しました。甲氏は日本人ですが、2年前から中国の大学に留学しています。
この場合、当社(日本)から甲氏に対して支払うコーディネート料に関する日本の源泉所得税や消費税はどのような取扱いとなるのでしょうか。
企業不正と税務調査 【第7回】「従業員による不正」 (1)経理部門社員による横領
今回から3回にわたって、従業員による不正について、横領事件を中心に見ていきたい。
本連載【第1回】で引用した事例が2例とも従業員による横領であったように、税務調査をきっかけにして、経営者・顧問税理士・会計監査人が気付かなかった従業員不正が発覚することは少なくない。
また、犯人とされた従業員は、概してまじめで、休みも少なく、業務に精通しており、周囲からの信頼が厚い場合が多い。
彼らは、どのようにして不正への道に足を踏み入れ、いかに巧妙な隠蔽工作をし、にもかかわらず、国税調査官が発見できたのはなぜか。
組織再編税制における不確定概念 【第7回】「適格合併における繰越欠損金の利用①」
平成13年度税制改正により組織再編税制が導入され、適格合併に該当した場合には、繰越欠損金の引継制限が課されない限り、被合併法人の繰越欠損金を合併法人に引き継ぐことが可能になった。
そのため、繰越欠損金を引き継ぐために適格合併を行うということを検討する場面も多く、租税回避行為に該当するか否かが議論になることも少なくない。
そこで、第7回目と第8回目の2回に分けて、適格合併により繰越欠損金を引き継ぐ行為について、租税回避行為として認定されるか否かについて解説を行う。
法人税の解釈をめぐる論点整理 《寄附金》編 【第5回】
法人税法上、資本等取引によって損益は生じないとされ(法法22②③)、損益取引と区別されているが、資本等取引であっても現実に経済的利益の移転の効果が生じる場合があることから、何らかの形で寄附金税制が関係する場面があり得ると解される。
そこで、《寄附金》編の最終回となる今回は、資本等取引に関係する寄附金税制の適用につき、関連する課税上の問題と併せて整理・検討することとしたい。
税務判例を読むための税法の学び方【9】 〔第4章〕条文を読むためのコツ(その2)
この主文の主要素を見極める方法としては、以下のような方法がある
① 同一用語の併置に着目して整理する
② 並列的内容の事項の併置に着目して整理する
③ 選択的接続詞「又は」「若しくは」による段階構造の分析
④ 併合的接続詞「及び」「並びに」による段階構造の分析
⑤ 対句に着目して整理する
⑥ 関連した法令用語による文脈の把握
では、所得税法第10条を用いて、これらのいくつかを見ていこう。その前に、まず所得税法第10条(見出しは「障害者等の少額預金の利子所得等の非課税」となっている)の全文を見てみよう。
〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載17〕 会社分割によりデリバティブ契約を移転する場合の税務処理
当社(P社)は、分社型分割により完全子会社(S社)を新設したいと思っています。
S社に未決済のデリバティブ契約を移転する予定ですが、気を付けるべき点はありますか?
なお、移転するデリバティブ契約には繰延ヘッジ処理を適用していません。
「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例1(贈与税)】 「相続時精算課税を選択していれば贈与税がかからなかったところ、暦年課税を選択したため、贈与税の支払いが発生し、支払った贈与税について損害賠償請求を受けた事例」
平成21年分の贈与税につき、相続時精算課税の適用を受けることができる祖母からの土地の贈与につき、暦年課税により贈与税の申告を行った。ところが贈与から3年以内の平成23年に祖母が死亡したため、贈与を受けた土地を持ち戻して相続税の申告を行おうとしたが、相続人の見積りによれば、相続財産の合計額が基礎控除以下となったため、相続税は発生しなかった。
このため、依頼者より、平成21年分の土地の贈与に相続時精算課税を適用していれば、贈与税は支払わずに済んだとして、支払った暦年贈与税額につき賠償請求を受けたものである。