日本の企業税制 【第109回】「防衛費の倍増と財源の確保」
わが国を取り巻く安全保障環境は、中国、北朝鮮、ロシアによる軍事活動の活発化等によって、急速に厳しさを増している。
今年6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針 2022」(いわゆる「骨太の方針」)で、ロシアによるウクライナ侵略などを踏まえ、新たな国家安全保障戦略等の検討を加速し、国家安全保障の最終的な担保となる防衛力を「5年以内に抜本的に強化する」こととされた。また、「骨太の方針」では、北大西洋条約機構(NATO)諸国が国防予算を対GDP比2%以上とする基準を満たすという誓約へのコミットメントを果たすための努力を加速することと、防衛力強化について改めて合意がなされたことにも言及されている。
暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第5回】
棚卸資産の贈与等の場合の総収入金額の算入について、次の①の事由により、居住者の有する棚卸資産の移転があった場合には、次の②の金額相当額は、その者のその事由が生じた日の属する年分の事業所得の金額又は雑所得の金額の計算上、総収入金額に算入する(所法40①)。
〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第44回】「代表者の長男が同伴した海外渡航費について損金算入が認められなかった事例」
当社は海外との取引を行っています。代表取締役の海外出張の際、将来的な後継者として代表取締役の子を同行させ、取引先と更なる信頼関係構築を図ることを検討しています。当該代表取締役の子は現在、当社に在籍しておらず、学生の立場です。
この場合において、海外渡航費を当社が負担した場合、損金算入が認められるのでしょうか。
基礎から身につく組織再編税制 【第46回】「適格現物分配があった場合の繰越欠損金の取扱い」
今回は、適格現物分配があった場合の繰越欠損金の取扱いについて解説します。
適格現物分配の場合、現物分配法人の資産を簿価で譲渡することにより、含み損益が被現物分配法人に移転するため、被現物分配法人側で含み益を実現させ、被現物分配法人の欠損金を使用することが可能となります。したがって、そのような租税回避行為を防止するために、被現物分配法人の欠損金について一定の使用制限が課されています。
相続税の実務問答 【第77回】「葬式費用の範囲②(2ヶ所で葬式を行った場合)」
私の父が先月亡くなりました。父の生家は、P県Q市で、代々造り酒屋をしており、現在は、伯父がその家業を引き継いでいます。
父は、東京で酒類や食料品の卸しの会社を経営しており、また、業界団体の役員にもなっていましたので、東京が活動の中心でした。そこで、東京で通夜及び告別式を行いましたが、その7日後に、親戚や知人の多い出身地のQ市でも告別式を行いました。
〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第60回】「事業の全部を転業した場合の特定事業用宅地等の特例の適用と個人版事業承継税制の適用の可否」
被相続人である甲は飲食店(中華料理屋)の事業を40年間営んでいましたが、令和4年10月9日に相続が発生しました。甲の飲食店の事業の用に供していたA宅地及び建物(いずれも甲が100%所有)及びその他財産の全てを長男である乙が相続しました。甲は開業以来、青色申告者として事業を営んでいました。相続開始時の甲の年齢は80歳で乙の年齢は50歳となります。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第4回】「米国デラウェア州LPSの法人該当性(地判平23.12.14、高判平25.1.24、最判平27.7.17)(その1)」~米国デラウェア州法201条(b)、所得税法2条1項7号等、租税特別措置法41条の4の2、民法33条、36条~
本件の納税者(居住者X)は、信託銀行との信託契約を介して米国デラウェア州法により設立されたリミテッド・パートナーシップ(以下「LPS」)(※1)が行う不動産賃貸事業にリミテッド・パートナーとして参加した。Xは、本件LPSは日本の租税法上の法人には該当しないので、本件LPSが行う不動産賃貸に係る所得はパス・スルー課税(※2)されて、自己の不動産所得になるとして、減価償却費等による不動産所得の損失金額を他の所得と損益通算して所得税の確定申告を行った。
酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第113回】「節税商品取引を巡る法律問題(その7)」
これまで、節税商品取引に勧誘等をする側の法的問題を述べてきたが、他方で、かかる勧誘等を受ける側の問題についても関心を払う必要がある。具体的にいえば、勧誘等を受ける者の租税リテラシーのレベルに関する問題がそこには所在する。
以下、この視角に議論をシフトすることとし、いくつかの事例を参照しながら検討を加えることとする。
谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第8回】「国税通則法(10条及び)11条」-災害等による期限の延長-
期間とは、一般に、「一定の時間的隔たりの間の長さ」(角田禮次郎ほか編『法令用語辞典〔第10次改訂版〕』(学陽書房・2016年)116頁)をいい(ホステス報酬源泉徴収事件・最判平成22年3月2日民集64巻2号420頁によれば「ある時点から他の時点までの時間的隔たりといった、時的連続性を持った概念」)、期限とは、一般に、「公法上若しくは私法上の法律行為の効力の発生若しくは消滅又はこれらの法律行為若しくは事実行為の履行が、一定の日時の到達にかかっている場合における、その一定の日時」(角田ほか編・前掲書122頁)をいう。